へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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課せられたP/へっぽこマスターの超加速

 こちらを敵視する憎しみの言葉。

 

 親の仇のごとく浴びせられる鋭い視線。

 

 それらを浴びて心が揺さぶられる。

 

 そして僕自身も傷を負わされた。

 

 刺さったのは左太腿? 内側ではない? だが位置が位置だけに、早く治療しなければ危ない位置。

 

 なんとか立とうとするが、激痛で思うように動かない、焦りばかりが募ってしまう。早くなんとかしなければいけないのに……!

 

 そこへ追い打ちをかけるようにマルタが杖を突きつけ言い放つ。

 

 

「残念ですが、これが現実。たとえ良かれと思って戦ったとしても、理解されるとは限らない。理不尽に傷つけられ、命すら奪われることもある」

 

「ぐ……っ」

 

「辛いでしょう。苦しいでしょう。痛いでしょう? ここで止めてしまってもいいのよ」

 

 

 止める……その言葉を聞いて、自分にされたことが浮かび上がってくる。

 

 刺さった短剣、こちらを敵視する目、言葉。

 

 守るために戦ったはずなのに、その人達から受けた仕打ちに、心が揺れ動く。

 

 明確な『悪意』を向けられ、ぶつけられたのなんて……本当に『久しぶり』だった。

 

 心の中で、僕はあなた達のために戦ったのに。なのにどうして、こんな目に遭わなければいけない? と思ってしまう。それによって……『怒り』が生まれる。理不尽だと感じたことへの怒り。

 

 痛みも相まってそれは強くなり、広がり、歪む。

 

 それらを感情のまま叫びだしてやりたい気持ち、ぶつけてやりたい思いになり。

 

 ………………そこで、心の中で思う。

 

 今までの気持ちを一旦押さえつけて。

 

 

「………………そんなのは。そんなのは、仕方のないことじゃあないか」

 

「……なんですって?」

 

 

 痛みで涙をためながら、それでも、僕はマルタへ言い返す。

 

 

「この人達がどんな目にあったか。それを思えば、今の状況は何もおかしくないでしょう……」

 

「な……」

 

「だから理不尽に傷つけられても怒らない? 自分がどんな目にあっても良いと? そう言うの?」

 

「そんな訳ないだろうが」

 

 

 ジャンヌさんは自分への迫害と最期を運命だと言った。

 

 エミヤさんからは戦いはヒーローごっこだとお叱りを受けた。

 

 対し僕は、力に浮かれ、理不尽や痛みを運命だとは割り切れない。

 

 痛いもんは痛いし嫌だ。理不尽をぶつけられれば怒る。

 

 ……それでも、今はやるべきことがあるはずだ。あるはずなのだ、僕には。

 

 立ち上がる。この瞬間、何故だろう、痛みを感じなかった。

 

 

「……ふっ! うぉぉぉぉっ……」

 

「お、おい! なにする気だ!?」

 

 

 左太腿に刺さった短剣の柄を握る。力を込めて引っぱれば、これまで感じたことのない、とんでもない激痛。

 

 全身を痛みが駆け巡り、寒気がして、血が滲み出す。

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅっっっっ、だぁっ!!!!」

 

 

 無理矢理、力任せに、短剣を引き抜く。

 

 焼け付くような激痛が太腿から迸る。立つことすらできなくなるくらい、痛い。

 

 傷口からは血が、どくどくとあふれ出し続ける。

 

 こんな大量の血……素人目でも分かった、命に関わる量だ。

 

 

「愚かですね。案の定動けない。死にたいのですか?」

 

「ぐ、あぁがっ……」

 

「こんなことで動けなくなるのであれば、足掻くのは止めなさい。貴方は本来力を持たない存在なのですから。大人しく……自らの『運命』を受け入れることです」

 

(……また運命かよ)

 

 

 杖に光をため、振りかぶるマルタ。とどめを刺すつもりだ。その後ろではタラスクが前足を引いている。確実に仕留める気でいるのだ、こちらを。

 

 対しこちらの状況は最悪に近い。僕はWの姿を解除され、太腿に刺し傷+大量出血。両手の指はほぼ骨折して使い物にならない。後ろにはフランス兵。逃げることもできない。

 

 

(このままだと、やられる……!)

 

 

 死の文字が頭によぎった。

 

 本来力を持たない僕。だからこうなっても仕方ない? 試練を突破できないから、死ぬしかない?

 

 それが……僕の運命?

 

 

(……いや、そんなのは嫌だ。絶対に)

 

 

 両手が使えないのがなんだ。変身していないのがなんだ。理不尽に遭ったからなんだ。

 

 死が迫るこの状況で、その死を否定する思い、怒りの感情がこみ上げる。

 

 死んでたまるかと。簡単に人の終わりを決めさせるものかと。

 

 

(負けない、負けたくない、負けてなんかやらない)

 

 

 運命を受け入れるという選択もあるし間違いではないだろう。

 

 だけど僕は、僕は……。

 

 『運命』なんてものに、負けたくない!!

