皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第三十話 魔王(ノスグーラ)vs悪魔の妹(フランドール)

 中央暦 1639年5月19日 10:00

 

 

 魔王とフランの戦いは苛烈以上の激しさで行われていた。魔王が炎や拳で攻撃するのに対し、フランは素手のみで攻撃している。それだけで差があるように思われるが戦況は拮抗していた。

 

 

「あははははは♪あなた強いのね♪」

 

 

「貴様ァーー!!!」

 

 

 フランは笑いながら魔王の攻撃の嵐を避け、自身も攻撃のために魔王の懐に飛び込んで殴り飛ばす。原作では鬼よりパワーは低く、天狗よりスピードが遅いと言われる吸血鬼だが、それでも吸血鬼の身体能力の高さは伊達ではないのだ。

 魔王の顔は怒りに染まっており冷静さは完全に失っていた。魔王はフランのスピードについていけず、また冷静さを失っているために直線的な攻撃しかしてこなく、攻撃が掠りもしていなかった。そんな魔王を笑うフランにさらに魔王は憤慨する。怒りで頭が破裂するんではないかというほど魔王は怒りまくっていた。

 

 

「大いなる大地の王よ!その絶大なる力を解放し、我が配下となりし古の魔人を呼び覚ませ!!

【エンシェントカイザーゴーレム】!!」

 

 

 そして、魔王はスピードが上の敵の目の前で詠唱を堂々とする愚行を行なってしまう。だが、フランはそれを律儀に待っていた。そうして現れたのは、先程煉が真っ二つにした巨大な岩のゴーレムであるエンシェントカイザーゴーレムであった。

 

 

「エンシェントカイザーゴーレムよ!!眼前の敵を捻り潰せ!!」

 

 

 そう命令した魔王は、エンシェントカイザーゴーレムに大量の魔力を送りつける。そうすることでエンシェントカイザーゴーレムの性能が上がるのだ。

 

 動き出したゴーレムは最初に巨大な腕を振るう。それをフランは避けるが、避けた方向にはもう片方の腕が振るわれていた。なんとか間一髪でかわしたフランは、ゴーレムの背後に回って攻撃を仕掛けようとする。

 

 

「無駄だ!!やれ!」

 

 

 魔王のその声と同時にゴーレムは振り向き、フランに拳を振り下ろす。予想外の行動にフランは目を見開き、反応が一瞬遅れてしまう。振り向いた時に生じる遠心力と岩でできたゴーレムの重量を合わさった拳の威力は相当なものだ。それをフランは地面に叩きつけられ、その着弾地点は小さなクレーターができていた。

 

 

「フハハハハハハハハハ!!!我を舐めるからこうなるのだ!!」

 

 

 魔王は仕留めたと思っていた。だが、吸血鬼の耐久力と身体能力を魔王は侮っていた。フランにゴーレムの拳は全く効いておらず、地面に叩きつけられた時もしっかり衝撃を逃しながら足で着地していた。叩きつけられた時に舞い上がった土煙が晴れるとそこにはフランが無傷で立っていた。

 

 

「なっ!!何故生きている!!」

 

 

 ここで魔王は気づく。魔王の視線はフランの羽に向いていた。フランの羽は羽の骨格のような物に色取り取りな七色の宝石のような物がついている珍しい形状をしていた。だが、魔王にとって羽の形は重要ではなく、羽があること自体が重要だった。魔王は追い詰められて冷静さを失っている中、フランの羽に気づいた魔王は、彼女を自身が崇拝する魔帝の光翼人に見えたのだろう。

 

 

「あっ、あなたは、魔帝様の光翼人ではないか!!攻撃をして申し訳ありません。我々とともに人間どもを滅ぼしませんか?」

 

 

 魔王はフランが攻撃を仕掛けていたことを忘れてフランにそうお願いしていた。その光景は日本軍もトーパ王国騎士団も唖然とする。先程までと態度が違うではないかと、そう一同は思っていた。だが、フランが光翼人ではないのは本人が一番知っているし、日本軍も知っていた。トーパ王国騎士団は怪しみながらもフランは先程まで魔王を攻撃していて、また日本軍の一員なために少なくとも魔王の味方ではないと判断していた。

 

 

「何を言っているのかしら?」

 

 

「えっ?」

 

 

「私は吸血鬼。お姉様風に言うと誇り高き吸血鬼よ。()()()()()()()()()()()と一緒にしないでほしいわね」

 

 

