今年初めての投稿となります。
それではどうぞ。
「やあぁぁぁっ! はぁっ! これでっ!!」
「グォォォォッ……」
僕が青緑の短剣で片目を潰したワイバーンを、キリエライトさんが何度も何度も盾で殴りつけることでようやく動かなくなり、黒い塵となって消える。
相手が消えたのを確認したキリエライトさんは建物の壁を蹴って飛び上がり、別のワイバーンの頭へ盾を叩きつけた。
生物の弱点である部分を、サーヴァントの筋力+武器で殴ったにも関わらず、相手のワイバーンは死ななかった。それどころか火を吐いて反撃しようとしてくる。咄嗟にキリエライトさんは頭を蹴って叩き落とし、アルトリアさんが首を切り落としたことでようやく倒される。
エミヤさんが建物の上から矢でワイバーンを狙撃。地上からはクー・フーリンさんがルーンの炎を発射。百貌さんの分身が殴りつけナイフやダガーで切りつける。
しかし、一発二発攻撃を浴びたくらいではワイバーンは死なず、常に群れで襲いかかってくる。
これが本当の敵。本当の生き物。本当の敵か……!
ゲームではスカディや孔明のバフをかけまくり、全体宝具アサシンなどで一掃しまくってたが、そんなこと現実じゃ有り得ない。
いくらサーヴァントの皆さんだとしても、数が足りていない。せめてもう一人、遠距離攻撃のできる人かキャスターのようなバフ要員が必要だ。できれば狙撃や弾幕を張れるような人が。
もしくは、カルデアに待機しているクー・フーリンさん、メドゥーサさん、小次郎さんの誰かに変わってもらった方が良かったか……? 例えばクー・フーリンさんのスピードで翻弄してもらうとか……。
頭の中でいくつも考えが巡るが、どれもが良いとは思えず、結局それどころじゃないと思考を無理矢理切りかえた。今はこの女の子を逃がすのが第一だ。
目的地は人々が逃げている先、砦の出入り口付近。馬車が何台も停まっており逃げてきた人が達が乗っている最中だった。兵士達が避難誘導を行っており、僕は兵士さんの一人へ抱えていた女の子を預ける。
「馬車には老人・子供を優先させろ!」
「ラ・シャリテまで落ち延びれば安全だ!!」
「この子をお願いします! 親とはぐれたみたいで……!」
「あぁ、分かった!」
女の子を預けると改めて周囲を確認する。
ワイバーンの襲撃で砦は完全に混乱しパニック状態。キリエライトさん達サーヴァントと兵士達が抵抗し、避難活動を行っているが混乱が大きすぎて上手くいってない。
人手も戦力も足りてないんだ、こんな状況じゃあ……。
すると突然、誰かの叫びが響き渡る。
「これは当然の報いだ!!」
声の主は一人の兵士。道のど真ん中で両手を広げ喚き散らしている。
「オレ達が聖女様を見捨てたせいだ! あの方は竜の魔女となってオレ達を、この国を地獄の炎で焼き尽くすつもりなんだ……!!」
「な、なんなんですか、あの人……こんな状況で」
「放っておけ。いるんだ、ああいう手合いがな……」
こんな状況だからこそ、絶望し精神が壊れてしまったのだろう。
戦争や殺しの真っ只中だ。そんな風になったとしてもおかしくはない。……他人事みたいに思ってる僕だって、そうならないとはいえないのだ……。
「いいんですか? あのままで」
「こっちだって今はワイバーンから市民を逃がすので手一杯なんだ。あんなのに構ってられんよ」
避難を行う兵士さんの言うように、今はそれどころではない。直ぐにまた別のワイバーンが避難民へ襲いかかってくる。
まずは皆の元へ戻らないと! そう思い振り返ったときだ。
バシン、という乾いた音。
騒いでいたあの兵士が、誰かに叩かれていた。
「いいっ!?」
僕は思わず声を出してしまう。隣にいた兵士さんも口をあんぐりと開けていて、叩かれた兵士は何が起こったのか分からないのか無反応のままでいる。
「どれほどあの子を知っているかわかりませんが、人の“娘”のことを好き勝手言わないで……!!」
(娘……?)
