皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第三十六話 パーパルディア皇国との交渉

 中央暦1639年6月1日

 

 時はアルタラス王国王女が乗っている船の発見前にまで遡る。

 

 

 

 

 その日、海斗は補佐として暇していた未来を連れて、パーパルディア皇国に出向いていた。彼らは空母1隻と駆逐艦5隻のいつもの砲艦外交を行う艦隊に乗っていき、パーパルディア皇国に着くと真っ先に外務局の窓口に向かった。

 

 

「やっぱり駆逐艦だけでも慌てふためいてるね」

 

 

「そりゃそうでしょう。この世界において全長300mを超える巨大な船なんて滅多にないんだから」

 

 

 一方のパーパルディア皇国側は大騒ぎだった。突如として全長300m越えの軍艦がやってきたと思ったら、それらを持っている新興国家から国交交渉を求めてきたのだから。列強第一位の神聖ミリシアル帝国でも300m越えの軍艦などそんなにないのだ。だからこそ、見た目だけのハリボテだという意見が大半を占めていた。

 

 

「お待たせしました。第3外務局長カイオスが対応いたします。どうぞ、こちらへ」

 

 

 そうして中に案内される2人。案内された建物は白をベースとして柱のところどころに彫刻が刻まれている。天井には金の彫刻が施されていてその国の国力が感じられる。

 2人は待合室で待機している。海斗はお気に入りのスーツをピシッと着こなし、未来は海斗以外誰もいないからとこっそりピーナッツを噛んでいた。それを海斗は羨ましそうに見ている。 

 

 

「お待たせしました。局長カイオス様の準備が整いました。どうぞ、こちらへ」

 

 

 窓口の職員であるライタに再び案内される2人。廊下にも彫刻が刻まれていて、2人は物珍しそうに観察していた。

 何度か曲がり、重厚な扉の前に着くとライタはノックする。中から返事が聞こえ、ライタから入る。

 

 

「ここで自己紹介をお願いします」

 

 

 突然のことに驚く2人だが、言われた通り自己紹介をする。

 

 

「日本皇国特別外交官、船橋海斗です」

 

 

「日本皇国海軍副総司令官、小野未来。今回は護衛兼補佐としてきている」

 

 

「わかりました、どうぞお掛けください」

 

 

 まるで面接のようなやり取りをする一同だが、日本皇国側の2人が席に座った瞬間、外交交渉が始まった。

 

 カイオスが日本に対し、何しに来たのか質問をする。カイオスは日本について断片的しか情報を得ていなかった。パーパルディアが支援していたロウリアを簡単に破った新興国、そのような認識でしかなかったのだ。

 

 今回の外交交渉にあたって、パーパルディア側のメンバーのほとんどが権力者で占められていた。その概要は以下の通り。

・第3外務局長

・東部担当部長

・東部島国担当課長

・北東部島国担当係長

・群島担当主任

 

 思ったより豪華なメンバーに2人は「へぇー」と心の中で興味を示す………興味を示すだけだった。

 

 

「はい、我々は不幸行き違いから衝突してしまいました。その関係修復と国交樹立の模索に参りました」

 

 

「なんだと!!不幸な行き違いだぁ!!そっちから監察軍に攻撃を仕掛けといて何事もなかったかのようなその言動!!タダですむと思っているのか!!」

 

 

 東部島国担当課長は大声で怒鳴り散らす。もちろん日本皇国側の2人には怯みもしないし、声でかいな〜ぐらいにしか思っていない。

 

 

「いいえ、先に攻撃してきたのはあなた方であり我々は火の粉を払っただけに過ぎません」

 

 

「栄えある我が皇国軍を火の粉だとぉ!!!!貴様ぁ!!何言っているのか分かっているのか!!」

 

 

「課長、少し静かにして下さい。話が進みません」

 

 

 カイオスが東部島国担当課長を黙らせて座らせる。それでもまだ興奮しているのか課長の目は血走っていた。

 

 

「ふむ、あなた方の目的はわかりました。しかし、関係修復ですか………」

 

 

 カイオスは悩むような仕草を見せる。

 

 

「実際、難しいと言わざるを得ません。それに我が国は貴国のことを知らない。まずは貴国のことについて教えていただきたい。我々と国交を結ぶに値する国なのか、私は知りたいですな」

 

 

「そう言うと思ってペーパーですが資料を持ってきました。どうぞ、ご覧ください」

 

 

