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▽月QN日
嫌な気配とやらは無くなったらしい。アーサーとルフェイが謝罪してきた。
特に気にしてなかったので、すぐ許した。俺に害があった訳でもないし、何ら問題はない。
まぁ、疑問は残るばかりだったが。
上原渉……彼奴は何者なのだろうか。アルビオンのその不思議な感覚とやらは、彼奴と出会ったからだ。それまではこんな事はなかった。
アルビオンに通じる力……いや、竜種の力か? だが、アルビオンは二天龍の一角だ。
ドライグとアルビオン、赤龍帝と白龍皇。その二匹こそが二天龍、この二匹だからこその二天龍だ。それに類似するドラゴンなど聞いた事がない。
謎は深まるばかりだ。
▽月QW日
禍の団の初仕事―――近々行われる三大勢力の会議を襲撃する計画は、着々と準備が行われている。
成功すれば、世界は大きく傾くだろう。
禍の団はテロリスト集団として着目され、三大勢力を巻き込んだ戦争が勃発する日が近付く事になる。
三大勢力の会議には、上原渉も来るのだろうか? もし来るのであれば、都合が良いが。
だが……心の内では、彼奴と戦っていいものかという葛藤が生まれ始めている。理由は分からないが。
その事を、オーフィスから指摘された。
戦いたくない訳ではない。だが、彼奴と戦う事に迷いが生まれている。
本当に……不思議な男だ。
▽月^~日
準備が進む中、オーフィスが気になる事を言っていた。
「我が居る。グレートレッドが居る。アルビオンが居る。我と、グレートレッドと、アルビオン。力の欠片が一緒になっている」
無限の龍神オーフィス。その仇となる存在、或いは対となる存在―――グレートレッド。真なる赤龍神帝。『夢幻』の龍神。黙示録の赤い竜。
その力の一部が一緒になっている。オーフィスはそう言っていた。
「新たな龍。我と同じ、黒い龍が産まれようとしている。よく分からない」
俺もお前の言っている意味がよく分からなかったが……だが、何処かで新たな龍が産まれたと言いたかったのだろう。
オーフィスと同じ黒龍。オーフィス、グレートレッド、アルビオン。三体の龍の力の一部を持った新たな龍が、既に何処かに居るのだと。
▽月)(日
計画は着実に進んでいる。三大勢力の会議まであと僅かだ。
アザゼル……彼と敵対する事になるか。俺の育ての親、俺をここまで育ててくれた義理の父である彼と。
だが、それは承知の上だ。それを理解した上で、俺は力を付ける事を望んだ。
全ては、グレートレッドを倒す為だ。
上原渉。もし、お前と戦う事になったなら―――全身全霊で、お前と戦おう。
▽月[_日
襲撃は、失敗に終わった。
禍の団の計画は呆気なく瓦解した―――たった一人の人間の手によって。
上原渉……俺たちは、彼奴の力を見誤っていた。彼奴の神器、その本質から―――全てを間違っていた。
彼奴の情報を収集した上で考えてみれば、何もかもが不可解だった。
『堕落』という、力という概念自体を削ぎ落とす事で相手を弱体化させる能力。コカビエルとの戦いを見た俺は、それが彼奴の能力だと思っていた。
アルビオンは、それが全てではないと言っていた。まさしくその通りだ。あれは、文字通り単なる副産物。彼奴の『本質』が作り出した『結果』でしかなかった。
驚異的な身体能力は、『堕落』によって相手を極限にまと弱体化しただけだと思っていた。だが、コカビエルの時のあれはどう見ても常人の動きではなかった。
滅びの力による傷を負った堕天使の治癒。その場に居る悪魔達ですら違和感を持つ事のなかった、一瞬過ぎる転移。
よく考えれば考える程に、あらゆる情報が合致しなかった。
『堕落』とはあくまでも副産物、否―――奴の『本質』によって創り出された別の『神器』の能力、その実験に過ぎなかった。
その本質はもっと奥深く、もっと規模が広く、もっと強力で―――恐ろしい。
奴の神器の能力は――――――『干渉』。
生物、無機物、事象、概念……世界に存在するありとあらゆる全てに干渉し、操る力。
それが上原渉の能力だと、俺が今代の赤龍帝と戦っている最中にアザゼルがそう言っていた。
オーフィスの『蛇』を飲み込んだカテレアをすら容赦なく蹴り飛ばし、戦いながら味方全員に『干渉』して魔力の減少、肉体の負荷という『現実』すら塗り潰した。
だが、死者は出なかった。誰一人として、死者は居なかった。それどころか、負傷者すらも居なかった。
上原渉。
お前は――――――平和という世界から、遥か遠のいてしまった。
何故だかそれに……僅かだが、心が傷んだ様な気がした。
言っておきますと、登場キャラクター達の精神には一切『干渉』しておりません。これからも、そんな事はありません。