マルタ撃破から一夜明けた朝。
自然に目を覚ました一捷は重い瞼を持ち上げる。重い体を起こし、のそのそとテントから出てくる。
「おはよう……ございます……」
「おはようございます、先輩」
「遅いわよ平沢。……おはよう」
既に他のメンバーは起床し朝食まで済ませていた。自分が一番最後だと分かり、一捷はばつが悪そうな表情で、空いたテーブルの席へつく。
「おはようございます。おにいさん」
「あ……『アンナ』ちゃん。おはよう」
一捷の前にコップとスプーン、フォークを並べていく金髪の少女――アンナは一捷が砦で助けたあの少女だ。そんな彼女がなぜ、一捷達と共にいるのか?
ラ・シャリテはワイバーンとサーヴァントによって壊滅したが、幸運と偶然が重なってアンナは生き残った。そのまま近くの森に逃げこみ、当てもなくさまよっていると出た場所がオルガマリー達のいるキャンプで、そのまま保護された。
どこで襲われるか分からない今のフランス。せめて別の街に辿り着くまでは同行させた方がいい。
以上の経緯で、アンナはカルデア一行へ同行することとなったのだ。
「だらしないぞマスター。君より小さなアンナでも早起きしているというのに」
一捷へ厳しい言葉をかけるエミヤが手早く朝食を並べていく。トーストにベーコンエッグ、コーンスープとサラダ。ちなみに作ったのもエミヤである。
フォークを取ろうとした一捷はエミヤの指摘に「う」と言葉を詰まらせた。確かに、自分より小さい子が働いているのに大の自分がそれより遅いでは恥ずかしく感じる。
痛いところを突かれた一捷は気まずさと申し訳なさを感じつつ、せめてもと早いペースで朝食を完食。後片付けを終えると全員でキャンプを片付け移動を始める。
マルタからもたらされた情報は既に全員が共有済みであり、竜殺しがいるという都市リヨンを目指す。
その道中、休憩のタイミングであった。
エミヤが夫婦剣を投影し、その刃を一捷に向けてきたのは。
「……あのですね、エミヤさん。あなたの言いたいことも分かりすよ。分かるのですが」
「なら、なんだね」
「いきなり剣向けないでくださいよ、いつぞやのごとく裏切ったと思われますよこの展開」
「君はいつの話をしている!?」
思わずツッコミを返すエミヤ。彼と向かい合うように一捷は立っており、少し離れた位置にマシュやアルトリア達が待機中。
現在一捷達がいるのは小高い丘のある草原だ。周りに障害物はなく敵が現れても直ぐに気づける場所。
まだリヨンに到着するまでは距離があり、その間に模擬戦を兼ねてWの残るフォーム、マキシマムドライブの確認をすることになったのだ。
これはまだ特異点で戦っていないサーヴァント達に戦ってもらうこと。相手側から見てWがどう映るか。その他試すことなど、いくつもの意味がある。
エミヤから説明された一捷はやらない理由はないと思い、全員も納得して今に至る。
最初の相手はエミヤと、この場にいないもう一騎のサーヴァント。一捷はそのサーヴァントを召喚を行う。
「英霊召喚――佐々木小次郎」
「ふむ。このような形で初陣とはな」
「内容は聞いていた通りです、小次郎さん。どうか、胸を貸してください」
「なに、マスターの頼みだ。私でよければ相手になろう」
小次郎はエミヤの側に立つと愛刀たる太刀『物干し竿』を抜く。その長さは五尺余り。約151.5cmという大太刀で、鞘から抜くだけでも凄まじい迫力。
長大な刀身がぎらりと光り思わず一捷は息を呑む。
(武器設定で見たときは冗談かと思ったけど、実際に見ると迫力が違い過ぎるな……)
ダブルドライバーを取り出し装着。続いて取り出すのはルナメモリとトリガーメモリ。
『ルナ!』『トリガー!』
スロットへ挿入しドライバーを開く。それにより、今までとは違う姿へ一捷は変わっていく。
『ルナ! トリガー!』
右半身は黄、左半身は青。トリガーサイドの胸には専用武器である、銃身が中折式に下がった光弾銃トリガーマグナムを装備。
変幻自在の射撃を得意とする『幻想の銃撃手』。三つ目の基本フォーム『ルナトリガー』である。
「それが残る相性の良い形態か」
「黄色と青……派手な組み合わせね」
