ドクターとダ・ヴィンチに僕のことを話してから早三日が経った。
その間、僕は冬木での怪我を治すために休んでいた。動きたくても痛くてあんまり動けなかったしね。
そして三日目の今日。どうにか怪我も治り動けるようにななった。思ったより早く治ってよかったよ。
……同時に、ドクターから僕の今後を伝えられる。
内容を聞いた僕がどうなったかというと……。
「おはようございます、先輩」
「はい、おはようございますキリエライトさん」
引き続きカルデアにいました。
ひとまず僕がマスターとして協力するということで、カルデアにいさせてもらえることになった。カルデアから出れないのもあるんだけど。
人理焼却は行われてしまった。そのため外は滅んでしまっている。そんな状況で生きていくことなどできやしない。
もしかしたら僕は封印されていたかもしれなかった。カルデアへの協力が認められたときは本当に安心したよ……。
「では先輩。まずはドクターの指示通り、案内をさせてもらいますね」
「頼みますわ」
キリエライトさんにカルデアを一通り案内される。
通路を通り管制室、食堂、シミュレータールーム、保管庫など。
最後にドクターの待つ青い光がいくつも走っている部屋へと到着する。
サーヴァントの召喚を行う召喚ルームである。
「やぁ、おはよう。待ってたよ平沢君」
ドクターへ挨拶し説明を受ける。そう、今から初めてのサーヴァント召喚を行うのだ。もちろん僕がだ。
戦力となるサーヴァントを呼び出すこの部屋。そこに通されてはいるが、僕がカルデアの敵ではないと認められたわけじゃあない。
やれる人間が僕しかいないこと。曲がりなりにも特異点を解決したこと。この二点が大きかったそうで、僕はマスターを任せられた。
ただし制限も色々あるんだけどね。
まずは、
・この世界がゲームに似ていると言わない。未来の内容も同様
・異世界から来たと話さない。カルデアの用意した設定に従う
・レイシフト及び訓練を除いて青緑の短剣はカルデアへ預ける。短剣の情報は直ぐに報告する
・現れた異世界の存在、アイテムについての情報提供
細かいことを含めるとまだまだあるけど、ひとまずこれらを守る必要がある。状況に応じて変わることもあるそうだけど。
現在、僕が異世界から来た云々を知っているのはドクターとダ・ヴィンチのみ。他のスタッフや所長、マシュは知らないそうだ。まだ被害が出たばかりで皆混乱している。そこに劇薬みたいな情報をぶち込むわけにいかない。
僕は土壇場で見つかった、特殊な能力とレイシフト適正を持つ一般人からのマスター候補生、という設定とのこと。
……ちょっと内容的に無理がある気もするが、文句を言える立場じゃあないし、それを守る。
話が長くなったがとどのつまり。
今の僕は「信頼してほしければ、余計なことは言わず、ルールを守りながら行動と態度で示してくれ」ということである。
まぁ、そうだろうね。落としどころとしては。僕もゲーム云々の話をして、最初っから信頼されるなんて思ってない。
これからは信用されるよう行動していかないといけない。自分で信頼を勝ち取らないといけないのだ。
……人付き合いは正直あんまり得意ではないけど、そうも言ってられない。やるしかない。
心の中で気を引き締める僕へドクターが話し始める。
「それじゃあ平沢君。ここに呼んだ理由は分かるね?」
「来る途中でキリエライトさんに聞きました。……サーヴァントの召喚を行うと」
「その通り。召喚を行う材料は既に用意してある。君に応えてくれれば、サーヴァントが来てくれるはずだ」
応えてくれる、かぁ……。
本当に来てくれるのかな、僕に。サーヴァントの方々が。
まぁーここで悩んでても始まらない。深呼吸を一回入れる。
用意された召喚するための材料、虹色でとげとげの石『聖晶石』を手にする。
……見た瞬間にこれまでの爆死を思い出して一瞬吐きそうになったのはきっと仕方ないと思う。うん。
召喚方法はこの石を砕いてキリエライトさんの盾へばら撒けばいいとのこと。
少し力を入れただけで聖晶石は砕ける。見た目は硬そうだがそんなことはなかった。運動場に落ちている砂の塊みたいだ。
聖晶石を複数砕いてまくと、盾より12の光が浮き上がり回転を始め、召喚が開始される。
