不良男子の生活記録   作:全智一皆

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46(ミッテルト日記)

 

■  ■

 ☆月[_日

 やっぱり、渉くんは倒れてしまった。前と同じ状態で、ずっと寝たきりだ。

 あの時の疲れが取れていないのか、うちまで体が重たく感じる。それに、ずっと頭の中で声がして落ち着かない。

 黒歌ちゃんが心配してくれた。ありがとうっす、黒歌ちゃん。でも疲れが取れてないだけっすよ、大丈夫っすから。

 とは言ったものの……やっぱり全然大丈夫じゃなかった。またうちが倒れてしまった。うちも渉くんの事あんまり強く言えないっすね、うちだって結構無理してばっかっす。

 

 疲れがまったく取れていない所為でまた眠ってしまったうちを、黒歌ちゃんが介抱してくれた。渉くんの看病も一通り黒歌ちゃんがやってくれた。

 頭が上がらないっすよ。でも、なんか黒歌ちゃん気まずそうだったんすよね。何かあったのかな……心配っす。

 

 

 ☆月-+日

 黒歌ちゃんが薬をくれた。なんでも、友達と協力して造った特別な薬なんだそうっす。

 ぶっちゃけ味は最悪だったっす……いや、薬だから美味しい訳はないんすけど、すっごい味だったっす。なんかもう、人が苦手だと思う味をたくさん詰め込んだみたいな味っす。

 でも、お陰でちょっと体調が良くなったっす。黒歌ちゃんには感謝しかないっすよ……本当、ありがとうっす。

 黒歌ちゃんは渉くんにも飲ませようとしてたんすけど、やっぱりそれは出来なかった。渉くんの神器が干渉してきて、渉くんに何かしようとすると一定の距離まで戻されちゃうっす。

 渉くんの神器って、やっぱり意思があるんすかね? でも、だとしたらどういう風に考えてるんだろ……分からないっす。

 

 相変わらず、黒歌ちゃんはどこか苦しそうで、元気が無さげっす。うちで良ければ相談に乗るっすよ? 家族っすもん、助け合いっす。

 

 

 ☆月*・日

 黒歌ちゃんが、自分の事をうちに話してくれた。

 『主人殺し』の異名を持ったSSランクのはぐれ悪魔である事と、自分が『禍の団』というテロリストの仲間だって事を教えてくれたっす。

 流石にちょっとびっくりしちゃったっす。黒歌ちゃんが禍の団……あの三大勢力の会議を襲撃してきたテロリスト達、その仲間だったなんて。しかもSSランクのはぐれ悪魔。道理で強い訳っす。

 でも、だからどうしたって話っすよね。寧ろ、それを話してくれた事に感謝したっすよ。そしたら黒歌ちゃん、また暗い顔して、

 

「なんで、」

 

 って言ってたっす。

 だって、黒歌ちゃんにとってそれはきっと辛い選択だった筈っすから。自分が実は主人殺しなんて物騒な異名を持った悪魔で、しかも三大勢力に喧嘩を吹っ掛けたテロリストの仲間です―――なんて、普通は言えないっすよ。

 でも、それをうちに話してくれたって事は、うちの事をちょっとは信頼してくれてるって事っすよね? だから、ありがとうっす! それを話してくれた事と、うちの事を信頼してくれた事への感謝っす。

 

 そう言ったら、黒歌ちゃんに抱き締められたっす。うぅ、嬉しいっすよ? けど、それよりも恥ずかしかったっすよぉ……

 

 

 ☆月%#日

 渉くんは起きなかった。やっぱり、前よりも無茶をしちゃったからっすよね……。

 不甲斐ないばかりだ。情けないばかりだ。うちが弱い所為で、渉くんに無茶をさせた。

 これは驕りかもしれないけど、もしうちが怪我をしなかったら。もしうちがカテレアに勝っていたら。渉くんに無茶をさせなかったかもしれないのに。

 うち達は何も出来ない。大切な人が倒れているのに、看病する事だって出来ない。それがたまらなく悔しい。

 ただ手を握るだけ。ただ手を添えるだけ。ただ……渉くんを信じるだけ。それくらいの事しか、出来ない。

 

 渉くん、うちもっと頑張るっすから。渉くんから貰った力を無駄にしない様に、渉くんからの信頼を裏切らない様に、もっともっと強くなるっすから。

 だから……お願いだから、死なないで。

 

 

 ☆月.?日

 渉くんが目を覚ましてくれたっす!

