中央暦1639年7月20日 アルタラス王国飛行場
この日、ついにパーパルディア本土攻撃作戦が開始される。その第一作戦、雷作戦のためにここ、アルタラス王国の飛行場から爆撃隊が飛び立っていた。
アルタラス王国首都、ル・ブリアスの近郊にある飛行場は、元々ムーが建設したものであった。それを日本が、ムーから話を聞きアルタラスに許可をもらう形で使用していた。
「あれが日本の……」
アルタラス王国王女ルミエスは圧倒されていた。王城から見える巨大な飛行機械の威容さもそうだが、何よりその頼りがいのあるその姿に圧倒されていた。
思い返せば、彼女は奇跡としか言い様がない経験をしてきた。パーパルディアからルミエスを奴隷として譲渡に魔石鉱山の譲渡の要求を皮切りに、アルタラス王国は滅んだ。当時の国王であったルミエスの父の機転でなんとか脱出することができたが、今度は海賊に襲われた。
(あの頃はもう終わりかと思いましたが…)
護衛の騎士が次々とやられていく中、ルミエスは美女ということで犯されそうになった。実際、服の一部がちぎられていた。そんな時に独特の音が近づいてきた。今は日本のドローンやヘリコプターという兵器だということがわかるが、当時は聞いたことのない音に恐怖したのを彼女は覚えている。
そんな恐怖の中、海賊がいきなり撤退し出した。何故かと思ったが、独特の音が原因なのがすぐにわかった。そんな時、ルミエスたちの希望となる言葉が聞こえてきたのだ。
『こちら日本皇国沿岸警備隊………』
日本皇国。それは彼女らを助けた国であった。彼女らは、亡命先を探して漂流していた。そんな時に海賊に襲われ、日本に助けられた。
日本はものすごい国だった。地方都市でも見たことない高い建物が建ち並び、人も多く、活気で満ち溢れていた。亡命してきたルミエス一同にも優しく接してくれた。
しかし、ついにパーパルディアの魔の手が日本に襲いかかった。フェン王国にいた日本人が虐殺されたのだ。もちろん日本は激怒した。日本国民が激怒し、瞬く間にフェン王国にいるパーパルディア軍を撃滅する。その戦いの日本の損害は0であった。この話をルミエスが聞いた時は、彼女は何かの冗談ではないのかと疑った。それぐらいものすごいことをやってのけた。
事態はさらに進み、日本に殲滅戦宣言が出されてしまう。それでも、日本は余裕でパーパルディア軍を蹴散らしテアルタラス王国を解放した。
そして今、日本が振り上げた刀はパーパルディア本土に振り翳されようとしている。日本本土から富嶽が飛び立ち、アルタラス王国飛行場から彗星が飛び立っていった。
「どうか、我々に希望の光を」
ルミエスは手を胸の前で合わせて祈り始めた。
アルタラス王国から飛び立った攻撃機『彗星』は、空対地ミサイルと無誘導爆弾を大量に積んで出撃した。搭載可能ギリギリまで詰め込まれたためか最高速力がマッハ4.7ぐらいしか出ないが、よくよく考えれば充分である。これに加えて、日本本土から富嶽が出撃していた。さらにもう一つ、同じく本土から出撃した兵器があった。
「よっしゃー!!久々の出番だぜ!!」
その兵器は、巨大な航空機だった。翼には片側一つ、計二つの航空機の発射口があり、そこから無人機が発射されて周囲の護衛を行っていた。
その兵器の名は『ガウ攻撃空母Ⅱ』。発射される無人機は『ドップⅡ』といった。ガウ攻撃空母IIは、原作と同様に絨毯爆撃を可能としており、同時に空中戦も可能となっている。ドップⅡは、原作では航続距離が弱点だったのに対して、この兵器はそれを克服している兵器となっている。しかも、自動結界やステルスシステムなど様々な魔改造が施されているため、原作の面影があるのは見た目だけであった。
『それにしても、豪華だな』
『確かに。あれも見てみろよ。『富嶽II』まで出撃してるぜ』
富嶽IIとは、富嶽を魔改造した結果生まれた機体である。本来は爆撃や輸送ぐらいしか使われない爆撃機を何故か空中戦を可能にしたり小型無人機の母艦になったりと、もはや爆撃機ではないと言われるほど魔改造されている。しかも、この無人機も狂った性能をしており、なんと500キロ爆弾を2発ほど積むことができる。普通なら作れないだろうが、それを可能にするのが
無線でパイロットたちが豪華な編成に舌鼓を打つ中、ついにパーパルディア上空に到達する。
