皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第二十八話 民間人救出作戦『operation・MOMOTARO』

中央暦 1639年5月18日

 

 マラストラスの襲撃を簡単に跳ね除けて倒してから翌日、日本皇国軍トーパ王国派遣部隊はミナイサ地区へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

(怖い…た、助けて…)

 

 

 心の中で上のように震えているのは、ミナイサ地区で飯屋を営んでいたエレイだ。彼女は他の人たちと同様に昼間に真ん中の広場に集められ、いつ食料とされるか分からない恐怖に苛まれていた。

 魔王軍の侵攻から生き延びていた彼女らは、夜は魔王軍に管理されている建物で過ごして、昼間は広場に集められて食料として数人ずつ連れていかれる。それの繰り返し。中にはこの場から逃げ出そうとする者がいたが、常に周囲を警戒している魔物にすぐに捕まってその場で料理されてしまった。

 

 

「今日は、おばえと、おばえと…………おばえだな」

 

 

 エレイの家の隣に住んでいた幼馴染の少女メニアも両親とともに昨日連れていかれた。

 生き地獄。そう言っても過言ではないような今の状況は、ミナイサ地区の残された民間人が絶望するには充分だった。食料として生き延びさせられている状況………まさに生き地獄だった。また、彼女含めた全員がトーパ王国特有の寒冷な気候によって肌寒い状態が続き、日に日に弱っていった。

 エレイは助けを待った。彼女の頭の中には幼馴染で傭兵になったガイの姿と、世界の扉の守護騎士モアの姿が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 5月なのにまだ雪が溶けていない道を進んでいく日本軍トーパ王国派遣部隊一同。作戦通りに魔物にバレないようにミナイサ地区中心部の広場に接近していく。彼らは、涸れた上水道から進軍する別働隊と大通りから派生する脇道を利用して進軍する二つに分かれていた。

 

 

「煉隊長、そういえば今回の救出作戦における作戦名って誰がつけたのですか?『operation・MOMOTARO』なんてどう考えても今のこの状況を差しているとしか思えないんですが……」

 

 

「ああ、あれですか。確かに魔王を鬼とすれば我々は桃太郎とその一行ですか…………最初はふざけてると思っていたのですが今の状況とかけていたのですね。これは一本取られました、雪…」

 

 

 煉は本国に残っている雪の姿を思い浮かべる。彼は派遣軍に加わりたかっていた。だが、そうは問屋が卸さない。だけど彼は諦めず、最低でも作戦名だけでも関わろうとして、無事に関われてはしゃいでいた。その姿が一番に思い浮かんだ。

 

 

「ねえねえ、魔王(おもちゃ)は壊れないのかな?」

 

 

 ふと、フランが質問する。どうやら待ちきれないようだ。現にフランは準備運動とばかりに手のひらを握ったり開いたりを繰り返している。

 

 

「それは分からないわ。言い伝えによると太陽神の使いにこてんぱんにやられたそうじゃない。しかも、リーンノウの森で行われた神話に関する調査で太陽神の使いは日帝時代の日本軍だったらしいのよ。つまり、第二次世界大戦レベルの技術以上なら簡単に倒せることにならないかしら?だったら、フランでは相手にならないですぐに壊れるわ」

 

 

「ふーん、そうなの?つまんないの〜」

 

 

 レミリアがそう予測を建てるが、実際は魔王の強さは未知数でその強さの予測に日本側は苦労していた。確かにレミリアの言う通りで日帝時代の日本軍に惨敗していたのだが、魔王は今の状況から生きていると察することができる。リーンノウの森の調査で見つかった()()()()からの艦砲射撃とある()()()による空爆を食らっても魔王は生きており、どうやって生き延びたのか、もしくはそもそも効いていないのか………その両方について日本側は予測するしかない。

 

 リーンノウの森の調査はロデニウス大戦から数日後に行われた。その調査には考古学者が派遣されていた。当時の日本は魔帝軍について調べていて、その過程で神話について知った。神話の中からリーンノウの森について書かれており、太陽神の使いが使用していた魔導兵器の内、故障してこの世界に残したとされる魔導兵器が保存する場所として書かれていた。今はその場所を聖地としていて、神話にある太陽神の使いが残した兵器も残存しているという。