「あの子は、ジャネットは決して! こんなことをする人間じゃないわ!!」
頭巾を被った金髪の女性だった。顔はよく見えないけど頭巾から出た金色の前髪には見覚えがあり、ジャネットという名前はジャンヌ・ダルクの幼名。
……まさか、この人。Apocryphaのアニメにも出ていたジャンヌのお母さん!? イザベラ・ヴトンさんか!?
「……て、テメェ、ふざけんなよこのババア――」
ぎょろりと目を見開く騒いでいた兵士。怒りのまま、イザベラさんへ殴りかかろうとしたがその直前。
がぶり、と頭を緑のワイバーンに噛まれ、背骨ごと引きずり出されて兵士は絶命。噴水のように血が噴き出しイザベラさんへかかる。
絶叫するイザベラさん。
今度はそちらを狙って、また違うワイバーンが飛来してくる。
「や、やめろーーーっ!!」
再び短剣を抜きワイバーンへ叩きつける。
が、今度はあっけなく跳ね返されてしまった。
さっきは上手いこと目に刺さったので良かったが、ワイバーンの体はその細長い見た目からは想像できないほど、硬かった。岩にでもぶつかったかのようだ。
ならばと何度も短剣で叩く。だがワイバーンの鱗には傷一つつかない、それどころか羽根の羽ばたきだけで僕は紙のように吹っ飛ばされてしまった。
「ぐぇっ……!?」
石畳をゴロゴロと転がる。痛みを堪え前を見れば、大きく開かれた口。
まずい……ワイバーンに、やられる!?
「グワァァァァァォッ!」
そのままワイバーンに頭を噛み砕かれる。
鋭い爪で引き裂かれる。
羽根に殴られ体を粉砕される。
群れで襲われ貪り食われる。
様々な『死』の光景。死ぬ未来が、いくつもいくつも頭に浮かんでは消えていく。
『おいおい、何を無茶してるんだ。そんなことしなくたってなぁ……』
なんかマオーの声も聞こえた気もするけど幻聴か……?
僕へと迫る『死』。
そんな、こんなところで、死ぬ?
第一の特異点なのに。まだ先は長いのに?
死んで……終わり?
「――伏せなさい!」
何処かよりの声。反射的に伏せた瞬間、襲いかかろうとしていたワイバーンが粉々になった。
「ギ、ェェェ……!」
まるで大砲かビームにでも貫かれかのように、ワイバーンの真ん中にでっかい穴が空く。残った頭や翼がバラバラになって飛び散る。
アルトリアさん達でも中々倒せなかったワイバーンが、一撃で、だ。
手にした棒……いや『旗』の一撃で、目の前に現れた存在は僕らを救ってくれた。
ボロボロのローブを纏った謎の人間。
けど正体が誰なのか。何故ここにいるのか。
助けようとしたのに逆に死にかけて、動けなくなった僕だったが、原作の知識とローブから僅かに見えた金髪、手にした旗。
それらからローブの人物……彼女が誰かなのだけは、理解して口に出していた。
「ジャンヌ……ダルク……」
◆◆◆
その後の戦いはジャンヌが戦いに加わり的確に指示を出してくれたことで、どうにか避難していた人達や砦を守り切ることができた。
だが戦いの後、砦の兵士達が彼女を見て騒ぎ始めた。
当然だ。復活したジャンヌ・ダルク――確かに死んだのは彼女だがフランスに被害を与えているジャンヌとは違う存在――が現れたのだから。
混乱を避けるため、僕らはひとまず砦から出てそのまま郊外の森へ移動。道中に現れたスケルトンやはぐれワイバーンをジャンヌと共に蹴散らしていく。
「ここまで来れば安全でしょう。すみません、言うがまま付いてきていただいて」
「いえ……お陰で助かりました」
森の奥まで進むとジャンヌが足を止め、頭のローブを外すと顔を見せて自己紹介してくる。
「あらためて自己紹介を。私は“
「っ! ジャンヌ・ダルク……!?」
(ここは同じか)
「お待ち下さい! 構えるのは当然ですが……話を聞いてもらえないでしょうか」
名前を聞くなり、オルガマリー所長が驚きながら下がり、クー・フーリンさんと百貌さんが杖とダガーを構える。キリエライトさん達も同じように盾、剣、双剣を。
様々な武器を向けられてなお、ジャンヌはそれを予測していたようでまずは対話を求めてきた。
「……皆さん、一旦武器を下ろして」
「でも平沢、彼女はジャンヌ・ダルクと名乗ったのよ? ならば警戒しない訳にはいかないわ」
「だからこそです。この人がジャンヌ・ダルクだとしても、フランスを襲ってたようには見えない」
原作知識と言われればそうだが、見ただけならこのジャンヌが殺戮を行う雰囲気には見えないと僕は感じた。