 

 

(そんなもの……決して認めてやるものか。運命など…この手で壊してやる)

 

 

 何よりこの力を。

 

 どんな形でも、仮面ライダーの力があるのでれば。

 

 ここで立ち上がらない選択肢はない。

 

 この力で『変身』し戦うあの人達は、決して諦めはしない。

 

 ならば仮初めだとしても。

 

 僕は最後まで……戦ってやる!!

 

 

「死んでぇ……たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――『■■■■』!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのときだった。

 

 僕の体の中で、僕が知らない所で、不思議なことが起こった。

 

 次の瞬間。

 

 マルタとタラスクの体が、宙に舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

(やはり愚かね。ただの、感情に任せた突撃)

 

 

 叫びながら突っ込んでくる一捷を、マルタは冷ややかな眼差しを向けた。

 

 杖を振り上げた自分に対し自ら杖の攻撃範囲に入ってくる形。短剣を抜いたときは一瞬驚いた。何か策があるかとも思ったが、ただ自棄になったのだと呆れた。

 

 万が一に備えタラスクに攻撃待機の指示を出していたが必要ないだろう。このまま杖の一撃で終わる。

 

 そう判断し、次なる敵として聖女ジャンヌ・ダルク、カルデアのサーヴァント、他のフランス兵士へ意識をやりつつ、最後の攻撃。

 

 ……そのときだった。

 

 一捷の中で、不思議なことが起こったのは。

 

 

「……え」

 

 

 顔面に衝撃を感じるマルタ。一体何が起きた? そう思ったとき、マルタの体は後方へと吹き飛ばされてタラスクにぶつかり、

 

 

「なっ……あぁぁぁっっ!!?」

 

「オォォォォォォッ!?」

 

 

 そのタラスクもろとも空中へと吹っ飛び、受け身を取れぬまま地面へと叩きつけられた。

 

 

「なぁっ……!?」

 

「ハーッ……ハーッ………!!」

 

 

 その光景を間近に見たアシルを初め、フランス兵達やサーヴァント達、観測しているカルデアメンバーは驚愕するしかなかった。ありえない光景を前に、戦いの中である、ということも忘れ一瞬全員が動きを止めていた。

 

 肩で息をする一捷。両手の指を折られている彼はマルタへと頭突きをかました。ただの人間の頭突きならサーヴァントに傷すらつかない、それに一捷は太腿の短剣を抜いて大量に出血。刺し傷だってある。

 

 普通であれば、まともに動けない、にも関わらず。

 

 一瞬にして折られた指、太腿の刺し傷が、『なくなっていた』。

 

 まるでそれは、最初からなかったように。

 

 もしくは時間を巻き戻したように。

 

 あるいは……『時間が加速して一瞬で治った状態になった』かのように。

 

 兎にも角にも。謎現象により全快した一捷は普通に立ち上がり、マルタへ反撃をかました。彼の頭がマルタの顔面かつ真ん中に直撃し、鼻を粉砕。衝撃でマルタを吹っ飛ばし、その力で後ろのタラスクをも巻き込んだのだ。

 

 

「ジャンヌ・ダルク、今何をした!? マスターは!」

 

「分かりません、ただの頭突きをしたようにしか見えませんでしたが……!」

 

「と、とにかく! まずは先輩を助けに行かないと!」

 

 

 困惑はあったが、エミヤ達サーヴァントが一捷、アシルの元へ駆けつける。既にワイバーンは全て倒していた。

 

 残る敵はマルタとタラスク。砕かれた鼻より血を流しながら、マルタは起き上がってくる。

 

 

(今何をされたの? 何をしたの彼は!? 怪我を治したの? そして私だけでなくタラスクまで吹き飛ばした?)

 

 

 飛来する矢を杖で弾き、タラスクにマシュとジャンヌの相手をさせる。

 

 

(……私のように『ガイアメモリの力だけを使った』? そんな素振りはなかった。姿を変えていないのに、別の力を隠し持っていたとでもいうの……!?)

 

 

 予想外の傷を負ったがマルタはサーヴァント。その程度では倒されない。タラスクも同様。

 

 

「今度は……そう簡単にやられないっ!」

 

『ヒート! メタル!』

 

 

 一捷の方はヒートメタルへ変身。守りを固めサーヴァントの後方に控える。

 

 戦闘再開。杖と盾と旗が何度も激突し、矢が放たれ弾かれる。

 

 タラスクの体当たり、手足でのひっかき、火炎ブレスが一捷を狙う。マスターを狙う攻撃をマシュとジャンヌが盾、旗で防ぎ、そらす。防ぎきれなかった攻撃を一捷はギリギリだがかわしていく。

 

 

(なんだ? すごく体が軽く感じる。これは一体?)

