皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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間章③
第三十二話 対ナチス会議


 中央暦 1639年5月23日

 

 

 魔王討伐成功から翌日に本国に帰還してから三日後のことだった。ゲートからゆか率いる派遣部隊が帰還してきたのだ。だが問題はその後で、ゆかから話を聞くと、どうやら向こうの世界の艦娘に似た存在の基地が丸ごと転移してきたとのことだった。その原因は不明で、いきなりゲートが消失したかと思ったら時空が歪み、今に至るらしい。

 

 

「随分と巨大な土産を持ってきたんじゃない?ゆか」

 

 

「いや、あれは土産と言うより転移災害にあったと言う方が正確だと思うんだが…」

 

 

 転移災害とはこの世界に日本が転移した事件と同系統の事件を指す。転移によって別世界に飛ばされるこの現象を日本は正式に災害と認定したのだ。この災害は時空の歪みという前兆が起きるために予防は難しいが、既に起こると分かっている災害に対処するのは簡単だ。よって、この世界に転移した時も事前に警戒レベルを上げる等の対策をすることができた。

 

 

「それでも彼女たちは日本に馴染んでるよ〜。最近だと、観光にも行っているみたい」

 

 

 雪が言う。また上に加えて転移から数日後には、向こうの世界に対する未練が消えたのか距離感も縮めて接している。

 

 

「それは良かった。馴染めていなかったらどうしようかと思った」

 

 

「さすがに冗談でしょう。ゆかなら絶対に馴染むと思っていたはずです」

 

 

「良く分かったな、煉」

 

 

 今ゆかたちがいる場所はネクロマンス本部の会議室で、ネクロマンス首脳部5人が全員集まっていた。そこでまずは魔王討伐の件とゲート奥にあった地球に似た異世界の調査結果の報告から始まった。

 

 

「さて、本題に入ろう。こちらは話が長くなるから煉から頼む」

 

 

「分かりました。魔王復活の件ですが皆さんご存知の通り、無事魔王を討伐することに成功しました。ですが遺言として、古の魔法帝国が近いうちに復活すると言っていました。おそらくですが、これは事実であり早急に彼の国を仮想敵国として対策を取る必要があると推察します」

 

 魔帝は政府主導で調査した時に得た情報で彼の国は危険だと判断がされており、煉の言う通り仮想敵国とするのは全員概ね賛成であった。

 魔帝は世界の敵であり、神々に弓を引いたことで知られている。それができるほどの文明力があることもだ。日本は彼の国の技術レベルがわからない。故に、地球にいた頃の対ナチスと同じ対策を取ることとなった。

 

 その対策とは何か。簡単に言えば常時警戒態勢と軍拡である。軍拡は軍拡と言っても数を増やすのではなく質を上げることを指す。新装備の開発や既存の装備の改装、魔改造を行って相対的な戦力アップを目指す。

 

 

「次は俺から。ゲート奥の世界は地球に良く似た地球型惑星であることを確認した。それと並行して行われた技術調査では技術水準は第二次世界大戦レベルだった。しかし、KAN -SENという艦娘と似た者たちが存在している。先日起きた海上での無差別襲撃は、『セイレーン』と呼ばれる彼女たちの敵と同一勢力であることが分かっている」

 

 

 この報告は皆察していたことだった。既にKAN -SENの存在が急速に国内に広まっている中で、国を率いる立場にあるネクロマンス首脳部が知らないはずがない。

 この後は、向こうの世界で起きたセイレーンとの戦闘記録が発表された。その内容は、向こうの制海権を人類からほぼ全て奪うほどの勢力があったセイレーンを短期間で壊滅に追い込む蹂躙と言っていい内容だった。

 

 まず、派遣艦隊がゲート出口についた時に行ったのは付近のセイレーンの殲滅だった。殲滅後すぐに航宙駆逐艦からの画像から近くに無人島があると分かって、全艦でそこに向かった。到着したら、輸送船から陸軍が陸揚げされて仮拠点を建設した。プレハブだったが、思ったより過ごしやすかったとゆかは記憶していた。

 その翌日からは航宙駆逐艦からの映像を頼りにしながらセイレーンを殲滅していた。地球で照らし合わせると仮拠点の場所はちょうど太平洋のど真ん中にあたり、艦隊は南太平洋から大西洋、インド洋から西太平洋という順でセイレーンを殲滅していた。その時に航宙駆逐艦からある国家の存在が明らかとなった。

