へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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へっぽこマスターの始まり

 

「………………あの。朝でも夜でもありませんから、起きてください先輩」

 

 

 誰かの声が聞こえる。

 

 どうやら僕は仰向けに倒れているようで、ゆっくりと体を起こす。目に入った自分の格好は白い長袖……カルデアの制服になっていた。何故だ。

 

 状況を確認しようと周りを見る。すると自分の後ろに桃色の髪で眼鏡をかけた少女が立っていた。FGOに置ける我らが後輩『マシュ・キリエライト』。

 

 

「……君は、誰?」

 

 

 他に聞きたいことは山ほどあった。とりあえず知っていたら不審なので初対面を装い尋ねる。

 

 

「いきなり難しい質問なので、返答に困ります。名乗るほどのものではない――とか?」

 

「いや名乗りなさいよ」

 

 

 こっちが聞いたのになんだよその曖昧な言葉は。

 

 直ぐさまつっこんだら彼女は予想外だったのか「えっ?」とすっとんきょうな声を上げた。

 

 

「え、じゃないよ。名前を聞いたんだよ名前を。答えなさいよ。そんで君とは初対面なのに先輩って何さ。あとなんで疑問形なんだ聞いてんのはこっちだよ。真面目に答える気ないの?」

 

「す、すみません……」

 

 

 一通り指摘するだけ指摘すると、立ち上がり相手と向き合って目を見る。

 

 

「改めて聞くけど、君は誰? ここは何処なのよ」

 

「私はマシュ・キリエライト。この人理継続保障機関フィニス・カルデアの局員です」

 

 

 ゲームで知ってる通りの返答が来て、ここで眠っていた理由を聞かれる。

 

 白色ベースの曲がった通路。壁には葉っぱが生えた枝に囲まれたCマーク、カルデアのマークだ。

 

 ……ここ、カルデアか。大人気ソーシャルゲーム、FGOの最初の本拠地。

 

 

「僕は……ここで眠っていたと?」

 

「はい。もうすやすやと。恐らくは――」

 

「駄目じゃないかマシュ。勝手に出歩いてはいけないと言った筈だよ」

 

 

 マシュの言葉の途中。男性の声が遮り、通路の奥から緑色のスーツを着た男がやってくる。

 

 シルクハットを被った茶色いモジャモジャ髪の男。レフ・ライノール。カルデアの技師でありそして……72柱の一柱が一つ。

 

 レフへ出歩いたことを謝るマシュ。まあいいさと笑ったレフはこちらに気づくと腕の機械を操作してこちらの情報を見る。腕時計型のデバイスかあれ? スマートウォッチみたいな?

 

 

「マスター適性者48、平沢一捷(ひらさわいっか)。一般枠の子だったか」

 

「通路で眠っていたのは、量子ダイブの影響でしょう。慣れていないと脳に負担がかかるものですから」

 

 

 ほーじゃあ既に入館シミュレートやったのか、青王とアニキ二人でゴーレムと戦うあれを。

 

 それでレイシフト適性者はこれから所長の説明を聞く為、マシュとレフに案内され管制室へ到着。

 

 

「特務機関カルデアへようこそ。所長のオルガマリー・アニムスフィアです」

 

 

 ソファに座ると前に立つ女所長の説明が始まった。あ、Aチームの七人も発見。

 

 

「あなた達は各国から選抜、あるいは発見された稀有な人材です。これから――」

 

(実際に聞くと難しい説明だなぁ。ゲームでも思ったけど)

 

 

 ぐらり、ぐらり。

 

 プレイしたから内容は分かるといえば分かる。けどなんだか瞼が重くなってきた。

 

 あぁ……量子ダイブの影響だったっけ。あと昔から長い話難しい話は苦手なのよね。ワケが分からないのを聞いてても眠くなってくるし……。

 

 

「ふぁぁぁ~……」

 

 

 

 

 

 

 …………頬に、紅葉が、咲きました。

 

 

「先輩、目は覚めましたか?」

 

「ばっちりねー」

 

 

 まだジンジンと痛む左頬。上着がなく黒い半袖シャツだけの格好は肌寒い。

 

 眠気で欠伸をした、それが不味かった、丁度所長が前にいたのにだ。所長のカミナリが落ちてビンタ炸裂。「これを着る資格はないわ!!」と上着を剥ぎ取られ、見事管制室を追い出されてしまった。

 

 お陰で眠気は完全に吹き飛んだけどな!