 

 

 自身の変化に一捷自身が一番驚いていた。何故かいつもより体が動く。動いてくれている。

 

 疑問はあるものの、とにかく戦えるならなんでもいいと一捷は疑問を頭の隅にやり、タラスクへと集中。

 

 振り下ろされた足を回避しメタルシャフトを振るう。

 

 タラスクの爪にシャフトが当たる直前、

 

 

『ゾーン!』

 

 

 ガイアメモリの音声『ガイアウィスパー』が聞こえたかと思えば、タラスクの姿が消える。

 

 直前までタラスクがいた場所には、紫色に光る縦と横の線らしきものがあった。

 

 

(今のは! 二度目のガイアウィスパーといい間違いない)

 

「タラスク、炎を!」

 

「ゴォアァァァッ!!」

 

「ちいっ!」

 

 

 そのタラスクはマルタの側に現れ口から火炎放射。狙われたエミヤは狙撃を中断し、その場より直ぐ飛び退いて一捷達と合流。

 

 急に現れたタラスクの足元にも紫の線が見え、一捷は急いで情報を伝えようと叫んだ。

 

 

「三人とも気をつけて! これは、ガイアメモリの能力だ!」

 

「なんだと? ガイアメモリ!?」

 

「そうです、この能力は――『ゾーン!』オォォォッ!?」

 

「先輩!」

 

 

 が、それを遮るようにガイアウィスパーが響き、マルタが杖を叩きつけてきた。一捷は咄嗟にメタルシャフトで受けたが、マルタはそのまま頭を割らんと力を込め押し込んでいく。

 

 左膝をついてしまい、どんどん押されていく一捷。今にも押し切られてしまいそうな態勢で、一捷は念話にて叫んだ。

 

 

(エミヤさん達、足を。足を見て)

 

 

 足に何があるのか。聞かされたエミヤ達はまずそう思ってしまう。

 

 

「ぐっ、うぅーっ、ぐうっ! ふんっ!」

 

 

 よく見ると一捷は膝をついている左足、そのつま先で何かをしている。

 

 地面に十字、縦と横の線を描いている。伝わるように何度も何度も。

 

 

『十字の……線? そうか! もしかして、先程から見えていたラインのようなものは!』

 

 

 真っ先に気づいたのはロマニだった。カルデア側でもうっすらとだが地面を走る線を確認していた。未知の情報なので現場を混乱させぬよう言わずいたが確信に至る。

 

 エミヤ達も同様に一捷のメッセージを理解する。敵の瞬間移動には、縦横の線が関係しているのだと。

 

 

『メタル! マキシマムドライブ!』

 

「は、な、れ、ろぉぉぉぉっ!!」

 

 

 一捷は無理矢理にでも状況を打開しようと、メタルメモリでマキシマムドライブ。メタルシャフトの両端が激しく燃え盛る。その炎に巻き込まれるのを嫌ってマルタは距離をとった。

 

 なんとか窮地を脱出したマスターのもとへ集まるエミヤ達サーヴァント。

 

 

「平沢殿、ご無事ですか!?」

 

「僕は大丈夫! それより話した内容伝わってます!?」

 

「あぁ。光る線のことだろう」

 

『こちらでも確認したよ。あれもガイアメモリの力なのかい?』

 

 

 ロマニの問いに一捷は頷いた。

 

 ゾーンメモリ。黒色でイニシャルは『Z』、『地帯』の記憶を宿すドーパントメモリ。能力は瞬間移動。将棋盤のような九✕九のマス目を展開し、マスの中にある物や人を指定した座標へ一瞬で移動させる。

 

 原作では味方のサポートに回り、その移動能力で仮面ライダーを苦しめた。

 

 だが、本当にゾーンメモリならば妙な部分があった。

 

 

「能力を使っているのに、マルタがドーパントの姿になっていない。そこがおかしいんです」

 

 

 もしもゾーンメモリを挿し込んでいるのなら、マルタは怪人『ゾーン・ドーパント』となっているはず。その姿は人型ではなく、小さなピラミッドに足が生え、上部分が開いて目がある特徴的な形。

 

 だが見て分かる通りマルタや隣のタラスクの姿はそのまま。形が変化した様子はない。

 

 

「どこかにドーパントが潜んでいる? そいつが力を与えているのか?」

 

「それは違うわよ」

 

 

 一捷の呟きに答えたのは他ならぬマルタだった。

 

 

「ゾーンメモリを使っているのは私。使わされている、といった方が正しいかもしれないけど」

 

 

 そう言って、マルタは杖を左手に持ちかえ右掌を見せてきた。

 

 掌には四角い入れ墨――生体コネクタ。

 

 思わず目を見開いて驚く一捷達。

 

 

「どうしてあなたが、ガイアメモリを!?」

 

「知りたかったら私を倒すこと」

 

『ゾーン!』

 

