皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第四十二話 ニシノミヤコ攻略戦 後編

「「「「「聞いて驚け!!!」」」」」

 

 

「熱量全開!!燃える筋肉!!マッスルレッド!!」

 

「汗も滴るいいマッチョ!!マッスルブルー!!」

 

「敵すら惚れる肉体美!!マッスルイエロー!!」

 

「全てを弾く鋼の肉体!!マッスルグリーン!!」

 

「ハーレムマッスル!!マッスルピンク!!」

 

 

「「「「「筋肉は全てを解決する!!!」」」」」

 

「筋肉戦隊!」

 

 

 

 

 

「「「「「キタエトルンジャー!!!」」」」」ドガーーーーーーーン!!!

 

 

「レディー、マッスル!!」

 

 

「「「「ムキー!!」」」」

 

 

 

 場はカオスになった。

 

 

 

 

 

 

 名乗った瞬間に彼らの背後で謎の爆発が起こる。一見、ふざけてるかのように見える5人の様子に1人の便衣兵がブチ切れて手に持っているマスケット銃を発砲する。放たれた銃弾はマッスルレッドの筋肉に寸分なく命中すると、そのまま弾かれた。

 

 

「はっ?」

 

 

 銃弾を放った本人がそういう反応するのは仕方ないだろう。普通なら筋肉だけで銃弾は弾けない。彼らがおかしいだけである。

 

 銃弾が弾かれ、地面に落ちたタイミングでキタエトルンジャー全員が動き出した。それぞれがバラバラに動き出し、次々と便衣兵を見つけ出して始末していく。

 

 

「な、なぜわかるッ!!」

 

 

 殺される前にそう叫んだ便衣兵の1人。そんな彼の問いにマッスルブルーは答えた。

 

 

「筋肉レーダーがあるからさ」

 

 

 マッスルブルーが言った筋肉レーダーとは、自身が指定した対象が自分を中心に半径15km以内にあると、大胸筋がピクピク動くことをいう。今回の場合は対象を便衣兵とし、近くにいる場合は大胸筋がピクピク動き、目と鼻の先にいる場合は筋トレしたくて堪らなくなる。そうして次々に見つけていたのだ。

 

 

「で、出鱈目だ………グハッ」

 

 

 彼らに常識は通用しない。いくらマスケット銃で攻撃しても全ての銃弾を弾き、刃物で攻撃しても擦り傷一つ負わすことすらできなかった。

 

 

 

 

 

 キタエトルンジャーが暴れているところを遠くから見ていた守備隊隊長のワークは目の前の光景に唖然としていた。思わず手に持っているマスケット銃を落とすところだった。

 彼がキタエトルンジャーを見た時、最初はなんか変人がいるという認識だった。ところが、その認識はすぐに変えざるを得なかった。いきなりマントを脱ぎ捨てたかと思うと、中はパンツ一丁の鍛えられた肉体をした男性たちがいたのだ。その人らは奇妙な名乗りをし、それに合わせて無駄にキレのあるポーズを取った。そんな変人集団は「キタエトルンジャー」と名乗った。名乗った瞬間に彼らの背後で爆発があったが、それは無視することにした。

 それだけならまだいい。問題なのは彼らに攻撃が通じないことだ。

 

 

(おかしいだろ!!なんで銃弾を弾いているんだ!!)

 

 

 彼は内心そう突っ込んでいた。彼にとって銃弾が効かず、刃物も効かない相手は初めてだった。また、潜んでいた便衣兵も次々と見つかってしまい、抵抗できずやられてしまう。

 彼の手は震えていた。キタエトルンジャーに恐怖したのか、冷や汗も流れていた。

 

 

「………降伏でいいですね?」

 

 

「あ、あぁ」

 

 

 徹底抗戦派の幹部の了承が得られたワークは部下に指示を出してさかさまにした隊旗を左旋回で振らせた。何をやっているのかと思うかもしれないが、これがパーパルディア流の降伏の合図であった。

 

 だが、彼らにとって不幸だったのは日本にとってそれは降伏の合図になり得ないということであった。日本側は既にレミールに降伏の合図を提示していた。宣戦布告の文書に白旗以外の降伏は認めませんと書いてあるのだ。それをレミールは彼らに伝達してなかった。それによって日本とパーパルディアとの間で認識の齟齬が起きていた。

 

 

「レッド、あれは何をしてるんだ?」

 

 

「普通に考えれば降伏だろうが、上の方で白旗以外認めないと向こうに伝えてあるはずだ。それにこの世界は前世界の常識が通じない。あの行為が大規模魔法の準備の可能性があるわけだ」

 

 

「なら殲滅ですか?」

 

 