 そして、セイレーンが少なくなってきて後少しだという時に重桜と呼ばれる日本と似た国にセイレーンの親玉らしき者がいるとの情報が入った。日本側としては静観するつもりだったが、アズールレーン陣営と重桜と鉄血の陣営であるレッドアクシズ陣営が衝突したため、その戦争に第四陣営として介入した。

 

 介入した後は、一度仮拠点に戻って腰を下ろした。その間に艦娘の川内と無刈、ゆかがアズールレーン基地に潜入して諜報活動をしていた。その潜入が彼女らに対する本格的な接触となった。

 

 アズールレーン基地の諜報活動が終わると、川内(艦)とゆかは2人でレッドアクシズ基地に潜入した。そこで2人は最終決戦で戦ったオロチを目の当たりにした。

 そして、黒いメンタルキューブを同じく潜入していたロイヤルメイド2人から強奪したり、共闘したりしてレッドアクシズから逃げることができた。だが、その逃げた場所である廃墟街でアズールレーンとレッドアクシズが再び衝突した。ゆかはその隙を見て脱出、川内(艦)は救援にきた仲間とともにこの戦闘に介入して、両陣営を蹂躙した。

 

 しばらく経つとアズールレーンとレッドアクシズの間で大規模な海戦が勃発したが、ここで先程出てきたある国家が介入して両陣営を蹂躙した。その時にその国家の艦隊と日本の派遣艦隊が衝突して日本が勝利した。

 

 海戦が終わると、派遣艦隊はアズールレーンと講和した。艦娘たちはこの時にアズールレーン基地を観光していた。

 川内(艦)はレッドアクシズ基地に再び潜入していた。オロチ計画を調べるためにオロチを見ることにしたのだが、加賀(ア)がそのオロチを起動させて海に出た。その時の加賀(ア)を瑞鶴(ア)が目を覚まさせて止めて、オロチもアズールレーンとレッドアクシズ、艦娘の連合艦隊によって轟沈させることに成功した。

 

 しかし、本当の戦いはこれからであった。オロチが復活したかと思ったら軍艦と融合したのだ。それはある国家の仕業だとすぐに分かった。だが、彼の国の艦隊はこちらより数が圧倒的に多く、質は微妙にこちらが勝っている状況はどう見ても絶望的だった。それでも派遣艦隊は彼の国の艦隊を撃破したのだ。その戦いは激戦と言っても過言ではなく、日本側が勝ったのは奇跡と言う他ないだろう。

 

 そうして、ある国家の脅威がなくなり、セイレーンの脅威もなくなったことで派遣艦隊は母国である日本に帰ることとなった。そのため、輸送船に仮拠点の無人島にいる陸軍を乗せてゲートに向かったのだが、肝心のゲートが消失していた。付近を捜索するが見つからず、どうするかと悩み始めた瞬間に時空が歪み、元の世界に戻ってきた。その際にアズールレーン基地とレッドアクシズ基地も一緒に転移していて、KAN -SENとの話し合いの結果、同基地を日本に編入することとなった。

 

 

「以上がゲートの向こうで起こった内容だ」

 

 

「ゆか……もしかして使ってた?能力」

 

 

「よく分かったな。前持って能力を使用して少しでも日本側が勝つようにしたんだ」

 

 

 ゆかが言う使用していた能力とは、【運命(ディスティニー)】のことである。彼は海戦の勝敗の運命を弄って、日本が勝利する運命に近づくようにしたのだ。

 ゆかの能力『幻想(イマジン)』は、幻想の力を操ることができる能力である。上の【運命(ディスティニー)】は元はレミリアの能力だが、それが幻想の力と判断できるため、その能力を完全に模倣して使用することは彼にとって容易い。

 

 

「さて、次のお題に入ろう。ゲートの向こうで衝突した国家、ドイツ第四帝国に対する対策について話し合いたい」

 

 

 先程の話に出てきた『ある国家』とは、皆さんが察していた通りドイツ第四帝国、通称ナチスドイツのことである。彼の国は、ゲート奥の世界で何度も死闘を繰り広げていた。そのいずれも日本が勝利したが、逆にナチスが日本に勝利するのも時間の問題であった。

 

 

「ナチスね~、それはまた凄いの見つかったね~」

 

 

「そうだな。ナチスは向こうの世界を観測できたから侵攻していたと推測すると、この世界もいつナチスに侵攻されるか分からない」

 

 