 海斗は未来に資料を手渡し配るように促す。未来はめんどくさそうな表情をしながらも配っていた。

 資料には主に日本皇国を紹介する内容が書かれていた。日本皇国の面積、人口を始めとして、日本独自の文化も書かれていた。また、転移国家であることも書かれており中央暦1639年のロデニウス大戦より前に転移してきたと記載されていた。

 一見、それだけだと普通のように思えるがパーパルディア皇国側は違う。彼の国にとってみれば、日本皇国は面積が中規模国家程度なのに対して人口は自国の約9500万人よりも多い約5億7500万人だったりとおかしい国という認識なのだ。普通、このような国が近くにあったら歴史の中で一度は気付くはずであり、それがないのはおかしいのだ。

 

 

「国ごと転移だとぉ!!貴様!!皇国をからかっているのか!!」

 

 

「からかうも何も、事実としか言いようがありませんが…」

 

 

「馬鹿馬鹿しい!!国土ごと転移なんてあるわけない!!」

 

 

「………転移の原因となった時空の歪みが起きた原因はまだ解明されていません。もっとも、仮説だけなら既にたてられる段階にいますが…」

 

 

 海斗はここで一度言葉を切る。そしてもう一枚の紙を出してカイオスに手渡す。その紙はパーパルディア側にとっては綺麗で高品質であり日本では普通の紙だった。この紙には日本の首都である東京の街並みと古都である京都の街並みが描かれていた。

 

 

「これは?」

 

 

「それは海外向けの我が国の観光のパンフレットの一部を抜粋し、我が国の中で人気の観光地の写真を載せていただいた物です。

 ともかく、特使を一度だけでも派遣していただいて直接自国民の目で見ていただければ日本を感じられると思います。また、転移したという真偽も判るでしょう。この紙を参考にどうか検討していただけますか?」

 

 

 海斗はあえて物腰を低くして言う。パーパルディア皇国はプライドが高い国というのを周辺諸国から予め聞いていた。加えて、19世紀頃のイギリスも真っ青な戦力を持っていて、尚且つ植民地主義なこと、故に他国を見下すことも聞いていた。

 パーパルディア側に渡した紙には軍事については書かれていない。それは上のことがそのまま理由になっており、また砲艦外交によってある程度の日本の軍事力や技術力を察することができるだろうと海斗は考えたのだ。

 

 

「フッ、アハハハハハハハハハハ!!!第3文明圏最強であり、世界5列強に名を連ねる我がパーパルディア皇国が文明圏外の蛮族に使節を送るだと!?寝言は寝てから言え!!()()質の高い軍隊は持っているようだがな、貴様らの国が戦ったのは()()()()()()を持った軍だ!!貴様の国程度、本軍の装備と規模であれば簡単に捻り潰せるのだ!!」

 

 

「おい、言い過ぎだ。この会談は皇帝の御意志も入っていることを忘れるな」

 

 

 カイオスはヒートアップした課長を睨み付ける。課長は頭が冷えたのか、素直に着席する。

 海斗はため息を吐きたくなってきた。課長の傲慢さもそうだが、他の人もその節があることを彼は察していた。海斗はチラッと未来の方を見る。彼が何を考えているかはわからない。ただ、物凄く暇そうにしているのだけはわかった。

 

 

「ところで日本の方々よ、貴国には属国はいくつお持ちですか?我が国は文明圏内に5カ国、文明圏外に67カ国、大小の差はあるが計72カ国持っています。いや、最近アルタラス王国が加えられたので73カ国でしたね。それぐらいの属国を持っています。貴国はどのくらいですか?」

 

 

「属国ですか………属国は持っておりません。前世界では保護国はありましたが、今は転移によって消失しています」

 

 

 瞬間、場は笑いに包まれる。笑っていないのは海斗、未来、カイオスだけで他は笑っていた。パーパルディア側の認識では属国の多さ=国力という方程式がムーや神聖ミリシアル帝国などの列強国を例外として存在していた。要は、日本は属国を一つも持たない文明圏外の蛮族の弱小国家がよく列強のパーパルディアと対等に話せるよなということである。

 

 

「こらこら、日本の方々に失礼だぞ。ここは外交交渉の場だ。相手が属国を持っていないからといっても、そんなに笑うものではない」

 

 

 カイオスが皆をたしなめているが、海斗は内心「属国を持つメリットないんだよな」ぐらいにしか思っていなかった。属国、または植民地を持つとそれだけ反乱防止用の軍隊やその土地を維持する金などが増えて、国の負担も増える。そんなわかりやすいデメリットがあるのに、わざわざ属国を持つ意味がわからない。パーパルディアは列強というプライドとかで維持や増長していると思われるが、海斗はそう確信していた。

