へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

14 / 26
へっぽこマスターと謎の協力者

 何か特別なことがあったわけでもなく、僕は自然に目が覚めた。

 

 昨夜は今日に備えて早く休んだのもあるからだろうか。タイマーでセットした時間より30分早く起床。タイマーを止めると顔を洗い、寝癖を直し、寝巻きから礼装のローブに着替える。

 

 食堂が開くのは確か6時から。少しだけ時間があったのでマスターとして記録しているノートを見返し、少しでも知識を蓄えイメージトレーニングを行う。

 

 6時になると食堂へ。厨房には調理担当となったエミヤさんの姿がある。

 

 

「おはようございます、エミヤさん」

 

「おはよう、マスター。早いな、君が一番だ」

 

「早くに目が覚めまして。緊張かもしれないです」

 

「……だろうな。とりあえず注文を聞こう」

 

 

 やり取りをかわしてから朝食セット(ご飯+味噌汁+おかず)を頼み、完成した食事を受け取る。席につき、手を合わせてから食事開始。よく噛みながら食べるのが大事だ。

 

 食事の途中、アルトリアさんとキリエライトさんが食堂にやってくる。

 

 

「おはようございます、マスター」

 

「先輩おはようございます。お早いですね」

 

「おはようございます。一番乗りでしたよ、僕は」

 

 

 それからクー・フーリンさんやメドゥーサさん、小次郎さん、スタッフの方々もやってきて少しずつ人が増えてくる。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

 食べ終わると食器を返し一旦部屋へ。時間を置いてから歯を磨き、ノートや資料を取り出して勉強。今は少しでも時間があるなら無駄にしたくなかった。できることをしておきたかった。

 

 ……もしかしたら、ここには戻ってこれないかもし!ないから。

 

 集中して資料を読み込んでいると、時間が7時30分になったところで勉強を切り上げる。それと同時に、来客を告げるインターホンが鳴る。

 

 

『先輩、マシュ・キリエライトです』

 

「どうぞ」

 

 

 自動ドアが開きキリエライトさんが入室。

 

 

「そろそろ管制室へ。皆さんも集まっています」

 

「分かりました」

 

 

 彼女についていき管制室へ。既にドクターとダ・ヴィンチさん、オルガマリー所長にサーヴァントの皆さん、スタッフの数人が集まっていた。

 

 

「おはよう平沢。それでは、ミーティングをはじめます」

 

 

 内容は第一の特異点、1431年のフランスについて。所長を中心にドクターとダ・ヴィンチさんが説明していく。

 

 人類の命運をかけた『聖杯探索』のはじまり。

 

 そう考えると説明を聞いていく内に心臓が早く脈打つのを感じる。

 

 自分の言動、行動。いや……一挙手一投足が世界の運命を決める。アニメ・ゲーム・漫画などではよくある展開。それを自分が行う……そう思うと、緊張しないはずがなかった。

 

 

「……それで平沢。今更だけど、本当にいいのよね」

 

 

 説明が一区切りついたところで所長が僕に話を振る。所長だけじゃない、この場全員の視線が僕へと向けられる。

 

 どきり、と。胸の鼓動がより大きくなったのを感じた。

 

 

「私がマスターになったとはいえ、現在のカルデアは圧倒的に戦力が不足しています。正直、猫の手でも借りたいくらい。だから貴方に協力を申し出た。実際に貴方は特異点解決に貢献し、かのアーサー王を始めとする強力な英雄まで召喚した。この先も頼ることになる……と思うわ」 

 

 

 もしも人類を救いたいのなら。2016年から先の未来を救いたいのならば。

 

 それと同じことを『七度』。冬木で歴史を戻し異変を解決したように、別の国、時代で繰り返すしかない。

 

 今から向かうフランス。ローマ。オケアノス。ロンドン。アメリカ。エルサレム。そしてバビロニア。

 

 七つの人類史と戦い、そして勝たなければ未来はない。

 

 全員の目、目、目が降り注ぐ。数もそうだけど、視線に込められている感情。

 

 なんとかしてくれ。力が必要だ。人類の未来がかかっている。

 

 様々な思いが感じ取れる、期待や不安の目。

 

 

「こんな状況下で言うのは半ば強制よ。……それでも、あえて言わせてもらうわ」

 

 

 たくさんの思いと視線を受ける僕へ、オルガマリー所長がゆっくりと告げた。

 

 

 

 

 

「――マスター『平沢一捷』。貴方に人類の運命を背負って

戦う。その覚悟はある?」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 いずれ来ると思っていた問いかけ。それでも、直ぐには何も言えなかった。

 

 改めて、自分と周りの状況に。これから身を投じる戦いに。そして背負わないといけない運命の大きさ、重さに……何も返せなかった。

 

 正直に言えば、怖い。

 

 戦うことが。傷つけることが。命を奪うことが。自分が死ぬことが。

 

 たとえ偶然で使った仮面ライダーの力があっても、別のヒーローやロボットの力、他作品の能力だったとしても。自分はこう感じていただろう。

 

 それでも伝えないと。今、自分が思える言葉を。

 