『いいか!!第一目標は航空基地と陸軍基地だ!!その後に各主要要衝を爆撃する!!いいな!?』
『『『『はい!!!』』』』
富嶽の編隊がそのような会話をしている最中、ガウ攻撃空母IIから発艦したドップⅡが上空警戒中のワイバーンオーバーロードを次々と撃墜していた。ワイバーンオーバーロードとは、パーパルディアがムーのマリンに対抗するために生み出したワイバーンで、性能は速度はマリンと同等、格闘性能はマリンより上というムーにとっては脅威となる竜であった。パーパルディアは、それを上空警戒に飛ばしていたが瞬く間に撃墜された。理由は簡単だろう。ワイバーンオーバーロードとドップⅡは、言い換えれば第一次世界大戦の航空機と現代の航空機というのが近い。ならば、そんな昔の航空機が現代機に勝てるはずがない。
『爆撃開始!!!』
そうして、日本の『落鳥作戦』の第一段階『雷作戦』が本格的に開始された。
時は少し遡る。
パーパルディアの上空警戒で飛んでいる飛行隊のベテラン、プカレートは、身に覚えのない不安にかられていた。というのも、上空警戒が明らかに多すぎるのである。通常なら少なくて2〜3騎、多くて7〜9騎なのに対して、今周りにいるのだけでも20騎は確認できた。
「中隊長殿、敵は本当に数日前の通達通りムーの飛行機械で来るのでしょうか?ムーの飛行機械と戦っている割にはこちらの被害が大きすぎると思うのです。そこのところどう感じているのですか?」
「確かにその件で上層部の歯切れが悪いのは事実だ。しかし、ムー以上となると、神聖ミリシアル帝国か古の魔法帝国ぐらいしかいない。つまり、消去法でムーしかいないというわけだ」
「それはそうですが………」
「なんだ!?あれは!?」
1人の部下が叫ぶ。叫んだ部下の視線を辿ると、光の槍がこちらに迫ってくるのが見えた。音速以上の速度で迫るそれを竜騎士が回避しようとするが時既に遅く、次々と撃墜されていく。運良く回避できても、光の槍は追いかけてきて最終的に撃墜される。
結果、飛行しているワイバーンは全滅した。
『全機、ステルスシステム解除!!敵に姿を見せてやれ!!』
隊長機のその命令でステルスシステムを解除する爆撃隊。パーパルディアから見れば、いきなりその場に現れたように見えるだろう。ステルスシステムを解除したのは敵に恐怖を与えるためであり、その先頭を飛行している彗星は、攻撃目標に接近しつつあった。
『目標、敵航空基地!!爆撃開始!!』
攻撃目標に到達した彗星は、上空10,000m以上から急降下して限界まで詰め込まれている対地ミサイルと無誘導爆弾を放つ。滑走路ではワイバーンオーバーロードが飛び立とうとしていたが、対地ミサイルが次々に着弾したことで竜騎士ごと肉塊と化し、その後すぐに無誘導爆弾が着弾したことで肉塊すら消し飛んでいく。骨も残らないとはまさにこのことだった。さらに彗星は、竜騎士の寮舎にも攻撃を加え、見事瓦礫のオブジェに作り替えた。
彗星が爆撃している上を通り越した機体があった。その機体、ガウ攻撃空母IIはパーパルディアの皇都北側にある陸軍基地に向かっていた。ガウ攻撃空母IIは、第五次世界大戦で活躍した機体で敵基地を何個も絨毯爆撃をした機体であった。そんな歴戦の機体は、護衛として発艦したドップⅡとともに敵陸軍基地上空に差し掛かる。
『爆撃開始!!』
練度が高いのか、隙間なく絨毯を敷くみたいに絨毯爆撃をしていく。基地を跡形もなくすような、そのような密度で少なくとも10機以上はいるガウ攻撃空母IIは爆撃をしていく。
「爆弾の雨が来るぞー!!!」
「うわぁーーーー!!!」
「逃げろー!!!」
「数が多すぎる!!どこに逃げればいいんだよ!?」
地上ではパーパルディア人が阿鼻叫喚している様子が見てとれるが、爆撃隊は構わずどんどん爆撃をしていく。寮舎も容赦なく絨毯爆撃の対象になり、第三文明圏で威容を誇っていた陸軍基地はもはや瓦礫しか残っていなかった。
「こ、こんなことが………」
そう呟くのは魔信技術士のパイだ。彼女は、魔導探知レーダーに映っていたワイバーンオーバーロードが一瞬にして全滅したことを確認し、上官にそれを報告して再びレーダーを確認している時に崩れてきた建物の下敷きになった。なんとか自力で抜け出せたはいいものの、目の前には瓦礫しか残っていない陸軍基地があったのだ。上のように絶句するのも頷ける。