 そう言うが、もう遅いと一同は思っていた。その理由は、向こうの世界のナチス基地を制圧した時に出てきた資料にゲートに向かう派遣艦隊の写真と日本本土の写真が貼ってあったからだ。それに加えてロデニウス大陸の写真も貼ってあったため、この世界を観測されていると判断したのだ。

 

 

「今は泳がされているってわけだね………」

 

 

「もしくは向こうのアメリカが牽制しているかナチスと戦争しているかどうかだね」

 

 

「少なくとも油断はできないですね……」

 

 

 日本の現状を理解した一同。彼らはいつ攻めてくるか分からないナチスの対策を協議していく。その中で真っ先に出たのは軍拡だった。内容は古の魔法帝国と同様だがそこからさらに変更する。

 

 

「ナチスに対抗するにあたって日本に足りないのは数だ。質はともかく数をどうにかしないと、策をいくら練っても数の暴力で押し潰されるだけだ。よって、海軍としては主力艦隊を2倍に増やすことを提案する」

 

 

「確かに数が足りないのは課題ですね。陸軍としても、少なくとも機甲戦力と師団数の拡大を提案したいです」

 

 

 この課題は日本の長年の課題だった。本土が狭いのに対して守る範囲が広く、また仮想敵国であるナチスは領土が広く、陸海空軍ともに数が圧倒的に上だった。彼の国は欧州大陸全土を領土としていて、その分陸軍の練度は高く、日本軍は辛うじて質で勝っている状況だった。

 

 

「それと本土防衛システムの強化も視野にいれないといけない。あの国のことだ。初手に核の飽和攻撃してきてもおかしくない。前例があるからな」

 

 

 ゆかが言う前例とは、第五次世界大戦から復興したイギリスと欧州大陸全土を領土とするナチスとの戦争で起こった出来事である。当時は海軍力はイギリスの方が上でナチスは制海権が一向に取れなかった。そこでナチスは空軍による事前攻撃を行ったが激しい抵抗にあって断念して、戦線はドーバー海峡を挟んで膠着していた。ナチスはUボートで通商破壊をやっていたが、そんなに意味はなく膠着状態は続いていた。その膠着状態を打破するためにナチスはある策を敢行した。それこそが核の飽和攻撃である。イギリスの迎撃システムは、日本やアメリカほど強力ではなかったもののそれなりのものはあった。しかし、彼の国が10000発を超える核ミサイルを迎撃できるのは困難であり、8割ほど撃墜したものの残りの2割である2000発が迎撃システムによる迎撃網を突破した。その後は対空砲や戦闘機などで迎撃していたが、最終的に約1400発ほどが着弾した。それによりイギリス本土は焦土化した。イギリス国民は地下にいたために助かっていたが、外にいたイギリス軍は壊滅しておりナチスの上陸を防ぐどころか、奥地まで侵攻されていた。その出来事が日本で起きないとは限らない。逆にそれを超えるほどの攻撃に見舞われるだろう。よって、それに対する対策も立てないといけないのだ。

 

 やることが多いがやらざるを得ない。そうゆかは思っていた。

 

 

「ひとまず、まとめるとこれでいいか?」

 

 

 ゆかがそう言って備えつけられているホワイトボードを指した。そこに書いてある内容は以下の通り。

 

・新装備・新兵器の開発

・既存の装備・兵器の改造

・兵器数・兵士の拡充

・本土防衛システムの強化

 

陸軍戦力拡充目標

 

・最低300師団規模の機甲師団(無人人型ロボットによる歩兵の拡充込み)

・新型戦車の研究・開発

 

海軍戦力拡充目標

 

・主力艦隊数を2倍

・無限搭載機構の研究・開発

・新型艦載機の研究・開発

 

空軍戦力拡充目標

 

・総機体数を倍以上

・新型航空機の研究・開発

・無人機の性能アップ・大幅な量産

 

 

 要約すると上のようになる。一つずつ説明しよう。

 

 陸軍の最低300師団規模の拡張については、ナチスは陸軍大国であることからそれの対策として入れられた。ナチスの無人歩兵など全てを含めた陸軍の規模は推測で約1000師団はいるのではとされており、また練度も日本と互角どころかそれ以上の可能性があるのだ。よって、少しでも増やしたいのが陸軍の本音だった。

 

 新型戦車の研究・開発はその名の通りで、現在の主力の39式戦車に代わる新たな戦車を陸軍は必要としていた。それはナチスの工業力が高いことから新型が出るスピードが速い……つまり、一気に日本の戦車が旧式になって蹂躙される可能性があるのだ。

