へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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2026年、明けましておめでとうございます。

今年一年もどうぞよろしくお願いいたします。

それでは新年最初のお話、どうぞ。


へっぽこマスターの守ったもの

 トカマク・ロブスキー。

 

 アニメ、聖戦士ダンバインに登場するソ連の退役軍人で、一捷の元に現れた緑色のダンバインのパイロットとなった男性。

 

 彼はダンバイン第一話にて主人公であるアマチュアのモトクロスレーサー『ショウ・ザマ』、アメリカ空軍のパイロット候補生『トッド・ギネス』と共にバイストン・ウェルに召喚される。

 

 三人に与えられたのが、新型試作型オーラバトラーであるダンバイン。ショウが水色、トッドは紺色、そしてトカマクに緑の機体。 

 

 だが最初の慣熟飛行で三人を召喚した『ドレイク軍』と敵対する『ギブン家』勢力による不意打ちを受け戦闘に。

 

 戦いが始まって間もなく、トカマクは機体に直撃を食らってそのまま森に墜落し爆散……というあっけない最期を迎えてしまったのだ。

 

 一応、ゲームやアンソロジー等では墜落した後も生き延びていたり、条件次第で自軍の仲間入りしたり、ゲームブックの主人公に自らのダンバインを託す人物になっていたりと生き残る場合もあるのだが。

 

 閑話休題。

 

 

(いやいやいやいやなんでトカマクダンバインなの!? レプラカーンにダンバインなら水色の、マーベルが乗ってたときのじゃあないよかよ! おいどうなってるんだマオー!?)

 

『……ごめん。ミスった。マジでごめん』

 

(……いやこんなときにミスるなよぉ!? だいたい初陣でトカマクダンバインって不吉だわ! いやトカマクさんに失礼だけど!)

 

 

 思いつく限りの文句をマオーに言いまくる一捷。

 

 てっきり別のオーラバトラーだと思っていた。しかもそれがミスによるもの。自分はミスする訳にもいかないのに、頼りにしている存在がいい加減では文句も言いたくもなった。

 

 しかし、忘れてはいけない。

 

 ここは戦場であり、目の前には強力な敵機がいるということを。

 

 

「うらぁぁぁぁっ!」

 

「ぬわっ!?」

 

 

 オーラソードで斬りかかってきたレプラカーンに、一捷は思わず間抜けな声を発してしまうが、逃げるように大きく退いてどうにか回避に成功。

 

 そう、一捷はレプラカーンに対抗しようと短剣の力を使ったのだ。

 

 それで現れたのがトカマクダンバインならば、それでなんとかするしかないのだ。

 

 

(……ダンバインは乗り手のオーラ力に性能が左右される機体。トカマクさんのダンバインだろうとそれは同じはず。僕のオーラ力がどれくらいかは分からないけど……やるしかないんだ!)

 

 

 迷う時間すらないのだ、今は。

 

 全身へ鎧のように纏う形となった一捷のトカマクダンバイン。装甲に覆われた右腕を背中にやり、鞘からオーラソードを抜く。

 

 顔の横でソードを両手で握りレプラカーンと対峙。その手は僅かに震えていた。

 

 再びレプラカーンが突っ込んでくる。直前より速い。振り上げられるオーラソード。

 

 

「うぉっ!」

 

「ハッ、今度は良く受けたねぇ!」

 

 

 一捷は咄嗟にオーラソードを寝かせて前に出し、なんとか刃で受ける。刃が火花を散らして滑り鍔迫り合いへ。一捷はソードに全力を込めるが、レプラカーンを押し返せない。

 

 まるで巨大な岩でも押しているかのようで、持ちこたえるのが精一杯。

 

 しかし一捷は、相手との距離が縮まった今を好機と捉えた。

 

 

「……聞こえているか! レプラカーンの操縦者さん! 貴女、ジェリル・クチビさんなのか!」

 

「あぁ? なんだいアンタ、なんであたしの名前を知っている!」

 

 

 直後、オーラソードを振り抜かれ離れてしまうが、呼びかけには成功した。

 

 まず確認を取りたかったのが本当にパイロットがジェリル・クチビなのか。別の人物の可能性もあったが声を聞いてジェリル本人だと確信する。

 

 一捷が狙ったのは対話のきっかけ。こちらから呼びかければ話ができないかと考えたのだ。

 

 

「……いや、そうか。アンタが『ヒラサワイッカ』って奴かい。カルデアとかいう組織の、マスターってやつの」

 

