ネクロマンスの中で誰が一番武術に優れているかと問われたら、皆が『大和ゆか』か『黒岩煉』と答える。ゆかはそのように作られた存在だし、煉は家系故というものがある。それに加え、煉は武術や武器の扱いの天才であった。どのような武器でも容易く使いこなせ、拳でも他者を圧倒するほどの才能があった。
逆にこの2人に同じ質問を問いかけると、2人とも違う人物の名前があがる。2人の回答は同じだが、この2人の名前と違う人物だ。
その人物こそ、冬花雪。見た目は水色の髪をした美少年であり、氷のような水色の瞳をしている人物だ。そんな彼を彼らは天才と称している。
彼の武術を一言で表すとすれば、『舞』という言葉が的確だろう。遊んでいるように見えて、舞を舞っているようにも見える。さらに、自身の能力である『
かつて、ネクロマンスが軍事クーデター組織だったころに起きたネクロマンスvs政府軍の内戦では、彼はその力を使って煉より上のキルスコアを叩き出していた。その後も、第四次世界大戦、第五次世界大戦といった戦争にも参加し、同じように暴れていた。
このことから見て分かる通り、雪は煉と互角、もしくはそれ以上の実力があると言える。
そして、現在、雪は満面の笑みで日本に
なにしろ、工作員の方は冷や汗を流しながら必死に応戦しているのに対して、雪はまるで遊んでいるかのように工作員の周りをグルグル回りながら応戦している。
「ねぇ、あなたってその程度なの?」
「ぐっ!?」
工作員は喋る暇がないと言わんばかりに歯を食いしばりながらダガーを振り回して雪のナイフを防ぐ。ところどころ氷の槍が降ってくるが、それも弾きつつ雪と応戦する。
工作員は、パーパルディアの中でも突出したダガー使いだった。ダガーを投げたりダガーで斬ったり、その他にも暗殺者のような動きをしてターゲットを暗殺したこともあった。
しかし、今回は相手が悪いとしか言いようがない。なぜなら、雪は彼を超える実力の持ち主だからだ。
「
【
工作員は、上手く致命傷となり得る攻撃をなんとか弾いていた。雪が放った氷の槍の雨も、攻撃に当たりながらも直撃をかわしていた。
「【
埒が開かないと感じた雪は、氷の霧を発生させる。工作員の周りが氷の霧で覆われて、小さい氷の粒に光が反射して幻想的な光景を作り出す。
「ぐっ!ガッ!」
だが、この霧は吸ってしまうと肺が凍ってしまうものであった。さらに、小さい氷の粒が肺を攻撃するため、工作員は胸を抑えて痛みに耐えていた。
「ゴホッ、ゴホッ」
咳き込み、肺の痛みに耐えながらも雪の攻撃をなんとか弾く工作員。だが、だんだんとその動きが鈍くなってきていた。その証拠に攻撃を受ける回数が増えてきていた。
傷が増える工作員を見て、雪はギアを1段階上げる。雪のスピードが上がり、そのスピードは、体力が減っている工作員では反応できなくなるほどだった。
「【氷雪の舞】!!」
やがて、雪は一気に攻め立てる。自身の周りに氷の霧を発生させて回転させる。それは盾にもなり矛にもなった。
その状態で雪は再び工作員に斬りかかる。彼はナイフを上から斜めに首を狙って振り下ろした。工作員はそれを反射で防ぐ。だが、防いだと同時に雪は工作員の背後に一瞬で移動していた。
「終わりだね」
雪は隙だらけの工作員の首目掛けて、一直線にナイフで横薙いだ。
「ふう」
絶命した工作員を横目に、雪は辺りを見渡す。辺りには、ボコボコになったアスファルトがあった。工作員はそのようなことはできないので、完全に雪の仕業である。
工作員による被害は皆無だったが、雪が戦闘した際の被害は多かった。
「まぁ、楽しめたしいっか♪」
そう言った雪は、その場から離れたのだった。
尚、終戦後にゆかから怒られたのは別の話。
中央暦1639年7月25日 パーパルディア皇国 地方都市 アルーニ
「おい!!援軍はまだか!!」
「ダメです!!どことも連絡がつきません!!」
まだ日本軍が進軍していない地域である地方都市アルーニでは、パーパルディア皇国から離反した全ての属領が連合を組んで攻勢をかけていた。
パーパルディアの絶対防衛ラインの一つであるこの場所は、彼の国によってかなり要塞化されていたが、それでも戦況はパーパルディア側の不利な状況で推移していた。
理由として、日本の攻撃でほとんどのパーパルディア軍が壊滅したこと、現在のアルーニ戦線を支えているのが少数の属領統治軍と国民皆兵で徴兵された民兵だったこと、連合側の武装が明らかにパーパルディアのマスケット銃より高性能だったことがあげられる。事実、連合側、通称『73カ国連合軍』は、日本から無償提供された第二次世界大戦レベルの銃を使用していた。対して、パーパルディア側はマスケット銃とかなりの技術格差があった。故に、対抗できないのは必然だった。