「おつきさまみたいだね。でもどうしてはんぶんこなの?」
「そういう仕様なのよアンナちゃん」
左胸にマウントされたトリガーマグナムを外し構える一捷。エミヤと小次郎も各々の得物を構え準備は万端。
「それでは……行かせていただきます!」
言うなり一捷はトリガーマグナムの引き金、イデアトリガーを引いて弾丸を放った。
黄色のエネルギー弾がエミヤ達へ真っ直ぐ飛んでいく。正面であったため、あっさりと物干し竿に切り払われ、弾丸は消え去った。
そこから一捷はトリガーを引き続け弾丸を連射。今度はルナメモリの力により一捷がイメージした通りに弾が曲がり、あらゆる方向からエミヤと小次郎に襲いかかる。
「弾を曲げる能力か」
「自由自在な射撃ができる、というわけだな。その満月のような色合いの姿は」
冷静に分析しながら、様々な角度で飛んでくる弾丸を避け、切り裂く二人。
一捷もただ弾丸を放つのではなく、どのように考えたらどれだけ弾が曲がるのか。力を込めた量によって弾丸の威力はどれほど変わるのか。弾の形や速度はどれくらいのものなのか。様々なことを確かめながら、ルナトリガーの力を試していく。
そうして百発試したところで曲がる射撃を切り上げ。次は必殺技の確認。
ドライバーからトリガーメモリを抜き、トリガーマグナムのマキシマムスロットにセット。斜めの銃身を起こすことで必殺の『マキシマムモード』へと変形する。
『トリガー! マキシマムドライブ!』
「マキシマムドライブを撃ちます! 全員、防御の態勢を!」
エネルギーが高まる待機音が鳴る中で一捷が叫び、サーヴァント達、マシュ、オルガマリーが各々防御の手段を構える。
アンナがマシュの後ろへ退避したのを最後に確認し、一捷
はマキシマムドライブを撃ち放った。
「――トリガー、フルバースト!!」
銃口より放たれる、黄色と青のエネルギー弾複数。一発一発が相手を追尾する強力な破壊光弾。
曲がりながら迫るそれらに対し、エミヤは落ち着いた様子で右手をかざす。
「――熾天覆う七つの円環」
七枚の花弁の形をした光の盾――エミヤの持つ結界宝具が展開。盾の一枚一枚が古の城壁と同じ防御力を誇り、黄色の青の弾丸全てを防ぎきった。
「……だっ! 流石に宝具は抜けませんか」
「当然だ。とはいえ、今のは正面からでタイミングも分かりきっていた。盾こそ割れなかったが、通常の敵相手に破壊力は十分あるだろう」
マキシマムドライブを使用したので負荷がかかり、汗を浮かべている一捷に、防いだ感触から感想を述べるエミヤ。
ルナトリガーの確認はこれで終了。続いて、ハーフチェンジの検証に入る。
『サイクロン!』
『サイクロン! トリガー!』
ルナメモリをサイクロンメモリに変更。黄色が緑に変わり『風の銃撃手』こと『サイクロントリガー』へとチェンジする。
「きいろが、みどりになった?」
「こうやって姿を変えるんだよ。他にも銀と紫、赤色の姿だってある」
「にじいろみたいだね」
「虹と来たか」
銀は色合いによっては見えるかもしれないと思いつつフォームの確認に移る。
トリガーマグナムから弾丸を発射。それはサイクロンメモリによって風を纏い攻撃範囲が広い。連射性能も優れており、風の弾丸で弾幕を張れるほどだ。
ただし威力はルナトリガー時より落ちており、軌道も真っ直ぐなためエミヤと小次郎には簡単に切り払われていたが。
「その姿だと、まきしまむどらいぶとやらは使えぬのであったな、平沢殿」
「えぇ。いずれは使えるようにしないとですが……」
続いてサイクロンメモリをヒートメモリに変更。
『ヒート!』
『ヒート! トリガー!』
「今度は赤と青ね。ヒートは確か火を扱うから……」
「炎の弾丸を発射する姿でしょうか」
「ご名答」
トリガーのハーフチェンジ、その最後は『熱き銃撃手』こと『ヒートトリガー』。
オルガマリーとマシュの分析に返しながらイデアトリガーを引く一捷。トリガーマグナムからは二人の予想通り、ヒートの力で炎の炸裂弾が撃ち出される。相手に当たるもしくは接近すると爆発。大ダメージを与えることができる。(爆発は全てエミヤとマシュにガードされたが)
