皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第四十八話 海上蹂躙戦 前編

 同日 10:00 パーパルディア皇国沖

 

 この海域に大規模な艦隊が航行していた。その艦隊は、ほとんどの艦艇が全長約300mを超える巨大艦であり、旗艦と思われる艦艇が掲げている第一連合艦隊旗は風でパタパタと揺れながらその威容を見せつけていた。

 この艦隊は、前日の夜中に出港しており、改良されたステルスモードにて姿を消して航行していた。その艦隊の旗艦を務めている宇宙戦艦『紀伊』には、日本皇国首相兼海軍総司令官の大和ゆかが同乗していた。

 

 

「長官、先程、空母『翔鶴』より早期警戒機が発艦したとの通達がありました」

 

 

「ありがとう。とは言っても、今回は空母が必要となるのは制空権確保ぐらいかな?」

 

 

 ゆかがそうぼやいたのは、今回、パーパルディア海軍を撃滅するために行う作戦『海龍作戦』の内容が原因だった。その内容とは、新兵器や魔改造兵器の実地試験を行うための作戦も含まれている内容で、ミサイルや戦闘機とかいうアウトレンジ攻撃を実行しない作戦であった。とは言っても、その作戦を考えたのは彼なので文句は言えない。

 

 

「ところで、なんでパチュリーたちがいるの?」

 

 

「あら?ダメなのかしら?」

 

 

「レミリアには聞いてない」

 

 

 ゆかはレミリアを軽くあしらいながら、空間倉庫から一つの机と椅子3人分を出して、机の上にティーセットを置いた。ティーカップの中には出来立ての紅茶が入っており、湯気がまた美味しそうな雰囲気を醸し出している。

 

 

「ところで、レミリア。敵艦隊の動きは?」

 

 

「今のところ、運命で見た通りだわ。そろそろ出港してきそうよ?」

 

 

 レミリアはつい先日、運命を見ていた。それはゆかに頼まれていたからなのだが、彼女自身も暴れたいと思っており、だからこそ運命を操って必ず起こりうる未来にした。そして今、その運命通りにパーパルディア海軍は出撃しようとしていた。

 

 

「艦長、ステルスモード解除。これより、『紀伊』単艦で海上撃滅戦に入る!」

 

 

「了解!!」

 

 

 艦隊の最後尾にいた紀伊は、その命令を受けて速度を上げていく。戦艦とは思えない機動性をもってスルスルと艦艇の間を抜けていき、先頭に立つ。先頭に立った紀伊は、そのままステルスモードを解除して速度をさらに上げていく。

 

 

「速力140ノットに固定!!奴らが偵察用のワイバーンを発艦したら30ノットまで減速しろ!!」

 

 

 そうして、紀伊はパーパルディア海軍を待ち構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方 海上

 

 

 ここには、大量の戦列艦が停泊していた。その戦列艦に乗り込む水兵たちは、慌てた様子で戦列艦に乗り込んでいく。

 実は、少し前に皇都エストシラントが敵である日本の攻撃を受けたのだ。それを地上から見ていた彼らは、出港の命令が下ると、祖国を攻撃した屈辱を晴らそうという心意気で、士気が高揚した状態で出港していった。

 

 

「ワイバーンを飛ばせ!!索敵のワイバーンを通常の3倍にしろ!!」

 

 

 そう指示を出すのは、パーパルディア皇国最新鋭艦である超フィシャヌス級戦列艦に乗船している第三艦隊提督アルカオンだ。超フィシャヌス級は150門級戦列艦として建造され、皇国に3隻しかいない。そんな戦列艦の甲板からアルカオンは、竜母から次々と発艦していくワイバーンロードを眺めていた。力強く感じるその姿は、強大な敵であろうと打ち破るような気概を感じさせた。

 だが、それが所属する艦隊の陣形は彼らにとって屈辱的なものであった。彼らが組んだのは、各艦の間隔は約1kmの巨大な長方形の陣形、いわば「面」を攻撃するものであったためだ。この陣形は、同面内に敵が入ってきたら複数艦で攻撃することができる。その反面、味方が各個撃破されるという欠点があった。

 それじゃあ何故、この布陣で対抗しようとしているのか。それは、この布陣は味方の被害を前提としながらも敵に数の力で圧倒するための布陣、長距離砲を持っている敵に対しても確実にダメージを与えるための布陣だからだ。