「くそっ!!反乱軍がこれほど強いなんて聞いてないぞ!!」
「喋ってないで、とにかく撃ち続けろ!!」
パーパルディア兵は大混乱しながらも、なんとか持ち堪えていた。だが、不利な状況は変わらない。
たまに日本の爆撃が飛んできて要塞の一部が吹き飛ばされたことがあるが、目の前の大量の敵軍と比べたら向こうの方が楽だった。
「あ!!あれは!!」
すると、パーパルディア兵の1人が連合軍側からやってくるワイバーンの姿を目撃した。その国章には、パーパルディアの隣国の国家の国章が描かれていた。
「リーム王国だ!!奴ら、ハイエナしてきやがった!!」
数にして100騎。現在のパーパルディア軍にとって、それは多すぎる数であった。迎撃に出たワイバーンロードは僅か12騎しかおらず、たちまち数の暴力に押しつぶされる。それでも、75騎以上落としたのは、パーパルディア軍の竜騎士が精鋭だったからだろう。
突如参戦してきたリーム王国は、パーパルディアの北側に位置する国家であり、第三文明圏の中で数少ない文明国として扱われている国家である。また、領土的野心を持つ国家でもあり、今回の参戦も、パーパルディアが弱体化したのを見計らってパーパルディアの領土の一部を得るために参戦したという経緯があった。
今回の戦いでは73ヵ国連合軍の盟主になり得る存在であり、実際にそのような振る舞いをしていた。しかし、リーム王国を事前に予め調べていた日本は、アルタラス王国を盟主として73ヵ国連合軍に支援を開始した。
「パンツァーファウスト、撃ち方始めぇ!!」
この兵器も、日本の支援によって無償提供されたものであった。対戦車兵器として名高いこの兵器は、この戦線でも、敵の機甲戦力を削ぐことに成功していた。
「
その対戦車兵器を撃っている者の背後から、謎の大型トラックが飛んできて敵のど真ん中で大爆発を起こした。味方はその光景に開いた口が塞がらなくなっていた。
「ふーーん!!爆撃投げでも爆坂に負けないぜ!!」
ここに2人目のトラックの使い方が間違っている人物が参加していた。
その人物の名は、
彼は先ほどの発言にも分かる通り、爆坂とよく勝負をしている。だからなのか、意気投合しやすく、爆弾投げの件も、
問、目の前に敵がいます。どうしますか?
答、爆薬を大量に詰めた大型トラックを投げて木っ端微塵にします。
と、意見が合っていたほどだ。誰も止めないのかと聞きたいところだが、トラック投げはゆかや未来もやっているため、これが普通と化していた。しかも、その度に敵兵を木っ端微塵にして簡易基地も木っ端微塵にしていた。
これらを見ると、トラック投げは新たな戦法として有効かもしれない。
「今だ!!前進せよ!!」
そう命令を下すのは、73ヵ国連合軍に日本から派遣された軍事顧問である。実は、第五十一話にてゆかが潜水艦隊に通信した『根は崩れた』は、潜水艦隊に乗船していた義勇軍+軍事顧問派遣の合図であった。それにより、73ヵ国連合軍の戦力は大幅に増加していた。
約3000名の日本義勇軍は、各地で大暴れしていた。なにしろ、この義勇軍はネクロマンスから派遣されたのだ。つまり、ほとんどが能力者で構成されていた。
「全員、下がれ!!!てぇ!!」
それに加えて、ネクロマンスからある部隊が派遣されていた。
「全弾命中!!効力射!!」
「了解!!全艦、この長門に続け!!」
「私の火力見せてあげるわ!!Open,Fire!!」
上のセリフから分かる通り、艦娘部隊が派遣されていた。あの2人の魔改造によって陸上での攻撃が可能になっているため、装甲が硬い戦艦である長門、アイオワを派遣していた。尚、KAN -SEN部隊は別の戦線に派遣されているとのことだ。
艦娘部隊を指揮しているのも軍事顧問だった。そして、移動砲台のように暴れ回る艦娘たちは瞬く間に前線の敵軍を殲滅した。それに合わせて73ヵ国連合軍は前進を再開する。
こうして、地方都市アルーニはその日のうちに陥落したのだった。
一方別の場所でも、73ヵ国連合軍は奮戦していた。その場所は、パールネウス。かつてのパーパルディアの皇都であり、現在聖都と呼ばれている場所である。
この戦線は、既に日本軍が簡単に突破して後方に浸透して敵兵を殲滅していた。だが、まだ残党が後退しながら応戦していた。そこで、この戦線に73ヵ国連合軍の一部を投入して練度上げの舞台にさせようとした。