Wの九フォームで一番の攻撃力を誇るが、それ故に自らをも炎の弾でダメージを負いかねないハイリスクなフォーム。
これにてトリガーのハーフチェンジは終了。
次はジョーカーによるフォームの確認だ。
「お次は我らがお相手致します」
「存分に撃ってきな、坊主」
お相手はエミヤ・小次郎から変わり百貌のハサン、キャスターのクー・フーリン。
「では百貌さん、キャスターのクー・フーリンさん、お相手をお願いします」
『ジョーカー!』
『ヒート! ジョーカー!』
ソウルサイドのヒートはそのままに、ボディサイドをジョーカーにチェンジ。トリガーの青からジョーカーの紫へ。赤と紫、『熱き切り札』こと『ヒートジョーカー』だ。
「ちなみに僕が一番好きなフォームでもあります」
「いや誰に言ってんだオイ」
「……はっ。僕は何を言って」
「よろしければ薬学に秀でた人格に代わりますが」
いきなりあらぬ方向へ喋りツッコミと心配をされてしまう一捷だが、気を取り直し力の確認に入る。
「――ハァッ!!」
掛け声と共に突撃。右拳に炎を纏わせ殴りかかる。
百貌は軽やかな動きで拳を避け、クー・フーリンはルーンで体を強化し回避もしくは杖でガード。拳での連続攻撃を捌いていく。
格闘戦は基本フォームのサイクロンジョーカーが得意としているが、あちらは風のキック主体。ヒートジョーカーは炎のパンチによる格闘がメインで差別化ができている。より攻撃力が必要な場面ではヒートジョーカーが必要となるだろう。
炎を纏うパンチを何度も繰り出し威力・感触を確かめたところでメモリをチェンジ。ヒートをルナへ。
『ルナ! ジョーカー!』
黄色と紫の『幻想の切り札』こと『ルナジョーカー』。
ヒートジョーカー時とは反対に距離をとる一捷。
「なんだ? 攻めてこねぇのか」
「いいえ攻めますよ。ただし……」
右手を突き出す。すると右腕がぐにゃりと歪み、ゴムのように伸びてクー・フーリン達目がけ飛んでいく。
「今度は腕を伸ばして、ですが!」
「うおっ!? なんだそりゃあ!」
「骨格どうなっているんですか」
「確かにどうなっているんでしょうね……」
メモリの力によるものだから大丈夫……なはずと思うことにする一捷。そういうことにする。
一捷の黄色い右腕は彼の意思で上下左右に曲がり、あらゆる方向から百貌のハサンとクー・フーリンを叩きにいく。全て弾かれ、かわされたがルナジョーカーの感触はこんなものかと一捷は分かった。
残るはサイクロンジョーカー。一番使っているフォームだが今はどうしたものかと一捷がチェンジを考えていると、オルガマリーの声が聞こえてくる。
「あの緑と紫の姿は最後に変わってちょうだい。マキシマムドライブもそのときに再確認するわ」
「? 分かりました」
とりあえず今は彼女の指示に従うことに。何故最後なんだとは思いつつ。
そのオルガマリーとマシュがクー・フーリン、百貌のハサンさんの入れ替わり一捷と対峙。最後はこの二人が相手だ。
これは別の確認も兼ねている。マスターが複数いる場合、サーヴァントが自分を呼んでいない別のマスターと戦えるかの確認だ。
例えるのなら、通常マシュは一捷のサーヴァントとして戦うが、一時的にマスター権をオルガマリーに変え彼女のサーヴァントとなり戦闘。逆にオルガマリーが召喚したキャスターのクー・フーリン、百貌のハサンのマスター権を一捷に移す、という感じだ。
やり方はシンプル。マスターとサーヴァントがそれぞれ交換を了承し、カルデアからの処置で一時的に契約を解除。相手のマスターへ権利を移動する。今回で言うならこの戦いに限り、マシュのマスター権をオルガマリーへ移した。
結果は特に問題なし。自在に使えればこれからの戦いでの臨機応変さが増すだろう。
「ではお相手お願いします、所長。キリエライトさん」
「こちらも色々と試させてもらうから。……マシュ、今は頼むわね」
「お任せください、オルガマリー所長」
フォームの確認が最後となるメタル系統の確認に入る。
ルナメモリはそのままに、ジョーカーメモリをメタルメモリにチェンジ。
『ルナ! メタル!』
ハーフチェンジで変身するは『幻想の闘士』ルナメタル。
一捷が変身するのは二回目だ。