 この布陣は、第三文明圏最強であるパーパルディア皇国にとって極めて屈辱的であった。しかし、敵がムーのラ・カサミ級の戦艦を持っている可能性が高い以上、なりふり構ってられなかった。

 そんな中、アルカオンは堂々とした表情をしながら、こう言った。

 

 

「さぁ、くるならこい!!我が第三艦隊が相手してやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜母『アビス』から発艦したワイバーンロードを操る竜騎士ラカミは、第三艦隊から南に向かっていた。彼は敵艦隊の索敵を命じられて、何もない空から海上をくまなく探していた。

 

 

『竜騎士ラカミより艦隊司令。敵の姿は見受けられず』

 

 

『了解、引き続き索敵を実施せよ』

 

 

 定期連絡を行いながら、さらに南へと進む。

 

 

「ん?」

 

 

 すると、ラカミは何か違和感に気付いて海上を凝視した。艦影らしきものが見えたからだ。

やがて、その艦影らしきものに近づくと巨大な艦が姿を現した。数にして1隻だけだが、全長は明らかに1000m以上あり、それでいてパーパルディア艦隊より速かった。

 驚いた様子でその艦の様子を見るラカミだが、彼の視線はたちまちこの艦が掲げている旗に注がれた。その旗は白地に赤丸、そう、日本皇国の国旗だった。

 

 

『竜騎士ラカミより艦隊司令!!日本海軍と思われる巨大艦を発見!!数は一隻!!至急警k』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさい蠅は消したわ」

 

 

 手に持っている紫色に光る槍を消しながら、そう言うレミリア。その表情は、心なしか不機嫌そうだった。

 ゆかは彼女が不機嫌な理由はわかっていた。なんでわざわざ敵に見つかるような真似をするのか疑問に思っているのだろう。レミリアからすれば一方的に暴れればいいのだが、それは問屋が卸さなかったのだ。レミリアだって、作戦通りにしなげればならないのは理解しているのだ。

 

 

「もっとうるさくなるけど、大丈夫か?」

 

 

「大丈夫よ。それも消すから」

 

 

「それだと新兵器の実地試験ができなくなるんだが……」

 

 

 ゆかは苦笑していた。レミリアはどうしても暴れたいようだ。

 

 

「………まぁ、敵艦隊に向けてやればいいか」

 

 

 ゆかは少し考えてレミリアに「敵航空隊だけなら」と許可を出した。レミリアが喜んだのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

「竜騎士ラカミから報告!!敵巨大艦一隻を発見したとのこと!!尚、途中で魔信が途絶えた為、恐らく撃墜されたかと!!」

 

 

「……見つけたか」

 

 

 アルカオンは即座に命令を出す。

 

 

「よし。ワイバーン全騎発艦させろ!!」

 

 

 その命令は竜母艦隊司令バーンにも届いていて、ワイバーンロードを準備できた者から順次発艦させていた。その間、彼はラカミが撃墜された方向を睨む。何故なら、竜騎士ラカミが撃墜される前に発していた魔信によって、敵艦の居場所がわかっているからだ。

 今回の攻撃では、海と空から同時に行うことになっている。それは、アルカオンからの命令であり、それしか勝機は見出せなかったという事情があった。

 第三艦隊に所属する竜母30隻は、次々とワイバーンロードを発艦させる。上空には、発艦したワイバーンロードが約200騎もおり、これからさらに増えるだろう。

 

 

「全艦戦闘配置!!最大船速!!艦隊の隊列は崩すな!!空と海から波状攻撃をかけるぞ!!」

 

 

 アルカオンはそう命令を出すと、前方の海を睨みつけた。

 

 

「海と空からの同時攻撃……歴史上このような大規模攻撃を受けた者はいない。日本よ、お前は耐えられるか?」

 

 

 アルカオンのその呟きは、波の音に紛れて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント南方100km付近 海上

 

 

「敵艦隊、ワイバーンを発艦しました。数600。どうしますか?」

 

 

「どうするも何も、そこにいきたくてウズウズしている蝙蝠がいるじゃないか」

 

 

 ゆかは部下の問いかけに、レミリアを指差して答える。彼女は、ゆかが許可を出した時からソワソワしていて落ち着きがなかった。羽もパタパタと動いていて、ゆかに「まだか」と目線で訴えてくるほどだった。

 

 

「さて、レミリア。お望みのお客さんが来たぞ。お出迎えをしてやれ」

 

 

