それでは、本編どうぞ!!
戦闘は、変わらず一方的と言うしかなかった。
「司令!!早期警戒機より入電!!敵艦隊を補足したとのこと!!距離750、方位325、数1032隻!!全て港から出ていないようです!!」
第零主力艦隊総旗艦の紀伊に乗っている総司令官の大和ゆかは、早期警戒機からの情報を聞いて、現在のパーパルディアの状況を推察する。
パーパルディアは数多のループによって、諦めや絶望ととれる感情に支配されている。一部違う人らがいるが、ほとんどのパーパルディア人はそうだった。考えることを放棄した人、精神が既に壊れた人もいる。
パーパルディア人は国に忠誠を誓い、皇帝に忠誠を誓う。故に、パーパルディア人はそれらのために戦う。だが、それはあくまで建前であり、そのほとんどは家族を守るために戦うのだろう。実際、捕虜からは、家族を生かすよう涙ながらに懇願する者までいたほどだ。
だけど、それは保証できない。なぜなら、彼らは日本に殲滅戦を宣言しており、それを受けて、日本は非戦闘員の有無問わずの無差別攻撃を実施している。市街地から離れた田舎に住んでいたならまだ助かるかもしれないが、それ以外なら生存率は限りなく低い。
つまり、パーパルディアは既に瀕死だということだ。少しでも降伏できるよう誘惑すれば、即座に食いつくぐらいの瀕死だ。現在のパーパルディアは、産業、経済、インフラなど全てがストップし、それに加えて人口は大幅に減少し、精神が無事な者は捕虜ぐらいしかいない。もしくはずっと気絶するかして意識がなかった者だ。その面から見ても、彼の国が元の状態まで建て直すのには数十年単位でかかるだろう。そこまでの、それ以上の被害を日本の攻撃で受けていた。
そして今、さらなる攻撃が振り下ろされようとしていた。
「空母機動部隊に伝達!!第一次攻撃隊を
相手は戦列艦。いわば、木造船だ。故にゆかは、対地装備でも倒せると判断した。
「艦長!!総旗艦より入電!!第一次攻撃隊を
「了解!!総員、対地装備に換装急いで!!換装完了次第発艦せよ!!」
その命令は、空母機動部隊旗艦である赤城(艦)経由で全空母に伝わった。カタパルトでは、格納庫から出されたジェット機の震電がエンジンを始動していた。ステルスモードのおかげでジェット機独特の爆音は響かず、静かにカタパルトから射出する。その横では、慌てて対地装備を増やしている妖精の姿があった。
対地装備とは、主に空対地ミサイルのことである。その他の対地装備は、無誘導爆弾や誘導爆弾、ナパーム弾など多種に渡るが、ミサイルがほとんどだった。
『それにしても、敵のワイバーンこないね〜』
『当たり前だろ?既に空軍がやっつけちゃったんだから』
『仕方ないですよ。司令は徹底的にやるように命令したんですから』
『そういえば、野分はその時の秘書艦だったわね』
空母を護衛する部隊のうちの一つである第四駆逐隊の萩風は、ローテーションで野分が秘書艦だった時のことを思い出す。その時の司令…大和ゆかは、ネクロマンス本部の作戦会議室でパーパルディアへ向けての侵攻ルートを考えていた。大まかに都市を中心としてパーパルディア本土を範囲するかのように侵攻するのだが、そのルートは既にできていて、後は見直すだけだった。野分はその横で大淀とともに次々と入ってくる情報の整理をしていて、ゆかが空軍に出した徹底的にやる命令はこの時に出されたものだ。しかし、それ以前にも同様の命令はしているので、もう一度出したということになる。
『いいな〜、のわっちだけずるい〜!』
『舞風は先月やったでしょう?』
彼女の言う通り、舞風は先月、それこそ、最初にパーパルディア皇国と交渉した日の秘書艦が彼女だった。だが、ゆかの仕事を終えるスピードが早く、暇を持て余したため彼女はゆかの勧めもあって第四駆逐隊のみんなと遊んだ。その間のゆかの様子は、第三十六話をご覧頂こう。
『仕事終わった後、頭撫でられて気持ちよさそうだったわね』
『ちょっ、萩風!?』
野分の焦ったような声が通信機から聞こえる。艦娘たちのこれらの会話は、無線を通じて行われていた。ということは、この会話は他の艦娘たちにも筒抜けであった。
『ズルいデース!!抜け駆けは許さないネ!!』
『……ここは譲れません』
『ちょっと、何やってんのよ!』
他の部隊の艦娘たちから嫉妬の声が響く。通信機越しで、火花が散る。
『ちょ、ちょっと!!今は作戦中ですよ!』
『そうです。任務中に喧嘩しないでください!』
それを宥める声も聞こえる。その中には、今日の秘書艦である浜風の声も含まれていた。
「賑やかですね」
「そうだな。変に緊張するよりかはいい」
「それもそうですね」
通信は賑やかだった。それは、ゆからが言った通り、彼女らに余裕があることの表れでもあった。
戦争は既に一方的な展開になっている。もちろんこちら側の優勢だ。だが、慢心はしていない。慢心したらどうなるか、彼女たちはよく知っているからだ。
「艦長!!第一次攻撃隊攻撃開始しました!!」
「了解!!第一、第二甲板は第二次攻撃隊発艦準備!!第三、第四甲板は第一次攻撃隊着艦準備!!」
このやり取りからわかる通り、各空母は全て、あの