まずは一本線、これは概念礼装だ。
『アゾット剣』
『優雅たれ』
『緑の黒鍵』
『魔力計』
『過ぎ去りし夢』
『カムランの戦い』
なぁにこれぇ。
なんか悪意ある組み合わせだぞ。というかZeroに関係したやつばっか。
これサーヴァント召喚に影響しないかなぁと一瞬不安になるがその次からは三本線。サーヴァントだった。
まず一人目。左上に弓を構えた弓兵のカード、アーチャーのクラスで色は金。赤い外套を纏った白い髪、浅黒い肌で二刀流のあの人。
「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」
最初はエミヤである。初代ファンとしては嬉しい結果。
続いて二人目。銀色で帽子をかぶり槍を持つ男のカード、ランサーのクラスだ。実体化するのは青いタイツを着て赤い槍を持つあの人その2。
「よう。サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。ま、気楽にやろうやマスター!」
クー・フーリンだ。これも嬉しい。
お次は三人目。同じ銀色で戦車に乗った戦士のカード、ライダーか。現れたのは紫の長い髪。目をアイマスクのような仮面で隠し、ぴっちりと貼り付くドレスのような格好の女性。
「……物好きな人ですね。生贄がお望みでしたら、どうぞ自由に扱ってください」
なんとメドゥーサだ。嬉しいが僕に来るとはちょい意外。
四人目。このときは前三人とは違い、虹色の光を放ちながら召喚が行われた。飛び出してきたのは金色で剣を携えた騎士のカード。セイバークラスのカードだ。召喚されたのは青いドレスのような服装、アホ毛が生えた綺麗な金髪、翡翠色の瞳。見えない何かを手にした、Fateの顔とも言える彼女。
「問おう。貴方が私のマスターか?」
「オオ!!??」
「? どうされましたか」
「い、いえ何も……これは失礼しました」
かの騎士王アーサーことアルトリア・ペンドラゴンその人である。オルタじゃないのね。変な声出してしまったよ……すみません。
しかしここまででサーヴァント四人が召喚。最初にしてはかなり良いんじゃないか?
流石に四人も来たんだからもう終わりかと思ったんだが……なんと五人目が来た。
銅色のカードで両手に短刀を持つ髑髏、アサシンのクラス。
……え、アサシン? 誰? 百貌さん?
「アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎。ここに参上つかまつった」
何故に!?
特異点の冬木には出てこなかった人来ちゃったんだけど!?
「む、アーチャーではないですか。ランサーにライダー、アサシンまで」
「久しぶりだなセイバー。君が来るとは意外だったよ」
「懐かしい顔ぶれですね。あと何人か揃えば、あの時と同じではないですか」
「しかしお前も来るとはな、アサシン。ちと予想外だったぜ」
「ははは。なに、自然に体が動いだけのことよ」
見事にstay nightのサーヴァントばかり。中でもセイバーのアルトリアが来てくれたのは一番嬉しいな。もちろん他の方々も。
初召喚としては、かなりいい結果じゃあないかな。これは。
召喚されたサーヴァントの皆さんには現状説明のため、一旦別室に案内されてドクターから説明を受けるそうだ。
それが終わると、マスターである僕や一緒に戦うキリエライトさん、スタッフの方々と顔合わせしカルデアに加わる。
……にしても、キャスターのクー・フーリンさんはいなかったな。最後にあんなこと言ってくれたから、もしかしたら召喚に応じてくれるかもと思ったんだけど。
そうじゃなきゃ仕方ない。召喚に応えてくれるかは、相手が決めることだ。
ともあれ五人、いや五騎かな? 戦力が増えたから特異点攻略に向けて訓練をしないといけない。人が増えれば打ち合わせや連携、僕もマスターとして成長しなければ、とやることは山積みだ。
まずはドクターとダ・ヴィンチに渡された魔術・マスター関連の資料で勉強して、歴史のデータから知識を増やして、それから……
「あっ、素材も集めないとな……」
サーヴァントが来たのだから強化するための、大量の素材や種火が必要になる。……ここはゲームと同じなのだろうか?