「おや、あの姿は確か」
「竜の魔女さん達と戦った際の姿ね」
「あのときは後で倒れてしまいましたがね」
だからこそ、使いこなせるよう力を確認する。
ルナの力で鞭のようにしなるメタルシャフトを振り回しマシュへ攻撃を仕掛ける一捷。
「あの黄色い姿は攻撃の軌道の変化、物体を軟化させる能力のようですね」
「さっき使ったルナジョーカーってやつと力被ってねーか。今の姿」
「それは言わないでください」
正確には防御力の違い、武器の有り無し、手足の伸縮かメタルシャフトの伸縮など色々違う。
続けてルナをサイクロンに変更。
『サイクロン! メタル!』
ソウルサイドが緑へ。『風の闘士』サイクロンメタル。
風を纏わせたメタルシャフトをマシュの盾とぶつけ合う。威力、感触確認のために何度も何度も。全身から風を放ち範囲や風力も確かめる。
メタルの防御力と風が合わさることで、ハーフチェンジの中で一番守りに優れたフォームだ。
十分風と打撃を確認したところでサイクロンメメモリをチェンジ。
取り出すのはヒートメモリ。メモリ相性の良い三つ目のフォームへと変化する。
『ヒート! メタル!』
ワイバーン戦で初使用した『熱き闘士』ヒートメタル。
炎を纏わせたメタルシャフトをマシュの盾に叩きつける。轟音と衝撃。デミ・サーヴァントのステータスで構えているマシュの表情が歪む。
「くっ……!」
「下がりなさいマシュ!」
「うおっと!?」
オルガマリーがそう言いマシュが飛び退くと同時、光線が
一捷に降り注ぐ。
咄嗟に一捷は左半身――メタルサイドを前に出し屈む。顔は左腕で覆い光線をガード。ダメージを最小限に抑えた。
「あっぶねぇ……」
「今度は防げたわね平沢。……魔術使用は異常なし。マシュ、スキルを使用して」
「はい」
頷いたマシュが盾を引き、構える。魔力を回しスキルが発動。青い光のエフェクトがマシュの周りに発生する。
「ステータスアップ、頑張ります……!」
シールダーとしての第1スキル『今は脆き雪花の壁』。能力は味方に防御力アップ、ダメージカットのバフ効果を付与。
こちらも問題なく発動したのを見て、オルガマリーは一捷に指示を出す。
「スキル発動も問題ないわね。ロマニ、そちらの観測は?」
『所長とマシュ、両者共に異常はありません』
「わかったわ。……平沢! その姿でのマキシマムドライブを使いなさい!」
「……はい。じゃあキリエライトさん、どでかい攻撃を出すから。どうか耐えてください」
「……わかりました。マシュ・キリエライト、この盾を持つ者として、必ず防いでみせます」
本日二度目のマキシマムドライブ。ルナトリガーと同様に周囲が防御に入ったのを見て、一捷はメタルシャフトのマキシマムスロットにメタルメモリを装填。
『メタル! マキシマムドライブ!』
メタルシャフトの両端が激しく燃え上がる。膨大なエネルギーがシャフトに貯まっていき、最大になったところでトリガーを押し込む。
「――メタル……ブランディング!!」
シャフト両端から炎を噴き出し、その勢いで高速のスライド移動。勢いを乗せ必殺の打撃をマシュ目がけてぶちかます。
「ハァァァーーーッ!!」
「ぐぅぅぅぅぅっ!! やぁぁぁぁぁ!!」
結果、後退させられるもマシュはなんとかメタルブランディングを防ぎきり、後方のオルガマリーを守った。スキルを使ったこと、魔術師としては一捷より優れるオルガマリーのお陰だろう。
今日一番の威力に全員がヒートメタルの姿に注目する。放った一捷自身も、呼吸を整えながら、自ら放ったマキシマムドライブの威力。その高さに戦慄していた。
「なんという威力……サーヴァントといえど、油断ならない一撃ですね」
「炎の棍による一撃か。流石に真正面から食らったら危ないだろうな」
「最も今の動きは特徴的だ。当てるには敵を抑える工夫が必要だろう」
「人数を増やし的を分散させるのも手ですね」
「それか躱すかだ、軌道さえ分かればできねぇことはない」
(……こんなの、間違えて人にかすりでもしたら大惨事だぞ……)
「マシュ、ありがとう……よく防いでくれたわね。怪我はない?」
