『この際だから一度説明しておくよ。青緑の短剣……すなわち私の力とはなんなのか』
『ずばりそれは、相手の力に対抗する力を生み出す能力だ』
『相手がAという力を使えばそれに対抗できうるBという力を。炎の属性ならば水の属性を。剣を使えば同威力の剣や破壊可能な武器を』
『身近な例えだと冬木の特異点でのWの力だ。相手がマグマメモリの怪人マグマ・ドーパントであったから、対抗できる仮面ライダーWサイクロンジョーカーの力になった。このようにMSのザクⅡであればRX78-2ガンダムを。宇宙怪獣ベムラーであれば光の巨人ウルトラマン。相手によって武器、技術、魔法を始め他のヒーローやロボット、カード、能力、モンスター。基本的になんでも出せる』
『まぁまとめると、ものすごい後出し能力だね。私の力』
『あ、ついでに言っとくと。Wの力が使えるのを言わなかったのはガチで言い忘れてたからだ。すまんね』
「……だ、そうです。マオーが言うには」
「いや、突っ込みどころしかないわよそれ」
一夜明けて早朝。
オルガマリーのハイキックが思いのほか綺麗に決まり、あのまま一捷は気絶。目を覚ましたのがつい先程で、顎に絆創膏を貼ってマオーから伝えられた内容を皆に説明するも、早速オルガマリーより指摘される。
サーヴァント達も頷いており、各々説明に対する意見を述べていく。
「平然と言っているが、仮にそうだとしたら理を乱しかねないほどの力なのだぞ。マスター」
「だな。相手に対して常に有利が取れるんだ、戦力としては頼もしいが……」
「正直、警戒すべき点が多すぎますね」
「そのマオーという存在が真実を言っている、とも限りません」
「エミヤさん達の言う通り、真に受けるのは危険だと思います。先輩」
『信じたい気持ちも分かるけど、確証がない。何より本人と話ができないのなら、警戒するしかないよ』
「うむむむむ……」
全員マオーと情報に対して懐疑的。
言う前から分かっていたが、まぁそうだろうな、と一捷はうなる。
力の内容があまりにも突飛で、そんな都合の良いものがあるものか、と思いたくなるのが自然。マオーの声が一捷にしか聞こえないのもある。ロマニが言うように、会話ができないのであれば信じるのも難しいだろう。
「唯一現れたのがその道具なのだろう?」
「はい」
言葉以外にあるものと言えば、マオーが出したダブルドライバーにガイアメモリ。一捷は仮面ライダーWの、ロマニ達へ説明した内容をこの場の全員へ伝えた。
「あのときの力が任意で使えるのであれば、確かに心強いが」
「セイバー達が見たという二色の戦士か。ふむ……」
エミヤは顎に手を当て何かを考える。そしてある意見を述べた。
「ならば一つ提案をしたい。マスターと私で偵察に出たいのだが」
「エミヤさんと、僕で?」
「あぁ。ついでに模擬戦闘を行う。Wとやらの性能を知っておく必要があるだろう。力に慣れるのも含めてな」
もしもエネミーと遭遇したら、相手と数にもよるが、そいつらでWの力を試す、ということでもある。
(いきなり実戦で試すよりは、まだ余裕があるかもしれないな)
メモリとドライバーが出たとはいえ、実際に敵と戦う。既にマグマ・ドーパントと戦っているとはいえ、あのときは夢中でやるしかなった。冷静な状態で戦うとなると、どうしても緊張し体が強張る。
自分がやられたりしないか? 本当にこの世界の敵にも力が通用するのか?