 

 

「失礼、ところで日本へ皇国からの人員派遣は二ヶ月ほど待っていただきたい。こちらにも色々と内部事情というものがありますので。

 二ヶ月後にまたこちらへお越し下さい」

 

 

 海斗はそれに了承して会談は終了した。未来は海斗に続いて部屋から退出する。

 

 

「カイオス様、よろしかったのですか?皇帝陛下からは「日本に教育を行え」との命令だったはずです。いくら巨大な船で来たからって文明圏外の国ですから所詮見た目だけのハリボテでしょう。ここは遠慮なく皇帝陛下の意志を日本の外交官に伝えた方がよかったかと…」

 

 

「フフフ、別にいいではないか。日本の担当のトップは私だ。私には考えがあってね……まぁ、あまり詮索はするな」

 

 

「はっ!」

 

 

 カイオスは部下を退出させると1人になった部屋である思いに耽る。彼は皇国の中でも一番の改革派だ。上層部の腐敗や属領に圧政を敷くなど今のままでは国が傾くと確信していたのだ。故に改革を行おうとするが、権力で押し潰されるのがオチだ。だからこそ日本を使って権力争いを起こす、それがカイオスの考えだった。

 

 

「日本か……我が期待に応えられるような国力があると良いだがな……まぁ、なかったら蛮族らしく滅ぼされるだけだ」

 

 

 カイオスは不気味な笑みを浮かべて、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ」

 

 

 空母『龍驤』に乗って帰国している最中、何かが切れる音がした。その音は下から聞こえ、その方向に視線を向けると靴紐が切れていた。海斗は屈んで、何故か持っていた予備の靴紐に替えて結ぶ。

 

 

「不吉だね〜」

 

 

 未来が呑気にそんな事を言う。だが、海斗はそれに同意した。

 彼らは空母の飛行甲板に立って船の進行方向の反対側、パーパルディア皇国がある方向を見つめていた。二ヶ月後に彼らはまたここに来る。念の為に連絡員は向こうに残してきた。だが、彼らはある不快感に襲われていた。ずっと続く嫌な予感。その予感はパーパルディア内にいる時ほど強くなっていた。そこで何が起こるのか、現時点での情報では全く分からない。それも嫌な予感に対する不快感を増長させていた。

 

 

「少なくとも、ここまで嫌な予感が続くことはあの時以来だ」

 

 

 それは前世界の第五次世界大戦前の事だった。突如として嫌な予感が日に日に大きくなってきていて、その原因もわからずそのままでいるしかなかった。そうやって放置した結果、第五次世界大戦という形で嫌な予感が的中したのだ。

 海斗はそういう前例がある故に、今感じているこの嫌な予感を危険視していた。パーパルディア内で確実に何かが起きる、そう確信していた。

 

 

「今はゆっくりするしかないんじゃない?せめて今はさ」

 

 

 未来は不意にそんなことを言う。彼はいつの間にか自身の能力で取り出した自室にあったお茶会用のテーブルと椅子でくつろいでいた。片手には紅茶が入ったティーカップがあり、優雅に紅茶の味わいを楽しんでいた。

 海斗はそんな未来の様子に唖然としながら、彼の言うことに納得する。確かにすぐにその予感が当たると限らないし、仮に起きても護衛の駆逐艦がなんとかしてくれる。最悪、未来の能力で転移すれば良い。

 

 

「わかりました。では、ダージリンをいただけますか?」

 

 

「わかった…………ほい、どうぞ」

 

 

 出された紅茶を海斗は口に運ぶ。すると、その紅茶は彼の口に合ったのかすぐにティーカップの中からなくなってしまう。それに気付いた未来は、なくなった海斗のティーカップに新たな紅茶を注ぎ込む。

 

 

「……たまにはこうして紅茶を飲みながらくつろぐのも悪くないですね」

 

 

 海斗の呟きはしっかり未来に聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃の日本皇国内では………

 

 

「司令官!!何か手伝えることはある?」

 

 

「………暇なのか?雷」

 

 

 仕事がひと段落して執務室に備え付けられているソファで寝転んでいたゆかは突然開いた扉のところにいる雷(艦)の方を見る。その後ろには暁(艦)、響(艦)、電(艦)の3人もいて第六駆逐隊全員が揃っていた。

 

 

「雷ちゃんは暇だから司令官さんのところに行くって言ってたのです」

 

 

「電!?」

 

 

