中央暦1639年7月15日 パーパルディア皇国 属領アルタラス
「くそ!!胸糞悪いものを見た!!!」
そう吐き捨てるのはライアル。旧アルタラス王国第一騎士師団長である。彼は現在、反乱軍である地下組織の指揮をする立場の人物であった。
彼は私服で外に出ることがある。その時によく目にするのが、若い娘がパーパルディア統治機構の職員に連れて行かれるところだった。彼女たちは抵抗するのだが、反乱分子の話を持ち出して黙らせる。親も抵抗するが、目の前で殺されることもあった。そして、連れていかれた若い娘たちは統治機構の職員らに散々弄ばれて、最終的には殺される。だから、今まで連れ去られた若い娘たちは全員帰ってきていない。
彼は正義感の強い人物だった。だが、同時に軍を指揮する者でもある。彼が統治機構の職員を止めに向かっても良いが、そうすると間違いなく殺されるだろう。そうなれば、軍を指揮する者がいなくなってしまう。
「くそ!!くそ!!くそ!!」
自分の無力さに打ちのめされながら、地下組織の拠点に戻ってきたライアル。彼は近くの壁に静かに拳を打ちつける。何回も、何回もだ。それでも自身の無力さは晴れなかった。
「どうしました?」
「今日も統治機構に連れていかれる娘を見た」
今日
パーパルディアの統治機構が設立された初日からこのような状況だった。職員は金が足りなくなると金持ちそうな家に押し入って私利私欲を働く。暇を見つけると若い娘を連れていって犯し、飽きると殺す。
「お前たちの家族は反乱分子かもしれない」
その言葉はアルタラス民にとって効果的だった。一切抵抗できず、職員の望むがままになっていた。
その言葉は職員の蛮行の正当化の手助けにもなっていた。なぜなら誰だって命は惜しいから。特に家族を殺されたくないという思いによって、抵抗が自然とできなくなっていた。
「いつ日本軍が来るんだろうか?こっちは我慢の限界だ」
ライアルがボソッと放ったその一言は全員の心の中を代弁していた。地下組織の者たちは少なからず統治機構の職員の蛮行を目撃している。その度に心の中にパーパルディアへの怒りが蓄積していくのだ。そしてそれは、コップという心に決められた量しか入れられない水という怒りがいつか溢れ、怒りは爆発する。それを皆は必死に耐えていた。
「それならいい報告ができますよ」
部下はある魔信を傍受していた。それはロデニウス連邦から発せられた魔信であり、誰も理解できない魔信だった。
『長い夜でも必ず朝は来る。日は必ず東から昇る。
苦しみの期間が長いほど日の輝きはより増していく。
日が昇る知らせの渡り鳥は良運を運び、タスの花は咲き誇らん』
それは一見すると詩のようであった。しかし、その魔信を真の意味で理解する者たちがいた。
「一週間後だ!!一週間後以降いつでも動けるように備えろ!!」
アルタラス王国民である。実はこの詩は、アルタラス王国で救国の英雄として扱われている者が詠んだ詩を多少もじっている詩だった。この詩の意味を説明すると、冒頭の「長い夜でも必ず朝は来る。日は必ず東から昇る」は、パーパルディアに支配されていてもいつか終わりの時を迎え、それは東からやってくるという意味になる。日は日本を指し、この場合は日本によってアルタラス王国は解放されるという解釈になる。最後の「日が昇る知らせの渡り鳥は良運を運び、タスの花は咲き誇らん」は、日本の反撃は一週間後という意味になる。タスとはアルタラスしか生息していない花で、つぼみから一週間で花が咲くことから、反撃は一週間後という正確な時間を推測できた。しかも、「渡り鳥」という言葉は日本軍の航空戦力だと推測することもできる。つまり、この文を解読すると、「パーパルディアの支配は日本の手によって終焉を迎える。日本の攻撃は一週間後に航空戦力による攻撃から行われる」ということになる。
ちなみに、この文を考えたのはルミエスとリルセイドといったアルタラス側とゆかと海斗といったネクロマンス首脳部側の4人である。その際、雪が考えたいと言って暴れかけたのはご愛嬌である。