 

 海軍の主力艦隊数2倍もその名の通りだ。現在の日本の主力艦隊数は10個あり、一つの艦隊につき2105隻が配備されている。そのため、戦闘艦だけで合計20420隻が配備されていることになる。しかしそれをさらに増やそうとしているのは、ナチスの工業力が高いところにある。ナチスの仮想敵国はアメリカと日本であり、どれも海を挟んでいる。よって、相応の海軍を必要としていて、その分在籍している艦艇数はどうしても多くなってしまう。このことからナチスは二正面作戦を最初から想定して兵器を量産していた。

 

 

 無限搭載機構は、弾切れをなくして永遠と連続で攻撃することができるようになる機構だ。日本はナチスより数が少ないため弾切れを起こしやすい。それを防ぐためにこの研究が為されている。もしこれが開発されて各艦艇に載せることができれば弾切れしなくなり、補給の必要性がなくなるために長期的な作戦行動がより一段と可能となる。この装置はいわば戦術に革命を起こすジョーカーのようなものなのだ。

 

 新型艦載機の研究・開発はもはや何もいう必要はないだろう。理由は陸軍が新型戦車の研究・開発したいのと同じだ。それだけ日本がナチスを脅威に思っているのだ。

 

 空軍の総機体数2倍も、新型の研究・開発も、無人機の性能アップと大幅な量産も全て同じだ。何か違うことがあるとすれば、無人機の性能アップだ。それは今開発している兵器に関係している。その兵器が開発されて試験もクリアすれば、軍用機の必要性がなくなる可能性がある。それを防ぐために性能アップで必要性を示すのだ。

 

 先程出てきた今開発されている兵器とは二足歩行兵器のことである。このことは国民にも公開されており、将来的なスペックも公開されている。そして、その兵器に最初につけられる名前も決まっていた。その名は『ガンダム』。昔の作品から引用して雪がつけたのだが、たまたま開発されている兵器の見た目もガンダムに酷似しているという偶然があり、それも込みで日本で一時期話題となっていた。

 

 

 

 

 上のような大規模な軍拡は、第五次世界大戦前の西暦2038年以来であった。その時はアメリカを仮想敵国としていたが、現在はナチスを仮想敵国としている。しかし、国が変わっただけでどちらも大国である。よって、この軍拡に対しての反応は、

 

 

「「「異議なし」」」

 

 

 反対0で決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中央暦 1639年5月25日

 

 

 その日、横須賀基地に1人の男性がいた。その男性はスーツを着ていて、これから空母『龍驤』に乗るところだ。

 その男性は船橋海斗。対ナチス会議の2日後である今日は、新たに接触した国家であるフェン王国に向かう予定で、今まさに予定通りで彼の国に向かうところだった。海斗は特別外交官としてではなく、1人の男性としてフェン王国の文化に興味を持っていた。

 

 

(外務省では江戸時代の日本と似ていると言っていたが、それが本当なら煉が目を輝かせそうですね………かくいう私も興味はありますが…)

 

 

 龍驤に乗った海斗は、出航準備をし終わって出航時間まで待機している艦長に視線を向けた。何やらソワソワしていて、落ち着きがない。まさかと思った海斗は声をかけた。

 

 

「艦長、出航まで暇だから話に付き合ってくれませんか?」

 

 

「!?海斗さん!分かりました。私でよければ付き合います」

 

 

「そう、ありがとう。そう言えば妙にソワソワしていたが、何か楽しみなことがあるのですか?」

 

 

「ああ、分かりますか?実はフェン王国の街並みを見るのが楽しみなんです。昔の日本に似た文化であるらしいですからね。時代劇好きな私にとって天国のような場所であります」

 

 

 艦長はこう言っているが、実は同じような人は他の艦艇にも存在していた。今回派遣される艦隊と最初にフェン王国と接触した外交官が乗っている旅客船を護衛する艦隊とは違い、今回派遣される艦隊の方が彼の国の文化に興味を持つ者でほとんど占められているため、一種の遠足のような雰囲気になっていた。

 海斗はため息をついてこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遠足ではないのですが………」

 

 

 その呟きは、誰に聞かれずに空気中に消えていった。

 

 

 

対パーパルディア皇国戦にて参加するネクロマンス首脳部は?(大和ゆかは参加確定)

  • 黒岩煉
  • 小野未来
  • 船橋海斗
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