皇国の幻想〜異世界へ〜   作:大和ゆか

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第五十三話 血で染まるパーパルディア

 時は少し遡る。

 

 

「ここが日本……」

 

 

 日本皇国の首都である東京で、一人の男性が自身の常識が崩れるほど発展した街並みを眺めていた。

 列強第一位の神聖ミリシアル帝国でも、ここまでの発展していると聞いたことがない。彼は、祖国はなんて国に喧嘩を売ったのかと内心憤慨しながら、本国の命令を実行するために人が沢山集まる場所に移動する。

 

 

「蛮族がこのような都市を作るなど……」

 

 

 彼の表情は青褪めて、若干千鳥足になっているが、それに()()()()()()()。彼のことが見えていないかのように、人々は通り過ぎていく。

 

 

「だが、これで蛮族どももここで終わりだ!」

 

 

 一人でブツブツ言いながら直感を頼りに進んだ彼が辿り着いたのは、渋谷スクランブル交差点。ここは、日本国時代と変わらず人々の往来が多い場所である。

 彼はそこの歩道にいた。フラフラしながら、そのまま車道に侵入する。その時の歩行者用信号はだった。

 

 

「ガッ!」

 

 

 ただでさえ人の往来が多い場所で赤信号の交差点を渡る、加えて周りに気付かれない人物が渡ればどうなるか。答えは簡単。

 

 

「ん?今何かぶつかったような……」

 

 

「気のせいじゃない?周りに誰も轢かれた人なんていないわよ?」

 

 

「そうかな?」

 

 

 答えは轢かれる。そう、彼は轢かれて吹き飛ばされた。

 

 

「グッ!おのれぇ…、俺は魔帝の遺産を使っているのだぞ!!まさか、バレているのか!」

 

 

 彼はそう言っているが、実際は偶々轢いただけである。そもそも、車の往来が多い道路の赤信号を堂々と渡っていたのだ。しかも、姿が見えない状態でだ。どう足掻いても轢かれるに決まってる。

 彼の姿が見えないのは、彼が口にした通り魔帝の遺産を使っていているからだ。その名は、『魔導光折服』。光を屈折させて姿を隠すことができる服で、オンオフの切り替えが可能な服である。所謂、『光学迷彩服』である。

 しかし、これはあくまで姿を消すだけであり、すり抜ける効果など有りはしない。轢かれたのも頷ける。

 

 

「バレていないと思うよ〜」

 

 

「そうか!!確かに、蛮族どもが魔帝より優れているはずがないものな!!やはり、魔帝の遺産は素晴らしい!!」

 

 

「すごいね!!どういう仕組みなの?」

 

 

「おっ?気になるのか?良いだろう!説明しよう!」

 

 

 こうして、彼は横にいる若干冷気が感じられる男性に服の機能を自慢しながら説明する。横の男性はうんうんと相槌を打ちながら話を聞いた。心なしか、彼の目が輝いているような感じがした。

 

 

「すごいんだね〜」

 

 

「そうだろう!!そうだろう!!…………ん?」

 

 

 ここで彼は気づく。横の男性、日本人ではないかと。

 

 

「なっ!?いつの間に!?」

 

 

「あっ!ようやく気付いた?」

 

 

 肝心の日本人男性は、彼が驚いているのにどこ吹く風だ。笑顔で彼のことを見つめている。

 

 

「な、何故わかった!!俺の姿は他の人には見えないはずだぞ!!」

 

 

「へぇ、確かにそうだね。()()、ならね」

 

 

 男性は()()を強調して言った。そして、指を鳴らす。

 

 

「見て、あれ!!」

 

 

「雪さんの前にいる人って….」

 

 

「あの人ってパ皇人じゃない?」

 

 

 瞬間、周りの人に彼を認識され始めた。その全員が、彼のことをパーパルディア人だと認識している。

 男は訳がわからなかった。姿が見えないんじゃなかったのか。なんで、まるで自分のことを見えているかのように、みんなこちらに視線を向けているのか。

 男は焦る。彼がここにいるのは、少しでも日本に損害を与えて自国民が殲滅されないようにするため、パーパルディア皇国皇帝ルディアスから日本国内で暴れろという命令が出されたからだ。その任務は、日本に潜入して人が多いところに辿り着くところまで順調だった。だが、目の前の男のせいでそれが崩れた。