様々な不安がよぎる。
それでも、エミヤは少しでも不安をなくそうと動いてくれている。一捷はそう感じた。力を確認したいのがあっても、その気持ちを無駄にしたくない。
「……分かりました。僕は構いません」
「よし。ならば早速」
「――お待ちを」
偵察に出ることを決め、オルガマリー達に許可を取ろうとしたときだった。
先に偵察へ出ていた百貌のハサンが戻りオルガマリーへ報告する。
「アサシン、偵察の結果は?」
「は、この森を抜けた先、ラ・シャリテの街がサーヴァントとワイバーンに襲撃されています。故に、急ぎご報告に参りました」
「なんだって!?」
いち早く反応したのは一捷だ。ラ・シャリテと言えば、昨日訪れた砦の避難民が向かった街。
その中には一捷が助けた少女やイザベラもいる。
『……ダメだ。サーヴァントの反応、ロストしました……』
「……分かったわ、ロマニ」
報告を聞いたオルガマリーは直ぐに決断。全員に指示する。
「聞いていたわね、直ぐにラ・シャリテへ向かいます。各自、撤収と戦闘の用意を! 平沢、悪いけど話している時間がもったいないわ、指示は走りながら伝えます!」
「はい!」
野営の道具を手早く片付け、一行は警戒しながら走り出す。
森を抜け、街に近づくにつれ、焦げ臭い匂いが漂ってくる。ラ・シャリテの街からは黒煙がいくつも上り、無数のワイバーンが飛び回るのが見えた。
その道中でオルガマリーより指示を伝えられる一捷。
はっきり言えばそれは、無茶な内容であった。
(けど今は……無茶でもなんでもやるしかない)
少なくとも、自分やマシュ達が死ぬ訳にはいかない。生きるために、死なないために、抗い戦わなければならない。それが今だ。これからも。何度も何度もやるしかない状況が来るだろう。
まずは自分達が生き残る。
そしてできれば、今のように命が奪われようとしているとき、一人でも多く助けたいとも思う。
懐に仕舞ったダブルドライバーとガイアメモリ。それらに触れながら、一捷は全力で走り続けた。
◆◆◆
「うぅっ……!? これは……」
ラ・シャリテの街へ到着した一行。
しかし街は既に……廃墟と化していた。
一面、瓦礫の山が広がっている。火の手が上がっている場所もあり、全く人の気配を感じない。
「遅かったのか……そんな!」
(じゃああの子やイザベラさんもまさか……)
「待てマスター、何者かが向かってくる」
エミヤがいち早く反応。それを聞いた一捷は、生きている人がいる、と喜んだ。
が、オルガマリーやマシュ、サーヴァント達は険しい表情で各々戦闘態勢に入っていく。
「皆さん、どうして武器を」
『平沢君、残念だがその周囲に生命反応は感じられない。接近してくるのは……エネミー個体だ』
「……アァァァァ」
「……ひっ!?」
瓦礫の中より現れたのは人型ではあるが、人でなくなったもの達。
無数の死体が変化した生ける屍、リビングデッド。
手足がちぎれた槍の兵士。顔が削れた弓の兵士。内臓がはみ出した剣の兵士。
グロテスクなその姿に、一捷は動揺してしまう。
「……アサシン、キャスター、アーチャーは後方から援護。マシュは私達の前面で護衛。セイバーとジャンヌは前に出て攻撃!」
「お任せを!」
横目で一捷を見ると、オルガマリーは手早く指示を出していく。一捷と契約しているアルトリア、エミヤ。そしてジャンヌは何も言わず戦闘を開始。
幸い、リビングデッドはそこまで強力ではなく、瞬く間にサーヴァント達によって倒されていく。
最後はキャスターのクー・フーリンのルーン魔術で焼き尽くされ、塵となって消えていった。
これで終わりに見えたが、そんなことはなくロマニが新たな敵の反応をキャッチする。
『ワイバーンが接近してくる! 数は7、恐らく街を襲っていた個体だ!』
「平沢、来るわよ! いつまでそうしてるつもり!?」
「……はっ! す、すみません!」
「リビングデッドは撃破したわ、次からは指示通りにやりなさい」
「……はい!」
飛来する七体のワイバーン。六体は緑色の鱗をした通常のワイバーンで、残る一体は赤茶色の鱗をしたワイバーンドレッド。
オルガマリーに促され正気に戻った一捷は、彼女より前に出てワイバーン達を視界に入れる。