「頼むぞ……」
ライアルは最後の希望となっている日本に向けてそう呟いた。
中央暦1639年7月22日 アルタラス王国沖上空
アルタラスにいる地下組織が魔信を傍受・解読してから一週間が経った。その間、ここは平和だった。敵襲など起こりうるはずもなく、ただ哨戒のワイバーンロードが飛んでいるだけだった。付近には複数の戦列艦が停泊しており、アルタラス王国支配の象徴の一つでもあった。
だが、そのワイバーンロードがいきなり肉塊となって地に落ちた。それに連鎖するように光の槍によって次々と落ちていく。
この時をもって、パーパルディア皇国の悪夢の序章が始まった。
「第一次航空隊、発艦!!!」
第一連合艦隊航空部隊旗艦、航空戦艦『赤城』を経由して発せられた総旗艦、戦艦『大和』からの命令により次々と震電を発艦させる。上空には、既に上がった震電と本土から飛んできたであろう『富嶽』の姿があった。富嶽とは日本が誇る超重爆撃機で、最低でも地球1周半以上の航続距離と大量の爆弾を詰め込むことができる変態機だ。そんな機体が対地装備をした震電と並んで飛行していく。
「おい、お前ら!!今夜は焼き鳥だ!!撃てぇ!!」
「「「「「うぉーーーーーーーー!!!」」」」」
大量の震電が隊長機の声を合図に一斉に空対空ミサイルを放つ。発艦した第一次航空隊の数は1000機。それらが発射した空対空ミサイルはなんと25×1000で25000発。統治機構が哨戒として飛ばしているワイバーンロードが15騎、基地に待機しているのが30騎以上であるが、それを考えても明らかなオーバーキルである。
「な、何が起きた!?」
そう驚いているのは戦列艦5隻を率いて哨戒中であった艦長のダーズである。彼は悠々と飛んでいるワイバーンロードの反応が魔力探知レーダーから消えたと報告があり、それと同時に肉塊になったワイバーンロードが重力に従い落下していくのを目撃したのだ。しかも、光の槍が突然現れてワイバーンロードを撃墜していく不可思議な現象によって制空権が一瞬にして喪失したのも彼が驚く一つの要因だろう。
いきなり光の槍が現れるのは、ステルスモードによる効果である。ステルスモードとは、姿と音も熱の反応も全て消し、敵から見つからないようにするというシステムである。このシステムは、前世界では可視化の結界など簡単に見破れる方法があったために簡単に見破られていた。だが、この世界ではそういうのが全くない。故に航空機が見えないため、どこから攻撃されているかが敵にはわからないのだ。
上空のワイバーンロードを一掃した第一次航空隊は、対地装備のまま戦列艦5隻に空対地ミサイルを放つ。その数、一隻あたり25発。もはや跡形も残すつもりないんじゃないかと言わんばかりの攻撃によって、戦列艦5隻は一瞬で轟沈した。
「目標、ル・ブリアス近郊の軍事基地。爆撃開始!!」
高度15,000m以上の高さで飛行する富嶽は、爆弾槽を開いて誘導爆弾を大量に降らせる。アルタラス王国内にあるパーパルディアの軍事基地はル・ブリアスの付近に複数あり、その全てに同様の攻撃を同時に行う。パーパルディア軍は見えない敵に反撃しようと生き残ったワイバーンロードを飛び立たせようとするが、それを事前に察知した護衛でもある震電によって空対地ミサイル10発が直撃し、ワイバーンロードごと天国へ飛び立っていった。
「いたぞ!!パ皇艦隊が出航しようとしている!!」
「了解!!攻撃開始!!」
アルタラス王国上空に差し掛かった瞬間に複数方向に別れた第一次航空隊のうちの250機は、軍港に停泊していた戦列艦30隻に向けて空対地ミサイルを放つ。もちろん、パーパルディア軍に迎撃する術はなく瞬く間に轟沈する。
この一連の攻撃だけで、パーパルディア軍はアルタラス王国の制空権・制海権の両方を喪失した。また、富嶽による爆撃は基地の滑走路を粉々にし、兵舎を瓦礫に変えた。この爆撃は、アルタラス王国内にある全てのパーパルディア軍事基地を潰した。それだけでアルタラスにいるパーパルディア軍の約三分の一が死傷した。