 冷や汗が止まらなくなる男。それを見たその場にいる別の男は、何故バレたかを聞きたいか問いかけてきた。

 

 

「ねぇ、聞きたい?何故バレたか」

 

 

「………」

 

 

 男は極度の焦りからか、彼の話が耳に入っていなかった。

 

 

「まぁ、答えなくても勝手に解説するんだけど」

 

 

 彼は、ポケットから立体映像投影装置を取り出して起動する。投影されたのは、男の今までの行動記録の映像だった。

 

 

「これ、誰だと思う?」

 

 

「なっ!?」

 

 

 日本に潜入してからの自分の行動が空中に投影されているのを男は見た。正確には、見せられただが、男の顔がどんどん青褪めていくのが分かる。

 

 

(俺は泳がされていたのか!?)

 

 

 男は、自分の行動を常に把握されていることに気付いた。

 彼は続ける。

 

 

「確かに魔帝とやらの技術は凄いと思うけど、正直言って古いんだよね」

 

 

「古い、だと」

 

 

「うん。だって、それで服で例えると、所詮姿を消すだけでしょ?だから、センサーには反応するし、これのように解析されて映像にも残せちゃう。正直、欠点だらけとしか言えないね」

 

 

 彼は、一息ついて、さらに続ける。

 

 

「それに、日本にかかれば姿を消すぐらい簡単なんだよね。逆に、見つけることも」

 

 

 彼はそれを実際にやってみせた。姿を消すのは悪戯用光学迷彩スーツで、見つけるのは腕時計型生体反応探知機で行ってみせた。なんか場に合っていない単語があったが、それはご愛嬌だろう。

 悪戯用光学迷彩スーツは、名前の通りで悪戯用に作られたスーツである。良くドッキリ番組で使われている物で、彼はそれをオーダーメイドで手に入れていた。

 腕時計型生体反応探知機も、名前の通りである。簡単に言えば、腕時計サイズに小型化した生体反応探知機であり、性能はこちらの方が低い。だが、周囲1kmは確実に探知できるので、充分である。

 

 その説明を聞いた男は、さらに焦る。焦って、思考が杜撰になる。

 

 

(見つかった以上、始末されるのは時間の問題。ならば、少しでも道連れを増やさねば!)

 

 

 男は、懐に隠してあったダガーを持って目の前の男に襲いかかる。逆手に持って、素早く首を狙う。

 

 

「へぇ、そう来るんだ」

 

 

 襲われた男は、襲われたというのに満面の笑みを浮かべている。その笑みは、襲った男にとって恐怖を抱くものだった。

 襲われた男は、首に迫るダガーを懐から出したナイフで鍔迫り合いの形で止める。それと同時に、男の横腹に蹴りを入れる。

 

 

「まだ話は終わっていないよ」

 

 

 彼は、蹴り飛ばした男を見つめる。

 

 

「あなたが見つかったもう一つの理由、知りたいでしょう?知りたくなくても勝手に話すけどね」

 

 

 彼の蹴りの威力が想像以上だったのか、痛みを堪えながら立ち上がる男。彼は、勝手に理由を話す男の話に耳を傾けながら痛みが治るのを待つ。

 

 

「あなたのその服は光を屈折させて見えなくしているだけ。ならば、その光を狂わせればいいだけ」

 

 

 彼は周りに氷の結晶を生み出しながら説明する。男は、彼の力に驚愕する。

 いきなり姿が見えるようになったのは、彼の能力によるものだった。男の周りを小さな氷の結晶で囲えば、光はその氷の結晶で反射する。反射した光はまた別の結晶で反射する。そうすることで、常にランダムな方向から光がスーツに当たる。結果、光学迷彩のような技術を使っているスーツは意味なさなくなる。それを彼はやったのだ。

 

 

「だ、だが、そんなに使えば魔力はいずれ尽きる!!」

 

 

「これ、能力だから。魔力使わないよ」

 

 

 男は黙ってしまう。彼はさらに続ける。

 

 

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよね」

 

 

 彼は、手元のナイフをクルクル回しながら刃先を男の方に向ける。

 

 

「ちょうど退屈してたんだ。せいぜい楽しませてね!!」

 

 

 そう言った彼、冬花雪は笑顔で男に斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国 皇都エストシラント 日本占領地

 