「それすらできないのであれば、それまでのことだってことよ」

 

 

 ガイアウィスパーが鳴るとマルタの目が紫に光り、地面に紫の線で仕切られたマス目が展開。

 

 

「……あなたにとってはその方がマシでしょうけど」

 

「ンン……?」

 

 

 マルタとタラスクが瞬間移動で襲いかかる。

 

 九✕九のマスで将棋盤やボードゲームのように、6六、4三、2八とあちらこちらにマルタ、タラスクが出現し杖を、爪を振るう。一捷達が反撃しようとすれば遠くに離れられ、別方向から攻撃が来る。そこへ向けば、更に別方向から。

 

 反応が追いつかず防戦一方となるカルデア側。

 

 

『次は九時方向にマルタ、いや二秒遅れて五時方向にタラスク! あぁ、移動が早すぎる!』

 

 

 モニターしているロマニ達も瞬間移動の速さに翻弄されている。状況は悪くなるばかり。

 

 

「このっ! はぁっ、はぁっ!」

 

 

 メタルシャフトをタラスクの爪目掛けて振るうも、瞬間移動でかわされる。

 

 次の移動先をどうにか見つけようと辺りを警戒する中、一捷はあることに気づく。

 

 

(なんでマルタは自分とタラスクしか移動させない? 光のラインも地面だけに出して)

 

 

 自分以外の人間や物体の転送。空中にもマス目を展開させそこへ移動させることも可能なゾーンの能力。だが何故かマルタはそれをしない。空中への転送やカルデアのメンバー、フランス兵も使って場所を入れ替えれば、もっと有利に戦えるはず。

 

 それがもしも、自分と限られたものしか転送できないとしたら。

 

 

(マルタは使わされているとも言っていた。もしや人のまま無理矢理メモリを使っているせいで、能力に限りがあるのかもしれない)

 

 

 このまま戦いに時間をかけすぎれば、こちらが大きく消耗したり敵の援軍が来る可能性もある。

 

 まだまだ相手の戦力は残っている、そして今はマルタを倒さねばならない。

 

 ならば、早めに勝負をつける必要がある。

 

 焦るのではなく、早く、そして確実に。

 

 周囲を見渡す一捷。エミヤ、ジャンヌ、マシュ、フランス兵達。相手のマルタ、タラスク。森の開いた場所。落ちている血のついた短剣。変身した自分、ダブルドライバー、刺していないガイアメモリ四本。

 

 この場にあるものを観察し何か使えないかと頭を巡らせる。残念ながらゾーンの能力へ対抗できそうなものはなさそうだ。

 

 ……ならば?

 

 この場にあるものがダメならば、『この場にないもの』も使えばいいのではないか。

 

 

(ゾーンの瞬間移動、フランス兵の人達にはジャンヌさん、マルタのステータス、魔力、幸運、魔力の供給、防御手段……いけるはずだ)

 

 

 頭の中で次々と浮かぶ要素を組み合わせ、考え、できる限りの予測を立てる一捷。不確定要素はある、それでも今の状況を破る好機にはなるはずだと、全員に考えた案を伝える。

 

 

(皆さん聞いてくれ、ゾーンを破る方法がある)

 

(本当ですか先輩!?)

 

(あぁ。ただし僕らだけじゃダメだ。カルデアからの協力がいる)

 

 

 マルタとタラスクに応戦しながら耳を傾け、各々が意見を返していく。

 

 

(……内容は分かった。が、それで彼女を確実に倒せるか。もし能力を他に発揮されれば、成功する確率は低くなるだろう)

 

(だから対象を減らす、それをジャンヌさんにやってもらう。通じるかは……正直微妙ですが)

 

(分かりました、その任はお任せください。私の言葉なら、彼らに届くはずです)

 

『こちらカルデア、ロマニ・アーキマンだ。カルデアの準備はOKだよ。念のため全員には待機してもらっているからね』

 

 

 そして一捷は作戦の核となるサーヴァント、エミヤの元へ急ぐ。

 

 

「……エミヤさん。確かに僕は浮かれていました。力を手に入れて」

 

「む……?」

 

 

 念話ではなく小声でだが、はっきりと語る一捷。

 

 

「あなた方サーヴァントからすれば、僕の考えは穴だらけで、未熟そのものに映ると思う。ヒーローごっこでしょうね。……それでも、今は戦わせてください。この力を、僕は、誰かのために使いたいと思っている」 

 

「………………」

 

「だから僕が戦う姿を、見ていてください。そしてもし、僕が間違った力の使い方をするのであれば、そのときは遠慮なく止めてほしい」

 

 

 力の扱い方。意識の持ちよう。力に関する知識や心を一捷はまだ持っていない。ただ力を手にしただけの素人だ。

 

 だからこそ、力の経験値が豊富なサーヴァントに頼む。

 

 自分のこれからを、どうか見ていてほしいと。

 