 調査員は、太陽神の使いが強大な力を持つ魔王軍を返り討ちにする際に使われたとされる魔導兵器を生で見れることにワクワクしていた。だが、そのワクワクは実物を見ると同時に消滅することになる。それは魔王軍を返り討ちにした魔導兵器は零式海上戦闘機と大和型戦艦だったと知ったからだ。そして大和型戦艦の艦名については考古学者が知っていた。その戦艦は幻の大和型戦艦4番艦『111号艦』だった。ちなみにその戦艦につけられる予定だった艦名で一番有力なのが『紀伊』なのだが、これには明確な根拠はない。

 これらのことから、神話に出てくる太陽神の使いは日帝時代の日本軍だったとわかった。この発見は、神話の調査をさらに促進することになる。

 

 話を戻すが、上記のような発見により、当時の魔王軍が相手した太陽神の使いの正体がわかっただけでなく使用された兵器の詳細もわかった。日本側はその使い方もわかっているために、魔王軍のことは倒せると思っていた。問題なのが魔王軍本隊であり、日本側もそれさえ注意すれば倒せると踏んでいた。

 

 

「でも、こちらがあえて手加減して遊んであげれば、遊べないこともないわよ」

 

 

「分かった!!お姉様ありがとう!」

 

 

「レミリアさん、フランさん、つきますよ」

 

 

 煉はそう言うと、涸れた上水道から繋がっている涸れた噴水から飛び出した。飛び出した煉は既に攻撃している大通り方面から進軍してきた味方に便乗して、民間人を見張っているゴブリンロードを10体を一瞬で斬り裂いて倒す。一緒についてきた、さっきまで黙っていた騎士モアと傭兵ガイも飛び出し、傭兵ガイはゴブリンロードに手を引かれていた少女を発見すると一直線にそのゴブリンロードに向かって剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る………

 

 

「魔王様は、今日はあっさりとしたものがいいと言っていたな……今日は野菜をメインにして味付け程度にエルフの女ぐらいが丁度いいだろう」

 

 

 餌の品定めに来たゴブリンロードは各種族を見渡しながらそう言った。エレイの右手を掴まれ、エレイは抵抗するがゴブリンロードには無意味だった。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!神様ァァァァ!!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 瞬間、大通りに陣取っているレッドオーガの周りが煙に包まれた。

 

 

 

 

 

 大通り方面から進軍してきた日本軍のレッドオーガの足下に転がした手榴弾の爆発は、レッドオーガには傷一つ付かなかった。逆にレッドオーガは怒ったのか、物凄いスピードで日本軍を追いかけていく。だが派遣されている日本軍は、レッドオーガよりも速い動きをする人物(雪やゆかや煉など)による訓練を受けたことがあるため、そのスピードよりもマシだと日本軍は思いながら38式装甲車ハ型の後ろに隠れた。

 

「近くに民間人はいません!!上手く引き剥がせたようです!」

 

 

「お前ら、上出来だ!!撃てぇ!!」

 

 

 38式装甲車ハ型についている電磁速射砲が火を噴いた。戦車並みの威力で連続して放たれる砲弾は寸分なくレッドオーガに命中して即死させた。

 

 

「命中!!周りを一掃するぞ!!」

 

 

 38式装甲車ハ型に群がる魔物を狩りまくる日本軍。またここには39式戦車もあり、その破壊力を駆使しながらどんどんと片付けていく。魔物は必死に突撃するが、日本軍を前に屍を増やし続けるだけだった。

 

 

 

 

 

 エレイは、涸れた噴水塔から出てきて魔物を魔法の杖で一掃する緑の斑模様の服を着た変な人を見る。エレイを掴んでいる魔物もよく見ると唖然としている。そんな時、その魔物が1人の剣士によって絶命した。

 

 

「よ、よう。エレイ、大丈夫だったか?」

 

 

 幼馴染の傭兵ガイだ。彼は、緊張しているのか声を震わせながら声をかける。

彼はエレイに恋をしていた。3年前にエレイに告白までしている。その時は断られたが今も諦めていない。

 

 

「エレイさん、大丈夫ですか?」

 