「僕のことを知っている……様ですね」

 

「一応聞かされていたからねぇ。他所の世界から来たっていうアンタや、サーヴァントとかいう連中の事もさ」

 

「……なら、この世界がどんな状況になっているか、ご存知のはずです」

 

「知ってるよ、もうすぐ滅んじまうんだろう」

 

 

 一捷が予想した以上に、ジェリルはこの世界やカルデアについて理解していた。

 

 ならば話は早い。

 

 可能性は低いかもしれない。だがそれでも分かってくれるかもしれない。

 

 一縷の望みにかけて、一捷はジェリルに言った。

 

 

「……それならば、ここで僕達がわざわざ戦う理由は無いはずです。世界が滅びるかの瀬戸際で、いがみ合ってる場合じゃあない」

 

「……それで? あたしに手を貸せとでも言うつもりかい」

 

「……そうです。力を合わせれば、世界を救える確率だって――」

 

「――どうでもいいねぇ。そんなことは!」

 

 

 一捷の言葉は無情にも、背中のオーラキャノンによってかき消されてしまった。

 

 どうにか避けるが、回避先に赤い炎が放たれていて、突っ込む形になってしまった。

 

 

「うぁぁぁっ!?」

 

 

 凄まじい高熱に包まれ、一捷は思わず体をばたつかせ手足を振り回す。

 

 どうにか炎は消えたが、隙が生まれオーラソードで斬りつけられる。

 

 何度も、何度も。

 

 どうにか抵抗しようと、一捷もソードを振るうが、

 

 

「踏み込みが甘いんだよぉ!」

 

 

 軽く弾き返されお返しの斬撃を食らってしまう。

 

 

「ぐっ!? 分かっているんですか! ここは僕達が元いた世界でもない! なのにどうして戦う必要が!?」

 

「そんなの決まってるだろう! 何処にいようが、戦うのが楽しいから戦う。あたしはそれだけなのさ!!」

 

 

 ダンバイン本編と同じ、派手な戦いを好むジェリルらしい理由だった。

 

 本編終了後の時間軸で呼ばれたジェリル。その性格は変わっておらず、赤のジャンヌ・ダルクとして、この世界での戦いを楽しんでいた。

 

 新しい場所でサーヴァントという未知の存在と戦える。

 

 ジェリルの中では思う存分に暴れ回る衝動が大半を占めていた。

 

 

「それに、アンタの事情も聞いてるんだよ。あたしらがアニメだとかこの世界がゲームとか!」

 

「そこまで……!?」

 

「人のことを勝手に知って気色悪いねぇ……! あたしはジェリル・クチビなんだよ! 知ったような口を聞くんじゃないっ!!」

 

 

 明確な拒絶。それを形にした砲撃が撃ち込まれる。トカマクダンバインの手足に被弾。発生した爆煙を突き抜け、ジェリルが突貫してくる。

 

 引いたオーラソードの切っ先が繰り出される。狙いはダンバインの胸――一捷の心臓。

 

 

「しまっ――」

 

「危ないっ!!」

 

 

 ソードが刺さる直前。

 

 トカマクダンバインより勝手に飛び出した青緑の短剣が、声を発しながらジェリルのオーラソードと激突する。それにより僅かに剣の軌道がずれ、脇の装甲を抉られるも、一捷はなんとか命拾い。

 

 そのままダンバインとレプラカーンがぶつかり互いに後退。だが一捷の方は至近距離でオーラキャンン三発を食らい、声すら上げられず吹き飛ばされ、ティエールの広場に叩きつけられてしまう。

 

 

「ハッ、ダンバインに乗っているからどんなヤツかと思いきや。口ほどにもない甘ちゃん坊やじゃあないか」

 

「ぐ……う……」

 

 

 瓦礫に埋もれた一捷に侮蔑を隠さないジェリルの言葉が降り注ぐ。

 

 心身に痛みを感じながらなんとか起き上がろうとする一捷だが、視界の端にあるものが映る。

 

 

「あ、あぁぁ……」「お、お姉ちゃん……」

 

(あの子達? 逃げ遅れたのか!?)

 

 

 幼い女の子と男の子。姉と弟と思われる子供二人が建物の陰で震えていた。

 

 避難の途中に親とはぐれ取り残されていたのだ。

 

 二人を見た瞬間、一捷の中で『彼女』と姿が重なる。

 

 赤い頭巾の少女。自分が助けられなかったあの少女の姿が。

 

 

(アンナちゃん……)

 

「……へっ」

 

 

 上空のジェリルが一捷の視線を追って二人に気づいてしまう。

 

 そして何を思ったのか、全身の砲口を向けた。

 

 

(おいまさか!?)