「司令!!第一次攻撃隊が攻撃開始しました!!数6000機以上!!ミサイル数450000発以上です!!データリンクにより、過剰な分は全てパーパルディア皇国内にランダムに落ちるように誘導します!」
「了解!それと、
「はい!すぐに送ります!」
放たれたミサイルは、誰もいない空を極音速以上の速度で駆ける。現実なら発狂したくなるほどの量のミサイルが、停泊中のパーパルディア艦隊に降り注いだ。
まず、最初の一発が綺麗に第三艦隊旗艦「ディオス」に直撃する。いくら対魔弾鉄鋼式装甲があるとはいえ、それは気休めにもならなかった。真ん中に大きな風穴ができ、真っ二つに折れて轟沈する。それは、一瞬の出来事だった。
その轟沈を境に、次々とミサイルの直撃を受けて轟沈する艦艇が鰻登りに増えていった。明らかにパーパルディアの全艦艇より多いミサイルに、無事な船は一つもない。全て海の底に沈んだ。
パーパルディア海軍主力総艦艇数1032隻に向かっていったミサイル以外は、誘導通りランダムにパーパルディア本土に降り注いだ。数が多過ぎて絨毯爆撃の様相を呈しているが、数十万単位での光の槍の雨は、形あるもの全てを瓦礫に変えた。
そのミサイルの下を複数の戦隊が航行していた。水雷戦隊の生まれ変わりのミサイル戦隊である。この戦隊は、主にミサイル戦を中心にとり行う。水雷戦隊は魚雷戦の専門家であるならば、この戦隊はミサイル戦の専門家だろうか。魚雷の代わりに、各ミサイルを大量に積んでいる。
このようなミサイルマシマシの戦隊は、軽巡洋艦「神通」を先頭に敵艦沈没地点付近に接近していた。
「皆さん!!救命用意!!生存者を救出します!!」
「艦長!!右舷に人が!」
「船を寄せなさい!!救出します!」
水面には複数の生存者が浮いているが、そのどれもが目に光がなかった。それを見た艦娘たち、特に駆逐艦たちが「ひっ!」と悲鳴をあげる。現在のパーパルディア人のことは予め聞いていたが、実際に目にすると思っていたより恐怖を感じたのだ。
生存者を発見次第次々と救出活動を行うミサイル戦隊だが、その生存者の数は全くと言っていいほど少なかった。あれだけミサイルの飽和攻撃を受けたら「そりゃそうだ」となるため仕方ないと言えば仕方ない。何故なら、精神が崩壊している上に脱出する暇すらなかったのだから。パーパルディア自慢の超フィシャヌス級戦列艦が一瞬で真っ二つに折れて轟沈しているところを見ると、そうなるのも頷ける。
「司令!!生体反応探知機に反応ありません!!生存者は全員救出しました!」
「了解!!第二次攻撃隊は地上の建築物を片っ端から攻撃せよ!!それと同時に、戦艦打撃部隊は沿岸部に接近し、対地砲撃を行う!」
その命令を受けて、戦艦打撃部隊の旗艦「大和」を先頭に、武蔵、アイオワと約70ノットと早い速度で急速に接近していく。戦艦特有の巨大な船が急速に沿岸部に接近する様子は、側から見れば恐怖だが、今のパーパルディア人にはその恐怖を感じることはできない。だから、誰も逃げないし、逃げる気もない。
そのような状況は、心優しい大和にとって非常に心苦しかった。爆撃で生き残っている民間人諸共消し飛ばすほどの対地攻撃を行うからだ。
(けど、あなたたちは国民皆兵までして戦おうとしている。そうなったら、あなたたちはもう民間人じゃない)
大和は覚悟を決めた。日本とパーパルディアの差は誰だろうとわかるが、それなのにパーパルディアは国民皆兵した。それには彼女も驚いた。川内(艦)から聞いたが、堂々と皇帝に進言し、それが認められたらしい。つまり、国民皆兵は皇帝公認であった。ループに入ってからは、なんとか抵抗しようと、ループから抜け出そうとして稀にやっていたらしいが、結局は日本の力を前にただ殲滅されて終わる。
そして今回も、その例に当てはまる。さすがに国民皆兵はしていないが、既に相手側から殲滅戦を宣言しているため、なんの問題はない。大和は、拳に力を入れて、上空を第二次攻撃隊が通過する様子が含めた目の前の景色を脳に焼き付ける。
「すぅー、はぁ」
大和は目を閉じて深呼吸する。ゆっくりと、強く。
そうして、彼女は力強い声で命令を下す。
「各艦、跳躍攻撃用意!!主砲、副砲、全てパーパルディア沿岸に!!」
大和の主砲が回転する。彼女の自慢の51センチ陽電子三連装砲の照準が、なんの変哲もない沿岸……現在の距離からは目視できないが、衛星から確認できる沿岸に向けていた。最新のコンピュータ制御により、その照準は全ての砲において正確だった。
「弾種、三式弾改!!撃ち方用意!!」
大和は、ループ前に紀伊がエストシラントを壊滅させた砲弾を使用する命令を出した。その命令に応えるように、他の戦艦も装填する。
「艦長!!ワープ装置準備完了しました!!いつでもいけます!!」
「わかりました。全艦、撃ち方、始め!!」
多数の戦艦による艦砲射撃が開始された。レールガンモードでの砲撃で放たれた砲弾は、ワープ装置によって消失、パーパルディア沿岸に出現し炸裂した。それらが炸裂した様子は、キノコ雲を目視できたことにより確認できた。
弾着地点付近はおおよそ想像通りのことになっていた。周囲は焼け野原になり、そこに生き残りは
ドォォォォォォン!!!、ドォォォォォォン!!!