「いまだ!!上陸開始!!!!」
空からの圧倒的な攻撃を前に混乱している隙をつき、日本軍は上陸を開始する。少数の部隊が転移して沿岸防衛部隊に対する奇襲を成功させて橋頭堡を確保、そこに上陸する。
「各員、構え!!撃てぇ!!」
生き残ったパーパルディア軍は、統率のとれた動きでマスケット銃を日本軍に向け発砲する。発射された弾丸は真っ直ぐ進み、日本軍の1人の足に命中した。が、何かに弾かれただけだった。
「はっ?」
「敵確認!各員、自由射撃!!」
弾かれたことに驚いて動きが止まったことは彼らにとって致命的だった。攻撃を受けた日本軍はすぐさま反撃を行う。マスケット銃とは違い、圧倒的な連射速度と射程、命中精度などを持つ自動小銃によって形成された弾幕は濃密と言っても過言ではなく、パーパルディア兵は次々と蜂の巣にされていった。
「地竜だ!!あれの後ろに隠れろ!!あの弾幕をやり過ごすんだ!!」
パーパルディア兵は自分が生き残ろうと援軍に駆けつけた地竜の後ろに隠れる。マスケット銃なら地竜は銃弾を弾いて無傷で済むからだ。だが、日本軍の銃は自動小銃である。そして地竜は生物である。
日本軍はパーパルディア軍が盾にし始めたパーパルディア軍の機甲戦力である地竜に攻撃を集中する。狙いは比較的防御力が小さい腹や目などであり、それらの弱点を徹底的に攻撃した。地竜は生物なので、簡単に攻略できた。
「全員、乗り込め!!進撃開始!!」
後から揚陸された戦車や装甲車、輸送車に乗り込んだ日本軍はその速度を生かした電撃戦を開始した。彼らが目指しているのはアルタラス王国首都であったル・ブリアスである。そこ付近には、富嶽から誘導爆弾による絨毯爆撃によって完全に破壊された軍事基地があり、統治機構の最終防衛ラインでもあった。
ステルスモードを最初から解除した状態で進撃する日本軍。その途中で一斉蜂起した地下組織と合流したが、彼らを後ろに下がらせて統治機構の庁舎を目指して進撃する。空には航空支援用に500機ほどの対地装備をした震電が飛び交っているが、ステルスモードを起動しているので敵に姿は見えていない。
「オラオラ!!王牙様のお通りだぁ!!!」
電撃戦を展開する日本軍だが、その中で特に突出している者たちがいた。その者は
王牙隊は突撃番長の名に恥じない突撃を第二防衛線で待ち構えていた地竜にかまして、至近距離で砲撃した。39式戦車は無理な突撃と至近距離の砲撃による衝撃で履帯が外れていた。
「おら!!操縦手!!代われ!」
もう動けないと思うかもしれないが、実は突撃番長用の戦車には対策が施してある。いくら修理しても突撃によりすぐに外れる、もしくは切れるため別の対策が施されているのだ。
王牙は操縦手と代わると自らの手で操縦し始めた。履帯が外れているのに動いているのだ。そう、王牙隊の戦車は全て履帯がなくても転輪だけで動くような改修が施されていた。
「シャッハー!!!最高だぜぇ!!」
王牙隊は敵を薙ぎ倒しながら進み、やがて軍事基地があったと思われるボコボコな地形がある場所に辿り着いた。それをル・ブリアス近郊に辿り着いたと判断した王牙は統治機構の庁舎を包囲するため、進路を変更してまたひたすら進む。そうして1時間ほどで完全包囲が完成した。
完全包囲が達成され、突入準備を解放作戦の総指揮者、黒岩煉は執っていた。二振りの刀を腰に挿して和服を着ている。その姿は今までの彼と変わりはなかった。
彼の目の前には統治機構の庁舎がある。彼はジッとその庁舎を見つめていた。この間にも日本軍は最終防衛線を守ろうと必死になって防衛しているパーパルディア軍と衝突している。
煉は手に持っていた通信機を起動する。通信相手は王牙だった。
『好きに暴れてもかまいません。パーパルディア軍を蹂躙してください』
『おう!!やってやるぜ!!』
煉からその言葉を受けた瞬間、王牙はいつのまに乗り換えた装甲車で敵のど真ん中に突っ込んだ。装甲車に取り付けられているドリルで障害物を粉砕しながらパーパルディア兵を轢き殺していく。また、途中でドリフトして地竜に体当たりをしたりこちらをマスケット銃で狙ってくるパーパルディア兵をこれもまたドリフトで体当たりをしたりしていく。