 

「くたばりなぁ!」

 

 

 キャノンが、バルカンが、フレイボムが火を噴く。

 

 それを見た瞬間、全ての痛みを忘れ、瓦礫を吹き飛ばして一捷は飛び出していた。

 

 二人の前に出て盾になろうと背を向ける。

 

 そう考えたが、ある光景が脳裏によぎった。

 

 

『どうすりゃいいんだよー!?』

 

 

 この機体に乗ったトカマクの最期。

 

 あのときトカマクダンバインは背中と腰付近に被弾し撃墜されてしまった。

 

 このまま背を向ければ同じようにやられて爆発、二人の子供達を巻き込んでしまうかもしれない。

 

 直感的に一捷は砲撃に対し正面を向く。両腕を交差させ防御態勢をとり、

 

 

「伏せて! 身を低くするんだ!!」

 

 

 信じてもらえるかはともかく、後ろの二人にそう叫んだ。

 

 降り注ぐ砲弾と炎。

 

 一捷の全身を衝撃と高熱が貫いていく。

 

 

「ぐぅぅぅぉぉぉぉっ!!」

 

 

 攻撃が装甲に当たる度に体を突き抜ける衝撃。

 

 命を奪わんとする砲火。

 

 視界いっぱいに降り注いでくるそれらに、一捷はとてつもない恐怖と痛みを感じ続けた。

 

 装甲が今にも割れてしまうのでは、そうなったら自分も死んでしまうのではないか。

 

 逃げ出したい。恐怖からそう思ってしまったが、無理矢理抑え込んだ。

 

 逃げればこの子達が死んでしまう。それだけはできない。見過ごせない。

 

 どんなに怖くても、痛くても、守りきってみせる。

 

 

(ここから一つも……攻撃は通さないっ……!!)

 

 

 それに応えるよう、一瞬だけトカマクダンバインよりオーラ力が膨れ上がった。

 

 それにより、僅かな間だがオーラ力がバリアのようになって砲火の雨あられをガード。どうにか防ぎきることに成功した。

 

 

「……うっ!! ぐっ、はぁ、はぁ……」

 

「あ、あの……」

 

「……大丈夫。僕は平気だよ。それより、早くここから逃げるんだ」

 

「は、はい。行くよマーゾ」

 

「う、うん」

 

 

 弟らしき少年は一捷の方を見て、姉に手を引かれこの場から走り去っていった。

 

 見たところ傷はない。

 

 良かった。なんとかあの子達を守れた。そう安堵する一捷だったが、危機はまだ去っていなかった。

 

 

「なっ。胸糞悪いことしてくれるじゃあないか、坊や」

 

「……関係ない人を殺そうとしておいて、言う台詞がそれですか」

 

「むかっ腹が立つんだよ! そうやって、世界だの平和だのを守ろうとしているやつにはさあ!!」

 

 

 今度はオーラソードで一捷に襲いかかろうとするジェリル。

 

 降下した瞬間、横方向より矢と衝撃波が飛来した。

 

 

「なんだい!?」

 

 

 ジェリルは不意を突かれながらも、衝撃波を避けシールドで矢を防ぐ。

 

 攻撃が飛んできた方向を見ると、エミヤとアマデウスとエリザベートの姿。町に飛来したワイバーンは全て倒されていた。

 

 続いて清姫より火の玉が三発撃ち込まれる。キャノンで撃ち落とすジェリルだが爆風が発生。それを突っ切り、壁を蹴り飛び上がったマシュが渾身のシールドバッシュをジェリルへぶちかました。

 

 

「やぁぁーーーっ!!」

 

「次から次へとぉっ!」

 

 

 対しジェリルはソードを振るい迎撃。

 

 十字盾とオーラソードが激突。発生した衝撃により大気が揺らぐ。武器同士をぶつけた反動で着地するマシュと、空中で後退するジェリル。

 

 

「――はぁぁぁっ!」「A、aa……ッ」

 

 

 同時に、アルトリアとランスロットの戦いも決着がついていた。

 

 一瞬の隙を突いた一閃が、氷の刃を断ち切り、ランスロットの体を深く切り裂く。

 

 兜が割れ、ランスロットはどう、と石畳の真ん中に倒れ込んだ。

 

 

「……み、見事です……流石は……我が王……」

 

「ランスロット卿……」

 