 

「モ、モア様っ!」

 

 

 しかし、当の本人はガイではなく騎士モアに恋をしていた。

彼に呼ばれたエレイは光の速さで振り返る。

 

 

(いかん、いかん。一瞬気が迷ってしまった。戦場にまで助けに来てくれたのはモア様も同じ。やっぱりモア様は私の王子様よ。絶対に逃がさん!)「私のために来てくださったのですね♪エレイ、カ、ン、ゲ、キ!」

 

 

 救われない傭兵ガイであった。

 

 

 

 

 

 

 

 民間人が避難を開始した。ミナイサ地区から城門までの距離は約3km。その距離を民間人が避難し終わるまで、迫り来る魔物の群れから民間人を防衛しなければならない。

 

 戦闘を開始した。日本軍は主力武器である39式自動小銃を構えて防衛戦を展開した。火力も連射力も最強の部類に入るこの小銃は前世界では傑作と言われ、輸出した友好国にも好評だった武器だ。分間1000発以上を放つことができるこの小銃での弾幕は、いかなる敵を寄せ付けない威容さがある。魔物は蜂の巣になり、付近にいる39式戦車による砲撃で吹き飛ばされる。

 日本軍による防衛戦の光景は防衛戦ではなく、もはや蹂躙と言っても過言ではなかった。まさしく『攻撃こそ最大の防御』である。

 

 

「私たちも混ぜなさい!」

 

 

 その様子を見ていたスカーレット姉妹も魔王を待ち切れなくなったのか、防衛戦に参加した。そのおかげか魔物の殲滅スピードがさらに上がり、辺り一帯は魔物の血で染まっていった。

 

 

 

 

 

 

 城門まで残り約500mとなった地点で王国騎士団と合流した一同。彼らとともに城門へと向かおうとした、その時だった。

 

 

「ちくしょう!!ブルーオーガだーーー!!!」

 

 

 民間人はパニックになった。せっかくここまで逃げてこられたのにここで死ぬのかと絶望する者まで出てきた。かくいうエレイも絶望とまではいかないが、絶望しかけているところだった。普通の魔物は日本軍の小銃で倒せるが、ブルーオーガは傷一つつかずに銃弾を弾いている。銃弾が効かないのなら砲弾を使えばいいと思うかもしれないが、民間人が近くにいて尚且つパニックになっている状況で巻き添えになる可能性を否定できないために使えないのだ。

 万事休すかと思われるこの状況だが、ある声が聞こえた。

 

 

「キュッとして………ドカーン!!!」

 

 

 その声と同時にブルーオーガの肉体が爆散した。民間人が、日本軍が、トーパ王国騎士団が、この場にいる全員がその声のした方を向く。そこには、片手を突き出して手のひらを握っているフランの姿があった。そう、フランは自身の能力である『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』をブルーオーガに向けて使用したのだ。

 そんな彼女に向けて日本軍以外の人は畏怖の視線を向ける。彼女を恐れているかのような、そんな視線だ。伝説の魔獣と言われているブルーオーガを手のひらを握るだけで倒していることから、恐怖の視線をトーパ王国側からフランは向けられていて、さらにフランの背中から羽が生えていることから何も知らない民間人は魔帝の手先なのではと恐怖していた。そのような視線にまだ精神が幼いフランは耐えられるはずもなく、力無く俯いてしまう。

 

 

「何をやっているのですか!!」

 

 

 そんなフランに助け舟を出したのは黒岩煉だった。彼の額には青筋が浮き出ており、このことからブチギレているのがわかる。

 

 

「彼女はあなたたちを助けたのですよ!!それなのにあなたたちはお礼も何も言わず、ただ恐怖や畏怖の視線を向けて勝手に怯えて………あなたたちは何をやっているのですか!!何か彼女に言うべきことがあるのではないですか!!」

 

 

 大声を出して怒鳴りつける煉。レミリアも手を握って肩を震わせていたが、煉のブチギレている姿を見てだんだんと怒りのボルテージが下がっていった。フランは煉の怒鳴り声にビクッと体を震わせた後、煉の方を見つめる。

 

 

「フランドールさん、あなたに助けていただいたのにも関わらず、勝手に怯えてしまい申し訳ありません」

 