「まずは、話をするのが良いかと」
「どうでしょう、話を聞いていただけますか?」
「……分かりました。ひとまず、貴女の話を聞かせてもらいます」
「……マスターがそう言うのであれば」
「オレらもそれで良い」
オルガマリー所長が頷くのを見て、サーヴァントの皆さんも納得してくれた。
カルデアへ通信を接続。ドクターも加え、森の開いた場所で丸太へ腰かけるとジャンヌの事情を聞く。
「ジャンヌ・ダルクが、複数存在する?」
「恐らくは。私の現界……この時代に現れたのは数時間前です。なのでフランスを襲う竜の魔女や赤のジャンヌたりえませんし、もちろんそんな記憶もありません」
内容はゲームと同じ。
自分とは違うジャンヌ・ダルクがいること。ジャンヌが現れたのは数時間前でフランスを襲うことなんて不可能なこと。霊基が不安定で記憶が曖昧であり、本来の知識やスキルが使えない、ということだった。
見張りをしながらキリエライトさん達もジャンヌの話を聞いているから、このジャンヌが復活したジャンヌ(オルタ)とは違うってことは分かってくれただろう。
「ではジャンヌ・ダルク。復活したジャンヌ・ダルクと貴女が違う存在だとして、貴女はこれからどうするつもりだ?」
そう尋ねたのはエミヤさんだ。
「……それだけは決まっています。再びオルレアンを解放し竜の魔女と赤のジャンヌ・ダルクを排除する。啓示は無く、手段も見えず、ただ一人であろうとも。ここで目を背けることはできませんから」
迷いなくジャンヌは言い切った。たった一人で、力も弱まっていて、記憶が曖昧なのにだ。自分だったら到底できないだろう、なのにこんなはっきりと決断するなんて。
(これが英雄……なのか)
堂々とした姿に圧倒されていたが、ドクターからの通信で我に返る。
『平沢君。ここは彼女の、ジャンヌ・ダルクの協力は必須だとボクらは考える。敵もジャンヌ・ダルクだというのなら、今のフランスにおいて彼女ほど強力な味方はいないよ』
「……そうですね。ならジャンヌ・ダルクさん。今度はこちらの自己紹介を」
ジャンヌと目を合わせ、自分から順に名乗っていく。
「僕は平沢一捷、カルデアのマスターです」
「オルガマリー・アニムスフィア、同じくマスターでカルデアの所長を務めているわ。彼らは私と契約しているサーヴァントのキャスターとアサシン」
クー・フーリンさんと百貌さんがジャンヌさんへ手を上げ頭を下げる。
同様にアルトリアさん、エミヤさんをセイバー、アーチャーとして紹介し最後にマシュが本名で名乗る。
クラスで名乗ったのは……真名を隠すためか。
まだジャンヌさんとは出会ったばかり。オルガマリー所長達も警戒しているんだろう。
ならうっかり言わないよう気をつけないと。
そのジャンヌさんを加え、これからどうするべきかという話になったところで。
がっし、と。肩をオルガマリー所長に掴まれる。
「……その前に平沢。話があるから来なさい」
『ボクからもね』
そう言うオルガマリー所長とドクターの声が、低くて圧を感じた。
……あっ、さっきの飛び出したやつだわコレ。
急遽設置したテントの中に僕は連れていかれ、
「貴方ねぇ……死ぬつもりかしら!?」
『何考えてるんだいきなり!!』
……所長とドクターにカミナリを落とされ、しこたまお説教を貰うのであった……。
◆◆◆
「……あぁ。流石にこたえるわコレ……」
所長とドクターのお説教をガッツリ3時間いただき、ふらつきながらテントを出る。
冬木で無茶な行動を繰り返していたのもあり、めちゃくちゃ叱られた。
僕の自業自得なんだよね……このままだと本当に死にかねない。そうなったら終わりなのに……。
「……平沢殿?」
「あ、ジャンヌ・ダルクさん……お疲れ様です」
げんなりしていると向こうからジャンヌさんがやってきた。今夜はこのままここで野営するそうだ。
「ジャンヌでよろしいですよ。……ずいぶんと長く話されていましたね」
「お説教をいただいていたんですよ。自分を大切にしていないってね……」
「それでも、貴方のお陰で助かった命もあるでしょう?」
「……無事だと良いんですがね。あの女の子」
あの女の子とイザベラさんは馬車で砦から避難。そのとき、ジャンヌさんはイザベラさんに話しかけられたが、あえて何も言わず立ち去っていた。