まだ動揺が残っている心をなんとか宥めながら、礼装よりダブルドライバーを取り出すと腰に当てる。すると自動的に黒いベルトが巻かれて固定。続いてサイクロンとジョーカーのガイアメモリを取り出し、メモリ下部にあるスイッチを押す。
『サイクロン!』『ジョーカー!』
メモリの音声『ガイアウィスパー』が発せられる。右手に持つサイクロンメモリ、左手のジョーカーメモリの順でダブルドライバーのスロットにメモリを挿入。待機音声が流れ始める。
「へん……んんっ! はぁっ!!」
思わず『変身』と叫びそうになったが、直前で止め、代わりに気合を込めるよう叫んでスロットを開く一捷。
自分には変身と叫ぶ資格がないと思ったからだ。
それでも、原作と同じ変身シークエンスにより、一捷の体と礼装は変化していく。
礼装のローブが緑と黒、首には赤と白のマフラー、目の色は赤。冬木でマグマ・ドーパントと戦ったときと同じ、Wサイクロンジョーカーの姿へと。
「これが……Wという戦士の姿か」
「体の中央で分かれた二色とは、なんと面妖な」
「あのときと同じ姿……またあの力が使えるのですね」
「今回はバックルを使ったけど、何か違うのかしら?」
初めてその姿を見るエミヤ、百貌は二色となった一捷の姿をまじまじと見たり、驚いている。
Wの姿になった理由は二つ。
一つは生存率を高めるため。マグマ・ドーパントと戦える程の力を持ったWになれば、礼装と合わせて強い守りの力となる。
もう一つは力のチェック。どれほどの威力があるのか。どこまで攻撃を防げるのか。性能を確かめておく必要がある。
襲ってきたワイバーンは七体の内、クー・フーリンとアルトリアがドレッドとワイバーン二体を。マシュ、エミヤ、百貌がオルガマリーの援護を受けながらできるだけ一捷の近くでワイバーン三体を。残る一体を一捷が受け持つ。
「ガァウァッ!」
「うぉっと!?」
飛びながら鋭い歯で噛みつこうと飛来するワイバーン。一捷は驚きながら屈んで避けると、腹に拳を二発入れる。
続いて蹴りをお見舞いしてやろうとしたが、その前にワイバーンは飛び上がりかわされてしまう。ワイバーンは空中に留まりながら、足の爪、翼から放つ風で攻撃。対し一捷は飛び退いて回避したり、腕をクロスさせて防御。目立ったダメージはない。
(すごい。これが、Wの力)
原典と見た目こそ違うが、その力は強力なものだと一捷は感じていた。
全身が生体装甲ではなく、顔に仮面がないので避ける必要があるが、防御力は十分。風を纏った蹴り・拳は確実にダメージを与える攻撃力がある。
これならいけるかもしれない。戦っていける。
そんな思いが一捷の中に生まれ始めていた。
「ふっ!!」
「ギャ!?」
両膝を曲げジャンプする一捷。風を纏う回し蹴りをワイバーンの頭に叩きこむ。それによって地面に叩きつけられるワイバーン。翼をばたつかせ逃げようとするが、その翼の上へ一捷が着地。逃げないよう踏みつけ、右手の指を真っ直ぐ揃えて手刀の形とする。
「らぁっ!!」
風を纏わせた手刀一閃。狙いはワイバーンの翼の根元だ。鱗と肉を裂き、骨を砕く感触が手から伝わってくる。
それに一捷は顔をしかめながらも右手を振り抜き、ワイバーンの右翼を切り飛ばした。
空へ飛ぶのが厄介な相手なら、その手段を奪えばいい。
片方の翼だけになったワイバーンはその場で手足をばたつかせて暴れるが、一捷は鱗の少ない頭を蹴り、柔らかい腹へ拳を突き入れた。
頭を砕き、心臓に当たる器官を潰したことでようやくワイバーンは動かなくなり、消滅。
このFGO世界で初めて、一捷自身の手で、本物の敵性生物を倒したのだ。
「た……倒した。僕でも――「避けてくださいマスターッ!!」ッ!!?」
やっとのことでワイバーン一体を倒した。周りの確認をせず、思わず集中を切らしてしまった一捷に、アルトリアの警告が飛んだ。
このとき、他のワイバーン五体は既にサーヴァント達が倒していた。だが突然、アルトリアとクー・フーリンが相手をしていたワイバーンドレッドが二騎を振り切り一捷へ突撃をかける。
矢や短刀、魔術がワイバーンドレッドに当たるが、倒しきれず、顎を大きく開いて一捷へ襲いかかる!