 要するに暇で暇で仕方ないからゆかの仕事を手伝って暇を潰そうというのが雷の考えであった。しかし、既にゆかの仕事はひと段落していた。タイミングが悪かったとしか言えないだろう。ゆかの机を見て残っている仕事がほとんどないのを確認した雷は、執務仕事以外で何か残っている仕事はないか尋ねた。

 

 

「残っている仕事はないのかしら、司令官?」

 

 

「………あるとすればナ号計画の進捗達成状況の確認ぐらいだぞ?」

 

 

 ナ号計画。それは前に可決した対ナチス用の大軍拡計画の事である(第三十二話参照)。規模が規模なだけに完遂までには時間がそれなりにかかり、また、同時並行で新たな装備の開発もしなければいけない為に余計に時間がかかる見込みとなっている。

 本来なら機密にあたるこの計画だが、艦娘及びKAN -SENは知っていた。それは一部の艦娘・KAN -SENがこの計画の対象に入っているからだ。というのも、計画の一部である新型艦載機の研究・開発は明石(艦)、明石(ア)、夕張(艦)、夕張(ア)が関わっているし、開発が完了して量産が開始されると使用者の空母勢に搭載する為、どうしても対象に入るのだ。

 

 ちなみに、この新型艦載機の研究・開発は当初はナ号計画前から行われている。遅れているのは主に無駄な装備やら無駄な機能やら付けるからだ。これだけ聞いて誰の仕業が分かっただろう。そう、あの2人(狂った技術者)だ。実は彼らの本職は新型の研究・開発であり、生産や整備はできるからやっているだけである。まぁ、魔改造ができるから本人はそんなの気にしていないらしいが。

 

 

「わかったわ!行ってくるわね!!」

 

 

 雷は仕事があるとわかった瞬間、ぱぁと顔を輝かせて元気に仕事をこなしに行った。置いてかれた第六駆逐隊の3人は唖然とする。そこにゆかは声をかけた。

 

 

「君らも暇なのか?」

 

 

「なのです」

 

 

「ハラショー」

 

 

「わ、私は暇じゃないわ」

 

 

 2人が頷くが、暁(艦)は見栄を張っているのかゆかの疑問を否定する。だがそれはいつものことなので、いつも通りに会話を進める。

 

 

「分かった。じゃあ、2人でゲームでもするか」

 

 

「やったのです!!司令官さんとゲームなのです!」

 

 

「ハラショー」

 

 

「………わ、私も!」

 

 

 2人がはしゃいでいる中、蚊帳の外の暁(艦)は耐えられなかったのか自身も参加を表明する。それに対し「暇ではないのではなかったのか」とゆかが問いかけると、暁(艦)は顔を赤くして「ひ、暇よ!」と修正した。

 そうして4人はゲームで遊ぶのだが、戻ってきた雷に羨ましがられたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 一方、別の場所ではある特徴的な音が響き渡っていた。何かを叩き込むような、カン、カンという音が響き渡っていた。だが、それは鉄の音ではなく木の音だった。

 

 

「腕が上がってきてますね。さすがというところでしょうか」

 

 

「あなたにそう言われるとは光栄だ」

 

 

 そう言い合うのは煉と高雄(ア)だ。何かを叩き込むような音とは木刀をぶつけ合う音だったのだ。彼らは煉の道場で瑞鶴の観戦のもと、仕合をしていた。

 煉と高雄(ア)と瑞鶴(ア)は、顔を合わせてから戦闘で刀を使うという共通点で気が合い、時々このような形で仕合をする。いつもは煉が勝っているが、高雄(ア)と瑞鶴(ア)が仕合をすると互角の展開になる。今回は煉と高雄(ア)が仕合をした。

 

 

「次は瑞鶴ですよ。準備はできてますか?」

 

 

「できています」

 

 

 瑞鶴(ア)は木刀を構える。対する煉は木刀を下に構える。

 

 

「………始め!!!」

 

 

 高雄(ア)の合図と同時に両者はぶつかり合った。

 まずは瑞鶴(ア)が上から斬り下ろす。それを煉が防ぐと、すぐさま煉の横腹目掛けて横薙ぎに振るう。それも煉は防ぐ。そうして鍔迫り合いになり、煉は瑞鶴(ア)を弾く。弾かれた瑞鶴(ア)は大きな隙を煉に晒す。

 

 

「まずっ!」

 

 

「はぁ!!」

 

 

 煉の一撃を間一髪で防ぐ瑞鶴(ア)。そこから彼女は防戦一方となった。容赦なく攻め立てる煉に瑞鶴(ア)は反撃ができないでいた。

 

