不良男子の生活記録   作:全智一皆

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31(黒歌日記)

 

■  ■

 □月QO日

 今日は渉の様子を見に行った。私の意思で、渉の家に行った。

 不用心にも窓が空いてたから、つい入ってしまったけど、やっぱり渉は倒れてた。そりゃあんな無茶しちゃったら、人間ならぶっ倒れて当たり前だにゃー。

 ダメだよ、渉。ちゃんと自分の事は弁えてないと。そうやって無理するから、倒れちゃうんだから。

 でも、どうやらただで倒れている訳じゃないらしい。仙術でどうにか出来ないか試そうとしたら、すぐ掻き消された。

 ……多分、渉の『神器』の所為だ。もしかして、神器が意思を持ってるのかな? だとしたら、わざわざ持ち主を殺す様な真似をするのは訳が分からない。

 そうやって悩んでたら、ミッテルトが入ってきた。私を見てびっくりしてた。まぁ、いきなり知らない猫が居たらね。

 でも、すぐに「渉くんが言ってた猫ちゃんっすかね?」って落ち着いてた。

 うーん……渉と同じで、ちょっと警戒心が無さ過ぎだにゃー。

 おいでおいでってされて、ご飯を出してもらった。中々美味しかったにゃー。

 白音を庇ってくれた恩もあるし、何かしてあげれたら良いな。

 

 今後の事も考えて、黒歌としての姿を見せた。流石にこれはびっくりするだろうと思ったけど、ちょっと驚いただけですぐ落ち着いてた。

 ミッテルトは凄いにゃーって言ったら、

 

「渉くんの事でだいたい慣れてるっすから!」

 

 って言ってた。

 渉……あんまり慣れさせちゃダメだよ。

 

 

 □月QP日

 今日も渉のお見舞いに行った。相変わらず、渉は寝たきりだ。

 まるで死んでるみたいに静かで、ちょっと心配。お腹の上に座ったり胸の上に居れば、呼吸も鼓動も聞こえてきて安心するけど、ミッテルトからすぐ降ろされちゃった。

 今日はグレモリーの眷属達が来た。白音の気配がしたから、つい逃げちゃったけど。皆に愛されてるんだね、渉。

 一人の聖女―――アーシアが『聖母の微笑』という神器を持っていて、それを渉に使ってくれてた。

 けど、効果は無し。使っても使っても疲れが来ない所為で、アーシアが逆に困惑していた。

 やっぱり、渉の神器が働いてるんだと思う。

 渉に何らかの力が干渉しようとすると、渉の神器が逆にそれに干渉して『出力』を削ぎ落としてるっていうのが、私の考察。

 まぁ、私だけじゃなくてヴァーリにも協力してもらったんだけどにゃ。

 ヴァーリは、渉のアレを『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバインディング)』の『半減』と似ているって言ってた。

 

 とにかく、渉は起きそうにない。死んじゃ嫌だよ、渉。これでもちょっとは心配してるんだから。

 

 

 □月QA日

 渉の顔色が少しだけ良くなっていた。渉の気も、少しずつ綺麗になっていってる。

 渉の神器は、こうしてる間にも渉の事を治してるのかにゃ? というかそうじゃないと、説明つかないし。

 でも渉が起きる気配は全く無い。もう2日も経ってる、人間は水分を3日も摂らないだけで死んじゃうのに。

 けど、渉に何かしようとしても何も出来ない。強制的に、一定の距離まで戻される。本当、渉の神器は何がしたいんだろ。

 ミッテルトは不安で夜も眠れていないのか、目元に隈が出来ていた。ダメだにゃー、徹夜は乙女の敵なんだよ? 無理してミッテルトまで倒れちゃったら、元も子もないんだから。

 

 ミッテルトには悪いけど、仙術を使って少しだけ眠ってもらった。

 だってミッテルトが倒れちゃったら、渉はきっと悲しむから。それに、白音を助けてくれたお礼もまだしてない。

 取り敢えず、私でやれる事はやってみよう。早く元気になってね、渉。

 

 

 □月QS日

 渉が目を覚ました。まるで普通に起きるみたいな感じで、けろっと起き上がってた。

 ミッテルトが凄い泣きながら抱き着いてたにゃー。それにちょっと困惑してるのは、正直見ていて可愛かった。罪な男だね、渉。

 

「え、なんでお前居るんだ?」

 

 って、起きて早々、私が居る事にびっくりしてた。渉がびっくりする顔を見れたのは、役得だにゃー。

 ミッテルトが色々説明してくれると、私を撫でながら「お前も心配してくれたのか? ありがとな」って言ってくれた。

 いきなりはズルい。不意打ちされちゃった。

 

「もういっその事、一緒に住むか?」

 

 って言われちゃって、ついオーケーしてしまった。もう……私、こういう感じじゃなかった筈なんだけどにゃー。流石にチョロ過ぎない?

