不良男子の生活記録   作:全智一皆

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40(姫島日記)

 

■  ■

 △月K日

 最近は兵藤君が修行に勤しんでいる。

 神滅具『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』を持っていても、彼はまだ悪魔に成り立ての赤子。体力も一般人と然程変わらないので、朝はランニングを頑張っている。

 そのランニングで、ミッテルトと出会ったらしい。ゴミ出しをしていたとの事だ。

 今は上原君と一緒に住んでいて、家事を頑張って覚えている最中らしい。

 

 あの時が嘘の様だ。でも、彼女も彼女なりに自分を変えようと努力しているという事なのだろう。

 しかし、上原君と同棲か。少し気になる。

 

 

 △月L日

 兵藤君が上原君の家にお邪魔したらしい。

 兵藤君は、上原君の家は他人の家という感じがしないと言っていた。とても落ち着くと。

 それは私も分かる。彼の家は、とても居心地が良い。不思議な気分になる。

 

 本当に、知れば知る程に不思議だと思うばかりだ。それを少し面白いと思うのは、私だけではない筈だ。

 それはそれとして、彼の家に寄った事は少し羨ましい。

 

 

 △月Z日

 今日はアーシアちゃんも一緒に、上原君の家にお邪魔したらしい。

 リアスと兵藤君には冷蔵庫から出したお茶、アーシアちゃんには氷も入れたお茶を出したそうだ。

 「ちったぁは遠慮しろ」と言われたらしい。まったく以てその通りだと思う。リアスと兵藤君にしっかり言っておかないといけないわね。

 だも、そうは言いながらも、しっかりお茶を出す辺り彼の隠し切れない優しさを感じた。

 

 しかし、アーシアちゃんと言い、ミッテルトと言い、小猫ちゃんと言い……こう言っては彼女達に悪いけれど、もしかして小さい方が好きなのかしら?

 

 

 △月X日

 部活に来た兵藤君が何処か不満気だった。何かあったのか聞くと、上原君の扱いが不服なのだそうだ。

 上原君が自分のクラスの文化委員の生徒会まで運ぶ荷物を代わりに請け負い、兵藤君がそれを手伝ったとの事だ。

 

「先輩はめっちゃ優しいんです! さっきだって、自分のクラスの文化委員の先輩の荷物を代わりに持って生徒会まで行って…でも、不良の自分が居たら生徒会の奴らが落ち着かないってお礼も聞かずに帰っちゃって……」

 

 上原君もそうだが、兵藤君も十分に優しい子だと私は思うわ。

 兵藤君がアーシアちゃんを助けるのを決断するに至ったのは、上原君からの助言があったからと聞く。無関係な筈なのに背中を押してくれたり、休憩させてくれる彼は兵藤君にとっても頼れる先輩なんだろう。

 そんな彼が不当な扱いを受けるのは、確かに不服だと思う。

 

 私としても、同級生が誤った認識で不当な扱いを受けるのは不服だ。私にも、何か出来る事はないかしら……

 

 

 △月V日

 大物がやってきた。

 グレイフィア・ルキフグス様。リアスの義姉様であり、リアスの実兄にして2代目ルシファーであるサーゼクス様の妻を務める御方。

 兵藤君は見惚れていたが、上原君はそんな事はなく、大した興味も無かった様に思う。強いて言えばこれが本物のメイドってやつかと感心してたくらい。

 やっぱり小さい方が好きなのかしら?

 グレイフィア様を見ても何も思わないとなると……いや、止めよう。これ以上は上原君の尊厳を破壊しかねない。

 

 そんな事を考えていたら、上原君から「お前なんつー事考えてんだよ」と呆れられた。

 心を読まれた……かなり恥ずかしかった。

 

 

 △月B日

 上原君は凄いと、心の底から思った。

 今日、リアスの婚約者が部室に現れた。

 ライザー・フェニックス。不死鳥の悪魔の家系であり、レーティングゲームでほぼ無敗を誇る悪魔だ。

 そのライザーが来ていた時、たまたま上原君が部室にやって来た。いつもチラシには世話になっているから、差し入れを持って来てくれたのだ。

 ライザーはそれを自分への捧げ物だと勘違いして、寄越せと言った。それが原因で、ライザーは上原君に呆気なく蹴り飛ばされた。

 人間である彼が、あのライザーを難なく蹴り飛ばしたというだけでも驚きではあったが……

 

