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〇月□日
今日、部室に珍しい客人が来た。
先日、木場くんが見付けた堕天使の情報から察するに犯人は上原君だと、リアスが言っていた。確かに、駒王学園の生徒で、目付きが悪い男子生徒と言えば彼以外には思い付かない。
私とリアスが呼びに来れば、彼のクラスメイトは男子も女子も等しく驚くのに、彼は平然としていた。
それどころか、かなり面倒くさそうな顔をしていました。女性相手にしていい顔じゃない。
部室に着いてから、悪魔の事についてリアスが説明を始めたら窓から逃げ出してしまった。
まぁ、確かにいきなりで困惑するし警戒はするとは思っていたけれど……まさか窓から飛び出して逃げるとは思いもしなかった。
〇月△日
放課後、小猫ちゃんが上原君を連れて来てくれた。
リアスはダメ元だったらしいけれど、嬉しい誤算だ。まぁ、兵藤君がリアスに骨抜きにされているのを見てすぐ顔を歪めてましたけど。
前半は殆ど聞き流されていたけど、途中から木場くんの神器や私の魔術を見せてからは、普通に耳を傾けてくれていた。少し意外でしたね、また逃げ出すのではなと思っていたのに。
でも、そこであまり驚かない辺りは少し変だとは思う。もう少しリアクションを取るくらいはするべきではないだろうか。
私や木場くんのを見て、小猫ちゃんに何かないのかを聞いた結果、小猫ちゃんと上原君が腕相撲をする事になった。
結果は―――上原君の勝ち。呆気なく勝負がついた。
上原君の『神器』の力なのだろうか? 所有している自覚もないのに、小猫ちゃんに圧勝するなんて……
〇月Q日
上原君が『教会』の堕天使とその仲間に接触したらしい。
レイナーレとフリード。最近この駒王町で騒ぎを起こしている堕天使と神父だ。
リアスがよく無事だったわね、と驚いていた。私もかなり驚いていた。
神器を持っているとは言っても、本人にはその自覚も薄く扱った自覚すらない。にも関わらず、二人を相手にして生き残ったのだ。
まぁ、上原君が一方的に蹴り飛ばしただけらしいのだが。
上原君は本当に人間なのでしょうか? 少し疑わしい。
○月E日
祐斗君が上原君に召喚された。
けど何かした訳ではないらしく、軽く雑談をして終わったとの事だ。
なんというか……上原君は、その見た目と違って欲が浅い。不良なんてレッテルを貼られているのは、単に彼の目付きと口調が悪いからなのかしら?
木場くんも、話してみたら至って普通の良い人と言っていたし。
私も、彼と話してみたいものだ。
○月R日
イライラする。とにかくイライラする。
今日、上原君に召喚された。されたが……何もしなかった。
召喚された私を見て早々、あからさまにがっかりされた。心の中の(なんだ、塔城じゃないのか……)という声まで何故か聞こえた気がした。
つい魔術を使ってしまったが、上原君はなんでもない様にそれを叩き落とした。
しかも気が付けば、私は自宅に居た。まったく訳が分からなかったけれど、それよりも上原君の反応が最も気に食わない。
女性を前にして別の女性の名前を出すなんて。私は彼に何かしたのだろうか?
これまで容姿を褒められてきたからこそ、気に食わない。
○月T日
上原君は小猫ちゃんには気を許していると、兵藤君が言っていた。
実際、小猫ちゃんが呼びに行った事で彼は部室に来たし、兵藤君がチラシを渡す時はうんざりした様な顔をするのに小猫ちゃんが渡すと感謝を述べて受け取るとの事だ。
何が違うのだろうか。私達と小猫ちゃんで、何か信頼に差を作る様な事をしたのだろうか?