「申し訳ありません……円卓を崩壊させ……ギネヴィアすら救えず。それでいて再び……私は貴女に、剣を向けてしまった……」

 

「……いいえ。貴方だけの責ではありません。私も、貴方を信じるあまり何もしなかったのですから。……申し訳ありませんでした、ランスロット卿」

 

「……王よ、私は……」

 

 

 最後まで言い切ることができずにランスロットは消滅。

 

 アルトリアにとって苦い倒し方となってしまったが、カルデアの敵はこれでジェリル一人となった。

 

 六対一。辺りを見渡し数的不利を悟ったジェリルは、忌々しげに舌打ちを放った。

 

 

「ちぃっ。今日はここまでか!」

 

 

 流石にこのまま戦ってもダメージが増えるだけ。踵を返し、レプラカーンが撤退していく。

 

 エミヤ達が追撃をかけようとするもオーラバトラーの速度に追いつけず、赤い機体は空の彼方へと姿を消してしまう。

 

 

『……ダメです。敵機の反応、ロストしました』

 

『凄まじい飛翔能力と出力だね。人型の機体で高速飛行しつつ、あれだけの火力を搭載しているなんて。……これは、オーラバトラーの解析も進めないとだ』

 

「……うぅっ」

 

『ひ、平沢君! 大丈夫か!?』

 

「な、なんとか……」

 

 

 敵がいなくなったのを見てトカマクダンバインが膝をついた。

 

 機体が光になって一捷に戻る。

 

 全身から煙が上がっていて体内に熱が籠っている。手足や顔に火傷もあり、決して無傷では終われなかった。

 

 それでも、初めての力で不利な戦いを強いられつつも、それでもなんとか一捷は生き残った。

 

 ただし、あくまでこの場の自分達だけ。

 

 痛みすら忘れて、直ぐ様一捷はあることをカルデアに尋ねた。

 

 

「ドクター! オルガマリー所長達の方は……どうなりましたか!?」

 

『……所長達は無事だよ。聖人のサーヴァントとも合流できたそうだ』

 

 

 ただ、と区切るロマニ。

 

 嫌な予感を感じた一捷だが……それは現実となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

『……向こうの町をファヴニールが襲撃。住人を守る為に、敵サーヴァントと交戦していたマリー王妃は……宝具を使って消滅したそうだ』

 

「……そんな」

 

 

 

 

 

 

 

 そう聞かされた後、一捷の記憶は曖昧だった。

 

 傷の治療を受けてからオルガマリー達と合流したはずなのに、何を話していたのかよく覚えていない。

 

 何を聞いても頭に入ってこなかった。マリーが消えてしまったことのショックで上手く考えがまとまらない。

 

 気づいたときには日が落ち夜になっていた。

 

 近くの森にキャンプを設置。交代で見張りをしながら、戦闘後の休息を取っていた……はずだと、一捷は記憶を探りなんとか思い出す。

 

 

「……何やってたんだよ、僕は」

 

 

 アンナに続いて、また助けられなかった。

 

 今度は知っていたのに。マリーの助けに行けなかった。

 

 少しでも時間が空くと、一捷は自分自身を責めてしまっていた。

 

 もっと状況を知っていれば。もっとマリー達と交流していれば。

 

 もっと力があれば。使いこなせていれば、あるいは違った結果になっていたかもしれないのに……と。

 

 そう思ったとき、ジェリルの言葉が脳裏をよぎる。

 

 

『人のことを勝手に知って気色悪いねぇ……! あたしはジェリル・クチビなんだよ! 知ったような口を聞くんじゃないっ!!』

 

 

 原作知識でジェリルを知る自分に向けられた言葉。向こうが感じた内容。

 

 ……確かに、そうだろうなと一捷は思う。

 

 どんな理由であれ、自分のことを赤の他人が知っていたらそれは怖いことだ。自分しか知らないことを勝手に言われたら尚更。

 

 

(……一体、僕は何を知っている? 何を分かっている? 何を……見ているって言うんだろうか)

 

 

「いかにも落ち込んでいる、という顔だな。マスター」

 

「……エミヤさん」

 

 

 声をかけられ振り向く。

 

 見張りを担当していたエミヤが立ってた。後ろにはアマデウスとジークフリートもいる。

 

 一捷達とオルガマリー達、それぞれの戦場での情報は交換している。事情は全員が理解していた。

 

 

「……マリーのことなら、君が気負う必要はないよ。マリーも分かった上で向こうへ行ったんだからね。そうだろう?」

 