「なっ、なっ、なぁーー!!!恐れ多くも魔帝様を下等種族だとー!!!貴様ァー!!!ふざけるなー!!!」

 

 

 フランのその台詞は魔王にとって、鎮火しつつあった怒りに燃料を投下するようなものだった。再び魔王は顔を真っ赤にして怒り狂う。

 

 

「魔帝様に不敬を働くヤツを始末しろ!!やれ!エンシェントカイザーゴーレム!!」

 

 

 そうして再び動き出したゴーレムは今までと一味違かった。機動力、防御力、攻撃力など全ての面で強化されていた。恐らく魔王が怒りのあまりにさらに大量の魔力を送り込んだのだろう。それでもフランは涼しい顔して……笑顔で楽しむようにゴーレムからの攻撃を避けていく。

 

 

「えい♪」

 

 

 フランは攻撃時に可愛い声を出すが、それと裏腹にゴーレムは吹っ飛ばされていた。ゴーレムに傷はついていないが、吹っ飛ばされたことから威力は相当なものだと推測できる。

 

 

「さあ、もっと遊びましょう♪」

 

 

 フランのその声と同時に再び両者はぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いを観戦している煉とレミリアはフランと魔王の戦いに見惚れていた。レミリアに至っては自前のカメラでフランを連写している。その表情はカメラに妹の勇姿を収めようと真剣な表情をしていた。だが、その表情とは逆にフランがカッコ良く戦闘していることに興奮しているのか羽を無意識にパタパタと動かしていた。

 

 

「さすが私の妹ね♪もっと収めないと……」

 

 

 煉はそんなレミリアをチラッと見てため息をつくが、すぐに目の前の激戦に目を奪われていた。煉はこう見えて意外にも戦闘狂のところがある。剣士の性なのか、強い者と手合わせしたくなるのだろう。

 

 

(周りは唖然としているな…)

 

 

 それはそうだろう。なにせ、相手はトーパ王国の総力を結集して勝てるか勝てないかなのに、フランは相手に善戦どころか圧倒しているのだ。彼らでもフランが魔王相手に遊んでいると察していた。

 

 

(ん?)

 

 

 煉の直感が突然警鐘を鳴らす。その直感に従い、ある方向を見る。そこにはこちらに攻撃しようとする魔王の姿があった。魔王は地面を蹴って一瞬で接近、肉薄しようとする。魔王はどうやらフランとエンシェントカイザーゴーレムが戦っているうちに他の者たちを仕留めようとしたのだろう。だけど、それもフランは織り込み済みだった。

 

 

「グハッ!」

 

 

 フランは魔王を横から殴り飛ばした。魔王は殴り飛ばされた先にある地面に着地してゴーレムの方を見る。すると案の定、ゴーレムも殴り飛ばされていた。

 

 

「あなたの遊び相手は私よ!」

 

 

 そう言ったフランは魔王に突っ込む。フランは地面を強く蹴って急速に接近する。拳を握って振り翳し、魔王を殴ろうとする。

 

 

「小癪な!!」

 

 

 その横からエンシェントカイザーゴーレムがフランを殴り飛ばした………ように見えた。フランはギリギリで上に飛翔することで避け、ゴーレムの顔にあたる部分に突っ込む。タイミングよく殴ることで突っ込んだスピードをそのまま衝撃として伝えて弾き飛ばす。フランは魔王とエンシェントカイザーゴーレムの二対一にも関わらず圧倒していた。 

 

 

「おのれー!!!これならどうだ!!こい!【エンシェントカイザーゴーレム】!!」

 

 

「なっ!?詠唱破棄だと!伝承では魔王は使えなかったはずだ!!」

 

 

 トーパ王国騎士団が目を見開き、驚愕する。魔王は詠唱を行わないでエンシェントカイザーゴーレムを2体召喚したのだ。

 この世界の魔法は詠唱というのが必要となる。だが、長々とした詠唱は敵に隙を突かれやすいのは勿論のこと、その分タイミングを逃す可能性がある。その為、詠唱を省略したり簡易化したりなどして工夫して短くしていた。それでも詠唱破棄は不可能に近かった。詠唱を破棄して魔法を発動させることはできるが、その分威力などの様々な面で弱体化してしまう。よって、詠唱破棄は使わないのが主流だった。

 だが、魔王はそれを覆した。詠唱破棄して性能がそのままのゴーレムを召喚した。だけど詠唱破棄を使ったのは魔王はこれが初だった。つまりどういうことか?