「ウガァァァァァッ!」
「なろぉぉぉぉぉっ!!」
その場に倒れることで、一捷は噛みつき攻撃を寸前で回避した。しかしそのまま、ワイバーンドレッドの足で押さえつけられ、再び牙が迫る。
何もしなければやられる、このままでは。
いくらWでも噛み砕かれかねない。目の前で暴れる竜にそう感じてしまう。
……ならば。
(なら、砕かれないWになればいい)
足に押さえこまれているが両手は動く。右手に赤のガイアメモリを。左手に銀のメモリを取り出し起動。
『ヒート!』『メタル!』
開いたダブルドライバーのスロットを一旦閉じ、サイクロンとジョーカーのメモリを抜く。代わりに起動したヒートメモリ・メタルメモリを入れ、ドライバーを開く。
『ヒート! メタル!』
音声が鳴ると礼装の色が変化していく。
緑は赤に。黒は銀に。マフラーがなくなり、背中に棒型の武器が出現。
「でぇい!!」
「グッ!?」
左の拳をワイバーンドレッドの腹にぶちこむ。
その威力はサイクロンジョーカーのときよりも上。殴った箇所は皮膚を突き破り、骨すら砕いていた。
続けて右足のキックは炎を纏い、鱗や翼を焼く。
傷を負ったワイバーンドレッドはたまらず飛びあがり一捷から距離をとった。
その一捷が起き上がり、背中の棒型武器を抜く。
変化したその姿を、全員が見ることになった。
「マスターの色が、変わりました!」
「赤と銀の姿……武器も持っているのか?」
右半身は赤、左半身は銀。メタルメモリの防御力にヒートメモリの炎を加え、背中から抜いた棒型武器『メタルシャフト』による炎の棒術を得意とするパワー形態。
その名もヒートメタル。
Wの中で安定した三つのフォーム、その二つ目となる姿だ。(一つ目はサイクロンジョーカー)
「ここからは、お熱くいきましょうか!」
メタルシャフトに炎を纏わせ、ワイバーンドレッドへ向かっていく一捷。
爪と噛みつきが来るが、メタル側の左腕で払いのけ防ぐ。
右手に持つメタルシャフトで何度も腹側を殴りつけ、ワイバーンドレッドが後退したところに左のキック。更にダメージを重ねる。
「トドメぇッ! そこぉ!!」
「ガッ……!?」
最後は左パンチでへこませた腹にメタルシャフトを突き入れ、内部から炎で焼き尽くし、力任せに横方向へ振り抜いて相手の体を引き裂く。
ズタズタにされたワイバーンドレッドが消滅。これで、襲ってきたワイバーンは全て倒された。
「……ふぅ。これで、全部ですよね。ワイバーンは」
「……そうね。そのはずよ」
オルガマリー達に向き直り全滅を確認する一捷。そのオルガマリーはロマニへ改めて敵がいないかを調べるよう言うと、ヒートメタルとなった一捷の姿をジッと観る。
マシュやサーヴァント達も、一捷のことを頭から足の先まで観察するように観ていく。
多くの視線を浴びて、一捷は少し照れくさい気持ちになるが、ここはまだ戦場の中。周囲の確認に移る。
敵を倒したが気を抜くことはできない。新たな敵が来てもおかしくないからだ。
(ヒートメタルは防御が高いから襲われても攻撃を防げるはず。後はサイクロンメタルか? 普段に使うのは。周りを警戒するならトリガーに変えた方がいいかな?)
一捷が考えながらフォームチェンジしようとトリガーメモリ、サイクロンメモリを取り出したときだった。
ぞくり、と背筋が震える。
なんだと思い周囲を見るが敵の姿はない。サーヴァント達も警戒を続けているが気づいた様子はなく、ロマニからの連絡もない。
気のせいかと思ったが次の瞬間、震えがまた来る。
まるでなにかが、巨大なものがこちらに迫っているような感覚。そう一捷が感じたとき、ロマニからの通信が入る。
『待って! その場に急速接近する反応が五つ! これは…サーヴァントだ!!』
「っ、全員迎撃の準備! 平沢は下がりなさい!!」
オルガマリーが叫び、その場から一捷が動いたとほぼ同時に。
そいつらは、この場に現れた。
空から飛来した新たなワイバーンから飛び降りる五人、いや五騎のサーヴァント。
「貴女は……!?」
「……ようやく会えた、と言えばいいのかしら。この状況は」
その先頭に立つのは、ジャンヌとそっくりの姿をした少女。
ジャンヌを黒く染めた姿、真っ白な髪、手には同じく旗。そこに描かれているのは竜。
彼女こそ竜の魔女――『ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ』。
「五騎の、サーヴァント……!」
仮面ライダーの力でサーヴァントを相手に。
その最初の戦いが、始まろうとしていた。
はい、間が空きましたが今回はここまで。
マキシマムドライブはまだお預けです。
普通のエネミー相手には効くでしょうが、サーヴァントにはどれほどの威力になるのか。
技にもよりますが、宝具との撃ち合いになったら被害が……。
それでは次回もお楽しみに。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
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オルガマリー
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マシュ