 

「くっ、こ、の!!」

 

 

 瑞鶴(ア)はKAN -SEN特有の常人より身体能力が高いことを利用して無理矢理攻勢に出る。煉の攻撃を防ぐと同時に力尽くで弾き飛ばしたのだ。煉は空中で体勢を立て直して着地すると、すぐさま防御の構えをとる。

 

 

「はあ!!!」

 

 

「甘いです!!」

 

 

 瑞鶴(ア)が斬りかかると、煉はそれを受け流してカウンターで一撃を瑞鶴(ア)の脇腹に入れる………寸前で止める。いわゆる寸止めだ。

 

 

「止め!!!」

 

 

 高雄(ア)の声が響いた。2人は構えを解き、互いを見つめて握手する。彼らの表情はやり切った顔をしていた。肩で息をし、汗が滴る。

 

 

「はぁ、はぁ、ふぅ。高雄(ア)、もう一回やりますよ」

 

 

「臨むところだ」

 

 

「次は私が審判ね………それじゃあ、始め!!!」

 

 

 息を整えた煉と木刀をしっかり構えた高雄(ア)の仕合が始まった。

 

 この仕合も煉が勝利した。その後、煉は再び瑞鶴(ア)と仕合をする。彼らの仕合はまだまだ続きそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 日本皇国 紅魔館

 

 

 紅魔館地下には誰も近づかない場所がある。近づくとすれば、それはここの住人ぐらいだろう。フランの部屋の扉がある場所の廊下をさらに奥に進んだ場所に大きな鉄の扉がある。その扉をくぐると件の誰も近づかない場所に着く。

 

 今日もその扉に向かう人物がいた。その人物の名は十六夜咲夜。完全で瀟洒なメイドという二つ名がある女性だ。彼女は、注射器が入ったケースと料理が盛り付けられている皿をカートで運んでいた。

 

 

「ご気分はいかがですか?」

 

 

「………………」

 

 

 扉を開けてあたかも誰かがいるように聞く。返事は聞こえない。咲夜はさらに奥に進んでいく。

 

 鉄の扉を越えると景色が様変わりした。紅の壁は変わらないが、そこには牢屋が広がっていた。その牢屋の一部屋に、ある人物がボロボロの服を着て目のハイライトを失った状態で閉じ込められていた。

 

 

()()()様、こんにちは。いつもの採血をしに来ました」

 

 

「…………………」

 

 

 もはや生きる屍と化したアデムの腕に注射器を刺して採血する咲夜。その隣の牢屋にもボロボロの服を着ている人物がいた。

 

 

()()()()()様、こんにちは。いつもの採血をしに来ました」

 

 

 同じセリフを言って同じように採血する咲夜。彼女は採れた血を専用の瓶に移し替えるとまた同じ様に採血する。それを合計3セット繰り返す。

 アデムとパンドール。彼らはロデニウス戦争のギム虐殺を行った人物として捕らえられて、レミリアとフランの食糧庫として生かされている人物だ。最初は抵抗していたが、抵抗する度に力尽くで血を採られる。時にはレミリアやフランが直接来て、直接血を吸われることもある。そうしているうちに段々と彼らの精神が壊れていき、最終的に今のような生きる屍となった。

 

 

「他の方の血も採りましょうか」

 

 

 ここには複数の死刑囚がいる。そのほとんどが日本人だが一部外国人がいる。その一部の中に彼ら2人が入っていた。そしてその誰もが同じように生きる屍となっている。

 

 

「それではまた」

 

 

 採血が終わった咲夜は鉄の扉を閉める。ギィと気味悪い音を立てながら扉が閉まっていく。

 

 

「料理を完食してくれましたし、まだ大丈夫そうですね」

 

 

 それは血を採った直後のことである。精神が壊れて生きる屍となった彼らはただただ命令を聞く機械みたいな人間となっていた。そんな人間に料理を出して食べるように命令する。その料理は血を補充するための料理であり、彼らは何の疑問を抱かないまま食べる。そうして完食した料理が乗っていた皿を咲夜はカートで運んでいた。

 

 

「今日のレミリア様とフラン様の夕飯はどうしましょうか」

 

 

 咲夜はそんなことを考えながら、鉄の扉から離れていった。

 

 

対パーパルディア皇国戦にて参加するネクロマンス首脳部は?(大和ゆかは参加確定)

  • 黒岩煉
  • 小野未来
  • 船橋海斗
  • 冬花雪
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