 その言葉をレミリアが聞いた瞬間、彼女の目が捕食者のそれに変わったのをゆかは見逃さなかった。

 レミリアはその場から外の甲板の上に向かい、羽を目いっぱい広げる。彼女は既にワイバーンロードの大群を捕捉していた。その証拠に、彼女の視線はワイバーンロードの大群に向けられている。吸血鬼は、人間より身体能力が高く、視力も例外ではない。

 レミリアは腰を低くして、足に力を込めていた。前屈みになり、いつでも飛びかかれるような体勢だ。

 

 

「敵編隊、まもなく目視圏内!!」

 

 

 紀伊にワイバーンロードの大群が接近してくるが、迎撃の準備をしている様子は一切なかった。乗組員もゆか含めてただ傍観するだけ。普通なら、一方的にやられてしまうだろう。

 だが、そうなるのは“普通なら”だ。生憎と日本の艦艇は普通ではないし、敵が紀伊に攻撃する前にレミリアに落とされることが目に見えているため、迎撃の用意だけのんびりやっていた。

 

 

「これから始まるは、夜の魔王(レミリア)による一方的な狩りだ。他国を見下すことしかできない蛮族は、ここで彼女に蹂躙され、己の行いを後悔するが良い」

 

 

 ゆかは、ワイバーンロードの大群に視線を向けて、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えたぞ!!巨大艦だ!!数で押し潰せ!!攻撃開始!!」

 

 

 そう命令するのは、竜騎士団長のダイロスだ。彼の命令によって、周りの竜騎士が一斉に火炎弾の発射準備を行う。ワイバーンロードが口を開き、口の中に炎の塊が生成される。その瞬間、巨大艦の甲板で何か光ったような気がした。それを気のせいだと思い、ダイロスは攻撃準備を続行する。

 

 

「落ちなさい」

 

 

 その声が聞こえた瞬間、彼の意識は永久に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「ダイロス様が落ちたぞ!?」

 

 

 突然隊長騎が落とされたことでパニックになって混乱する竜騎士たち。そんな中、ある1人の竜騎士が何かを見つけた。その何かは、目の前の空中を漂っており、自分たちを見下ろしていた。

 

 

「こんにちは、いい夜ね」

 

 

 その何かは、背中に羽が生えていた。そのことから、有翼人であることが分かった。

 竜騎士たちは、彼女、レミリアが放った言葉に首を傾げる。今は夜ではなく、昼間なのではないかと頭に?を浮かべる。

 竜騎士たちのその様子を見たレミリアは、軽く微笑むと片腕を上に上げて指を鳴らした。

 

 

パチン

 

 

 その音がなった0.5秒後のことだった。レミリアの背後、第一連合艦隊がいる方角の空から紅い霧が空を覆い尽くした。この紅い霧が覆い尽くしているのは、この海域だけであるが竜騎士たちにそれを知るすべはない。

 紅い霧の真下を飛んでいる竜騎士たちは、紅い霧という不気味な未知の現象に恐怖を抱いていた。さらにレミリアから発せられる威圧感も、彼らの恐怖を煽り立てていた。ワイバーンロードも、吸血鬼にとってワイバーンやその上位種のワイバーンロードなどは下の存在である、使役する存在だったため、本能で震え上がっていた。

 

 

「さぁ、楽しい宴を始めましょう♪」

 

 

 レミリアは満面の笑みで、竜騎士たちから見て恐怖の笑みでそう言った。

 

 

 

 

 

 最初はレミリアの攻撃から始まった。手に持っている紫色に光る槍、グングニルを振り回しながら時速600キロ以上の速度で飛び回る。ワイバーンロードの速さが時速350キロ以上であることを考えると、彼女が蹂躙するのも頷けた。

 人型で尚且つ世間一般的に幼女とも言える見た目のレミリアは、竜騎士たちが今まで相手してきたどんな敵よりも小さかった。それもワイバーンロードが一方的にやられる原因となった。

 

 

「ぎゃぁーーーー!!!」

 

 

「やめろー!!!」

 

 

「くるなー!!!くるなー!!!」

 

 

「おのれぇ!!化け物めー!!」

 

 

 回避行動を取るワイバーンロードもこの場から逃走しようとするワイバーンロードも一方的にやられていく。レミリアを撃墜しようと導力火炎弾を放とうとするが、味方に当たる可能性がある以上、放つのを躊躇ってしまう。その間にもどんどんと数が減らされていく。

 

 

「奴は1人だ!!このまま奴を無視して巨大艦を攻撃する!!全騎、我に続け!!」

 

 