 本格的な進軍を開始してから数時間後、日本軍はもうエストシラントの半分まで制圧していた。本来ならいるはずの民兵や正規軍は、上陸前の猛烈な艦砲射撃により消し飛ばされている。よって、彼らがやることは、抵抗してくる生き残りを始末することだけであった。だが、その始末している人物は、ゆかの命令により合流したレミリアがほとんど行っていたため、彼らは上陸してから銃を一発も撃つことはなかった。

 

 

「本当、数だけはいるのね、パーパルディアとやらは」

 

 

 レミリアはまた一人現れたパーパルディア兵を地面から槍を出現させて串刺しにする。綺麗に心臓部を貫かれたパーパルディア兵はそのまま絶命する。

 彼女らの後ろには、串刺しにされたパーパルディア兵が串刺しにされたまま放置されていた。その全てが高く聳え立つ槍に串刺しにされている。それら全体を見てみると、真ん中だけ大きく槍がない場所があり、それが道のようになっていた。

 その道を彼女らは歩いていく。レミリアが先頭に立って、徐々に進軍していく。

 

 

「あの頃の人間より弱いわ。この国の人間は軟弱者ばかりなのかしら?」

 

 

 彼女が思い出すのは、中世の頃。そこで、彼女は討伐しに来る人間たちを蹂躙していた。だが、それでもパーパルディアより数が少ないのに関わらず結構耐えた。レミリアの攻撃を結界で弾いたり普通に避けたりなどして耐えて紅魔館の中にまで侵攻するなど、結構渡り合っていた。それを踏まえると、パーパルディアが弱いと感じるのも理解できる。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「五月蝿い」

 

 

 たまにこのように瓦礫の影から生き残りのパーパルディア兵が飛び出してくることがある。その兵士のだいたいはこちらに恨みを持っている民兵なので、クワや包丁などを手にして襲いかかってくる。それをレミリアは容赦なく地面から槍を出現させて串刺しにする。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 中には逃げる者もいる。服装から察するに民間人だろうが、レミリアは容赦なく同じように串刺しにする。

 

 

「せ、せめて、この子だけでも!」

 

 

「断る」

 

 

 赤子を抱えた母もいた。それも容赦なく同じように串刺しにする。

 

 

「き、貴様ァ!!それでもh」

 

 

「五月蝿い」

 

 

 何か言っていた人もいたが、その途中でも容赦なく串刺しにする。

 

 

「恨むなら、国民皆兵した自国の上層部を恨むことね」

 

 

 レミリアは憐れむような視線で、背後に大量にある聳え立っている槍に串刺しになっているパーパルディア人を見つめる。彼女とて、民族浄化のような行為を喜んでやりたい訳じゃないのだ。

 

 

「生体反応探知機に反応!!数100!!内20は地竜と思われます!!」

 

 

「地竜なんかいたのね。………あれ、コーンネウスは潰したんじゃなかった?」

 

 

「………何故か潰してません。今、黒岩司令に聞いたのですが、爆撃対象外にされていたようです」

 

 

「はぁ!?」

 

 

 レミリアが驚くのも無理はない。てか、この場にいる全員が驚いていた。

 コーンネウスは地竜はワイバーンなどを繁殖させる場所であることは周知の事実だ。近代戦では、こういった機甲戦力や航空戦力の生産場を潰すのが定石であり、それを空軍はしなかったのだ。

 だが、コーンネウスを攻撃しなかった理由を探るために運命を見たレミリアは、その理由に納得した。

 

 

「鹵獲目的ね。中々面白いことするじゃない」

 

 

 レミリアは笑みを浮かべる。頭の中ではどいつを下僕にしようかと悩んでいた。

 吸血鬼にとってワイバーンや地竜は下の存在であり、それらを使い魔にしたり食料にしたりしていた。故に、彼女が上のような思考になるのは仕方ないことであった。

 だが実際は、研究目的という意図があった。そのためには、状態が良いワイバーンや地竜が必要である。銃撃や砲撃で蹂躙する日本軍が状態の良いワイバーンや地竜を鹵獲するには、生け捕りにするしかない。その際、睡眠魔法とかで眠らせれれば楽かもしれないが、その魔法を使えるのは極一部しかいない。少なくとも、今回の上陸部隊の中には、パチュリーなどの少数しかいない。