自動装填装置により、短い間隔で撃ち続ける各戦艦。砲身の寿命を気にせず、弾切れになるまで撃ち続ける。彼女らはそうしながらも、ワープ先を少しずつ変えることで全体に被害を及ばせるようにする。
「おぉ〜!壮観ですねぇ!ここは一枚」
その様子を近くで見ている艦娘がいた。重巡洋艦「青葉」である。彼女の手には、カメラが握られていた。家電量販店で普通に売っている、最新式のカメラである。
青葉は、そのシャッターを砲弾がワープする瞬間に押す。フラッシュは戦闘中なので出さないようにしているが、カメラの画面に映る一枚の写真は彼女が撮った場面を見事に映し出していた。
「これは『青葉新報』の一面は決まりですね!」
彼女はそう言いながらも撮影を続ける。笑顔で戦艦大和にカメラを向け、さらに連写する。おそらく、一番いいアングルを表紙に載せるつもりだろう。
「ん?」
1人の青葉妖精が何かに気付く。その時、今までのループでいなかった物体がソナーに反応した。
「艦長!!ソナーに感!!距離300方位260!!」
「?いつもの海魔じゃないんですか?」
青葉の疑問はループ中に起きた出来事からの疑問だった。というのも、ループ中の海戦では、たまに謎の物体がソナーに引っかかっていた。幸いにも距離が離れているため戦闘に影響はなかったが、念のために調べていた。様々な方面で調べた結果、海魔だと分かった。つまり、青葉は今回も海魔であると思ったのだ。
彼女のその言葉に、青葉妖精が即座に否定した。
「違います!!形状から潜水艦です!!対潜水艦用の生体反応探知機にも反応があります!!しかも、潜水艦とは思えないほどうるさいです!」
「うるさい?潜水艦なのにうるさいんですか?」
潜水艦はその特殊性から静音性が重視される。それは、ソナーなどの対潜水艦の技術が発達するにつれて、より必須となっていった。それに加えて水中速度や潜水時間もあるのだが、それは置いておこう。
話を戻すが、海魔の警戒をしていた青葉の聴音員の妖精は、遠くから聞こえる潜水艦特有の音を聞き逃さなかった。海魔なら海魔特有の音がするため、確実に潜水艦だと妖精は確信できた。
「あ、対潜ミサイルが放たれましたね」
それは、日本レベルの技術力を持っていなければかわすことができない必中の矢だった。無論、静音性どころかそれが考えられていない潜水艦相手ならかわすことはできないだろう。
「艦長!ソナーに再び反応!!距離450、方位30!今度は海魔です!」
「一番近くにいる吹雪が対処するとのことです!」
吹雪は、今回の作戦にあたり搭載された音波発信機を使用して、特定の音波を発して追い払っていた。逃げる方向を誘導しながら、
『……なんか、動きが変なような…?』
『そりゃないぜ。きっと音波にびっくりしただけだ、吹雪』
『そうかな〜?』
海魔は、
「肝座ってる海魔ですかね?」
『でも、時々蛇行するんですよね……岩陰に隠れるような動きで…』
「確かに、海魔にしては変ですね…」
海魔は生物であり、自身にとって恐怖となる物からは本能的に逃げようとする。吹雪が言っているのは、それがないというものだった。ゆっくり、時々蛇行しながら、まるで逃げる気がないと言わんばかりである。
「この戦いが終わったら司令官に報告しましょう。何か知ってるかもしれません」
ひとまず、ここは放置することに決めた。この場から離れていることには変わりないので、いつも通りの対応をして、後は司令官たるゆかに任せる。現在遂行中の作戦に集中するという判断だった。
だけど、別の判断をした方が良かったなんて、この時は誰も気づかなかった。
同日 15:00
『……みなさん、こんにちは。アルタラス王国王女ルミエスです』
その声は、女神のようであった。
その声は、人々に決意を、勇気を与えた。
その日、パーパルディア属領72ヵ国で一斉反乱が開始された。
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