彼女はしばらく呆然とするしかなかったのであった。
途中で彗星とガウ攻撃空母IIと分かれた富嶽と富嶽IIは敵主要要衝に向かっていた。第一次攻撃としてエストシラント、パールネウス、デュロの三ヶ所を同時に爆撃する予定だ。
『見えました!!でかい壁です!!』
『よし!恐らくあの壁の中がパールネウスだ!!』
パールネウスに向かった爆撃隊は巨大な壁を見つける。その壁は『進撃○巨人』に出ているものと酷似していることから、一部のオタクたちは大興奮していた。
『隊長!!やっぱり壁の破壊はなしでいいですか?』
『アホ!!壁も目標に入っているんだぞ!!許可するわけないだろう!!』
『じゃあ、戦争後に再建設されますか?』
『…………無理なんじゃないか?上はパーパルディアを地図から抹消する気らしいし』
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!なんでなんだよ!あんな巨大な壁滅多にないんだぞ!!オタクにとってある意味聖地なんだぞ!!』
『…………』
オタクの号泣に隊長は黙るしかなかった。それほどまでにオタクの熱意は凄まじかった。片手間に襲いかかってくるワイバーンオーバーロードを撃墜させながら、「絶対に再建してやるぅー!!!」と号泣しながら叫んでいた。尚、無線に向けて叫んでいるため、隊長含む編隊全員が一時的に耳が機能しなくなり、帰投後に原因の人物がしこたま怒られていたのは別の話。
『腹いせにあの気持ち悪いおじさんの像を破壊してやるぅ!!!』
そう言って、アニメキャラの塗装がされている富嶽が投下した爆弾は巨大な像に見事に命中し、木っ端微塵になった。巨大な像はパーパルディアを建国した人物らしいが、それをおじさん扱いされたうえ、腹いせに破壊されるとはなんとも哀れである。
編隊から突出して巨大な像を破壊した富嶽に追いついた編隊はパールネウス上空直前で散開し、巨大な壁に向けて攻撃を開始した。その際、使うのは新たに開発された兵器であった。
『各機、新兵器の威力を蛮族どもに見せてやれ!!爆撃開始!!』
富嶽から投下されたのは、一つの巨大な釘だった。それがミサイルのように壁に向かっていき突き刺さる。その釘は富嶽の大群から次々と投下され、巨大な壁のあらゆるところに突き刺さる。さらにそこに爆撃が終わった彗星の一部が近くまで接近し、巨大な壁の外側に壁に沿うように黒い丸い物体を落とす。それはパールネウスを囲うように合計で五つ落とされた。
『こちら、彗星爆撃隊。結界生成装置投下完了!!同装置起動確認しました!!』
『よし、全機離れろ!!』
富嶽爆撃隊隊長のその命令でその場にいる全ての爆撃隊がパールネウスから離れる。地上を見てみると、巨大な飛行機械の襲来にパニックになったパーパルディア人がパールネウスから逃げようとするが、結界に囲まれてパールネウスから逃れられない状態となっていた。パーパルディア人からすると、逃げようとしても見えない壁によって逃げられず、パールネウスに閉じ込められている状態だった。
(パーパルディア人には恨みはないが、殲滅戦宣言されたからな。恨むなら自国の上層部を恨めよ)
富嶽爆撃隊隊長は心の中でそう呟くと、新兵器の起動ボタンを押す。その瞬間、大きな爆発が富嶽爆撃隊隊長の後方で起こる。隊長は最後尾にいるため、そのさらに後方で爆発があったことが窺えた。
爆発したのは新兵器の巨大な釘である。隊長が起動ボタンを押したことで一斉に起爆したのだ。釘は巨大な壁に突き刺さっているので、その状態で爆発したら壁が木っ端微塵になるのは明白だった。さらに釘は至るところに突き刺さっていて、尚且つ威力も絶大である。よって、結界内にある建築物は全て粉々になって瓦礫と化し、逃げ惑っていたパーパルディア人は爆発と爆風に巻き込まれている。その時、パーパルディアにとってある不幸が起きた。
『ん?あれはきのこ雲?弾薬庫でもあったのか?』
パールネウスは聖都であるため、その場所専用の防衛隊があった。規模は小規模だが、パールネウスを防衛するには充分だった。だが、今回の爆撃で防衛する際に必要な魔石を保管する貯蔵庫や弾薬庫も潰された。それによって魔石に衝撃が加えられて爆発、巻き込まれるように他の魔石に誘爆し近くにあった弾薬庫も爆発した。そのおかげか、さらにパールネウスの被害が拡大したのだ。