「陽電子砲の威力をとくと味わいな!!」
魔導砲があればそれに陽電子砲を撃ち込み、歩兵が固まっていれば機関砲でミンチにする。たった一台でここまでやっている今のこの光景はまさしく蹂躙だった。
「それっ!!突撃ぃー!!!」
王牙はいきなりハンドルを切って方向転換をすると、ドリルを回転させて統治機構の庁舎に突っ込んだ。この頃になると、パーパルディア軍が張った防衛線は役に立っておらず、ただただ日本軍の包囲が絞られるだけだった。
ドリルを回転させて統治機構の庁舎に突っ込んだ結果、一階の真ん中らへんに綺麗なでかい大穴が開くことになった。
「総員、下車戦闘!!」
統治機構の庁舎の中で停止した装甲車から次々と日本軍が出てきて内部を制圧していく。その先頭にたっているのは刀を持って和服を着ている人物だった。そう、黒岩煉である。
彼は職員を蹂躙していく味方を見ながら、目を瞑り、意識を他の感覚に集中する。すると、下から微かに声が聞こえた。さらに僅かながらに空間があるような風の音も聞こえる。彼はその声を詳細を知ろうとして固まる。
「煉さん?」
「………はっ!王牙他3人は私に着いてきてください」
王牙から声をかけられてなんとか意識を戻すことができた煉。彼が聞いた声は一体なんだったのだろうか。
地下に続く階段を発見した一同は辺りを警戒しながら降りていく。すると、微かにだが声が聞こえてきて、降りていく度にそれはどんどん大きくなっていく。その声をよく聞くと女性の声だった。しかも、「あん!あん!」と言っている。
「……臭いですね」
「嫌な匂いだぜ……」
独特の香りが降りる度に強くなってくる。やがて、一番下まで降りると、目の前には大きい扉があった。扉に耳を近づけて中を様子を窺うと、先ほどの女性の声と男性の声が聞こえてきた。それに加えて、肌を打ちつける音が聞こえてきた。
「……突入しましょう」
一瞬固まった煉だが、彼は刀を構えてそう呟く。その呟きは一同に聞こえており、彼に合わせて各々が構える。
「……黒岩流、【光刃】」
目に見えないほどの速度で振り抜いた刀は見事に扉を真っ二つにした。そして、その切れ目目掛けて王牙は思いっきり蹴った。
蹴られた扉は大きな音を立てて中に飛んでいって、ちょうど男の頭の上に落下した。
「彼女に鎮静剤を」
「はい!」
男は気絶した。その気絶した男をよく見ると、小太りの中年の男性であった。だが、周りに散乱している服を見ると派手で高官が着るような服であった。煉はこのことからコイツが統治機構のトップだと判断した。
煉は職員とハッスルしていた女性に鎮静剤を打つように指示する。彼女の体は見るからに火照っており、媚薬を盛られたのだと推察することができた。彼女は街から連れ去られた若い娘の1人であったのだ。
同じ頃、別の地下室では牢屋に乱雑に閉じ込められていた若い娘たちがいた。その誰もが裸で、目はハイライトを失っていた。彼女らも職員の被害者であった。そのことを聞いた煉は、すぐさま保護することを命令した。
地下を制圧し、2階、3階もその勢いのまま制圧し、統治機構の庁舎の屋上に出てきた煉。目の前にはパーパルディア皇国を示す国旗が風に揺れながら聳え立っていた。
「では、いきますよ」
煉はパーパルディア皇国の国旗を引き抜くと、それを真っ二つに折って火の中に投げ入れた。そして、空間倉庫から出したアルタラス王国の国旗を堂々と見せつけるようにゆっくりと掲げた。
「アルタラス王国の民よ!!我々の勝利です!!」
煉は声を張り上げる。その声はよく響いた。特に後方で民間人を護衛している地下組織の人によく届いた。
「「「「「「「うぉーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」
アルタラス王国民の歓喜の声があちこちで響き渡った。
「くそ!!早く逃げなければ!!」