「だな。

 

 

みんな!!必殺技(筋トレ)だ!!」

 

 

「「「「おう!!!」」」」

 

 

 白旗以外の降伏を認めない日本軍(キタエトルンジャー)は攻撃を再開した。

 

 まずレッドが前に出て近くにいる便衣兵の任務を放棄したパーパルディア兵がいる中心に立つ。そこでレッドはスクワットをやり始めた。戦場で何をやっているのかと思うかもしれないが、よく思い出してほしい。()()()()()()()()()()()()()()だと。

 レッドはスクワットを目に見えない速度で行っていた。そしてみるみるうちに周りの温度が上がり、レッドの体が炎に包まれた。

 

 

「いくぜ!!【バーニングスクワット】!!」

 

 

 レッドは体が炎に包まれた状態でスクワットしながら敵に突撃して、敵を燃やした。彼は目に見えないほどの速度でスクワットしているため、パーパルディア兵からは残像でずっとスクワットする前の構えのまま迫ってくるように見える。しかも炎に包まれながらだ。これを見て恐怖しないパーパルディア兵はいなかった。ほとんどのパーパルディア兵がこの場から逃げ出す。だが、それをキタエトルンジャーは逃さない。

 

 

「逃しはしない!【ダンベルストレート】!!!」

 

 

 ピンクが思いっきり独特のデザイン(ピンクの派手な筋肉ムキムキの女性キャラ)が描かれているダンベルをヨーヨーのようにぶん回しながら敵を薙ぎ倒していく。ピンクの手前にいる敵を飛ばすと、逃げようとしているパーパルディア兵をドミノ倒しのように綺麗に巻き込んでいく。

 

 

「な、降伏したのに!?」

 

 

「や、やっぱり徹底抗戦だ!!」

 

 

「徹底抗戦はしない!!もしかしたら向こう独自の降伏の合図があるかもしれない」

 

 

「ワーク様!!降伏は無意味です!!徹底抗戦しかありません!!」

 

 

 守備隊の司令室の近くでそう議論している頃、事態はさらに進んでいく。

 

 

「いくぜ!【ローラードライブ】!!」

 

 

 イエローは、ローラーを二台使って四つん這いになりながら、手と足でローラーを掴んで転がしていく。ミノムシみたいな動きをしながらあり得ない速度で敵に突っ込んで轢き飛ばしていく。

 

 

「なんだぁ!!そのキモい動きはー!!!」

 

 

「キモいとはなんだ!!この動きは腹筋を鍛えられるんだぞ!!」

 

 

 イエローが怒りながら敵を轢き飛ばしていくのを横目に、グリーンは敵を蹴り飛ばしていく。

 

 

「くらえ!!【人間サッカー】!!」

 

 

 技名が恐ろしい名前になっているが、その攻撃力は本物で、蹴り飛ばされたパーパルディア兵が地面に全身強打したり壁に全身強打したりと一撃K.Oの攻撃を彼はしていた。さらに本人は至って真面目だが、周りから見ればふざけてるようにしか見えない攻撃もしてくる。

 

 

「レッド!!パス!!」

 

 

「ナイスだ!グリーン!!【ファイアトルネード】!!!」

 

 

 炎に包まれているレッドの力を借りて、上空に蹴り飛ばしたパーパルディア兵を炎で包みながら地面に蹴り落とす。

 その横を高速で通り過ぎて、手に持っている瓶を投げつけている者がいた。

 

 

「全員プロテインになるがいい!!」

 

 

 ブルーである。何やら変なことを言っているが、パーパルディア兵はそれに突っ込む暇なくどんどんやられていく。

 彼が投げているのはラベルにプロテインと書かれた瓶である。だが、プロテインは人間に害はない。あるとすれば投げて割れた瓶の破片ぐらいである。それなのに何故やられているのか。

 

 

「熱い!!熱い!!」

 

 

「誰かぁ!!助けてぇ!!」

 

 

 パーパルディア兵が燃えているのである。火がついた瓶を投げつけて割って、中身の液体がパーパルディア兵にかかることによって延焼する。さらに人間の脂でも燃える。しかし、プロテインは燃えない。なら何故、パーパルディア兵は燃えているのか。

 

 

「投げまくるけどいいよね?答えは聞いてない!!【プロテインシャワー】!!」

 

 

 答えはは簡単だ。瓶の中身がプロテインではないのだ。なら中身はなんなのか。この答えも簡単だ。瓶を投げて相手を燃やすなんて代物は一つしかなく、その中身も一つしかない。しかも、瓶の外観はラベルが違うだけで某赤軍の物と似ているという。