 

 

「魔王も強くなっているのか……」

 

 

 もしくは手に抜いていたかだがそれはあり得ない。なぜなら、伝承では魔王を封印するところまで追い詰めたことがあり、その際に魔王が詠唱破棄をして戦闘していてもおかしくない。そうすれば伝承に残るはずだ。なのに残っていなかった。だったら答えは一つしかない。魔王は戦いの中で強くなっている……それが答えだ。

 

 

「あははははは♪相手(おもちゃ)が増えた♪」

 

 

 魔王がエンシェントカイザーゴーレムを2体召喚したことによって、フラン相手に四対一となった。だが、フランはそれでも魔王を圧倒していた。

 迫り来るゴーレムの攻撃をグレイズなどの技術を活用して避けまくるフラン。一方魔王は中々攻撃が当たらないことに腹を立てていた。また、フランの表情が笑顔から崩していないため、魔王が未だに遊ばれていると思ったこともさらに魔王の怒りを爆発させることに起因した。

 

 

「魔王炎殺拳奥義!!【炎殺黒鳳波】!!」

 

 

 フランは放たれた黒い炎を避けようと上昇する。ある程度上に行ったところで、フランは急降下しながら魔王に突撃する。その際、黒い炎のど真ん中を突っ込んで突撃していた。

 魔王はフランに『炎殺黒鳳波』が直撃したかに見えていた。しかし、黒い炎の真ん中からフランが出てきて、魔王は目を見開いた。『炎殺黒鳳波』はある程度の威力はあった。だがフランには効いていなかった。その証拠に真ん中に突っ込んだフランの体に傷は一つもついていなかった。

 フランは魔王の『炎殺黒鳳波』を見た瞬間に、その威力を理解していた。怒りで威力も高まっているはずだが吸血鬼のフランには無意味で、敢えて突っ込んでも問題ないことを知っていた。故に、フランは突っ込んだのだ。

 フランは炎から出た後、爪で魔王を斬り裂いた。

 

 

「ねえ?今のが奥義なの?」

 

 

 フランは無邪気に笑いながら問う。魔王はフランに斬り裂かれたところを再生していた。

 

 

「ぐっ!」

 

 

「いいこと教えたあげる♪

 

奥義というのは絶対に防げないから奥義というのよ。私にとってあれみたいな技は奥義に入らないわ。それともあれより強い技があるのかしら?」

 

 

 フランは悪意なしで上のことを言っているが、人によっては煽りとも取れる言葉だった。魔王にとってはまさにそれで、さらに魔力を込めて『炎殺黒鳳波』を放とうとしていた。

 

 そもそも、フランは遊び相手として雪や狂った技術者(マッドサイエンティスト)、ゆかや煉などのネクロマンス首脳部含む実力が高い者たちと遊んでいる(一部違うのが混じっているが)。それによりフランの実力が上がるのは自明の理で、また彼らがフランの中の強いという基準となってしまっている。だから彼らと同等、もしくはそれ以上の実力じゃないとフランにとっては弱い存在の分類に入ってしまうのだ。つまり、目の前で戦っている魔王はフランにとって弱い、いわば遊び相手にもならないと認識されてしまっていた。

 

 今のフランは魔王相手に手加減している。それは事前にレミリアに言われていたことだった(第二十八話参照)。フランは魔王の方を見る。魔王は自身に向けて先程よりも魔力が込められていて今までで一番威力が高そうな『炎殺黒鳳波』を放とうとしているところを見るに、もうしばらくは遊べそうだ。

 だが、その後フランはレミリアの方をチラッと見る。レミリアは自身に向けてカメラを連写しているが、体の方はなにやらソワソワとしていた。フランはそんなレミリアの様子を見てあることを察した。

 

 レミリアはフランの戦い(遊び)を見て自分もやりたくなってきていた。彼女にソワソワとしている自覚はないが、横にいる煉から見ても明らかにやりたそうにしていた。

 

 フランはその事を察していた。よって、最後に思いっきり楽しんでから交代しようと動き出した。

 

 

「貴様のお望み通り消し炭にしてやる!!!魔王炎殺拳奥義!!【炎殺黒鳳波】!!!」

 

 

 だが、それでもフランには全く効いていなかった。逆に簡単に腕で振り払われていた。そしてついに、フランが手加減したまま実力の一端を見せる。

 

 

「お姉様が退屈そうにしているからそろそろ終わらせるね♪

 

