へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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お久しぶりです、剣聖龍です。

再び間が空いてしまい、申し訳ありません。

サブタイトル通り、仮面ライダーWにならって前後編となります。

まずは前編、どうぞ。




課せられたP/へっぽこマスターへの試練

「……少し言い過ぎなんじゃねぇのか」

 

 

 霊体化しテントから出たエミヤ。外で体を展開した彼にキャスタークー・フーリンが言った。隣にはアルトリアもいる。

 

 二人ともテントでの会話は聞いていた。もちろん他のサーヴァント達にも聞こえていた。カルデアメンバーは通信などで以下同文。

 

 

「盗み聞きとは趣味が悪いな」

 

「アーチャー、貴方の言いたいことも分かります」

 

 

 アルトリア、クー・フーリンはエミヤという英霊がどんな存在か知っている。だから一捷へ厳しい言葉をぶつけた。

 

 

「ですが、それでも」

 

「そんなことは百も承知だ。だがどうしても見過ごせなかったのでね」

 

「そりゃあオレだって思うことがない訳じゃあねぇ。だがよ、坊主のことは『知っている』はずだ」

 

「だからこそだ」

 

 

 一捷にも事情がある。それを『知った上で』エミヤは言っていた。

 

 

「彼からすれば、ゲームのように遊んでいるだけもしれない。そのような意識は捨ててもらわなければ困る。そうでなければ、被害を受けるのはこちらかもしれんのだ」

 

 

 エミヤの正論にアルトリア達は黙りこむ。

 

 

「無論、私とて彼の必要性は理解している。彼の力は強力だ。もしそれを扱うからならば……決して甘えは許されないんだよ」

 

「アーチャー……」

 

 

 最後だけ口調が変わるエミヤ。アルトリアは思わず呟く。

 

 彼なりに一捷のことは考えている。それがどうしても、心情や状況と重なって厳しいものになってしまったのだ。

 

 この場の誰もが、カルデアの全員が、一捷のことを考えていないわけではない。むしろ考えている。

 

 今の一捷に対しての評価は、日が浅いからどうしようもないのだが、『どうしても警戒が必要な存在』。『浮かれている子供』。

 

 それが現在のカルデアから一捷への見方だった。

 

 

「……皆さん! 揃っていますか!」

 

 

 やや重くなった空気を吹き飛ばすように、その声が聞こえてきた。

 

 声の主はマシュと共に偵察に出ていたジャンヌだ。

 

 

「この先の開いた地点で、兵の部隊がワイバーンに襲われています!」

 

「直ぐに先輩を呼んでください、救援に向かわないと!」

 

「……分かった。では私も行こう」

 

「アーチャー!」「お前、言っとくが」

 

「安心しろ。戦いは戦いだ、自分の仕事をきっちりやるだけさ」

 

 

 そうして一捷を起こすとこの場にはアルトリア、クー・フーリン、百貌のハサン、マリー、アマデウス。マスターとしてオルガマリーが残り、一捷を加えた四人でフランス兵納元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「うぁぁぁぁ!?」

 

「背中を見せるな! 知性がある、襲ってくるぞ!」

 

 

 フランス兵がワイバーンに襲われていると聞き、現場へ急行する僕ら四人。

 

 森の開けた場所、そこで複数のワイバーンが兵士達を取り囲み攻撃している。兵士達も剣や槍、弓矢で抵抗するものの、ほとんど効果がない。

 

 まずはあの人達を助けないと!

 

 

「ジャンヌさん、キリエライトさんはワイバーンの排除と兵士の救援を! エミヤさん、遠距離から狙撃と援護をお願いします!」

 

「分かりました!」「了解です!」「わかった」

 

 

 三人が頷いて、ワイバーンに旗、盾を振るい、弓矢での狙撃を開始する。

 

 僕もサイクロンとメタルメモリを取り出し起動。

 

 

『サイクロン!』『メタル!』

 

(まずは死なないように立ち回る!)