相変わらず、気に食わない。
○月Y日
上原君から召喚されない。今日は兵藤君が召喚された。
祐斗君と同じで、兵藤君も適当な雑談で終わったとの事だ。上原君くらいの年頃なら願いの一つや二つくらいあっても不思議じゃない筈なのに……不思議な人だと思う。
でも、兵藤君との雑談は大半が性癖などの話だったらしく、上原君もそれを聞いていたとの事だ。やはり彼も男の子、そういう事に興味はあるのだろうと少し安心した。
けれど、兵藤君曰く上原君は好みのタイプすら考えた事が無かったらしい。そもそも、そういうことを気にした事もないと。
本当に男子高校生なのかしら? 幾らなんでも欲と無縁過ぎる。
○月U日
今日も私は召喚されない。今日は小猫ちゃんが召喚された。上原君念願の、小猫ちゃんが。
小猫ちゃんには茶菓子を出したとの事だ。祐斗君にも、兵藤君にも、私にも出す事がなかった茶菓子を、小猫ちゃんには出したと。
上原君から「よく出来た、良い後輩だ」と褒めてもらったらしい。少し照れていた小猫ちゃんはとても可愛かったけど、上原君に対するイライラが収まらない。
まるで、私達はよく出来ていないと言われている様だ。
○月I日
やっと、やっと召喚された。つい張り切り過ぎて巫女服で行ってしまった。
上原君に夕飯を作った。いつもは自炊しているらしいのだけど、今日はそれを忘れてしまったとの事だ。彼にも人間らしいと言うか、抜けている所があるのだと知れたのは少し嬉しかった。
そのままご飯を一緒に食べて、美味しいと言って貰えた。それだけでこれまでのイライラが嘘の様に無くなって、嬉しくなってしまった。
巫女服も様になっていると褒めてくれた。素直に褒められるのは、悪くなかった。
彼に転がされている様な感じがするのは癪だけれど……彼からの賞賛は、心地良かったなと素直に思う。
○月O日
教会の堕天使と戦う事になった。と言っても、拍子抜けも良い所でしたけど。
堕天使三人。その内の一人は、上原君を襲って返り討ちにあった堕天使だった。余程トラウマになったのだろう、制服を見ただけで顔を青くして震えていた。
見ていて可哀想ではあったが、可愛い私の後輩を馬鹿にしたのだから生かす理由はない。
その堕天使の留めはリアスが刺した―――筈だった。けれど、彼女はリアスの『滅びの力』に耐え、逃げ去った。
ただの堕天使が、滅びの力に耐えるなんて……
〇月P日
上原君が先日の堕天使……ミッテルトを拾ったらしい。
彼は何を考えているのだろうか? 自分で蹴り飛ばした相手を、今度は助けるなんて。おかしな人だと思う。
「確かに変な奴だが、だからって見殺しにしていい理由にも、助けない理由にもならねぇだろ」
彼はそう言っていた。容赦がないのか、優しいのか……よく分からない人だ。
彼の神器には謎が多い。その能力でミッテルトの傷を治療したとの事だ、リアスも警戒している。
ただ、この数日で彼に対する印象はかなり変わった。不良と言うよりは、不思議な人と言いますか。
嫌いではない。そう思う。
△月J日
アーシアちゃんの服を買いに出掛けたら、上原君とミッテルトと遭遇した。
上原君もミッテルトの服を買いに来たらしく、目的が同じだからという事もあってそのまま一緒に買い物をする事にした。
ミッテルトは兵藤君に謝り、兵藤君はそれを許した。彼が許すなら、私達がとやかく言うのは野暮というものだろう。
最初はぎこちなかったけれど、買い物をしていく中で少しだけ距離が縮まった様に思う。
正直で、素直な娘だ。戦った時の様な悪辣さが、まるで最初から無かったかの様。これも上原君と一緒に過ごしたからなのかしら。
それだけ、上原君の存在が彼女を変えたのだろう。昨日の敵は今日の友とも言うし、少しではあるけれど仲良くなれた事は素直に嬉しく思う。