「兵士さんを叩いたあの女性……たしかジャンヌさんの」
「……えぇ。私の母でした」
「よかったんですか? お母さんに話しかけられてましたけど、何も言わなくて」
「私は、既に死んだ人間です。たとえどんな結末だったとしても。人としての運命はそこで終わっているのです」
「……運命」
そう言われて、どう返していいか分からない。
運命だと。始めから決まっていることだと言われて、もし僕だったら納得できるのだろうか。
理不尽で傷つけられたり、迫害されたり、もしくは死んだとしても。
「だからこそ、今の私にやれることをしなれければならない。竜と赤のジャンヌを、なんとしても止めます。それが、今の私の使命なんです」
「強いな、ジャンヌさんは。僕には真似できっこないですわ」
「そんな。短剣一つでワイバーンへ立ち向かっていたではないですか。それは少なくとも、勇敢でければできないことのはずです」
「そいつは、コレのお陰ですよ……」
礼装から青緑の短剣を抜きジャンヌさんへ見せる。
そういえば、カルデアのサーヴァント以外に見せるのは初めてだな。
短剣を見るなり、ジャンヌさんの表情が変わる。
驚きの表情。
「そ、その短剣は……?」
「前の特異点で急に現れたんですよ、この短剣。こいつが力を貸してくれて、その特異点では生き残れたんですから、そいつには感謝してます。まぁ、正体云々は何一つ分からないんですが」
「……これからも使われるのですか? その短剣からは、非常に危険な力を感じます。使用を止めるのは、できないのか?」
「使う機会がなければ、一番良いんですがね。実際、発動した力は強力で頼もしい限り。デメリットがなければ、これからも頼りにしたいところです」
さっきの砦でも、ガイアメモリの力が使えていればワイバーンを少しでも倒すか追い払えたかもしれない。
マグマ・ドーパント相手に使った、短剣を叩くあれ。毎回しないと力を使えないのか?
『いやー? 使えるよ普通に』
「え」
僕の予想に答えるように、マオーの声。
使える? 普通に? ……ガイアメモリが?
「マオー? マオーなのか? そこにいるの?」
「平沢殿?」
『よ。お久しぶり』
「お前なのか!? 今まで何やってたんだよ、聞きたいことがたくさんあるのにさぁ!!」
「平沢殿、声が大きいです。誰と話されているのですか?」
『やーすまんすまん。ちとゴタゴタがあってねぇ。とりま、さっきの質問に答えるよ』
『一度発動した力は使える。ガイアメモリどダブルの力、使おうとすれば使えるよ』
……そう言われ、頭に情報を流し込まれる。
本当かどうか試すため、即座に実行。
「あの……聞いてらっしゃいます?」
ジャンヌがなんか言ってるけ今はどうでもいい。
まずはイメージ。
頭の中に冬木で使った力……仮面ライダーWの力を思い浮かべる。
短剣を右手に持ちかえ、左手で柄を叩く。
すると、どうしたことだろうか。
短剣が青緑に光り、左手の中に薄い板のような物体が……『六つ』出現。
サイクロンとジョーカー。ヒートとメタル。ルナとトリガー。六本のガイアメモリ。
そして最後に、何かを差し込むスロットが二つある、赤いバックルが現れる。
仮面ライダーWの変身ベルト……『ダブルドライバー』。
『ね? 出たでしょ』
「……………………」
無言のまま、短剣を見つめる。ただひたすら。
手からメモリ六本とドライバーが落ちるのも気にせず。
「あの、色々落ちてますけど……」
…………とりあえず、一つ言いたい。
青緑の短剣を掲げて、ただ一つ。
「…………それ先に言えよやこのアホぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「さっきの今でうるさいわよアナタ!!!!」
(大丈夫でしょうかこの人……)
絶叫した一捷がツッコミのハイキックをオルガマリーにかまされるのを見て。
ガイアメモリ六本とダブルドライバーを抱えながら、汗を浮かべてドン引きするジャンヌであった……。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
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オルガマリー
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マシュ