 

「……甘い言葉だ。だからヒーローごっこだと言うのに。……だが」

 

 

 背を向けたから、エミヤの表情がどんなものか一捷には見えない。

 

 

「それを分かっているだけ、まだ良いだろう。ならば力の悪用を防ぐため、君の側にいなくてはな」

 

 

 しかし心なしか、続く言葉はほんの少しだけ、柔らかさを感じさせた。

 

 

「――魔力を回せ。決めに行くぞ、マスター!」

 

「はいっ!」

 

 

 勝負に出るカルデア。

 

 ここが踏ん張りどころだと、誰もが感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 まず動いたのはジャンヌ。彼女はフランス兵達の元へ駆け寄ると叫んだ。

 

 

「全員、この場より可能な限り離れなさい!」

 

「な……なんだよいきなり!」

 

「ジャンヌ……」

 

 

 ジャンヌはマルタとタラスクを倒すため、大がかりな術を使用すること。巻き込まれぬよう離れる必要があり、そうなってもフランス兵達の護衛を行うことを伝える。

 

 だが、

 

 

「信じられるもんか!」

 

「そう言って、俺達を皆殺しにするつもりだろう! この魔女め!」

 

(やはり、こうなってしまいますか)

 

「……私のことはどう思ってもかまいません。ですが彼らは、竜の魔女を倒すため戦っている。それは確かなことなのです。どうか今だけ、彼らの手助けをしていただけませんか?」

 

「そんなこと聞けるわけ――「待て」」

 

 

 兵士の言葉を遮ったのは、彼らを率いている騎士。

 

 

「……嘘はないのですね? ジャンヌ」

 

「っ、ジル。……はい」

 

「…………分かりました、あなたの言葉に従いましょう」

 

 

 部隊をまとめる隊長、長い黒髪で細身の白銀の騎士『ジル・ド・レェ』はジャンヌの言葉を聞き頷く。

 

 

「な、何故!? 魔女の言葉を信じるのですか!」

 

「先程も言っただろう、今はそのような場合ではないと。お前達の気持ちも、アシルの事情も分かっているつもりだ……」

 

「……元帥」

 

「だがお前ら自身も分かっているはずだ、目の前の彼女が何者なのか」

 

 

 ジルに言われ兵達は顔を見合わせた。ジャンヌのことは竜の魔女の殺戮もあり憎しみがある。だが同時に本当の聖女ジャンヌ・ダルクではないのか? という思いもあるのだ。

 

 兵達が黙ったのを見て、とにかく今は行動だとジャンヌは再び口を開く。

 

 

「申し訳ありません、とにかく今はこの場から離れて。皆さんのことは、必ず私が守ります」

 

 

 そう言いジャンヌはジルと共に兵達の移動を開始。

 

 開けた場所から森の中に入ったところで念話を飛ばす。

 

 

(兵達の移動は完了です。私はここで護衛を)

 

(分かりました。次は)

 

「ドクター、準備はいいですね!?」

 

『いつでもいけるよ!』

 

 

 続いて動くのは一捷。カルデアに確認をし、左手を突き出すと全身に魔力を通わせる。

 

 

 

 

 

 

 

「行くぞ……英霊召喚! 来てくれ、クー・フーリンさん! メドゥーサさん!!」

 

 

 

 

 

 

 令呪が赤く光り、一捷の目の前に水色の魔法陣が出現。その中より、新たに二騎のサーヴァントが現れる。

 

 

「しゃあ! やっとオレを呼んでくれたか坊主!」

 

「私は待っていませんがね。役割はこなしますよ」

 

 

 カルデアに召喚したサーヴァントを呼ぶ術式。正確には呼んだサーヴァントのコピー、影というべきものを必要時に呼び出す。仮にそのサーヴァントが倒されたとしてもカルデアへ戻り、深手がなければまた呼び出すことが可能だ。

 

 召喚したのはクー・フーリンにメドゥーサ。彼らに作戦は伝達済みであり、マルタと対峙する。

 

 

「新たにサーヴァントを召喚しましたか……」

 

「初陣が竜と、それを鎮めた聖女か。相手にとって不足はねぇ」

 

 

 クー・フーリンは獰猛な笑みを浮かべ、メドゥーサは無言

のまま得物である鎖付きの短剣を構える。

 

 合図もなく三騎が激突。空気が大きく震えた。

 

 現段階でクー・フーリンとメドゥーサの役目はマルタとタラスクを封じ込めること。敏捷Aのステータスで素早く立ち回り、瞬間移動されてもまだ対応ができる。

 

 槍、短剣を振るい、炸裂した魔力の光が煌めく。

 

 戦闘を視界に入れつつ、一捷は作戦を次の段階へ進めるべく、エミヤに左手を向けた。

 

 ここからが正念場。ミスは許されない。

 

 プレッシャーで体が震え、一瞬逃げ出したい気持ちになる心と体を無理矢理押さえこむ。

 