「あ、あぁ、パ、パールネウスが………」
結界に囲まれていても、パールネウスの惨状は他の場所でも確認することができた。それほどまでに激しい攻撃だった。
一方、デュロでも激しい爆撃が行われていた。こちらは富嶽IIが中心となって爆撃していた。富嶽IIから大量の爆弾が落とされるのに、無人機からも2発ずつ爆弾が落とされる。よって、一機あたりの落とされた爆弾の量は富嶽より富嶽IIの方が多かった。
「どうするんですか!!このままじゃデュロが壊滅しますよ!!」
「仕方ない。神聖ミリシアル帝国から譲り受けた対空魔光砲を使おう」
パーパルディアは前に神聖ミリシアル帝国から旧式の対空魔光砲を数基ほど譲り受けていた。神聖ミリシアル帝国にとって旧式でも、パーパルディアからすれば最新鋭と言っても過言でもなかった。
対空魔光砲は魔力を溜めて、その溜まった魔力を発射して弾幕を形成する兵器だ。いわゆる高射砲と言えば伝わるだろう。だが、この兵器を使うにあたってパーパルディアにとってある誤算があった。
「まだか!?まだ溜まんないのか!!」
「まだです!!恐らく神聖ミリシアル帝国用に作ってあるため、彼の国みたいに高出力の魔導エンジンを使用しないと早く溜まらないのです!!」
魔力が溜まらないのだ。既に魔導エンジンを起動させてから何十分も経っているが、一向に溜まらない。少しずつ溜まってはいるのだが、クソ遅い。溜めている間にも爆撃隊はどんどん爆撃をしている。
「溜まりました!!」
「よし!!とにかく撃ち落とせ!!」
溜め始めてから40分ほど経った頃、ようやく魔力が溜まった。それを確認したパーパルディア軍は数基しかない対空魔光砲を一斉に撃ち始める。分間360発の弾幕は空に舞い上がり、爆撃隊に襲いかかる。
『ん?対空兵器確認!!全機回避行動!!』
しかし、一部の機体の回避が間に合わなかった。複数の富嶽IIに何発もの弾幕が命中する。そうして、その富嶽IIは撃ち落とされたかに思われた。
「命中!!敵飛行機械に命中しました!!」
「「「うぉーーーー!!!!」」」
「よし!もっと撃って落としまくれ!!」
「はい!!………あ、あれ…」
だが、富嶽IIに命中する直前に見えない壁みたいなものに弾かれた。富嶽IIはそのおかげか、何ともないように悠々と飛行し、爆撃を続行していく。
『対空砲に被弾!!結界で弾きました!!結界損耗率0.7%!!』
「敵機健在!!見えない何かに弾かれました!!」
「何!?なら、もっと撃ちまくれ!!」
「すみません!!魔力切れです!!」
「なんだと!?」
この対空魔光砲を使うにあたって、パーパルディアにとってもう一つの誤算があった。それは燃費がクソ悪いことだ。神聖ミリシアル帝国の兵器の中で旧式かつパーパルディアの技術水準が低いため、こうなるのは明白であった。それに富嶽IIに命中しても日本の装備は基本的に結界で守られているため、その結界を破ることができない時点で撃ち落とすことは不可能である。
『対空兵器確認!!破壊する!!』
富嶽IIは対空魔光砲を見つけると、機体に備え付けられているあるボタンを押す。すると、機首が開き一つの銃が出てくる。その銃は自動で対空魔光砲に照準を合わせると自動で発砲し、対空魔光砲を破壊した。
実はこの銃は、航空戦にて護衛機だけで手に負えない時用に迎撃用として搭載された銃である。360度どこに敵がいても照準を合わせることが可能で、自動で弾幕を張ることができた。また、敵を撃ち落とす他に対空砲の破壊も前提として作られているため、射程が長くなっている。
『破壊完了!!各自、対空砲に注意しながら任務を続行する!!』
富嶽IIは再び激しい爆撃を行う。大量の爆弾によりあちこちに小さなクレーターができるが、爆撃隊は気にせず爆撃する。
『全弾投下完了!!これより帰投する!』
富嶽IIが去った後のデュロは瓦礫しか残っていなかった。
同日 10:00 パーパルディア皇国沖
そこには大量の艦艇があった。それらの艦艇が艦隊を組み、パーパルディア海軍を撃滅するために進撃していく。
第一、第二主力艦隊の連合艦隊、通称、第一連合艦隊は総旗艦を紀伊として、パーパルディア海軍といつでも戦闘できるような態勢になっていた。
「さぁ、海上蹂躙戦を始めようか!!」