 

「……正直なところ、覚悟なんて大層なものはありません。傷つくのも、死ぬのも怖いです。それでも僕は、死にたくない。皆さんにも死んでほしくない。だから今、僕にできることをする。ただそれだけです」

 

「……わかったわ。その言葉だけでもいい。私達のこれからは決定したわ」

 

 

 僕の言葉を聞いたオルガマリー所長は、一度目を閉じばさりと礼装のローブを翻して皆に伝わるよう、大きな声で言った。

 

 

「――生き残った全てのカルデア職員に告げます! 現時刻をもって、カルデアは当初の予定通り、人理継続の尊命を全うします!」

 

 

 響き渡った所長の声に応えるようにスタッフが素早く動き始める。

 

 ここにいないスタッフの方々も協力し、レイシフトの準備が進められていく。

 

 周りをスタッフさん達が走り回る中で、マスターである僕と所長はキリエライトさん、サーヴァントの皆さん、ドクターでレイシフト前の最終確認を行う。

 

 

「最後に確認するよ。行き先は1431年のフランスに発生した特異点。マスターとしてオルガマリー所長、平沢君。サーヴァントとしてマシュ、キャスターのクー・フーリンと百貌のハサン。アルトリア王とエミヤ。合計七名によるレイシフトだ」

 

 

 残るランサーのクー・フーリンさん、メドゥーサさん、小次郎さんは予備戦力としてカルデアで待機。いつでも交代できるよう控えておく。

 

 特異点にレイシフト、歪みを生み出している原因を取り除く。やることは冬木と同じ。

 

 フランスということはゲームでいう第一特異点オルレアン。相手は竜の魔女ジャンヌ・オルタと、狂化を付与されたサーヴァント達。原作では。

 

 だが冬木でガイアメモリとドーパントというイレギュラーがあったように、何か別の力が乱入してくる可能性がある。別のドーパントか、他の仮面ライダーの怪人か、あるいは全く別の戦力か。

 

 なんにせよ特異点では何が起こるか分からない。所長とキャスターのクー・フーリンさん達がいるとはいえ、油断はできない。決して。

 

 

(なにかあれば、そのときは。……僕がまた戦うことになる)

 

「では平沢君、これを」

 

「……はい」

 

 

 打ち合わせが終わると、ドクターより預けられていたアイテム――青緑の短剣を受け取り礼装の中にしまう。

 

 

(マオー、聞こえる? そこにいるのか?)

 

 

 短剣に宿ると言っていた存在に頭の中で話しかけてみる。

 

 だが返答はない。皆さんがいるから声には出せない、だから答えないのか? それともただ言わないだけ?

 

 なんにせよ、青緑の短剣よりマオーの声が帰ってくることはなかった。

 

 

「では全員、コフィンの中へ。……それと平沢君、またその短剣を使わないといけないかもしれない。そのときは十分に注意してくれ」

 

「はい、ドクター」

 

 

 ドクターに答え、管制室に設置された細長い設備――コフィンへ入る。

 

 本当に、いよいよ、始まる。グランドオーダー、世界の未来を取り戻す戦いが。

 

 心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、身を任せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、体が浮くような感覚。

 

 

 

 

 

 何かに包まれて……と思ったのは一瞬のこと。

 

 

 

 

 

 

 周囲はコフィンの中から、全く別の場所へと変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

『アンサモンプログラム・スタート。第1工程開始します』

 

 

 

『オルガマリー・アニムスフィア、マシュ・キリエライト、クー・フーリン、百貌のハサン、アルトリア・ペンドラゴン、エミヤ、平沢一捷。七名の全パラメータの定義、完了しました』

 

 

 

『続いて術式起動、“チャンバー”の形成を開始します』

 

 

 

『……“チャンバー”形成、生命活動「不明」へと移行』

 

 

 

『第2工程突入、霊子変換を開始します』

 

 

 

『……補正式、安定状態へ移行』

 

 

 

「第3工程、レオナルド! カルデアスは!?」

 

 

 

「落ち着きなよ、全てまるっとお見通し。我が叡智、我が万能、遮るものは何も無しさ!」

 

 

 

「……全工程完了! ドクターアーキマン、ご指示を!!」

 

 

 

「……分かった」

 

 

 

 

 レイシフトの全ての工程が問題なく終わったのを確認し、ロマニは深く息を吐くと、改めてモニターへ目をやった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ皆、始めようか」

 

 

 

 

 

 その言葉に頷くスタッフ一同。

 

 

 

 

 

「――擬似霊子転移(レイシフト)、始動! グランドオーダー、実証を開始する!!」

 

 

 

 

 

 コフィンから放たれた光は一直線にカルデアスへ向かい、目を開けていられないほどの強烈な光がカルデアスより広がる。

 

 ここに今、グランドオーダーが、世界の命運をかけた七つの特異点への旅。その最初となるレイシフトが始まるのであった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 フランスの都市、オルレアン。

 

 一捷達がレイシフトする特異点に建つ城、その周囲の森にて。

 

 

「まだ着かないのかい? レフ」

 

「何回目だその台詞は。文句が多いぞ貴様……」

 