 良くないことだ。そう思いつつ、直ぐに自分の作業――魔力を回し相手に与えることに切り替える。

 

 

(ここに来るまでに、散々練習はした)

 

 

 魔力を練り上げる。体内の魔術回路を稼働させ、全身に魔力をみなぎらせる。

 

 失敗すれば傷つき、死にかねない。最悪は世界滅亡まっしぐら。

 

 それでも、危険な行為を。縁もゆかりも無かった魔術を、一捷は行う。血を流しながら行った練習の成果により結果は成功。

 

 生じた魔力を、契約のパスを通じて相手へ送り込む。

 

 左手の令呪が、一瞬、大きく輝いた。

 

 

「令呪をもって命ずる。アーチャー! 宝具を解放せよ!!」

 

「……では、錬鉄の火を灯そう」

 

 

 三画の令呪、その下側部分が消えて魔力がエミヤへと送られる。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 エミヤは全身の魔術回路を稼働させ、詠唱を始める。

 

 彼の切り札――宝具発動のために。

 

 

 

 

 

 

「――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている。)

 

 

 Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子。)

 

 

 I have cleated over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗。)

 

 

 Unknown to Death.(ただ一度も敗走はなく、)

 

 

 Nor know to Life.(ただの一度も理解されない。)

 

 

 Have withstood pain to cleate many weapons.(彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。)

 

 

 Yes, those hands never will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく。)

 

 

 So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.(その体は、きっと剣で出来ていた。)

 

 

 

 

 

 

 詠唱を終えた瞬間、エミヤを中心に閃光が放たれ、その場と観測している全員が目を覆う。

 

 光が収まると、周囲の光景は森の中から一変。

 

 空には巨大な歯車がいくつも浮かび、無数の剣が突き立てられた果てない荒野となっていた。

 

 

「これが……『固有結界』」

 

 

 その空間を見て真っ先に呟いたのはマシュだ。

 

 別名リアリティ・マーブル。術者の心象風景、すなわち心の中のイメージを形とし、現実を侵食する結界。

 

 魔術師の到達点の一つとされ、同時に禁じられている術でもある。

 

 エミヤの固有結界『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』。無限に剣を内包した世界を作り出し、魔術で複製した武器をストックすることが可能。その結界内に彼を始めとするカルデアのメンバー、マルタとタラスク、そして離れた場所にフランス兵とジル、ジャンヌがいる。

 

 

(申し訳ありません、結界内に残りました。私はこのまま、ジル達の護衛に務めます)

 

 

 ジャンヌに頼みフランス兵達を遠ざけたのはこのためだ。もし兵士達が何も知らないまま結界内に残れば、より混乱させてしまい、最悪本当にカルデア側を襲いかねない。それを抑えるのとガードを兼ねてジャンヌに向かってもらった。

 

 対し、相手のホームグラウンドに取り込まれたマルタは周囲の剣に警戒しつつエミヤに問う。

 

 

「固有結界なんて持ってるサーヴァントがいるなんて……あなた、いつの時代の英霊?」

 

「さあ何処だろうな、聖女マルタ」

 

 

 エミヤが右手を上げる。すると周囲に突き刺さっている剣、刃、刀が浮かび上がり、切っ先をマルタとタラスクに定める。

 

 ゾーンのマス目を展開するマルタ、瞬間移動するほぼ同時、剣の群れが降り注いだ。

 

 

(マシュ、打ち合わせ通りマスターのガードは頼む。私達は自分で対応する、君は己の役割を果たしたまえ)

 

(はい……! 先輩のことは、絶対にお守りします)

 

(頼んだよ、キリエライトさん)

 

 

 もしもマルタが自分とタラスク以外の転送能力を隠していたら。それを仮定しての対策。

 

 まず狙われるのはマスターである一捷。そこでマシュの傍らにいることで、常に二人がゾーンの一マス内にいるようにする。これにより、別の場所や空中に転送されてもマシュが守ることができ、サーヴァントであれば自らの力で立て直せる。フランス兵はジャンヌが全力で守り、もし転送されれば敏捷に優れたクー・フーリン、メドゥーサに救助してもらう。

 

 ここまでは一捷の予想通りに運んでいた。

 

 

『ゾーン!』

 

「光よ!」

 

「オォォォッ!!」

 

 

 瞬間移動するマルタ、その先に無数の剣が飛んでくる。マルタが杖を振るうたび、閃光が炸裂して飛来する剣を消し飛ばす。タラスクは炎と爪で剣を撃ち落とし、自らの体でマルタを守る盾となる。

 

 マス目内を自由自在に瞬間移動するゾーンの能力。ならば移動範囲全てに降り注ぐ広範囲攻撃で移動しても逃げられないようにすればいい。もしこれでマルタを倒せるならそれでよし。

 