 

 

「へくしっ」

 

「大丈夫ですか。もう少しで部屋ですから」

 

「しかし中々、肝が座っているねキミは。あのオルガの前で居眠りとは」

 

 

 皮肉かこのレフは。あとオルガ言うなやお前はシノだオイ。

 

 説明会から追い出された僕をマシュとレフが部屋へ案内してくれている。なんでレフもいるんだろう。

 

 

「ここが先輩の部屋です。中で待機していてください」

 

「ありがとうね。……あ、そういやトイレ何処?」

 

「トイレならこの先の突き当たりだ」

 

 

 お礼を言いトイレへダッシュ。

 

 さーてこの次はロマンこと○○○○との対面かー。

 

 

「あーさっぶ。上着かなんかどっかにねぇかなぁ………あ″っ!?」

 

 

 やべぇ。重大な事を忘れていた。

 

 

 

 

 

 

「水星の魔女の再放送録画するの忘れてたァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 僕にとっても(個人的)大事。

 

 …………けれどそれを確かめるのは、とんでもなく先になることなんて、この時は予想だにしなかったのだ、僕は。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 プシュッと圧縮空気が抜ける音。斜めに噛み合う自動ドアが開放される。

 

 こういう自動ドアカッコいいよね秘密基地みたいで。

 

 

 早速入室ー。

 

 

「………………」

 

 

 部屋の中に、ズボンはきかけの男一人。

 

 

「誰だキミは!? ここはボクのサボリ場だぞ!!」

 

「いや、ここに来るよう言われたのですが」

 

 

 ここに来るまでのことを目の前の男性……ロマニ・アーキマンに一通り説明する。

 

 

「……成る程。君が最後のマスター適性者だったのか」

 

 

 ちーっとファスナーを上げてズボンを履いたロマニこと○○○○が右手を差し出してくる。

 

 

「はじめまして。ボクはカルデア医療部門のトップ。ロマニ・アーキマンだ」

 

「ご丁寧にどうも。平沢一捷です」

 

「みんなからはDr.ロマンと略されていてね。君も気楽に呼んでくれていいよ」

 

「うーん、それはお断りします」

 

「えっ」

 

「初対面でしょう、僕達は。まだそんな風に親しくする仲ではないですから」

 

「そ、それもそうだね。ゴメン」

 

 

 ロマニは直ぐに笑顔になると、僕にポンポンと椅子に座るよう促し「今お茶淹れるからね」と備え付けのお茶とお菓子を用意し始めた。

 

 とりあえず椅子に座る。

 

 

「おっとその前に……」

 

「?」

 

「その格好じゃ肌寒いだろう。ちょっと待って」

 

 

 そう言えば上着を剥ぎ取られてたんだった。

 

 ロマニはロッカーから黒いローブのような服を取り出し渡してくれた。

 

 これは……魔術協会の制服か。

 

 

「魔力の扱いに長けた礼装だ。カルデアの制服も同じ礼装だけど、こちらの方がキミには合ってると思う」

 

 

 確かに。NPチャージで周回にはお世話になった。凸カレスコ持ってなかったときは狂スロットにカレスコつけてのスカスカシステムとかでね。ちょうどNPが貯まるんだよねー。

 

 しっかりとしたローブに袖を通す。すると心なしか、体が少し温かくなった感じがする。魔力に優れているからだろうか? なんとなく安心する。

 

 でもなんにしろ、今僕は本物の礼装を着ている。コスプレじゃない本物をだ。FGOプレイヤーとして、嬉しくない筈がない……! 誰もいなかったらひゃっほーい! ってはしゃいでたな、間違いなく。

 

 

「はいお茶。お饅頭もあるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 暖かい湯気が上がる湯のみを受け取る。お茶うけの饅頭を一口。よく冷ましてからお茶を啜る。

 

 うん、美味しい。お茶と和菓子はよく合う。

 

 

「じゃあ平沢君。気になってたんだけど、その頬の跡は……」

 

 

 頬の紅葉で察したロマニへ、「おそらく予想通りです」と頷く。所長にぶっ叩かれたことも話したからね、最初に。

 

 苦笑いを浮かべるロマニ。

 