そうして投入されたのは、アルタラス王国軍だった。それに加えて、攻撃支援としてKAN -SEN部隊が本国から派遣された。派遣されたKAN -SENは、ニュージャージー、ビスマルク、駿河の三名。どれも戦艦であった。だが、その実力は本物で、アルタラス王国軍の目の前で艤装を展開して砲撃をしている様子は、彼らにとって驚愕以外の何物でもなかった。
「な、なんなのですか、あれは?」
「あれはKAN -SENといって、簡単に言えば、軍艦が擬人化した存在です。つまり、人と軍艦、両方の性質を併せ持つのがKAN -SENということです」
「そ、そうですか…」
アルタラス兵はよく分かっていないようだが、KAN -SENたちは変わらず残党狩りをアルタラス王国兵とともに行っていた。とは言っても、ほとんどはKAN -SENの砲撃によって戦う前に肉塊になっている。
「どうですか、パチュリー。辺りに敵はいますか?」
「今のところはいないわね。さらに進みましょう」
こうして、パールネウスもその日のうちに残党狩りが終わり、数日後には、アルーニから進軍してきた73ヵ国連合軍と合流するのだった。
中央暦 1639年7月30日 パーパルディア皇国 皇城
パーパルディア皇国から見た戦況は最悪の一言に尽きた。国民皆兵までしてなんとか数を揃えたはいいものの、日本軍の力は圧倒的であり、損害の一つすら与えることができなかった。それは今も変わらず、戦線がどんどん押されている。
現在の戦線は、皇都であるエストシラントは皇城以外占領され、皇城は包囲されている。それ以外だと、パールネウス方面の防衛線は崩壊し同場所は占領された。エスタリアはまだ粘っているが、そこの占領は時間の問題だろう。
他の戦線も同様だった。日本軍の攻撃によってほとんどが廃墟や瓦礫と化し、かつてのパーパルディアは見る影もなかった。
皇城には、緊急御前会議と同じメンバーが集っていた。エストシラントは戦場になり、ここから出ようにも出らなくなったのだ。
そのメンバーの一人、カイオスは、配布されたエストシラント防衛戦の戦闘詳細を見て、さらなる絶望に見舞われていた。
「資料に書いてありますが、私の口からも説明いたします」
アルデは、目にクマを浮かべながら疲れたような表情で続ける。
「7月21日、午後に日本軍から本格的な攻撃が再開されました。それまでは、空からの攻撃にとどまっていましたが、今回は海からも攻撃が行われました。
制海権が向こうにある以上、それを阻止するのは不可能であり、多数の戦艦からの艦砲射撃により各地の沿岸部は壊滅しました。無論、ここエストシラントも例外ではなく、この攻撃によって属領から引き揚げて皇都の防衛を行っていた属領統治軍の8割以上を喪失。事実上、全滅しました」
ここまで来ると、もはや誰も喋らない。ここにいるのは、ただ日本の力に圧倒されて心が折れている者、折れかけている者だけであった。
アルデはさらに続ける。
「その後、日本軍は多数の日本軍を上陸させ、瞬く間に各沿岸部を占領しました。報告から推定される日本軍の規模は、少なくともエストシラントだけで10万人以上となります。尚、これら全てが正規軍なため、武器の供給が間に合っていない民兵では太刀打ちできないと思われます」
アルデが語った日本軍の数に場はどよめく。前回の緊急御前会議で分かった日本の人口の多さから考えればこのぐらい当然なのだが、問題はパーパルディア側にこれを対処する能力がないということだった。
正規軍のほとんどが撃破され、属領統治軍もやられた。残りは民兵だけ。一同は、それを理解せざるを得ず、その状態で10万人以上の日本軍に太刀打ちできるはずがないのは明白だった。
「現在、我が軍は日本軍に対して地の利を生かした散発的な奇襲で応戦しています。しかし、それでもほんの少しの時間稼ぎにしかならず、既にエストシラントは皇城以外全て占領されたかと思われます」
圧倒的な日本軍に対して、パーパルディアが考えた対抗策は俗に言うゲリラ戦術だった。クレーターに潜んだり死体に紛れたり瓦礫に隠れたりして日本軍の意表を突いた攻撃を行う。
だが、それらは日本の生体反応探知機によって襲撃前に見つかっているため、意味をなしていなかった。
「アルデよ、なぜ皇城を攻撃しないのかわかるか?」
「はい。おそらく、日本側の要求にあったレミール様とルディアス様の身柄の確保を達成するためかと。皇城を攻撃しないで包囲することで、逃げられないようにする意図があると思われます」