 が、英霊たる彼女が簡単にやられるはずもなく、飛んでくる剣を尽く壊していく。

 

 もとよりそれは予想済みだった。無限の剣製による範囲攻撃はあくまで牽制。

 

 本命は呼び出した二騎――クー・フーリンとメドゥーサ。

 

 爪を振るい、巨体で押し潰そうとするタラスクを、メドゥーサはスピードを活かして回避。爪や関節、甲羅と体の隙間に短剣を突き立て、ダメージはそこまで通らないがタラスクを翻弄していく。

 

 

「グオオオォォォ!!」

 

 

 痺れを切らしたタラスクが飛びかかり一気に勝負を決めんとする。それをメドゥーサは軽々と飛び越え、尻尾を掴むとスキル『怪力B』を使用。ワンランク上昇した筋力でタラスクを引きずり、力任せに振り回して、豪快にひっくり返した。

 

 

「タラスクッ!?」

 

 

 マルタの注意がメドゥーサに向く。流れるようにメドゥーサは短剣を装備しマルタへ放つ。その攻撃は杖に防がれ光が爆発。衝撃でメドゥーサの髪が一部消し飛びバイザーが吹き飛んだが意に介さず、杖に短剣の鎖を巻きつけ、マルタの手から弾く。

 

 間髪入れず、手をかざしゾーンの能力を発動しようとするマルタに瞳を合わせるメドゥーサ。

 

 露わになった四角い瞳孔の目で、『視る』。視たのだ。

 

 

(魔眼!? まずい――)「ぐうっ!?」

 

 

 石化の魔眼・キュベレイ。伝承にある通り、見たものを石に変える目。

 

 相手によっては無条件に石化させるその目は、魔力Aのマルタには全ての能力を一ランク低下させる『重圧』をもたらす。

 

 わずかな間だが動きが鈍るマルタ。その瞬間を、もう一騎の英霊は見逃さない。

 

 

「その心臓、貰い受ける」

 

 

 クー・フーリンの真っ赤な瞳がマルタを捉える。同じく、彼の得物である赤い槍も。

 

 

「――‘刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)’!」

 

 

 クー・フーリンの宝具、呪いを内包した魔槍『ゲイボルク』。突けば必ず相手の心臓を貫く、必殺必中にして因果逆転の一撃。

 

 呪いの朱槍を食らったマルタは胸と心臓を貫かれ、体内を破壊され、口から血を吐き倒れた。

 

 

「……そう、ここまでね」

 

『敵ライダーの撃破を確認! よくやった平沢君!』

 

 

 同時にエミヤが固有結界を解除。辺りは元の森に戻る。

 

 護衛をしていたジャンヌが戻ってきて、彼女と共に一捷は警戒しつつ倒したマルタへ歩み寄る。

 

 

「マルタ、貴女は――」

 

「手を抜いた? んな訳ないでしょ、バカ」

 

 

 これでいいのだとマルタは穏やかな表情で言う。すでに彼女とタラスクは消滅が始まっており、消えるのは時間の問題だった。

 

 

「まったく、聖女と子供に無茶させるんじゃないてえの……」

 

「子供ときましたか」

 

「実際そうでしょう。散々警告したのに全く。……最後に教えてあげるわ。“竜の魔女”が操る竜に、貴女たちは絶対勝てない」

 

 

 その竜を倒すため『リヨン』という都市を目指すこと。そこには竜を殺す存在『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』がいるのだという。

 

 ジャンヌにそう伝えたマルタは、「それと」と区切って一捷を見た。    

 

 

「貴方には別のことを伝えないとね。赤のジャンヌ・ダルクは聞いたことある? 彼女はこことは別の世界の人間よ」

 

「別の世界……異世界人!?」

 

「そう。そして、この世界に赤のジャンヌを呼んだ存在がいる。そいつが私にゾーンメモリの力を与えたのよ」

 

「……魔術師なんですか?」

 

「分からないわ。確実なのは大きな力を秘めていること。白いローブと包帯を纏っていて『A』と名乗っていたわ。十分気をつけなさい」

 

 

 伝え終えると、一捷にやや呆れた瞳で視線をやるマルタ。

 

 

「……にしても危なっかしいわね、貴方。そんな風にこの先も戦うつもり?」

 

「そりゃあ、死にたくないですからね。危ないことしてるのは自覚していますが、この力で戦うつもりではいます」

 

「そう……。タラスク、ごめん。次は、もっと真っ当に召喚されたいものね」

 

 

 そう言ってマルタとタラスクは消滅していった。

 

 彼女がいた空間にはゾーンメモリが残され、音を立てて砕け散る。

 

 

「異世界のジャンヌ・ダルクに、謎の存在A……分からないことが増えちゃったな」

 

 

 残された破片の前で膝をつき、言われたことを思い出す一捷。

 

 その呟きは今までの戦いが嘘のように感じられる森に、静けさの中に消えていった。

 