 

「それは災難だったねぇ。所長のカミナリは怖いから」

 

「全くもって」

 

 

 本当に、怒鳴られた時の所長の剣幕は凄まじかった。うっすら涙さえ浮かべていた顔を忘れることは出来ない……。

 

 

「不安だろう、平沢君。こんな訳の分からないとこに連れてこられて」

 

「全くです、知らない間にこんなとこにいてさ。訳が分からない」

 

「……すまない」

 

「家に帰ったらラインバレル読もうと思ってたのに……全くもう」

 

「ほぉ。それは漫画か何かかい?」

 

「えぇ。正義の味方を目指す主人公が、人型ロボットに乗って戦うお話です」

 

 

 どうやらロマニはラインバレルが気になったよう。この世界にはないとか?

 

 正義の味方と言えばFateだとまずエミヤを思い出す。 

 

 ちょこちょこ共通点ないだろうかラインバレルと。正義の味方とか二刀流とか結末とか。いや結末は違うか……?

 

 そう思ったところで、ピーッとロマニの腕時計端末が鳴る。

 

 

『ロマニ、良いかな。あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えてこちらに来てくれないか?』

 

「分かったよレフ。ちょっと麻酔をかけに行くよ」

 

『ああ急いでくれ。医務室からなら、二分で到着できるはずだ』

 

 

 ぷつり。

 

 通信が切れる。

 

 さーっと青ざめていくロマニの表情。

 

 

「どうしよう……ここからじゃ五分はかかる……」

 

「サボってるからでしょーに」

 

 

 最初の台詞忘れたか。ボケてねーよな○○○○。

 

 

「お喋りに付き合ってくれてありがとうね。落ち着いたら医務室に来てくれ、今度は美味しいケーキをご馳走するから――」

 

 

 ブツン……

 

 

「電気が……消えた?」

 

「おかしいな。明かりが消えるなんて何が――」

 

 

 ドンッッッッッ!!!!

 

 

 轟音。振動。

 

 部屋全体が揺すられる程の凄まじい衝撃。

 

 ……レフがやったんだな、爆弾を。

 

 

「モニター! 管制室を映してくれ」

 

 

 壁に埋め込まれたモニターへロマニが指示すると管制室の様子が映される。

 

 ……ひび割れ崩れた床に壁、たくさんの瓦礫にまみれ、火の海となった管制室。

 

 隣でロマニの息を呑む音が聞こえた。

 

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから待避して下さい。繰り返します、中央発電所及び中央――』

 

「……平沢君は直ぐに避難してくれ。ボクは管制室に向かう」

 

「避難って」

 

「もうじき隔壁が閉鎖される。その前に、キミだけだも外に出るんだ。いいね!?」

 

 

 そう言いロマニは駆け出していった。

 

 さて避難しろと言われたが、そもそもこのカルデアの構図が分からない。案内されっぱなしだったから。

 

 ……このままここにいたほうがいいんじゃないか?

 

 ふとそんなことを思う。

 

 ワケわかんないこの状況。主人公じゃない僕が行ってもどうにかなると思えない。

 

 そうだ、そうしy

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウデハナイダロウ

 

キミ(藤丸立香)ハ、イカナクテハナラナイ、ワカッテイルハズダ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐうっ!? あ、頭が……」

 

 

 何故かいきなり、頭がズキンズキンと痛み出した。

 

 手で頭を押さえる。体がふらつく。壁に寄り掛かるが、頭は割れそうなくらい痛い。

 

 

「がぁぁぁっ……いってぇぇ……」

 

 

 あまりの痛みに、考えすらあやふやになってきた……一体なんなんだこれ……?

 

 体はふらついたまま何処かに行ってしまうような感じ。

 

 熱が出てきたのか、全身が熱い。

 

 目眩に襲われ、世界がぐわんぐわんと回転する……気持ち悪い……。

 

 本当にどうしたんだ僕の体は……。

 

 そう思った、ところで。

 

 

「……は?」

 

 

 いつの間にか僕の目の前に――燃え盛る都市が、広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 ……これが、全ての始まり。

 

 

 

 

 

 

 

 これから先、ずっとずっと後悔し続ける僕の、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クソッ、始まってしまったか……! ……頼むから生きててくれよ……■■君』

 

 

 

 

 

 

 

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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