「では先輩。マスターとしての座学から始めますね」
「お願いします」
そんなことを思いつつ、マスターとしての勉強に集中する……と思いかけて。
ふと、あることに気づく。
(……そういや。カルデアに来てから……フォウくん一度も見てないな)
◆◆◆
召喚ルームにて。
扉が開き、ある人物が入室してくると、サーヴァントの召喚システムを起動させる。
投入するのは金色の札型アイテム『呼符』。それを二枚。
サークルが回転し、銀色のカードが二枚現れて、二騎のサーヴァントが召喚された。
「……なんだ。アンタの方がオレを呼んだのかよ。坊主じゃなしに」
「正直、私自身も意外に思ってるわよ」
召喚者は現れたサーヴァントの片割れ――杖を持つキャスターのサーヴァントへ返答すると、二騎のサーヴァントへ状況を説明。サーヴァント二騎はそれを聞いてうなずく。
「……事情は分かったよ。坊主にゃ悪いが、今のマスターはアンタだ。仕事はきっちり果たす」
「じゃあキャスター、そしてアサシン。……頼むわね」
「はっ。仰せの通りに」
髑髏の仮面を顔に貼り付けた黒い肌の女性――アサシンのサーヴァントの姿が消え、いち早く仕事を開始する。
――時は少し遡り、一捷の召喚直後。
別室へ通され、ロマニとダ・ヴィンチからカルデアの現状を説明されるアルトリア、エミヤ、クー・フーリン、メドゥーサ、小次郎。
特異点攻略への協力は全員認めた。
加えて『あること』をロマニから伝えられる。
「……本当なのですか? それは」
「にわかには信じられん話だな」
「そう思うのも無理はない。が、実際に前例が全くない異常事態も発生している。それにはこちらも対処しないといけないからね」
ダ・ヴィンチはそう言って、机の上にあるアイテム……一捷の持っていた青緑の短剣を置く。
「ちなみにこのことを、マスターはご存知なのか?」
小次郎の問いかけにドクターは首を振って否定。
彼とクー・フーリンの目つきがやや鋭くなる。
「あくどいなテメエら。アイツが知ったらどう思うよ、それ」
「……現時点では、なんとも言えない。だからあらゆる状況を想定する必要がある」
「その上で……私達にも依頼すると?」
「そう。最悪の場合も考えて。彼に呼ばれたばかりのキミ達にこんなことを言うのも酷だが。私達はどんなことをしてでも、世界を救わないといけない」
ダ・ヴィンチが言い切る。
彼女とロマニの言い分もアルトリア達は分からないわけではなかった。世界を救うために協力すると言ったのだから。
しかし、だ。
難しい表情でうつむいたり無言で考え込む五騎のサーヴァント。
ダ・ヴィンチが言った最悪の場合を想像し、その表情はさらに暗くなっていく。
その時自分達は、召喚を行ったマスターに刃を向けないといけない。
そんな光景を、思い浮かべたから。
――更に場所は移る。
色とりどりの花畑が広がり、暖かな日差しが差し込むその場所。
まさに楽園というべきに相応しいそこで、一本だけ建っている『塔』の最上部。
「フォウ。フォーウ……」
そこにいる白い狐、あるいはリスのような生物が特徴的な声で鳴く。鳴いた相手は白い髪でローブを纏い木の杖を持つ青年。
「このままで良いのかって? ……残念だけどね。この世界では、キミが望むものは見れない。僕が求めている結果にならないだろう」
青年は白い生物へ言うと、塔の外へ目をやる。
彼の目は塔からの景色ではなく、その向こうを見ている。
この閉ざされた楽園からでも、遠い光景を『視ている』のだ。
「彼の決意もむなしく、物語は悲しい幕を閉じる。……それでも、私はここからその物語を見続けるとする。たとえ終わりが決まっていたとしても、彼は、決して諦めることはないだろうから」
そう呟くのは花の魔術師――マーリン。
「変わらず僕は、ここでキミ達を導くとしよう。だからあとはキミ次第だ。敗北し全てを失うか。勝利した先に果てるか。……異界からのマスター、平沢一捷」
はい、間が空いてしまい申し訳ありません。
更新になります。
初召喚と謎の人物達の会話でした。一体誰なんでしょうねー(棒読み)
ここからは補足説明。リメイク前でも同じ展開でしたが、何故出会っていない佐々木小次郎が召喚されたのか?
一捷がカルデアで召喚するとき、ある条件があります。
まずは原作と同じサーヴァントと縁を繋ぎ、サーヴァントが
応えることによる召喚。
加えて条件その1
『FGOが初出ではない、あるいは実際に存在しないサーヴァントである』です。
一捷はFGO世界からすると他所の人間、本来は存在しません。それが召喚に作用し、FGOとは他所の場所=FGO以外のFate作品と認識されたこと。
プラス本来は存在しない人間ということが実際にいなかったあるいは変わりだったサーヴァントと共鳴し、佐々木小次郎の殻を被った誰か『アサシンのサーヴァント佐々木小次郎』が召喚されました。
条件はまだありますが条件その1だけでも呼び出されるサーヴァントは限られるので、誰が呼ばれるか読者の皆さんには分かってしまうかもしれませんね。
それではまた次回。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
-
オルガマリー
-
マシュ