「おーいおいおい。恩人に対してそんなこと言っちゃあダメだろう。あの王様から庇ってあげたの、忘れたぁ?」

 

「……チッ」

 

 

 緑色のスーツにシルクハットをかぶる男、レフ。

 

 カルデアに被害を与えマグマメモリを使用した彼は、森の中を進んでいた。一人の人物を目的地に案内するために。

 

 現在、オルレアンの城ではフランスを滅ぼそうとしている者達によって準備が進められている。

 

 空を見上げれば翼を広げる無数の影。その進路に街があるのを見ながら歩みを進めるレフと一人。

 

 

「着いたぞ……ここだ」

 

「さんきゅー」

 

 

 ふざけた態度で礼を返す存在。

 

 そいつは見るからに妙な格好をしていた。

 

 全身を真っ白なローブで覆っている。顔は包帯でぐるぐる巻き。とどめにサングラスもかけた完全に怪しい見た目。

 

 こんな不審な存在だが、レフには無下にできない理由がある。

 

 この存在――『A』と名乗り性別は男。Aは突如、人理焼却を進めていたレフ達の前に現れ協力を申し出てきたのだ。

 

 その際、提供した情報やアイテムでレフが従う『王』に協力関係をとりつけ、以降は協力者Aとして様々なサポートを行っている。

 

 その一つがガイアメモリ。レフのマグマメモリはAが用意したもので、今回も壊されたマグマメモリに代わる新しいメモリを調達。更には一捷にやられた両腕も治し、新たな腕をつけてくれたのだ。

 

 そのAがフランスの特異点に用があると言い出し、偵察も兼ねてレフを伴い訪れた……ということだ。

 

 Aの用とは魔力の高いポイント、すなわち龍脈へと案内すること。

 

 そのレフの案内で森の開けた場所、この森に置ける龍脈へ到着したAは、早速作業を始める。

 

 

「ではではでは。はじめよーとするか」

 

 

 そう言ってAは、地面に巨大な魔法陣を展開する。大きさ、展開の速さはサーヴァントにも引けをとらなかった。魔術を得意とするキャスタークラス並の腕前。

 

 

(なんだ? あの陣は)

 

 

 描かれている文字や形は所々読めたが、レフですら見たことのない形式の魔法陣だった。

 

 Aはそこに大量の魔力を流し込んでいく。

 

 魔力が満ちてきたことで輝き始める魔法陣。

 

 続いてAは、ローブより細長い道具を取り出す

 

 

「魔槍・起動」

 

 

 それは、赤色をした短剣型のアイテム。柄にあるトリガーを押すと赤い短剣は光りながら変形し、その形を赤い槍へと変化させた。

 

 両刃で、逆輪の部分が四角く盛り上がった、巨大な槍。

 

 

(この武器は!?)

 

 

 それを見た瞬間、レフは目を見開き本能的に恐怖を感じていた。

 

 見た目こそ槍だが、秘められた力が異常だった。神がまだ地上にいた神代。神話として語り継がれる時代の力を軽く上回る程の力。レフが仕える『王』すら越えるかもしれない、計り知れないパワーがその槍からは発せられている。

 

 そんな危険極まりない槍を魔法陣に突き立てるA。すると空中にいくつも、四角形の光が現れる。

 

 光の中にはこれまた謎の文字がびっしりと書き込まれていて、最早何が起こっているのか分からない。

 

 

「……貴様、何をするつもりだ?」

 

「ん~? この特異点に相応しい人を呼ぶだけよ」

 

 

 特異点に人間を呼ぶ?

 

 素直に応える訳がないと思いつつ聞いたレフだったが、思わぬ返答に疑問で言葉が止まる。

 

 四角い光を弾いたり、手元に寄せたりしながらAは言う。

 

 

「この特異点には、他六つと違って『柱』を設置してない。これはその代わり。まぁ、魔女さん達がやられちゃったときの保険でもある。お、あったあった」

 

 

 やがて目当ての文字が刻まれた光を見つけると、Aはその文字列をタッチ。文字から光が出て槍へ。槍を通じて魔法陣に光が走る。

 

 

「対象決定。星の記憶よりダウンロード開始。……完了。出力、開始」

 

 

 やがて魔法陣が一瞬だけ光を放つと消え……代わるように、一人の人間が地面に倒れている。

 

 赤い鎧のようなものを纏った女性だ。腰には黒い剣を帯び、逆立つ赤髪とそこに入る青いメッシュが特徴の女性。

 

 

「これにて準備完了」

 

「うぅ……なんだい、ここは?」

 

 

 目的の人物なのを確認するとAは頷き槍を引き抜く。ちょうどそのとき、女性が目を覚ましたので、Aは手を差し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、異世界へ。――三人目のジャンヌ・ダルク」 

 

 

 

 

 




はい、今回はここまでで。

Aが呼び出した女性、彼女が第二のクロスオーバー要素となります。

ヒント
『異世界転生+ロボットもの+オーラ』


それでは次回、またお会いしましょう。

もうすぐ年末。皆さん体にお気をつけて。

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。