 ラベルがプロテインというややこしさに突っ込む者は誰もいなかった。むしろ、パーパルディア兵はプロテインが何なのかをしらない。故に、投げられている物=プロテインと認識していた。一般にはプロテイン=タンパク質であるが、パーパルディアの技術レベルから推測するとプロテインという言語自体はありそうだが、それだけである。

 

 ちなみに史実では1838年に出された論文で用語として出てきたプロティオス(proteios)が語源であるが、実際に食品として利用され始めたのは1950年代以降からである。

 

 

 

 

 

 

 

 キタエトルンジャーがニシノミヤコを攻撃し始めた時から約1時間ほど経った。さながら時代劇のような街並みは、今や血が壁や地面についていて、パーパルディア兵の死体があちらこちらに転がっていた。その中にフェン王国民は1人もいないが、街からフェン王国民は消えていた。

 

 今もキタエトルンジャーは暴れている。5人が1人ごとに分かれているため各個撃破のチャンスであるのだが、個人の力が強すぎるが故に起こっているのは蹂躙だった。

 それを見ていた守備隊司令室付近にいるワークを始めとした幹部は未だに降伏か徹底抗戦かの議論をしていた。

 

 

「我々が降伏してやっても向こうは攻撃してきたのだぞ!!ならば徹底抗戦しかあるまい!!」

 

 

「徹底抗戦してさらに戦死者を出すつもりか!!降伏方法がこっちと向こうが違う可能性があるって言ってんだろ!!」

 

 

 そんな不毛な争いに嫌気がさしたのか、ワークはこっそりと外に出て1人でキタエトルンジャーの目の前に歩いて行く。

 3分ほど歩くと、キタエトルンジャーのレッドの姿をはっきりと視認することができた。髪は赤く、顔は童顔のイケメンだった。内心、それにムカつきつつもワークは大声でレッドに聞こえるように叫んだ。

 

 

「キタエトルンジャーの方々!!私はニシノミヤコ守備隊隊長のワークである!!この時を持って我々守備隊は貴国に降伏する!!しかし我々には貴国の降伏方法がわからない!!どうか教えてくれないだろうか!!」

 

 

 ワークのその声は口論をしていた幹部の耳にも入っていた。彼らは口論をやめ、ワークに非難するような視線を向けた。何勝手なことをやっているのかと。だが、ワークは守備隊隊長であり、守備隊の司令でもある。つまり、彼がやったことには守備隊の誰も逆らえないのだ。

 

 

「うむ。このような死地に部下たちの命を救うために1人でくるとは感服した!!降伏する際は白旗を掲げるのだ!!白旗になっているのなら形状は問わない!!」

 

 

「分かった!!すぐに作らせる!!」

 

 

 ワークは後ろを振り向き、彼を見つめる幹部と目を合わせる。幹部は瞬時に目を逸らすが、彼の目を見て、何かの意図に気付いたのか行動を開始した。

 幹部はワークが降伏の機会を作ってくれたことに感謝しながら作業していた。この頃になると口論は起こらなくなり、いち早く降伏してあの変人集団(キタエトルンジャー)から逃れたいの一心で白旗を作成していた。

 

 

「できました!!」

 

 

「よし!早く掲げろ!!」

 

 

 船のマストの残骸を利用して急ピッチで作った拙い白旗だが、効果は充分だった。レッドが他4人に戦闘停止の旨を伝えて、ようやく戦闘が停止した。

 

 

 この時を持って、フェン王国に侵攻した主要なパーパルディア軍は全て降伏したのだった。

 

 

 

 

 

 

「そう。終わったんだね」

 

 

「はい。今はキタエトルンジャーが武装解除させています。………未来様、どこに?」

 

 

「ちょっとね。向こうの指揮官の顔でも拝んでやろうと思って」

 

 

 未来は黒い笑みを浮かべて、38式指揮兼支援装甲車から降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やめろー!!!」

 

 

「俺のそばに近寄るなー!!!」

 

 

「…………何これ?」

 

 

 ニシノミヤコ中心部に着いた未来を出迎えたのは、武装解除させようと近づいたキタエトルンジャーとそれから全力で逃走するパーパルディア兵という光景だった。キタエトルンジャーはなんで逃げるのかわからないといった顔でどんどんパーパルディア兵を追いかけている。

 

 

(鬼ごっこみたいになってる理由は察するけど、あれじゃあ追いつかれるんじゃ……)

 

 

 パーパルディア兵は顔を青くしながら必死に逃げていた。実は彼らはキタエトルンジャーの戦いぶりにトラウマを覚えていた。まぁ、目の前から人が飛んできたり、上から炎に包まれた味方が降ってきたり、キモい動きをしたキタエトルンジャーがすぐ横を通り過ぎるなどしたらトラウマになるのは仕方ない。しかし、未来はそれを知らない。だが、知らないが察することはできる。