 

『サイクロン! メタル!』

 

 

 ここに来るまでに装着したダブルドライバーにメモリを挿入、変身を行う。

 

 礼装の右側が緑、左が銀。メタルシャフトを装備した『サイクロンメタル』。別名『疾風の闘士』。

 

 風を纏わせた素早く手数の多い棒術をはじめ、メタルの防御力、風によるバリアで守りに優れたフォームだ。

 

 ……エミヤさんにヒーローごっこと言われてしまったからね。僕は本家Wじゃないんだ。テレビのように、最初から敵を倒すのではなく、自分の身を守ることを優先する。

 

 次に救助やフランス兵の撤退の支援。

 

 事前にサイクロンメタルを使うこと。僕のやることはエミヤさん達と打ち合わせしてある。

 

 近寄ってくるワイバーンへ風を纏わせたメタルシャフトを振りまして遠ざけ、時折繰り出される火の玉や翼の衝撃波を風のバリアで空に吹き飛ばす。

 

 

「おい、あれはジャンヌ・ダルクじゃないのか!」

 

「なんであの女がここに……」

 

「しかもなんか変な奴がいるぞ! 二色で気持ち悪いのが!」

 

「ジャンヌ……!?」

 

 

 急に現れ戦う僕らの姿に、フランス兵達は怪訝そうな表情をしている。

 

 とにかく、まずはワイバーンを倒しきらないと! フランス兵とのいざこざになる前に、とワイバーンを少しでも減らそうとメタルシャフトを振り抜いた。

 

 

「甘いですよ」

 

 

 だが突然、横から加わる衝撃。

 

 左へ振り抜いた直後だったのでメタルシャフトが左方向に弾かれてしまう。目で追った直後、新たな衝撃が僕の全身へと襲いかかった。

 

 それは今まで感じたことのない、強力なもの。

 

 まるで、巨大な岩を叩きつけられたかのような凄まじい痛み。

 

 悲鳴を上げることすらできず吹き飛ばされる。

 

 あまりの衝撃。全身の礼装が灰色になり、解けるようにサイクロンメタルの緑銀二色から元の黒いローブへと戻ってしまった。

 

 

「う、うわぁぁぁっ!」

 

「アシルーッ!」

 

 

 途中にいたフランス兵一人を巻き込み、木にぶつかってやっと止まり地面に倒れる。

 

 意識が……安定しない。全身がビリビリと痺れてうまく力が入らない。呼吸と一緒に血が吐き出る。

 

 

(なにが……起こったんだ……?)

 

 

 たった一撃で変身が解除される程の衝撃。

 

 サーヴァントの強襲か? アサシンか何か?

 

 その答えの主はゆっくりと、僕の眼の前へ現れる。

 

 

「……こんにちは、皆様。寂しい夜ね」

 

(ま、マルタ……!)

 

『さっき戦ったライダーのサーヴァントだ! 全員ワイバーンにも警戒しつつ、サーヴァント戦の用意を!』

 

 

 バーサーク・ライダーとなった聖女マルタ。

 

 さっきのはマルタの攻撃だったのか? 一撃で変身を解除するなんて、なんてパワーだ!?

 

 

「……何者ですか。貴女は」

 

「何者……? そうね、私は何者なのかしら。聖女たらんと己を戒めていたのに、こちらの世界では壊れた聖女の使いっ走りなんて」

 

 

 自分が相手していたワイバーンを倒したジャンヌさんが僕の前に来る。

 

 そのジャンヌさんへマルタは竜の魔女となったジャンヌによって理性が消し飛び凶暴化していること。今もそれを抑えるのに必死だと愚痴る。

 

 

「……貴女は何故、ここに現れたのです。狙いは私ですか?」

 

「いいえ。監視が役割だったけど、最後に残った理性が貴女たちを試すべきだと囁いている」

 

 

 僕らが戦う竜の魔女は『究極の竜種』に騎乗する災厄の結晶。自分ごときを乗り越えられなければ彼女を、ジャンヌ・オルタを倒せない。容赦なく倒してみせろとマルタは言う。

 

 

「……同時に、そちらの貴方」

 

「……ン? 僕か」

 

「そう。ダサい半分半分の格好をしてた貴方よ」

 

(……さっきもそうだけど、そこまで言う?)