 

 

 

 

 

 

禁忌【レーヴァテイン】!!」

 

 

 

 

 フランの手に握られた炎の剣が、一直線に魔王を目掛けて振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程のフランの攻撃を受けても魔王はまだ生きていた。否、生かされていた。フランが放った炎の斬撃は魔王から逸れて付近にいたゴーレム2体をコアごと破壊していた。地面には炎の斬撃が通ったとされる焦げ跡が残っていた。それだけで先程の(スペルカード)の威力がわかるだろう。フランが放った炎の剣であるレーヴァテインは北欧神話に出てくる紛れもない神器であり、その威力も頷ける。

 

 

「な、なんなんだ!?あれは!?」

 

 

 トーパ王国騎士団が騒ぎ立てる。先程の威力に動揺しているのだろう。よく見ると、魔王も心なしか冷や汗を流しているように見える。怒り過ぎて逆に冷静になったのだろうか。

 

 

「あ〜!!楽しかった♪後はお願いね、お姉様♪」

 

 

「フラン…ええ、わかったわ。私も楽しむわ」

 

 

 

 そして、フランは下がってレミリアと交代する。フランは煉の横に行き、レミリアは魔王と対峙する。魔王は冷静になった思考でレミリアのことを観察する。フランは脅威だったが、レミリアはどうなのか?

 

 

「さっきの金髪は強かったが、貴様は弱そうだな。さっきみたいに見ていればよかったものを…愚かな」

 

 

 魔王はレミリアを観察した結果、上のような判断をする。だが、実際にはレミリアはフランより力のセーブが上手く、それに伴って実力を隠すのが上手いだけなのだが、それに見事に魔王は引っかかっている。

 

 

「それはどうかしら?私はあの子の姉よ?」

 

 

「ふん、なら貴様は妹に劣る姉なわけだ」

 

 

「なら確かめたらいいじゃない。本当に愚かなのはどちらなのかしらね?」

 

 

「だったらお望み通り確かめてやろう」

 

 

 そうして、魔王とゴーレム、レミリアの二対一の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃のゲート派遣部隊は………

 

 

「吹雪、本国から何かないか?」

 

 

「は、はい!実はトーパ王国にて魔王が復活したと…。後、煉隊長が対応するから問題ないと小野副司令官が…」

 

 

「つまり、『言わなくていい』みたいなことを言われたのか?」

 

 

「はい…」

 

 

 分かりやすくシュンとする吹雪。ゆかはそんな吹雪の頭を撫でてこう言った。

 

 

「煉なら大丈夫だ。それは近くで戦ってきた俺が一番知っている」

 

 

 煉はゆかと同じネクロマンス所属で、古参勢の1人でもある。様々な戦いで一緒に戦ってきたゆかの言葉は説得力が段違いに高い。

 

 

 

 

 

 上の会話から分かる通り、この世界とゲートの向こうの世界は進んでいる時間の速度が違う。明らかに向こうの方が進むのが早い。だが、それはネクロマンス首脳部は織り込み済みだ。ゆかに関しては別世界に行った事がある為に一番よく知っている。

 ゲートで繋がっている以上、こちらにその時間の速度の違いの影響が出ないとは限らない。今は出ていないが、今後とも出ないとは限らない。故に、その対応の為に未来が本国に残って対応している。なぜなら、こういうのは空間系能力者である未来が専門家になり得るからだ。時間は空間に関係しているが故に未来が駆り出されたのだ。

 

 

「まあ、いつでもお茶会できるからいいんだけど…」

 

 

 未来はあんまり気にしていなかった。警戒はしているとのことだが、そういうのは既に対策はうってあるとのことだった。簡単に言えば、ゲートの周りを一時的に隔離して別世界を形成、その世界を中継地とするというものだった。未来はそれを実行して実際にやっていた。だからこそ、呑気に一人お茶会をできるのだ。

 

 

「これは、クワ・トイネ産の紅茶ですか……やはり産地が違うと味わいも風味も変わりますね」

 

 

 未来のお茶会はもう暫く続きそうだった。




ようやく第一話に出てきた空母の設定ができました。よって、この場で海軍兵器一覧を更新したことをお知らせします。


更新内容
・龍驤型航空母艦

対パーパルディア皇国戦にて参加するネクロマンス首脳部は?(大和ゆかは参加確定)

  • 黒岩煉
  • 小野未来
  • 船橋海斗
  • 冬花雪
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