 でも、嫌いじゃない。寧ろ、心地が良い。

 ミッテルトも、悪い子じゃなさそうだし。

 

 この駒王町に居られる間は……一緒に居ても良いかな。

 

 

 □月QF日

 ついオーケーしちゃって、渉の家で暮らす事になっちゃったけど、すっごい住み心地が良い。なんていうか、すっごい落ち着く。

 安心感が半端じゃないって言うか、気を抜くとすぐリラックスしてしまいそうになる。ダメダメ、まだ完全に信用し切ってる訳じゃないんだから。

 でも、渉もミッテルトも良い子だにゃー。二人のやり取りは、見ていて微笑ましい。あれで家族じゃないのが信じられない。

 

 そんな二人が、私を家族みたいに接してくれる。そうされると、またすぐ信用しちゃいそうになる。

 渉もそうだけど、ミッテルトは渉より凄い。明るくて、純粋で、混じりっけがない。本当に良い子だにゃー。

 

 

 □月QG日

 ミッテルトは渉が学校に行ってる間、家事をよく頑張ってる。洗濯とか皿洗いとかだけじゃなくて、家の掃除まで丁寧にやっている。

 やってる事はメイドなんだけど、そういう訳ではないらしい。メイド服着てないし。そもそも仕えている訳でもないみたい。

 

「渉くんは、うちの事を『家に住まわせてるやつ』じゃなくて『一緒に住んでいる家族』だって言ってくれたっすよ」

 

 との事だ。良い事言うにゃー、渉。多分、そういう所が魔王の目にも留まったんだろうなって思う。

 でも、ミッテルトは家事が終わったら修行を始める。自分が弱い事は自覚してるから、せめて自衛くらいは出来る様にしたいらしい。

 

「うちの所為で渉に迷惑は掛けたくないっす。せめて、自分を守る為の力くらいは身に付けないとっすから。諦めるつもりは無いっすよ!」

 

 前向きだにゃー。でも良いと思う。向上心がある事は良い事だし、きっとそういう所が渉がミッテルトに心を許してる理由なんだと思う。

 

 何もしないのもアレだから、ミッテルトの修行相手になってあげた。

 ダメダメだったにゃー。でもミッテルトは落ち込まなかったし、やる気も削がなかった。自分は弱いって分かってるから、強い相手に全力を出して挑める。それも弱者の特権だ。

 頑張ってね、ミッテルト。そういうの、おねーさん嫌いじゃないよ。

 

 

 □月QH日

 渉が名前で呼んでくれた。

 いやー、いきなり机に黒歌なんて書かれた紙をぺちぺちしてただけじゃ気付かないよねーって思ってたのに、すぐ「お前の名前か?」って察してくれるの凄いにゃー。

 

「黒歌」

 

 って、ただ名前を呼ばれただけなのに、それだけなのに、すごく嬉しくなっちゃった。

 

 もうだいぶ染まっちゃってるにゃー……どうしよう。これじゃ美猴にも何か言われる、それは嫌だにゃー。

 

 

 □月QJ日

 やっぱり美猴から気が抜けてるとか言われた。相変わらずデリカシーが無いにゃー。

 まぁ、その自覚があるからアレなんだけど……でも、それもこれも渉とミッテルトが悪い。

 

 あの二人と一緒に居ると、自分がテロリストだって事も忘れてしまいそうになる。それだけ平和で、穏やかで……とても心地が良い。

 今日は帰れそうにないけど……二人におかえりって言われるのが楽しみになっている自分が居る。

 

 

 □月QK日

 渉から首輪を貰っちゃった。

 いやー……まさか首輪を嵌められるなんてにゃー。まぁ、それをすんなり受け入れちゃった私も私なんだけど。

 でも、ミッテルトが羨ましがってるのはちょっと意外だった。でも可愛かったにゃー、頬が膨れてたミッテルト。

 

 渉が指で押したら、顔を真っ赤にしながらポコポコ叩いてた。渉は笑ってた。やっぱり可愛いにゃー、そして微笑ましい。

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