 

「どうやら自分の力を使いこなせていないようね。そんなことでは、この先に進むなんて夢のまた夢よ」

 

「ムッ……」

   

「故に、貴方にも試練を課します。私を倒しなさい。貴方の力とやらで」

 

 

 自分の武器たる十字の杖を僕に向けるマルタ。

 

 ……確かにまだWの力を十分に使いきれていない。姿は原典と違うし、さっきも不意打ちを食らっている。とっさの反応ができなかった。

 

 こんなことじゃこの先の特異点や異聞帯では生き残るなんてできないだろう、言われた通り。

 

 

「……いいですよ。受けて立ちます」

 

(平沢殿……!? ですが、貴方は)

 

(正面切って戦うわけじゃあないよジャンヌさん。マルタは僕の力で、と言った。その僕はマスターでもある。なら、契約したサーヴァントは僕の力に入るはずですよ)

 

 

 ジャンヌさんへ念話でそう返すと、彼女は納得したのか小さく頷いた。

 

 

(分かりました、それでは後ろに。戦いが始まったら、まずは後方の兵士を避難させてください)

 

(分かりました)

 

「ドクター、周囲の警戒を頼みます」

 

『任せてくれ。ワイバーンや他のサーヴァントが来れば直ぐに警告する』

 

「作戦会議は終わり? ならば来なさい。我が真名はマルタ。さあ出番よ、大鉄甲竜タラスク!」

 

 

 戦いの段取りを行いマルタとジャンヌさんか向かい合う。

 

 マルタが叫ぶと後方が光り、紫色の巨体が現れる。

 

 そいつは紫の甲羅を背負い、頭から角を生やし、六本の足を持つ巨大な亀のような見た目。怪獣も好きな僕にはガメラ

に似ている……と思わず考えてしまった悪竜『タラスク』だ。

 

 マルタはタラスクまで出してきた、僕も変身しなければ……! さっきはマルタに変身解除させられたが、確認するとダブルドライバーにメモリは刺さったまま。守りを優先し戦う今、メモリはこのままでいく。

 

 サイクロンメタルに変身後、直ぐに後ろの兵士さんを避難。ジャンヌさんの後方へ戻りマルタとの戦いへ。ワイバーンに邪魔されたり近づかれたらそいつを排除しつつ……

 

 

『ゾーン!』

 

 

 そう、位置取りだ。段取りした場所へ早く向かわないと行けないのだ。

 

 ……って、なんでゾーンメモリのガイアウィスパー聞こえた? 聞き間違い?

 

 そう思った瞬間、目の前に、マルタ。

 

 

 

 

 

 

「判断が遅い」

 

 

 

 

 

 

 マルタの杖が振り抜かれた。

 

 ボキボキ、と砕けるような音。

 

 

「……あっ、がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「先輩!?」

 

「マルタ、貴女どうして!」

 

「今……何が起きた!?」

 

 

 音の正体は……僕の指だった。両親指を除いた八本があり得ない方向に曲がり、折れ、千切れかけていた。

 

 焼けるような痛みが襲い、涙が出てくる。

 

 そんな状況なのに……疑問があった。

 

 なんで? なんでマルタがいきなり目の前に? ゾーンメモリの音はなんだったんだ……!?

 

 

「貴方の力はその腰当てと、刺した板を操作して使う。ならば、両手を使えなくさせれば良いだけのこと」

 

「……ぐぅぅぅぅっ! はぁっ、はぁーっ……!」

 

「……あら?」

 

 

 頭は疑問で渦巻き、体には両指の折れた痛みが駆け抜ける。それを抑え、堪え……歯を食いしばる。

 

 涙がボロボロと流れるし気を抜けば意識を失いそうなくらい痛い。

 

 それでも、倒れそうになるけどどうにか立ち……マルタを睨みつける。

 

 

「驚きましたね。普通ならば立ってられない程の痛みのはず」

 

「負けて、たまるかよ……こんなんで」

 

「その意気やお見事。感動的ですね、ですが……」

 

「なに!?」

 

「残念ながら、それは無意味です」

 

 

 それはどういう意味だ、そう問いかけようとして。

 

 がくんと、崩れ落ちる。

 

 なんだ一体? こんなときに膝をついている場合じゃない、立たないと!

 

 そう足に目をやって……『それ』に気づく。

 

 

「……え……?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

 

 

 短剣が、左太ももに突き立てられていた。

 

 真っ赤な血が流れ落ちている。

 

 その短剣を握っているのは……僕とぶつかったフランス兵だった。

 

 どうして。

 

 そう言う前に痛みが襲ってくる。

 

 痛い、痛い、痛い……!