「これはグレモリー達の差し入れだ。テメェのじゃねぇ」

 

 彼が私達の事を信頼してくれている様で、嬉しかった。

 

 後日、ライザーとレーティングゲームをする事になった。上原君が頑張れよと応援してくれた。

 俄然、やる気が湧いてくる。

 

 

 △月N日

 今日から修行が始める。と言っても、殆ど兵藤君を中心としたものだけれど。

 私達の中で、一番経験が浅く弱いのは紛れもない兵藤君。だから、自然と彼を鍛える事を中心とした修行になる。

 兵藤君も張り切っている。それだけリアスの事を大切に想ってくれているのだろう。とても嬉しく思う。

 それに、上原君からも応援されたのだ。頑張らない理由がない。

 

 その上原君も、レーティングゲームを見に来るとの事らしい。

 

 

 △月M日

 今日は兵藤君と祐斗君が修行をした。

 祐斗君は騎士。その機動力と『魔剣創造』を活かした、手数の多さと速力を武器とした戦い方に苦戦を強いられていた。

 

 結果は祐斗君のパーフェクトゲーム。だが、兵藤君の闘志は燃えたままだった。

 これからも諦めずに頑張ってほしいと思う。

 

 

 △月^日

 上原君の所為で感覚がバグっていたと思い知らされる。

 上原君があまりにも呆気なく小猫ちゃんに勝っていたからアレだったが、小猫ちゃんも立派な悪魔。『戦車』だ。その攻撃力と防御力は凄まじい。

 兵藤君が呆気なく吹き飛ばされたのを見て、ようやく思い出せた。

 

 本当、上原君は底が知れないと思い知らされる。

 

 

 △月~日

 今日は私と兵藤君で修行をした。

 私が放った雷を、兵藤君は避けるばかりだった。いや、それが正しいのだけど。

 アレを叩き落とした上原君がおかしいのだ。決して兵藤君は悪くない。あれが普通だ。

 雷なんて見切る事が出来ない筈のものを見切り、尚且つ物理的に叩き落とす……上原君が人間なのか疑って仕方ない芸当だ。

 彼は本当に人間なのだろうか?

 

 ついやり過ぎてしまって、火傷させてしまった。ごめんなさい、兵藤君。

 

 

 △月;日

 修行が終わり、町の方まで帰ってくると上原君が出迎えてくれた。

 お疲れ様という一言だけだったが、兵藤君は凄く喜んでいた。リアスがむっとしていた。ちょっと可愛かった。

 ただ、気張るのはこれからだ。

 

 レーティングゲームで勝たなければ、成果を出したとは言えないのだから。

 

 

 △月:日

 レーティングゲームの開始には、まだ時間が掛かる。グレイフィア様が現在進行形で会場を創っているとの事だ。

 待機時間は凄く緊張する。リアスの婚約が掛かっているゲームだから、尚更だ。

 途中から、上原君とミッテルトが来てくれた。アーシアちゃんや小猫ちゃんと修行の事について話していた。

 私は緊張でピリピリしてしまっていて、それを上原君に指摘されてしまった。

 

「お前はもっと余裕持てよ。仲間ビビらせてどうすんだ」

 

 確かにその通りだ。私はリアスの『女王』なのだから……皆を怖がらせてしまってはダメだ。

 ありがとうと伝えると、「別に感謝される様な事は言ってねぇよ。取り敢えず、頑張れ。応援してるぜ」と言われた。素直なのか素直じゃないのか。

 

 私も『女王』として頑張らなければ。

 

 

 △月)日

 私達は負けた。レーティングゲームで、負けてしまった。

 だが―――諦める事は出来なかった。

 私達よりも酷く悔しがっていた兵藤君を、上原君は蹴り飛ばした。蹴り飛ばして、叱咤し激励した。

 

「負けたなら後の事を考えろ。まだ出来る事はあるだろ」

 

 出来る事は、まだある。

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