 なら、どうするか。その施設を制圧すれば良い。だからこそ、生殖場を空爆しなかったのだ。

 

 

「ねぇ、コーンネウスってどの方角かしら?」

 

 

「確か、ここからだと北北東ですね。エストシラントに接しているのですぐ行けます」

 

 

 もちろん、そこまで進軍する時に皇城を包囲するのを忘れない。

 

 

「なら、行きましょう♪隊長、良いわよね?」

 

 

 ご機嫌になっているレミリアは、上目遣いで隊長におねだりした。見た目幼女からのおねだりだ。断れる者は少ないだろう。現に、隊長は1秒もかからず陥落した。

 

 

「分かった。コーンネウスを目標に進軍しよう」

 

 

「ふふっ。ありがとう」

 

 

 レミリアは羽をめいっぱい広げて空に飛び上がる。コーンネウスの方角を見ると、彼女は無数の蝙蝠に変化し、地面スレスレの低空飛行で一直線にその方向に向かう。その瞬間、その方向の生体反応が一瞬にして消失した。

 

 

「敵に回したくないな……」

 

 

 日本軍兵士の一人がそう呟く。それほどまでに彼女の力は高かった。

 

 日本軍は彼女が向かった方向に進軍する。途中、干からびているパーパルディア人の遺体があちらこちらにあった。おそらくレミリアの仕業だろう。

 

 日本軍は彼女を追うべく、進軍速度を上げる。戦車や装甲車の利点を活かした機動戦によって、瞬く間に皇城を包囲、コーンネウスにさらに接近する。

 空では、空母から発艦した震電がワイバーンロードを飛び立つ前に撃破していた。制空権が完全に日本側にある証拠だった。

 

 

 数時間後、ようやくコーンネウスについた日本軍は、レミリアが蹂躙したと思われる場所を発見する。そこは、パーパルディア兵の遺体が散乱していてまるで血の道になっているようだった。

 その道の先には、生殖場と思われる施設があった。そこにも、パーパルディア兵の遺体が散乱しており、血溜まりがあちらこちらにできていた。

 

 レミリアは、施設の上空に滞空していた。施設を見下ろす形で滞空している。そんな彼女からは、途轍もない威圧感が放たれていた。

 

 

「跪きなさい!!我が僕たちよ」

 

 

 彼女のその声に、その場にいる全ての地竜やワイバーンロードが跪いた。生物の本能なのか、レミリアの威圧感は、地竜やワイバーンロードを彼女が格上の相手と結論づけさせるのには充分だった。

 

 

「どうかしら?隊長。これでコーンネウスの制圧は完了したわ。後は、残党処理だけよ」

 

 

「あ、ありがとう」

 

 

 レミリアは地面に降りて、隊長に近づき報告する。彼女の服装はパーパルディア人の返り血で染まっていた。それを見た隊長は、言葉を詰まらせながらもなんとか冷静さを保つ。

 

 レミリアが歩いた場所は、返り血が滴り落ちて紅い道のようになっていた。それは、彼女の強さを周りに知らしめるのに充分だった。

 彼女がいる間、パーパルディア兵の奇襲が減ったのが、それを証明していた。

 

 

「そろそろ次の場所を制圧しに行くわよ!!」

 

 

 レミリアは、そう張り切りながら進軍を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、パーパルディアの奥地に進撃しているのはこの戦線だけではない。全ての戦線において、日本軍は圧倒的な実力で蹂躙していった。

 その戦線のうちの一つでは、ある人物を中心となって蹂躙していた。

 

 

「おら!!くらえぇ!!」

 

 

ドォォォォォォォォォン!!!

 

 

 その人物は、片手で爆弾が大量に入った大型トラックを持ち上げて敵にぶん投げていた。明らかにトラックの使い方が違うが、それを何度もやって敵兵を爆散させていった。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハ!!!やはり!!やはり爆発は芸術だ!!」

 

 

 彼の名は爆坂真威人。見ての通り、爆弾魔である。にも関わらず、旅団隊長を務めている人物でもあった。

 彼はトラックを片手に戦場を駆け回り、投げ飛ばして敵を倒す。そのためか、ここまで進軍するのにトラックを50両以上を既に投げ飛ばしていた。しかも、その全てが大型トラックのため、敵兵は跡形もなく消し飛ばされている。

 

 

「はぁ。もう少し静かにしてくれないのかしら?」

 