「そうか……」
ルディアスの問いにアルデは答える。アルデのその答えにレミールはビクリと反応したが、それだけだった。
「カイオス。確か、この中で一番日本に詳しかったな」
「……はい」
「問おう。現状の我が軍で、日本に犠牲を強いることは可能か?」
「………」
カイオスは口を噤む。答えは一目瞭然ですぐに答えられるのだが、皇帝の前というのがそれを押しとどめてしまう。
だが、カイオスのその反応で、皆が答えを察していた。だからこそ、ルディアスはカイオスに答えるように促す。
「正直に言っていい。余含め皆察しておる。カイオスに聞いたのは、ただ答え合わせをするだけだ。もう一度問う。現状の我が軍で日本に犠牲を強いることは可能か?」
「………不可能です。国民皆兵して数を補っても、武器の供給も練度も何もかも足りない状況です。逆に相手は日本の正規軍。技術格差もある以上、勝てる要素が一つもありません」
カイオスは内心項垂れながら答えた。
「しかし、降伏してもこちらから殲滅戦宣言している以上、パーパルディア民族が滅ぼされる可能性があります。現に、日本軍は
いくら対策しようが日本に勝てることなど不可能なのがわかっている時点で本来なら降伏すべきなのだが、しない理由は上の事情があるからだった。これに関しては、パーパルディアの自業自得なのだが、当の本人たちはそうはいかなかった。
なにしろ、パーパルディア上層部はプライドの塊の集まりであり、蛮族だと決めつけて日本と戦争したはいいものの、想定外の強さに今は国が滅ぶまできている。救いようがないとしか言えない。
カイオスは続ける。
「ですが、つい先日のエスタリア防衛線において、ある報告があがりました」
カイオスは一息つくと、さらに続ける。
「その報告とはなんなのだ、カイオス」
「はい。それは
カイオスのその発言に、場は最大級にざわめいた。それだけ、その言葉は衝撃的だった。
これまで日本は、パーパルディアに対して殲滅戦を本気でするかのような攻撃をしていた。その攻撃は日本にとって、地球諸国にとって普通なのだが、パーパルディアから見ればそうはいかない。あの猛烈な攻撃は、パーパルディア人を民族浄化するという風に捉えられてもおかしくなかった。
そんな中での「日本軍が捕虜をとる」という報告。それは、日本側は殲滅戦する気がないと捉えることができた。捕虜にした後に処刑する可能性があるが、今のパーパルディアにとっては前者に賭けるしかなかった。
「日本軍に対して打つ手がない以上、これに賭けるしかありません。陛下、どうかご英断を」
ルディアスは悩む。列強としての権威を優先して国が滅ぶか、列強の立場を失ってでも生き残る道を選ぶか。
カイオスが言っていた日本軍は捕虜をとっているという情報があるが、皇族であるルディアスに、しかも殲滅戦宣言の中心人物を処刑しないだろうか。普通なら間違いなくするだろう。それも、当事者のレミールとともにだ。
「レミールよ。貴様の答えはどうだ?」
「………」
「レミール!!」
「は、はい!陛下!」
「貴様の答えを聞いている。降伏か徹底抗戦か」
レミールはルディアスに呼ばれて、下を向いてうわの空だった意識が完全に戻った。その時に彼女はルディアスの顔を見て、言葉に詰まった。
レミールを見るルディアスの目は冷え切っていた。それは、彼女がパーパルディアが滅びる原因を作ったからであった。
「て、徹底抗戦しかありません!!あの調子乗っている蛮族どもに懲罰を与えるのです!!」
瞬間、一同はレミールに冷ややかな目を向けた。勝ち目がない戦いだということを理解していないのかはわからない。分かることは、この瞬間、ルディアスはレミールを見捨てる決断をしたということだ。
「……カイオスよ、我が国は降伏する。余とレミールの処刑は免れんだろうが、パーパルディア人が全滅するよりはマシだ」
「ご英断に、感謝します」
「陛下!!何故ですか!!何故降伏するのです!?」
ルディアスの言葉に、みな涙を流した。だが、全て失うよりはマシだった。
これでパーパルディアは列強の座から転落するだろう。これまでの政策のせいで周辺諸国との関係が冷え切っているだろう。しかし、それでも生き残るためにやらなければならない。
カイオスは、ルディアスの言葉を一字一句聞き逃さず聞いた後、涙を流しながら皇城に白旗を掲げに行くのだった。
だが、全てが遅かった。
既に日本は最後の作戦を発動するための準備に入っていた。
故に、彼らに降伏は許されなかった。
ドカァァァァァァァン!!!