 

「……強かったな、あの聖女さん」

 

「えぇ。狂化をかけられていたのもあるでしょうが、それを抑えていたのは彼女の克己心。竜を静めた逸話通りの女性でしたね」

 

(……そう。本当は虐殺なんかする人じゃないんだよな)

 

「とりあえず、オレらの役割は終わりだ。気をつけて行けよ、坊主」

 

「では、私達はこれで」

 

「お二人とも、ありがとうございました。またよろしくお願いします」

 

『平沢君、残ったガイアメモリの破片を回収してくれるかい? 破損していたとしても、ドーパントメモリのデータが欲しい。可能なら今後も回収を頼むよ』

 

 

 クー・フーリンとメドゥーサはカルデアに帰還。

 

 一捷はロマニの指示を聞き、事前に渡されていた特異点でのサンプルを回収するキットを使ってゾーンメモリの破片を回収。マシュの盾に収納してもらう。

 

 次の目的地と敵の手がかりを得た一捷達は、今後について話し合うためキャンプへの帰路につこうとする。

 

 

「お待ちくださいジャンヌ! ……やはり、あなたはジャンヌなのですよね? まさか生きていらしたとは……」

 

「……平沢殿、戻りましょう。早くオルガマリー殿達と合流しないと」

 

「お待ちください! なぜ、なぜですか!? 」

 

「ジル、分かっているはずです。私の運命は既に終わっている。目の前にいるのは生前の聖女ではなく、幻のような存在。……私から言うことは、ないのです」

 

「ジャンヌ……」

 

「……ごめんなさい。行きましょう皆様」

 

「あ、ちょっと待ってください」

 

 

 そうジャンヌが言いキャンプへ戻ろうしたときだった。少し離れた位置にいた一捷が待ったをかけるとフランス兵達の方に視線をやる。

 

 

「確か……あなたでしたね。先程僕の後ろにいた兵士さん」

 

「そ、それは……」

 

「アシル……」

 

「……マスター、まさかと思うが仕返しでもするつもりではないだろな」

 

「そんな訳ないでしょう」

 

 

 一捷は歩み出て兵士アシルと向き合う。彼は先程、一捷の足を刺してしまったあの兵士だ。

 

 仕返しではないと言われても、自分がやったことを理解しているアシルは居心地が悪そうにしている。他の兵士達も同様だ。

 

 その空気に耐えかねてアシルが頭を下げる。

 

 

「……先程はすまなかった。俺が言う資格はないんだが……傷は大丈夫なのか?」

 

「それに関しては完治してます。何故かは分かりませんが」

 

 

 そこが一番気になる部分なのだが、一捷の言う通り太腿と  指はいつの間にか治っていた。これに関しては調べる必要がある。

 

 

「……お互いに事情があったんです。こんな状況ですから。あなたのしたことをとやかく言うつもりはありません。ただ一つだけ、どうしても言いたいことがあるだけです」

 

 

 そう言って一捷は何かを取り出し……アシルに差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お返しします。さっき僕に刺さった短剣」

 

「いやいらねぇよ!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 離れたときにわざわざ探していた、一捷の太腿に刺さった短剣。刃にはべっとりと一捷の血付き。

 

 そんなもの返すと言われても普通はいらない。

 

 わざわざ頭下げて伝えるのがそれか……? 思わずずっこけたりドン引きする周囲。

 

 

「いえ、元々あなたの物ですし。兵士の装備ならお返ししないと」

 

「わざわざ拾うなよ!? 気持ち悪いなぁ!!」

 

「……このたわけめ。心配した私が馬鹿だった……」

 

「せ、先輩……」

 

「なぁコイツただのバカじゃねぇのか」

 

「どうだろうなぁ……」

 

「……ジャンヌ。あなたの交友関係にとやかく言うつもりはないのですが……付き合う相手は少々考えた方が良いのでは」

 

「そ、それは流石に言い過ぎですよ。……多分」

 

 

 ……最後に今までの空気は台無しになったが。

 

 血のついた短剣はいらないので鞘ごと譲ってもらい、一捷達はキャンプへと戻る。

 

 そこで予想外の再会があるとは、まだこのときは知らずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

「君はもしかして……」

 

「あのときの……おにいさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

“案外早かったな、起動するのは”

 

 

 再びどこかで声が響く。

 

 しかし今度は前回とは違い、声の主に輪郭ができていた。

 

 ぼやけてはいるものの、それは人の形だった。

 

 

“まぁいい、こちらにとって早いことに越したことはない。この先に備えて、力を蓄えておきたいからな……”

 

 

 声の主の右手には懐中時計型アイテム。

 

 そして反対の左手には……新たなアイテムがあった。

 

 赤いガイアメモリ。

 

 そのイニシャルは、タコメーターのような『A』のメモリであった。




サブタイトルのP=力ことpower、痛みことpain

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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