 

 そんな彼を見て、ため息をつく人物がいた。

 

 

「おい!!あの弱そうな女を狙え!!」

 

 

「………日符【ロイヤルフレア】」

 

 

 日本軍と応戦しているパーパルディア兵はその人物を狙う。だが、その次の瞬間には、彼らは小さな太陽で消し飛ばされていた。

 

 

「どうだ!!パチュリー!!君も爆弾を愛さないか?」

 

 

「いやよ」

 

 

 ため息をついていた人物は、パチュリー・ノーレッジ。パールネウス方面に進軍する日本軍に合流した人物だ。つまり、今交戦している場所は、パールネウスだった。

 パールネウスは、聖都と言うだけあって、雷作戦で守備隊ごと壊滅してからも新たな守備隊が派遣されていた。つまり、現時点で一番堅い場所の一つがパールネウスということになる。

 

 パーパルディア兵は今までの戦いで学んだのか、簡易の防御陣地として塹壕を作るようになっていた。かつて巨大な壁があった場所に長い堀が掘ってあり、そこでマスケット銃を構えていた。

 対する日本軍は、戦車や装甲車を盾としながら進軍することに変わりはなかった。だが、相手が塹壕を作ってきた以上、これまで以上に警戒しながら進軍しなければならなかった。

 

 

「ヒャッハー!!ドローンの雨だ!!」

 

 

 爆坂は、塹壕戦を仕掛けてくるパーパルディア兵に対し、ドローンによる自爆を命じた。それは、彼らに追従している装甲車の中に38式装甲車ホ型があり、大量のドローンを制御することが可能だったからだ。

 

 小型トラックに付けたドローン射出機から大量のドローンが射出される。ドローンは大型トラックに乗せてあり、そこからドローン射出機で勢いよく射出させる。

 射出されたドローンは、すぐさま38式装甲車ホ型のドローン制御装置に接続され、その制御に従いながら敵兵に突っ込んでいく。パーパルディア兵から見れば、鉄蟲がこちらに突っ込んできて自爆するという恐ろしい兵器だ。しかも、空から突っ込んでいくため、塹壕は無意味と化す。

 そんな状況のパーパルディア兵の様子は、阿鼻叫喚という他なかった。なにせ、鉄蟲がフラフラとランダムな動きをしながら突っ込んでくるのだ。撃ち落とそうにも的が小さくて撃ち落とせない。そんなことをしているうちにどんどんパーパルディア兵が次々と死んでいく。

 たった数十分。たった数十分間ドローンによる自爆攻撃を行った結果、パーパルディア兵はドローン特有の音だけで恐怖でパニックになるようになっていた。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハ!!!脆い!!あまりにも脆いぞ!!パーパルディアよ!!」

 

 

「少し黙ってもらえないかしら、真威人。それに、彼らが脆いのは現代戦に慣れていないんだもの、当たり前じゃない」

 

 

 冷静に爆坂に言うパチュリー。その間にも、ドローンによる自爆攻撃は続いていた。

パールネウスにいる守備隊は、確認できているので約7500人。確認できていない者も含めると、恐らく9000は超えるだろう。それら全てに向けて、ドローンは突っ込んでいく。

 

 

ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

「や、やめろぉ!!!」

 

 

「く、来るな!!」

 

 

「お、落ちてくれ!!落ちてくれぇ!」

 

 

ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

 パーパルディア兵は必死の抵抗を試みる。だが、不規則に動く小さなドローンを撃ち落とすのは難しく、抵抗虚しく突っ込まれて絶命する。

 

 パールネウス守備隊の数が半減したことを確認した爆坂は、ドローン攻撃を継続しつつパールネウス奥に砲撃を与えるよう指示した。

 その命令を聞いた後方で待機していた迫撃砲部隊、ロケット砲部隊は、「待ってました!」と言わんばかりに装填を高速で行い、すぐさま発射した。

 迫撃砲部隊は、34式130㎜迫撃砲、34式85㎜迫撃砲を主力としている部隊で、ロケット砲部隊は、35式多連装ロケット砲を主力としている部隊である。

 それらが放った迫撃砲弾とロケットは、パールネウス守備隊の後方を見事に荒らしまわった。綺麗な面の攻撃で、後方にあった弾薬庫や地竜などを悉く潰した。

 

 

「おい!!弾薬庫がやられたぞ!!」

 