 

 場所が場所だからなのか。左太腿? 内側じゃないのよな!? どこだろうと痛いのは変わらないはずだが感じる痛みはこれまでにないくらい、強かった。

 

 

「ぐっ、あぁぁっ……!?」

 

「だ、騙されないぞ……魔女の手先め!」

 

「な……なにを、言って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とぼけるな! お前はジャンヌ・ダルクの、あの魔女ども  の仲間だろうが! 俺の家族を殺して、残った俺まで殺しに来たんだろう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵士さんの言葉を聞いて……痛みとは別の痛みを感じたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「やっぱりそうだ……アイツら、魔女の仲間だったんだ!」

 

「あんなおかしな格好した奴だ、怪しいと思ってたぜ……」

 

 

 

 一捷へ短剣を突き立てた兵士アシル。彼の行いを見た他のフランス兵達はそれぞれ声を上げた。

 

 彼らのほとんどは、竜の魔女やワイバーン、サーヴァント、そして炎のジャンヌ・ダルクによって家族や友人を奪われていた。だから突然現れたジャンヌとカルデアも、竜の魔女の仲間ではないかと警戒していたのだが、それが今敵意に変わろうとしていた。

 

 

「ちくしょう、今戦ってるワイバーンもグルかよ!」

 

「ふざけやがって……」

 

「おい何を言う貴様ら! 落ち着け、戦う相手を間違えるな!」

 

「ですが……!」

 

 

 どうにか部隊長である黒髪長髪、細身の騎士は兵士達を抑えようとするが、一度伝わった動揺は中々消えない。中には今にも近くで戦うマシュやエミヤに斬りかかろうとする者すらいる。

 

 背後から襲われるかもしれない状況のカルデア。

 

 懸命にワイバーンの相手をするマシュ、エミヤの顔にも焦りがあった。

 

 

「エミヤさん、先輩が!」

 

「分かっている!」

 

 

 十字盾でワイバーンの頭を殴りつける。弓矢で撃ち抜き夫婦剣で首を切り落とす。

 

 二人もマスターの一捷へ何があったかは気づいてた。カルデアから通信も入っている。

 

 ブレスを放とうとするワイバーンに干将を突き刺して倒しながら、一捷に目をやるエミヤ。

 

 痛みによるものだろう、彼はうずくまっている。

 

 

(……だから言っただろう。戦いは、ヒーローごっこなどではない。君が見てきたものとは……正義の戦いとは違うのだ)

 

 

 旅の中でいつかは経験するであろう理不尽な事態。守ろうとした者に拒絶される。

 

 それを初めて味わったであろう一捷は何を思っているのか。

 

 少なくとも、傷ついているのは確かだった。

 

 

(ともかく、今はマスターを救出しなければ)

 

「マシュ、君は早くマスターの元へ――はっ?」

 

 

 マスターの救出を頼もうとしたエミヤが、思わず呆けた声を出した。反射的に過去呟いていた四文字が出そうでもあった。

 

 隣のマシュは固まっている。

 

 目の前で、あり得ない光景が起こっていたからだ。

 

 傷ついていたはずの一捷。両手の指を折られ、太腿に短剣が刺さった危険な状態。

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅっっっっ、だぁっ!!!!」

 

 

 にも関わらず、一捷は何を思ったのか太腿の短剣を引き抜く。大量出血。そんなことは構わないとばかりに駆け出し、マルタへ体当たり。

 

 

「死んでぇ……たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!!」

 

「なっ……あぁぁぁっっ!!?」

 

「オォォォォォォッ!?」

 

 

 それによってマルタは吹き飛ばされ……後方のタラスクにぶつかり、まとめて大きく吹っ飛んでいく。

 

 その光景に、エミヤとマシュ、ジャンヌやフランス兵、カルデアは啞然とするしかなかった……。




今回の話でゾーンメモリが登場。

以前クロスオーバーの戦いは最後だけと言ったのにすみません。

考え直す中で、今回のように力だけを使う、怪人や敵を少しだけ出す流れにしようと思います。

もちろん、原作はFGOのままで。最後にどでかい敵を出すのは変わらずです。

僕の考え無しで申し訳ありません。

ご意見や感想等がありましたら、是非どうぞ。

それではまた。

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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