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□月QA日
オカ研の皆で、上原君の見舞いに行った。
ミッテルトが出迎えてくれたが、やはり顔色が悪そうだった。上原君の看病で、碌に眠れていないのだろう。
上原君は寝たきりだそうだ。一向に目を覚ます気配はなく、ずっと眠っている。寝息を立てているのかも分からない程に静かで、不謹慎だがまるで死人の様にも見えた。
アーシアちゃんが『聖母の微笑』を使ってくれたが、それがまったく効力を発揮せず、しかも何度使ってもアーシアちゃんが疲れなかった事に皆が困惑していた。
リアスは上原君の神器が、『聖母の微笑』に干渉してその能力の出力を無力化していると考察していた。彼の神器の能力は、あらゆる出力を操作するものだとも。
自分の主が死ぬかもしれないのに、その助けを拒む……不可解な神器だ。
上原君、貴方が死んだら……皆が悲しむわ。私も、貴方には生きていてほしい。
□月QF日
上原君が登校して来た。まるで何事も無かったかの様に、いつもの感じで。
「見舞いに来てくれたんだろ? ありがとな」
何ら変わりない、いつもの上原君。死ぬかもしれないと心配していたのがバカみたいに思えてしまったけれど……それよりも、生きていて良かったと安堵していた。
自分でも不思議に思うくらい、私は彼が気になっているらしい。少し前は、変わった同級生ぐらいにしか思っていなかった筈なのだけど……
ただ、彼からの感謝はとても心地良かった。
▽月QL日
上原君が、ゼノヴィアを眷属にした事に驚いていた。というか、呆れていた。
「自分の眷属を馬鹿にした奴を眷属にするとか度胸凄過ぎんだろ」
と言っていた。まぁ、分からなくもないが……
とは言え、アーシアちゃんとは既に仲直りしている事を知っているからか、深くは追求しなかったけれど。
リアスがコカビエルについて話すと、やはり上原君はコカビエルの事を知っていたのか、なるほどと納得していた。
本当に、知っている事が多い人だ。もしかして神様についても知っていたりするのではないだろうか。
▽月QC日
上原君がクラスの女子と話していたのをたまたま目撃した。
前に言っていたクラスの文化委員だろう。ごくごく普通と言った感じの女の子だったが、上原君と仲良さげに話していた。
不良なんてレッテルを貼られていた彼が、親しげに友達と話している。それはとても喜ばしい事だ。
……その筈だ。
▽月QN日
今日は授業参観があった。だが、私の本当の親が来る事はない。
母はもう居ないし、父とはもう何年も顔を合わせていない。私の家族は、他の皆のそれと比べればかなり複雑なのだ。
私は悪魔で、けれど堕天使だ。悪魔でありながら堕天使の翼も持っている。私の母は人間で、父は堕天使だった。
いつかは、その事を話さなければならないのだろう。兵藤君と上原君に―――私が堕天使である事を。
二人共、堕天使に良い思い出はない。兵藤君も上原君も、堕天使によって人生を崩されている。
その堕天使と同じだと知ったら……拒絶されてしまうだろうか。
それが、とにかく怖い。
▽月QM日
上原君と一緒に旧校舎に来た。
旧校舎にある『開かずの間』という教室に居る、もう一人の僧侶―――ギャスパー・ヴラディ。目に映るもの全ての時間を停止する強力な神器『時間停止の邪眼』を持つ人間と吸血鬼のハーフ。
彼の事を上原君に紹介しようと、リアスが上原君を連れて来たのが始まりだった。
ただ、いきなり大人数で来た所為もあってか時間を停められて逃げられた。まぁ、やはりと言うべきか上原君は動けていたけれど。
小猫ちゃんが捕えて、話を聞こうとしたがゼノヴィアが追い掛ける事になった。いきなり時間を停められたのが気に障ったのかしら。
まぁ、上原君が足を振り上げた瞬間に顔を真っ青にして止まったけど。余程、彼の蹴りがトラウマになったらしい。
少し可哀想だと思った。
▽月^~日
ギャスパー君の対人恐怖症を克服する為に、一緒に居ても平気な兵藤君と一緒に活動する様になった。そんな兵藤君とギャスパー君が、上原君に召喚された。
上原君に呼び出されたのは良い事だ。時間停止が効かない上原君に、ギャスパー君も興味を持っていた訳だし。
仲良くなれて嬉しいと、ギャスパー君が喜んでいた。上原君は後輩にはかなり優しいのかもしれない。
それはそれで、同級生である私やリアスとしては複雑なのだが。
▽月;:日
今日も兵藤君とギャスパー君が上原君に召喚された。今日は上原君からお菓子を出された様だ。しかも上原君が焼いたクッキー。羨ましい。
兵藤君が、上原君にどうして自分を召喚出来るのか質問したらしい。
兵藤君は魔力が低い所為で、完全には召喚出来ない。だからこれまでも自転車を漕いでいたのに、上原君に召喚される時だけはしっかりと召喚される。
当の本人は「今更気にするか?」と言って、兵藤君も「それもそうっすね」と納得していたらしいが。
出力を操作する神器の内容とは、些か噛み合わない気がするが……彼の神器は、未だ全貌が明らかになっていない。警戒している訳ではないが、不可解だとは思う。
ギャスパー君が、上原君と友達になった。友達になれて嬉しいと凄く喜んでいて、見ていて和んだ。
だが同時に、悲しくもなった。私は、彼と友達と言えるだろうか? 支取会長とは違い、私は彼とそう多く関わっている訳ではない。
不安になる。友達じゃないから、私が堕天使だと知られたら……拒絶されるんじゃないかって。
私は私が思っている以上に、上原君の事を気にしている。私は彼の事を……友人だと、思っている。その筈だ。
▽月/]日
兵藤君が神社に上原君を連れて来た。どうして、と思ったが、彼の顔を見れて少し嬉しいとも思った。
巫女服姿が様になっている、と褒めてもらった。これから身の上を話して、もしかしたら拒絶されるかもしれないというのに……嬉しくなってしまった。
そして、
「なんか元気ねぇな。悩み事か?」
と、心配してくれた。彼に気を遣わせてしまった……そして、それをまた嬉しく感じてしまった。
話を聞こうかと言い出そうとしてくれた所で、ミカエル様がやってきた。兵藤君と話し、兵藤君の聖剣―――アスカロンを手渡してから上原君とも少し話していた。
少ししたらすぐ帰って行った。三大勢力の会議で、とも言っていたが。
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上原君と兵藤君に私の身の上を話した。
私が悪魔でありながら堕天使である事。私の両親の事。私が堕天使に対して複雑な気持ちを抱いている事。
そして―――それを明かした時、二人に拒絶されるのではないかと思っていた事。
「何バカな事言ってんだ、お前」
上原君にデコピンをされてしまった。この歳にもなって、デコピン……少し痛かったが、不思議と不快ではなかった。
「お前はお前だ、姫島朱乃だ。堕天使だろうが悪魔だろうが、姫島朱乃が姫島朱乃である事に変わりはない」
上原君はそう言ってくれた。兵藤君も、それに同意してくれた。
「だから、これまでと同じだよ。お前が堕天使だって知っても、お前は俺の同級生で、友達だ。お前がそう思ってくれてるかは分からねぇけど……まぁ、今までみたいに変わらず絡めばいい。普通の無茶振りくらいなら、出来る限り応えてやるよ」
私を私だと受け入れてくれた。
姫島朱乃は姫島朱乃だと、肯定してくれた。
呆れながらも、優しく笑ってくれた彼。
胸の内がとても暖かかったことを……よく、覚えている。