 レミリアの強さに恐怖を抱いた者の1人が、先程が何もしてこない、逃げようともしない巨大艦を優先することにした。巨大艦は目視だけで1000m以上あるのが分かるが、何もしてこないことを見るに、隙だらけだと判断して突撃した。だが、レミリアにはまだ余裕があった。逆に、紀伊に向かった敵に対して、お礼をするほどだった。「数をわざわざ減らしてくれてありがとう」と。

 レミリアが余裕なのは、紀伊にはある魔女がいるからだった。紀伊に向かっていった竜騎士たちは、その魔女と真っ正面から対峙することになる。

 

 

「日符【ロイヤルフレア】」

 

 

 突如としてワイバーンロードの進路上に太陽が出現した。ワイバーンロードは急には止まれない。故に太陽に突っ込んでしまった。突っ込むことを逃れられたワイバーンロードがいたが、すぐに太陽を中心にして放たれた弾幕に撃墜された。

 紀伊の甲板に立っているのは、パチュリー・ノーレッジだった。いくらレミリアといえど、一気に600もの敵が突っ込んでくれば一部の戦力の突破は免れない。それを想定して、ゆかはパチュリーを甲板に向かわせたのだ。

 

 

「レミィ、私も加勢するわ。火符【アグニシャイン】!!」

 

 

 パチュリーが放ったそのスペルは、彼女を中心に火の弾幕が形成される。彼女の周りを囲うかのように形成されて弾幕は、彼女の周りを回り始める。弾幕は周りながら辺りに広がっていき、やがて、炎の壁が形成される。その炎の壁は、赤く光りながら炎の高温で近くのワイバーンロードを呑み込んでいく。

 

 

「あ、あついぃー!!!」

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 味方が炎の壁に呑み込まれるのを見た竜騎士たちは、炎の壁のないところから攻撃を仕掛けようと別のところに移動しようとした。だが、それを運命を見ることで察知したレミリアによって、阻止されてしまう。

 

 

「あら?どこに行こうというのかしら?あなたたちの相手は私よ?」

 

 

 レミリアは満面の笑みを浮かべながら、両腕を横に広げてスペルを発動する。

 

 

「紅符【不夜城レッド】!!」

 

 

 その瞬間、レミリアを中心とした紅い十字の光が竜騎士たちの視界を覆った。レミリアを攻撃しようと接近していたワイバーンロードは、その光に呑み込まれて骨すら残らず消滅する。さらに、レミリアは手に持っていた槍を回転させて、弾幕をばら撒いていく。それと同時に、紅い十字の光も槍の回転する速度に合わせて回転する。

 パチュリーの炎の壁とレミリアの紅い十字の光。それだけで紀伊の前には即席の壁が出来上がっていた。突破しようと思えば隙間が微妙に空いているので突破できるのだが、それをできるのはこの場にいる者の中では当事者であるレミリアとパチュリーを除いてゆかぐらいしかいない。故に、突破の糸口すら見つけられずに竜騎士たちは次々と撃墜されていく。

 

 

「やっぱり、自分のことを最強だと言ってる割には弱いのね」

 

 

 レミリアは、手に持っている槍を上に投げて指を鳴らす。すると、その槍は空中で静止して分裂する。いや、増殖と言った方が正しいかもしれない。槍の刃先が敵に向いた状態で、レミリアの背後で槍が大量に増殖する。

 

 

「まぁ、いいわ。ワイバーンとかいう生物は所詮、我々吸血鬼の下僕なのだから。故に、吸血鬼に勝てないのは当たり前。そう悲観する必要はないわ。ただ、あなたたちの敗北の運命が変わらないだけで」

 

 

 生き残っている竜騎士たちは、レミリアが放つ威圧感に完全に萎縮してしまう。仲間の仇を討とうとレミリアに攻撃を仕掛けようとした者も、生物の本能によるものなのか青褪めた顔をしてその場で停止して肩をガクガクと震わせていた。

 

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

 

 

 しかし、1人の竜騎士が勇敢にも雄叫びを上げながらレミリアに突っ込んできていた。ワイバーンロードの口には、導力火炎弾が生成されて発射まで秒読みの状態だった。

 

 

「へぇ。勇敢な者もいたのね」

 

 

 だが、それでもレミリアには敵わなかった。発射された火炎弾は、素手で簡単に振り払われた。

 

 

「こっちを見なさい」

 

 