 

「地竜もだ!!どうするんだ!」

 

 

「か、勝てるわけねぇ!!俺は逃げるぞ!!」

 

 

「待て!!死守命令が出ているんだぞ!!」

 

 

 後方を直接攻撃できることを知ったパーパルディア兵は、混乱状態に陥った。中には、逃げ出す者もいる始末だ。

 剥き出しだった弾薬庫を潰され、防衛線の継戦能力が格段に低下する。それなのに、日本軍は一向に近づいてこない。遠距離からドローンで攻撃している。

 

 

「さて、そろそろ仕上げといこうか!!パチュリー!!」

 

 

「やっぱり私なのね」

 

 

 パチュリーは残りのパーパルディア兵にトドメを差すため、空中に飛び上がりスペルを発動する。

 

 

「『闇夜を照らす無慈悲な女王よ、静寂を語る最古の力を持って、目の前の敵を薙ぎ払え!!』

 

月符【サイレントセレナ】!!」

 

 

 その瞬間、パチュリーの周りに数多の魔法陣が展開され、そのそれぞれの魔法陣から一つのビームが発射される。放たれたビームは、塹壕に籠るパーパルディア兵を寸分の狂いなく貫いた。

 それを見ていたパーパルディア兵たちは、さらに混乱に陥った。だが、彼らに対する攻撃はまだ止まない。

 

 

「ヒィ!!足元に魔法陣が!」

 

 

「逃げろぉ!!」

 

 

 パチュリーが展開した魔法陣は、次にパーパルディア兵の足元に展開された。それは、後方にいるパーパルディア兵の足元にも展開されている巨大な魔法陣だった。

 その魔法陣はやがて光り、上空目掛けて複数のビームが放たれる。無論、それを逃れる術を彼らは持たない。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハ!!!偶然にも逃れた奴らをドローンで殺れ!!」

 

 

「ブレないわね、あなたは」

 

 

 呆れたように言うパチュリー。そんな彼女らの上を大量のドローンが通過していく。ドローン制御装置にて制御されているドローンは、生体反応探知機と組み合わさってえげつない性能を発揮していた。

 

 

「……なんか可哀想に思えてくるわね」

 

 

 パチュリーがそう呟いたのも悪くないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 各戦線で暴れ回る紅魔勢。それ以外の戦線でも、日本軍は一方的に暴れ回っていた。

 八カ所に上陸した日本軍は、それぞれがそれぞれの方向に進軍するのと同時に、各戦線との合流を目指していた。

 最初に合流したのは、やはり上陸地点付近であった。そこは戦艦からの艦砲射撃で生き残りのパーパルディア兵などいないはずであり、実際その通りであったためにすんなり合流できた。

 

 現在、パーパルディア本土攻略に参加している兵力は30万×8で240万人が参加していた。国民皆兵したパーパルディア兵の数はそれ以上であるが、それは属領含んだ人口であるため、実際は半分以下の数となっている。それに加えて日本軍の猛攻で正規軍のほとんどが死に絶え、抵抗しているのが民兵と生き残りの正規軍しかいない状況だった。

 だが、それでもパーパルディアは降伏しない。それをわかっている者は生きるのを諦めて投降する。が、その者は日本の捕虜となって生きている。

 日本は民族浄化をする気がない。逆に丁寧に扱ってくれる。そういったことを捕虜のパーパルディア人が戦っているパーパルディア人に伝える。その行為で、民兵や正規軍の中で降伏する者がちらほら出てきていた。

 

 

「溶岩作戦、無事進行中です。パーパルディアの各地が戦火に包まれています」

 

 

「抵抗も予想通りか?」

 

 

「はい。エストシラントも包囲したとのことです。潜入している諜報員からはルディアスとレミールは脱出していないとも」

 

 

 日本軍は、上陸後すぐに溶岩作戦に移行していた。この作戦は、パーパルディアを降伏させることを目的としている。完全に上陸が完了してからの戦いは、全て溶岩作戦の作戦行動のうちに入っていた。

 これまでの日本側の戦死者はゼロ。それはこの戦いであっても変わりはなかった。激しい抵抗を受けるが、それも意味をなさずに日本軍は各地を制圧していく。

 

 パーパルディア皇国は、圧倒的な日本を前に、パーパルディア人の血で染まっていった。

 

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