 

 アジズが謝罪をする。それに続いて、パニックから落ち着いた民間人が謝罪していく。

 

 

「フランドールさん、どうしますか?」

 

 

「煉が怒ってくれたし許すよ」

 

 

 許してくれてホッとするトーパ王国側。その後、一同は無事に城門へと辿り着き、救出作戦は成功に終わるのだった。

 

 

 

 

 

 そして、日本軍は救出作戦最終段階である魔王討伐を実施するために準備に取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔王様!!レッドオーガとブルーオーガがやられたようです!!」

 

 

「なんだと!?」

 

 

 魔王は憤慨した。魔王は各種族を下等種族と捉えており、過去よりかは学んで善戦しているという認識だった。だが、今回のこの知らせは下等種族にしてやられたということで魔王のプライドが刺激された。

 

 そして、ここに空から火に燃料を投下する行為を日本軍は行った。魔物にある紙を回収させたのだ。その紙には以下のことが書いてあった。

 

 

 

『レッドオーガとブルーオーガのお命をいただきました。とてもすごかったですよ。うまかったです。

 

p.s.レッドオーガとブルーオーガは簡単に倒せたので魔王とやらはさぞ弱いんでしょうね、そうでしょう自称魔王様♪本物の魔王なら、本拠地に引き篭もらずに1人で出撃しても簡単に我々を倒せるでしょうしね。』

 

 

 

「おのれ、おのれ、おのれーーー!!!この俺様を舐めやがってぇ!!しかも魔物を食べるだと!?身の程を弁えない下等生物共がー!!!」

 

 

 

 

 要約すると上のようなことが書いてある。この紙にはレッドオーガとブルーオーガを食べたことを示すような文章で書かれているが、これはハッタリであってハッタリではない。この文章の発案者は本国より通信している雪である。実は、紙に書かれている『すごかった』は『(味方の無双っぷりが)すごかった』で、『うまかった』は『(味方によるレッドオーガの上半身の消し飛ばし方が)うまかった』であった。詐欺師の手口だと思うかもしれないが、我々がそもそも魔物などを食べるはずがないにも関わらず勝手に勘違いしているのは向こうである。

 

 

「こうなったらお望み通り目にものを見せてやる!!」

 

 

 頭に血が上っている魔王は部下の反対を押し切り、複数の護衛とともに出撃した。紙は罠だと、魔王を誘き出す罠だから出撃はやめた方がいいと言った魔物がいたが、魔王のプライドがそれを許さない。

 

 

 

 こうして魔王は出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

「魔王がそろそろ来るわ、準備なさい」

 

 

 近未来の運命を観測したレミリアが言う。民間人の救出成功から翌日の早朝、レミリアが煉を起こして準備するように言う。

 

 

「ありがとうございます。レミリアさんはフランドールさんを起こしてください。迎撃準備を行いましょう」

 

 

 煉は部下たちを起こしていく。起こされた部下たちはトーパ王国騎士団も起こしていく。

 トーパ王国騎士団は突然起こされて何事かと思っていた。魔物が連日攻めてきて、今のこの時間は彼らにとって数少ない休息の時なのにそれを邪魔されたのだ。不機嫌になってもおかしくない。だが、今はそんなことを言っている場合ではないのだ。

 

 

「何かあったのですか、煉さん?」

 

 

「アジズさん、至急迎撃準備を。魔王本人が出撃したようです」

 

 

「なっ!?それは本当ですか!?今すぐ部下に知らせて準備にあたらせます!」

 

 

 その話を聞いたトーパ王国騎士団の様子は一変。急いで魔王迎撃の準備に入っていた。彼らにとって魔王は祖国に侵攻してきて家族や知り合いを殺害した憎き敵なのだ。故に、ようやく復讐ができる等の思いを背負いつつ、必死に急いで迎撃準備をしていた。

 

 

 

 

 そして、中央暦1639年5月19日早朝に魔王が襲来した。

対パーパルディア皇国戦にて参加するネクロマンス首脳部は?(大和ゆかは参加確定)

  • 黒岩煉
  • 小野未来
  • 船橋海斗
  • 冬花雪
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