 勇敢な竜騎士とレミリアは目を合わせる。竜騎士はレミリアの紅い目を見ると、だんだんと意識が呑み込まれるような感覚に陥った。抵抗しようとするが、何故か目が離せなかった。

 

 【魅了(チャーム)】。それは、吸血鬼特有の力であり、その力を発動した状態で相手と目を合わせることで相手を洗脳できる、所謂魔眼のようなものである。洗脳の効果は複数あり、中でも有名なのが『相手を魅惑する』や『敵を寝返らせる』といったものだろう。どちらも強力な力だが、レミリアの魅了(チャーム)はこの力のうち、『敵を寝返らせる』という力であった。だからこそ、勇敢な竜騎士は突如、味方だった他の竜騎士に襲いかかった。レミリアの威圧感に呑まれて動けないワイバーンロードを勇敢な竜騎士は容赦なく攻撃していく。

 

 

「……そろそろね」

 

 

 レミリアがそう呟いた瞬間、突如として第三艦隊の水兵全てが身体に異常を感じた。倦怠感が酷く襲いかかり、ある者は血を吐き、さらには倒れて意識を失う者までいた。中でも特に酷かったのは竜騎士たちで、次第に無事な者がいなくなっていた。

 これらの突然の異常は、空を覆う紅い霧が原因だった。この紅い霧は、人間には毒であり徐々に体を蝕んでいくのである。日本側は、ゆかやレミリア、パチュリーなどが結界などで防いだり艦艇に備え付けられている自動結界によって防いだりしていた。だが、パーパルディア側にはそんな物はない。彼らが防ぐことができるのは、死ぬか紅い霧がある場所から抜け出すかぐらいしかない。それまで、ずっと彼らは苦しむことになる。

 

 

「パチェ!!一気に終わらせるわよ!!」

 

 

「分かったわ」

 

 

 レミリアは翼をはためかせながら飛行高度を上げ、パチュリーは魔導書を開いて敵に視線を向ける。

 

 

「水&火符【フロギスティックレイン】!!」

 

 

 まず、パチュリーが仕掛けた。放たれた水の光弾は、竜騎士たちの四方八方を囲うように展開されて彼らの逃げ場を完全になくした。その上で、彼女は水の弾幕をまばらにばら撒く。彼らに掠るように上手く調整しながら、絶え間なくばら撒く。その弾幕は彼らが動かなければ決して当たることはない。しかし、彼らはそうはいかなかった。水の壁とかいう未知の現象とレミリアが放つ威圧感によって余裕がない彼らは、当たらないように放たれている水の弾幕も反射的に動いてしまう。故に、次々と直撃する者が現れ、体に風穴が開く者が続出した。水の弾幕は敵に直撃する度に返り血で染まり、やがてそれは血の雨となって第三艦隊に降り注ぐ。

 

 

「さぁ、宴の終焉よ?もっと叫びなさい♪」

 

 

 竜騎士たちは混乱で阿鼻叫喚の中、レミリアが自分たち目掛けて突撃していく様子を見て、さらに阿鼻叫喚の嵐となる。恐怖が限界に達して失神する者もいるが、そうした者はワイバーンロードが必死に落ちないように移動し、それでも落ちてしまった者はパチュリーの水の壁に呑み込まれて跡形もなく消滅する。

 

 

「紅符【スカーレットシュート】!!」

 

 

 レミリアは槍の刃先を敵に向け、一気に突撃した。彼女が通ると、その速度故に、竜騎士たちには紅い光が通り過ぎかのように見えた。そして、その紅い光が通り過ぎると竜騎士の姿はどこにもなく、ただワイバーンロードの肉塊と竜騎士の肉塊と血が落下していく光景だけが広がっていた。

 レミリアはそれを何回も往復して繰り返す。パチュリーが放つ水の弾幕を華麗に避けながら竜騎士とワイバーンロードだけを正確に狩っていく。

 

 こうして、レミリアとパチュリーが交戦を開始してから約30分とかからずにワイバーンロードの全滅という形で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上空のワイバーンが全滅したのを確認したゆかは、即座にある命令を下す。

 

 

「主砲、()()()()装填!!目標、敵艦隊!!」

 

 

 その命令に従うように、紀伊の主砲の照準が敵艦隊のど真ん中に合わさる。レールガンモードになっている主砲は、今か今かとその力を解き放つ時を待っていた。

 

 

「撃ち方、始めぇ!!」

 

 

 紀伊の戦場伝説………という名の一方的な蹂躙劇が幕を開けた。

 

 

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