VR:インタラクト 作:非論理的エキドナ
異世界?
刑事さんからでた言葉の意味が理解できず首をかしげる。何言ってんだこいつが1番の感想だった。
「明後日迎えに来る。それまでに荷物を処分しておけ」
言いたいことだけ行ってさっさと帰っていく刑事さんに殺意が沸きそうになるが、深呼吸して自分を落ち着かせる。
彼氏だったら思わず殺していたかも。
あの夜から数日して目隠しをされて連れてこられたのはどこかの地下駐車場。
手錠をちゃりちゃりと鳴らしながら車から出ると、すぐに警備の人が私を囲む。
「行くぞ」
刑事さんが号令をかけるとバックルームの駐車場みたいにだだっ広い駐車場を歩き、いくつかあるエレベーターの一つにぎゅうぎゅうになって乗る。
エレベーターの階層ボタンは一つしかなくて、動き出したエレベーターは人生で一番長く乗っていた。
人口密度高すぎなエレベーターから出ると、そこはハリウッド映画でよくある管制室のような大きなモニターを見て話し合いしている人や、高性能だろうと思われるPCで忙しそうに仕事をしている人がちらほらといる。
モニターに写されている内容は馴染みのない言葉と数値で全てを理解ができなかったが、地形のような図に山や海という文字、東西南北を表すマークがあったのでおそらく地図だろう。
モニターをじっと見ていると、隅で話し合っていた集団の中から一人抜け出してきてこちらにやってきた。
「お疲れ様でぇす吉田さん」
傷んだ長い髪をおさげにして、分厚いメガネをかけた化粧っ気のない猫背の女性が嬉しそうに手を振って近寄ってくる。猫背に白衣という格好で、なんだか博士のようで頭が良さそうだ。
首に下げている社員証には荒川美兎と真顔の写真と共に書かれていた。
「お疲れ様です、荒川さん。行けそうですか?」
「だぁいじょぉうぶいですよぉ。あとはブリーフィングしたらいけぇまぁす」
にっこりダブルピースで答えるおさげちゃん。刑事さんって吉田っていうんだ、自己紹介された気がするけど最近は名前を覚える気がなくなっちゃてたから忘れてた。
こっちでぇす、と案内された会議室のような場所で長机が並び、余ったパイプ椅子が部屋の隅にたたまれて置かれている。広い部屋の奥には大きなホワイトボードがあり、そこにプロジェクターでPC画面が写っていた。
部屋には先に来ていた人たちが一定の距離をとって席に座っている。
各々ツレと談笑していたり、目の前に置かれた紙束を読んだりして過ごしている。
後ろの方に座るとおさげちゃんがホワイトボードの前にたった。
「みぃなさま、お集まりぃいただきぃありぃがとうございます。ブリーフィングを始めるにあたってぇ真面目に話します。とりあえず自己紹介から始めましょうか、ゲームマスターになってもらう人だけで大丈夫です。その後集まっていただいた理由を説明します。私は株式会社ワールドマップの開発研究部の荒川美兎といいます。では手前の席の右側からお願いします」
おさげちゃんの口調が間延びしたものからハキハキと真面目になり、会議室の空気が少しピリつく。
自己紹介のトップバッターになった人に会議室全員の視線が集まる。そこにはオーバーサイズのパーカーを着てフードをかぶっていた。
「えっあっ……、さっ佐藤……れっレオンです。けっ刑期が短くなるって言われて……きっきました……」
どもりながらもきちんと挨拶した子は緊張したのだろう大きな音を立てて座り、小さく震えていた。
彼の名前はおさげちゃんの言っていたことから、覚えていた方がいいのだろう、何度も彼の名前を暗唱する。
「次は私ですね〜。久米聖亜です、前職は看護師をしていました。よろしくお願いしますね〜」
見上げるほど大きな女性がゆっくりとお辞儀する。おっとりとした口調は人を安心させる力があり、いい看護師さんだったのだろう。この人は何の罪でここにいるのだろうか、気になってしまう。
「良縁寺春海だ。よろしく頼む」
服の下からでもわかるその筋肉、魅せるものではなく使うために鍛えたのだろう、機能的についている。
短く切られた髪に太い首。彼を殺すのは文字通り骨が折れそうだ。
私に順番が回ってきた。いつも通り挨拶するだけだ、今まで通り可愛らしく好かれるように。
「箱崎しおです! これからよろしくお願いします!」
何事も最初が大事、元気に自己紹介すればどんなに自分が最悪な人間でも初めの方はいい子だと思われやすい。深く付き合えば付き合うほど勝手に印象が悪くなるが、そんなもんだ。
全員の自己紹介が終わり、おさげちゃんはにこにこと話し始める。
「あと一人我社から人を出しますが、先にインタラクトに入ってもらってるので中で会ってもらって、説明を始めます」
と言って、リモコンを操作しプロジェクターに資料を映し出した。
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