ル・ブリアス近郊の港で船に乗る1人の男がいた。その人物は、地下で気絶した男が放り出した服と似たような服を着ていた。実はこの男こそが統治機構のトップであった。地下でハッスルしていたのは統治機構のNo.2である。
それはさておき、彼の目の前には輸送船が100隻ほど停泊していた。これらの輸送船は本国に魔石や奴隷を運んだり、本国から補給物資や増援などが来る時に使用されたりしていた。彼はその輸送船で本国に逃走しようとしているのだ。
「おい!!早く出せ!!」
「えぇ!?で、ですが、海は既に日本軍によって封鎖されていますよ!!」
「いいから早く出せ!!」
渋々といった感じで輸送船を出航させる水兵。輸送船の中には採ったばかりの魔石がぎっしりと詰まっており、彼はそれらに囲まれていた。彼が今乗っている輸送船は物資を運ぶ前提で寄港していたため、客を乗せるとかいうことは想定していなかった。だからなのか、人が乗るところまで魔石が詰まっており、彼がそれに囲まれるのも頷けた。
出航してから5分後、ようやく沖に出た輸送船だが、ここで彼らの運命は尽きることになる。
「な、なんだ!!あれは!!」
彼らの目の前に突如現れたのは巨大な船だった。旗は旭日旗を掲げており、日本軍の船だと一瞬でわかった。
「や、やばいですよ!!早く白旗を上げましょう!!」
「誰か上げるか!!奴らのような蛮族の船なぞ、どうせハリボテに決まってr」
彼らは星になった。
「第一斉射、全弾命中!!敵輸送船団全滅!!」
彼らが星になったのは巨大な船からの砲撃が原因だった。巨大な船の名は『紀伊』。日本最強と名高い戦艦である。主砲は80センチもあり、波動砲も五基ほど搭載していて四方八方に放つことができる。そんな紀伊だが、何故この場にいるのか。それは慣らしである。要は改装後の紀伊をある程度慣らすことで改装前の練度で戦うことができるということだ。そうして敵輸送船団に放たれた主砲によるレールガンモードにしての攻撃だが結果は言うまでもないだろう。80センチレールガンの火力によって、一斉射だけで簡単に全滅させることができた。さらに彼らの船に魔石を大量に詰め込まれていたことも彼らにとって災いした。魔石は原石のままだと少しの衝撃で反応し爆発するのだ。それが大量にあったことで連鎖的に爆発して最終的に大爆発が起こり、周りの輸送船団を巻き込んで沈んだ。
これでアルタラス王国にあるパーパルディアに属する船は全て沈めたのだが、紀伊の水兵らは何故か唖然としていた。その理由は、
「………なんか、以前より威力増してない?」
「……ですね」
そういうことだ。何故か威力が増しているのである。過貫通する、巨大な水柱が上がるなどのようなことがあるのは分かる。だが、問題はその水柱の高さである。輸送船を攻撃する際、紀伊は敢えて徹甲弾のみで攻撃した。三式弾は使わなかったのだ。しかし、その砲弾が着弾した時に複数の輸送船を過貫通して水面に着弾した。すると水柱が上がるのだが、その水柱がいつもより巨大だったのだ。
「………改装って、機動力向上と防御力向上だけだったんだが」
「確かにその二つは達成されてますね」
「それでこれか?」
「ま、まぁ、攻撃は最大の防御ってことでいいんじゃないですか?」
部下がフォローするが、艦長である
話を戻すが、白昼堂々と80センチレールガンを砲撃したら爆音が響くのは当たり前である。だが、周りを見てみるとそのような様子は全くない。アルタラス王国内で残党を掃討している日本軍もこの戦艦の砲撃には気付いていない。
実は拳銃でいうサイレンサーの似た機能を持つ性能の砲身をこの戦艦は採用しているのだ。所謂、実地試験の一環であり、これが成功すると、砲撃音がほとんどしない軍艦が出来上がるとかいう川内(艦)が喜びそうな装備になるのは間違いなかった。
だが、この実地試験において紀伊に乗っている全員が言いたいことはただ一つだった。
「こういうのは実験艦でやれよ!!」
実地試験の報告書に上の言葉と似た意味の言葉があった時は、ゆかは頭を抱えたという。