 また前みたいに、いつもの調子で起き上がって「おはよう」って言ってくれた。渉くんの声を聞いただけで、もう泣いちゃったっす。

 黒歌ちゃんも、うちも、ずっとずっと待ってたっすよ。それくらいしか出来ないから。それくらいしか許されないから。

 でも、起きてくれた本当に良かった。生きててくれて本当に良かった。とにかく、それが嬉しいっす。

 黒歌ちゃんも、とても嬉しそうだったっす。けど、それと同時に悲しそうだったっす。

 

「最近は居る事が少なかったから、心配したんだぞ。まぁ、猫だから仕方ないんだろうけどさ」

 

 そう言って渉くんは黒歌ちゃんを撫でて、黒歌ちゃんはそれを名残りおしそうにしていたっす。

 黒歌ちゃんの事情を知ってから聞くと、居なかったのは仕方ない事だと理解出来る。そして、黒歌ちゃんが悲しそうにしている理由も。

 

「けど、もうお前はうちの子だ。此処がお前の家だ。だから―――ちゃんと帰ってこいよ。いつでも待ってるからな」

 

 渉くんは黒歌ちゃんにそう言ってくれた。それが自分の事みたいに嬉しかった。

 

 黒歌ちゃん。もう此処が黒歌ちゃんの家なんすよ? うちも、渉くんも、黒歌ちゃんの事を家族だって思ってるっす。大好きっすよ。

 だから、いつでも帰ってきて良いんすよ。うちも、渉くんも―――待ってるっすから。

 

 

 ☆月,!日

 渉くんが学校に復帰したっす。

 本当、寝込んでたのが嘘みたいに渉くんはいつも通りだったっす。心配して損したなんて言うつもりは無いっすけど、ここまで元通りだとちょっと怖いっすね。

 でも、元気になってくれたのは良い事っすよね! どんな形であれ、渉くんが元気になってくれたならオッケーっす!

 しかもしかも、渉くんが居ない間に兵藤くんと支取さんが動いてくれたのか、クラスの何人かが渉くんの事を心配して話し掛けてくれたらしいっす!

 これを切っ掛けに、渉くんに友達が沢山出来てくれたら嬉しいっす。皆が渉くんは本当は優しい人だって知ってくれたら、それだけで感無量っすよ!

 

 そういえば、渉くんが姫島さんに名前呼びされたって言ってたっす。

 あー、うち何となく分かったっす。うぅ、黒歌ちゃんの他にもライバルが増えそうな気がするっすよー!

 

 

 ☆月A@日

 姫島さんも一緒に暮らす事になったっす。どんどん同居人(ライバル)が増えていくっすよー! でも、理由が理由だから仕方ないと思うっす。

 渉くんはあの三大勢力の会議で、大胆に暴れた。魔王と熾天使と総督の前で、『ありとあらゆるものに干渉する』というとんでもない能力を明かして禍の団を蹴散らした。

 しかも、新しい龍を宿した神器まで創造してみせた。そして、うちはそれを身に宿す形となったっす。

 少し前までは悪魔にだけ注目されていたのに、会議で暴れてしまった所為で悪魔だけでなく天使や堕天使にすら目を付けられてしまっているのが今の状態らしいっす。

 もしかしたら、悪魔の他にも天使や堕天使が渉くんとうちに接触してくるかもしれない。グレモリーさんはそれを危惧したらしい。

 もしそうなってしまった場合、渉くんはまた無茶をして倒れるかもしれないし、狙いがうち一人だった場合はあまりにも負担が掛かるっすから。

 だから護衛の意味も含めて、姫島さんも一緒に暮らす事になったらしいっす。

 

 渉くんが、うちに嫌じゃないかと聞いてきた。全然大丈夫っすよ? だって姫島さんには色々とお世話になってるし、これからはもっと沢山教えてもらえるって事っすから。

 一緒に暮らすなら、朱乃さんって呼んだ方が良いっすかね? 苗字呼びだと、なんか距離感あるし。

 

 

 ☆月S#日

 今日も夢の中で、すっごい大きなドラゴンと話したっす。

 渉くんが創造し、うちに預けてくれた神器―――『卑龍公の具足(フォーリングロスト)』に宿った新しい黒龍。名前をヴォーティガーンと言うらしいっす。

 すっごいデカイんすよね。もう山一つなんか軽々越えるくらいにデカイっす。

 しかも口が悪いっす。絶対にうちに対する嫌味が出てくるっすもん。弱いとか相応しくないとか色々。

 でも、事実だから何も言い返せないっす。実際、うちはすっごく弱いから。まったくもってその通りっすよ。

 でも、だからって努力する事を諦める理由にはならないっす。渉くんに無茶をさせない為に、うちは頑張らないといけないんす。

 絶対に強くなるっす。強くなって、ヴォーくんも認めさせるっすよ!

 

 ヴォーくんって呼んだら怒られたっす。えー、良いじゃないっすか、ヴォーくん。ヴォーティガーンだと長くて呼びにくいっすもん。

 

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