「はい……手足に痺れが残っていますが、問題ありません」
「ありがとう、キリエライトさん。試し撃ちに付き合ってくれて」
一捷が言ったのに「いえ大丈夫です」と返すマシュ。これで未確認のマキシマムドライブ、その試し撃ちも終わり。本来ならここで確認は終了なのだが……
『サイクロン! ジョーカー!』
基本フォームのサイクロンジョーカーへ変化する一捷。
先ほど伝えられたオルガマリーの依頼、サイクロンジョーカーによるマキシマムドライブの再確認のためだ。
「相手は私が務めよう」
防いだとはいえダメージがあるマシュに変わり、マスター権をオルガマリーへ変えたエミヤがお相手。現在のサーヴァント達の中で防御の宝具を持つのは彼だけだからだ。
三度目の防御態勢をとる周囲の面々。
ジョーカーメモリを抜きマキシマムドライブの準備に入る一捷を見て、オルガマリーが全員に告げた。
「……皆覚悟しときなさい。色んな意味で衝撃的な技だから」
(どういう意味ですかそれ)
何やら意味ありげな言葉だが、言われたマシュ達はいきなりなんのこっちゃと「?」を浮かべるしかなく、ただ一人意味が分かる一捷はなんとも言えない表情でツッコみつつ、マキシマムスロットへジョーカーメモリをセット。
『ジョーカー! マキシマムドライブ!』
風を纏い浮き上がる一捷。対し守りの宝具を発動させるエミヤ。
「――
七枚の花弁による結界宝具。
それ目がけて、一捷はサイクロンジョーカーによる必殺キックを放った。
「――ジョーカー……エクストリーム!」
「うわなんだありゃ割れたぞ!?」「縦に割れてますよ体どうなってるんですか!?」「断面が黄色一色なんですが……」「気持ち悪い技だなオイ」「……あっ」「うわぁぁぁ!? マリーしっかりぃ!」「せ、せせせ先輩が、まま真っ二つに……」「いやぁぁぁぁぁ!? おにいさんきれちゃったぁぁぁぁ!!」
「……趣味の悪い技だ」
「衝撃でしょう……? これも見ておいた方がいいと思ったのよ……」
(この人達がもしガタキリバとかコンプリートフォームとかグランドジオウ見たらどんな反応するんだろう)
……キックは熾天覆う七つの円環で防がれたものの。
正中線で半分こになるのを見て、ドン引きやら気絶やら絶叫する周囲。
オルガマリーは万が一ジョーカーエクストリームを見て混乱が起きないようにと考えたのだが、現在絶賛混乱中である。
「……なんで割れるんだよ体の真ん中で!?」
「二人でキックするとかじゃダメなのかなぁ……」
「開発者は何を考えているんだ一体」
カルデアでもスタッフとロマニとダ・ヴィンチが似たような反応。酷い有様である。
「いやそういう仕様なんだからそこまでボロッカスに言わなくても」
(そろそろシュラウドとフィリップが泣くぞ)
「いや本人の貴方が一番気にしなさいよ!」
「なんとまあ。理不尽」
オルガマリーをはじめカルデアの面々にもうんうんと頷かれ、どっと押し寄せる疲れを一捷は感じていた。
……とにもかくにも。最後に色々文句は貰ったが、これにてWの9フォーム全て確認が終了。
どんな力があるのか、一先ずカルデアメンバーにも知ってもらうことができたのだった。
「……おにいさん、またわれたりしない?」
「正中線に割れ目は……ありませんね」
「ふ、不思議な力をお持ちなのね。初めて見たわ……」
「ごめん、しばらくマリーに近寄らないでくれ」
「割れないし線もないからねどんなビックリ人間だよ。そしてさすがに傷つくなその反応!?」
なお、アンナとマシュとマリーには少々ショックが大きく、ここから約一日一捷は彼女らにやや距離を取られるようになったとかなんとか。
「たくもう……あ。そう言えば」
「どうしましたマスター」
「いいもの持ってましたわ僕。……つめて」
ガイアメモリを抜きダブルドライバーを外すと、一捷はそう言って礼装からあるものを取り出した。
それはカキンコキンに凍った細長い物体がいくつも入った袋。
凍らせた後、真ん中で半分に折ってから食べる某ジュースの駄菓子である。
「いやなんで持ってるのよそんなもの。◯リジナル◯ソートのときもそうだったけど」
「急に思い出したんですよ。……何故あるんでしょうね?」