「な!?何者だ!!」
「まさか、日本軍か!?」
突如、御前会議の場に日本軍が入ってきた。彼らは、手に持っている自動小銃をその場にいるパーパルディア人全てに向ける。皇城に白旗を立てに行こうとしたカイオス、日本人を虐殺したレミール、パーパルディア皇帝ルディアス、軍の最高司令アルデ、第一外務局長エルト、その他高官、その全てが抵抗を許されず、生殺与奪の権利を日本軍が持つことになる。
「き、貴様らぁ!!私は皇族だぞ!!こんなことをして許されると思っているのか!!」
「おい!レミール!!」
銃を突きつけられているのに関わらず、レミールは癇癪を起こす。ルディアスが叱責するが、レミールの癇癪は止まない。
コッ、コッ、コッ…
そんな時、誰かの足音が聞こえてきた。その足音の主は、先ほど日本軍が爆破したドアから入ってきた。
「随分と長引いた会議だったようですね」
「久しぶりですね、レミールさん」
入ってきたのは、スーツを身に纏った男性、船橋海斗と美少女にしか見えない男の娘、大和ゆかの2人だった。
彼らは、紀伊に乗船しており、大蛇作戦終了・溶岩作戦実行時に上陸して、ここまでのんびり直行してきた。途中、民兵やらが襲ってきたが、彼らは最強能力者の一角であるため、それを瞬殺した。
城内に入った彼らは、守っている近衛兵を応援を呼ぶ暇を与えず殺害した。たまに海斗の【
会議室に入った2人は真っ先にルディアスとレミールの方を見つめた。顔は2人とも知っているが、実際に会ったのは、海斗が宣戦布告の文書を出すためにレミールと会っただけである。
「こ、子供!?何故子供がここに!?」
「誰が子供だ!!」
思わずゆかは怒鳴ってしまう。だが、すぐに気を取り直して海斗に視線を向けた。
海斗はそれに頷き、レミールのそばに寄る。
「お久しぶりですね、レミールさん。まだ生きていたんですね」
「おい!!こんなことをしてタダで済むと思っているのか!!」
「ふむ。現実と幻想の区別がついていないようですね。ゆか」
「はぁ。了解。【
ゆかは生成した水風船をレミールの顔面に目掛けて投げつける。水風船は、レミールの顔面に命中すると破裂し、彼女の顔面は水で濡れることとなった。
「な、何をする!!」
「目が覚めましたか?レミールさん」
「何をって、貴様!!」
まだ逆上しているレミールは海斗に掴み掛かろうとする。だが、それは悪手だった。なにしろ、海斗は普通の外交官に見えても中身は軍人であることに変わりはないからだ。
掴み掛かろうとしたレミールは一瞬のうちに組み伏せられた。何が起きたか、パーパルディア一同は理解できていない様子だ。
「くっ!離せ!」
「離せと言われて離すバカはいませんよ」
レミールは顔を真っ赤にして暴れるが、海斗に抑えられる。
「さて、本題にいきましょうか」
海斗がそう言った瞬間、その場にいる全員が謎の浮遊感を一瞬だけ感じた。だが、気のせいだと判断したパーパルディア一同は海斗に視線を向けたままにする。
「我々としては、ここで終わらせるつもりなど一切ないのですよ」
海斗のこの発言で、最後の希望が絶たれた気がした。カイオスはふらつきそうになる体を必死に耐える。他のメンバーも、顔を青白くさせて心なしか震えているように感じた。
すると、また浮遊感が一同を襲った。今度ははっきり長く感じた。
「だから、終わらない悪夢の中で苦しみ、もがき続けろ」
日本側の一同は、そう言うと踵を返してその場から立ち去っていった。
その間も謎の浮遊感は続いていた。気持ち悪いほどの浮遊感だ。
浮遊感を感じてから数分後、ついに
謎の白い閃光が一同を覆ったのだ。
そして、それが、
パーパルディア史上最大の悪夢の始まりだった。
その日、時が巻き戻った。
溶岩作戦 完遂
月読命作戦 発動