 未来はため息を吐くと、指を鳴らした。

 

 

能力発動(アビリティドライブ)

固定(フィクス)】」

 

 

 この場にいる全員の身動きが取れなくなった。突然のことにキタエトルンジャーは驚きつつも、パーパルディア兵みたいに取り乱してはいなかった。

 

 

「何をやっている?未来」

 

 

「何って、今の君たちに敵の武装解除を任せてはおけないからだよ」パチン

 

 

「何が任せておk」

 

 

 パーパルディア兵は突然キタエトルンジャーが消えたことに驚いていた。体が動かなくなったりキタエトルンジャーが消えたりして、パーパルディア兵は日本のことを見た事のない魔法を使う者が多い魔境と認識する者がこの件で増えていた。それは全くの誤解だが、第一印象がキタエトルンジャーと未来の時点でお察しである。

 

 未来は部下にパーパルディア兵を武装解除させるよう命令した。その後、彼はワークのところに真っ直ぐ近づいた。何をするのかとワークは身構えた。

 

 

「君が守備隊の司令だね?」

 

 

「ああ」

 

 

「………うん、いい目をしている。良かったよ」

 

 

「何がだ?」

 

 

「ううん、こっちの話」

 

 

 未来はワークを数秒間ジッと見つめたと思ったらいきなり褒めた。ワークはいきなり褒められて戸惑ったが、それを面に出さないようにした。

 未来は何かに満足したのか、その場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 フェン王国の戦いと後に呼ばれるこの戦いは日本の圧倒的勝利で幕を閉じた。パーパルディア側の損害は多大なのに対して、日本側は全くなかった。強いて言うなら、キタエトルンジャーを見て体調不良を起こした人が数名出て運ばれていったことくらいだ。

 この集計はゆかの手にも届いていた。彼は今、アルタラス王国解放のための下準備に取り掛かっており、その集計をまだ見ていなかった。だが、代理で執務作業をしている八戸光はその集計を見ており、ゆかに伝わるのも時間の問題と言えた。

 

 

 

 フェン王国の戦いが終結したのを確認した海斗はマイラスとラッサンのもとにいた。彼らが観戦武官として日本に来たことをいいことに、日本側はムーに技術を輸出しようとしていた。そのために海斗が派遣され、マイラスとラッサンは慣れない外交交渉に挑むこととなった。

 

 

「観戦武官として来ていただいたのにこのようなことになってしまい申し訳ありません」

 

 

「い、いえ、こちらとしても我が国に貴国の先進的な技術を輸出していただけるとのことで……」

 

 

「そう言ってもらえるとこちらとしても幸いです」

 

 

 海斗は空間倉庫から一枚の紙を2人に渡す。その紙には先日、ネクロマンス首脳部で行った会議で決定したことが書かれていた。

 

 

「本題に参りましょう。貴国は隣国、グラ・バルカス帝国を警戒している……そうですね?」

 

 

「はい」

 

 

「我が国が彼の国に放った諜報員からは第二文明圏全体に宣戦布告したという情報が入りました。それをまず貴方方に伝えておきます」

 

 

 海斗が放った言葉は2人にとって衝撃だった。第二文明圏全体にということは覇権主義の国家の可能性が高くなり、またムーも巻き込まれる可能性が高くなるということだ。しかもグラ・バルカス帝国の技術レベルはムーより確実に上であり、戦争となったら全く勝てないのは自明の理だった。

 

 

「もしかして、貴国もグラ・バルカス帝国を脅威にみているのですか?」

 

 

「その通りです。なのでムーに輸出する技術レベルも大幅に上がる見込みです。内容はその紙に書いてあります。もしよろしければ実物もありますから、間近で見ることができますよ」

 

 

「本当ですか!?」

 

 

 こうして、パーパルディア戦の裏でムーに技術が輸出されようとしていた。

 

 

 

 




「「「「「聞いて驚け!!!」」」」」


「熱量全開!!燃える筋肉!!マッスルレッド!!」

「汗も滴るいいマッチョ!!マッスルブルー!!」

「敵すら惚れる肉体美!!マッスルイエロー!!」

「全てを弾く鋼の肉体!!マッスルグリーン!!」

「ハーレムマッスル!!マッスルピンク!!」


「「「「「筋肉は全てを解決する!!!」」」」」

「筋肉戦隊!」





「「「「「キタエトルンジャー!!!」」」」」ドガーーーーーーーン!!!


「レディー、マッスル!!」


「「「「ムキー!!」」」」


…………どうしてこうなった?
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