「私が知るわけないでしょう!?」
「……とりあえず、その冷えたのはなんだ。菓子か?」
尋ねてきたクー・フーリン(槍)に凍らせたジュースだと一捷は説明。袋から一本取り出し、一瞬力を込めて半分に折る。
「はいこちらどうぞ」
「お、すまん」
「残りはキャスターのクー・フーリンさんに。冷たくて美味しいですよ」
「このまま食うのか?」
「かじって中身だけ食べるんですそれ」
二本目を折って残るメンバーに配っていく一捷。
ここで入る、カルデアからの通信。
『ひ、平沢君。それ……』
「ちゃんとドクター達の分もとっておきますから大丈夫てますって」
「……美味しいですねこれ。凍った甘酸っぱい汁ですか」
「でしょう? 動いていたからより美味しいはずです」
「こりゃいい。ありがとな坊主」
「なぜ君が持っていたかは気になるがな」
「確かに。……美味です」
アルトリアをはじめサーヴァント達には好評。
彼女らとは少し離れた位置で残るメンバー、オルガマリー、マシュ、マリー、アンナが某駄菓子を食しており、そちらに一捷は声をかける。
……先程の件があるのでやや距離をとって。
「や、どうだいキリエライトさん達。それ美味い?」
「あ、先輩……はい。カルデアでは食べたことのないお菓子ですが、美味しいです」
「えぇ! 少し暑かったらとってもね」
「つめたいおかしははじめて……」
「……ん゛っ!? あ、頭が……」
「所長、急いで食べ過ぎです」
かき氷を早く食べると頭がキーンとなる通称『アイスクリーム頭痛』。冷たさと一緒にそれも味わうことになったオルガマリーに苦笑いしつつ、一捷はアンナ達に話しかける。
「……まぁジョーカーエクストリームで引かせたのは本当ですからね。お詫びの代わり、と言ってはなんですが。気に入っているようで良かったです」
「……ありがとうおにいさん。その……さっきはごめんなはい」
「いいっていいって」
アンナと笑い合う一捷。彼女の笑顔を見て少しだけ心が軽くなったような気がした。
(……本家のフィリップさん達ならさっきのも上手く説明できてたかもしれない。僕じゃまだまだだ)
それでも、目の前のアンナを見て思う。
(せめて、アンナちゃんくらいは守れるはずだ。今の僕でも。……守ってみせる。必ず)
未熟でも戦うのなら、せめて一緒にいる間は守りきってみせる。
そう、心の奥で一捷は誓った。
◆◆◆
「じゃあアンナちゃん、気をつけていくんだよ」
「うん。いっかおにいさん、みんな、ありがとう」
一夜明けた次の日。
竜殺しがいるとされるリヨンを目指す一捷達。情報収集のため道中の街に寄ると盗賊と化した兵士に襲われたが、マシュ達サーヴァントの力で無事鎮圧。
賊を役人に引き渡した後、アンナを兵士に預けることになった。
ここから先は更に戦いが激しくなる。同行しても危険しかないのでアンナはこの街に残していくになり、アンナも少し寂しがりつつそれに同意。
兵士に預けたアンナは、一捷達の姿が見えなくなるまで、彼らの姿を見送っていた。
「……いっかおにいさんたち、だいじょうぶかな」
「なに、さっきの戦いぶりを見れば大丈夫だよ。さ、私達も街に――」
ドサリ。
アンナを預かった兵士は言い終わる前に倒れ込む。
兵士は胸に大きな穴を空けられ、絶命していた。
アンナが振り向くとそこには、一人の人間がいた。
右手に赤い槍を携え、『真っ白なローブと包帯を巻いた』人物が。
「気が変わった、君に協力してもらおうか」
左手には灰色のドーパントメモリがあった。
ガイアウィスパーが、鳴り響く。
「さぁーてここからがお楽しみ。仮面ライダーの資格を、ゲットできるかな?」
メモリのイニシャルは、『T』。
肉食恐竜の横顔を模した、『T』のガイアメモリ。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
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オルガマリー
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マシュ