 

 アマデウスに言われ、昨夜の出来事を思い出す一捷。

 

 ロマニ、ダ・ヴィンチとの会話を聞かれやむなく話していた内容を、この先起こることを一捷はマリー達にも伝えた。

 

 その上で、一捷はマリーに同行もしくは配置変えを頼んだのだが、本人がそれを断った。

 

 

『ごめんなさい。そのお願いは聞けないわ』

 

『たとえ死ぬかもしれなくても、わたしは竜の魔女に聞きたいことがあるの。何より、ここであなたが死んでしまうようなことがあってはいけないわ、平沢』

 

『心配しないで。そのことを知ったのなら、もしかしたら死なないかもしれないでしょう? あなたはあなたの役目を果たしてください』

 

 

 そう言って、全て分かった上で、マリーは町に残り……戻ってこなかった。

 

 

「でも、それは」

 

「そりゃあ何も思わないわけじゃないけど。でもね、彼女も、マリーも馬鹿なんだよ。『自分はフランスに恋をしていた』なんて勘違いをしててさ」

 

 

 今日の朝、マリー達と前のやり取り。

 

 アマデウスに勘違いだと言われても、マリーは『フランスに恋された女』だと胸を張っていた。

 

 王妃として誇り高く。きっと最期もそうだったとアマデウスは予想する。

 

 

「だからこの話はおしまい。まだボク達にはやることがある。平沢にもね。君はあのジェリルとかいう赤のジャンヌ・ダルクと戦うんだろ? なら、足を止めちゃいけない」

 

 

 後ろばかり見るのではなく、前を見なければならない。そう伝え、アマデウスは踵を返し離れていく。

 

 

「……まぁ欲を言うなら。彼女にピアノを、聴いてもらいたかったけどね」

 

 

 途中で立ち止まり、そう言い残すアマデウスに一捷は何も言えなかった。

 

 アマデウスの気持ちは嫌でも伝わってきたからだ。最後の言葉の意味も。

 

 状況を分かった上での、一捷への精一杯の抗議なのだと。

 

 俯き、拳を握りしめる。

 

 アマデウスの言葉を心で噛みしめていると、エミヤより声がかかった。

 

 

「……『誰かを助けるという事は、誰かを助けないという事。正義の味方っていうのは、とんでもないエゴイストなんだ』。ある男の言葉だ」

 

「それは……」

 

「今の君には必要な言葉だと思うがね」

 

 

 マリーは助けられなかった。

 

 だが、ダンバインとなりジェリルと戦ったことで、幼い姉弟を守ることはできた。

 

 もしマリーを助けに向かっていたら、あの二人はほぼ間違いなく死んでいただろう。

 

 

「これから戦いの中で、助ける命を選ばなければならない状況は必ず来る。その時、誰を助けるのかを選択せねばならない。たとえ、別の誰かが犠牲になってもだ。……世界を救うとはそういうことだろうよ」

 

「……苦しい、ですね」

 

「当然だよ。そして悪いが、今のマスターに立ち止まる暇はない。分かっているな?」

 

「…………えぇ。思うことがあっても、今はやらなきゃいけないことがある。そうですよね?」

 

 

 アマデウスやエミヤの言葉を飲み込みどうにかプラスの状態になった一捷に、エミヤは「そうだ」と返し用件を伝える。

 

 

「そう言う訳だ、明日の朝一番からダンバインとやらの性能テストを行う。できるな、マスター?」

 

「……はい。お相手はエミヤさんが?」

 

「……俺もだ。赤のジャンヌ・ダルクとは戦ったことがあるからな」

 

 

 ジークフリートの呪いはジャンヌと合流した聖人のサーヴァントにより、既に解かれている。

 

 取り戻した力の確認、オーラバトラーの性能確認、対象方法の模索。

 

 カルデアにこの内容を提案したエミヤとジークフリートを中心に模擬戦を行い、並行して反撃の準備も整えると一捷は伝えられた。

 

 

「……分かりました。それなら、今直ぐ休まないとですね。お二人も見張り、お疲れ様です。明日はお相手をお願いします」

 

「……無理はし過ぎるなよ。こんな状況だが……感情を抑え込みすぎないことだ」

 

「……覚えておきます」

 

 

 そうして二人と別れた後、一捷は就寝。

 

 目覚めると一日性能テストと準備を行う。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして一夜明け、遂に竜の魔女が根城としている都市オルレアンへ進撃する日が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ぴきり。

 

 

『あーらら、ちょっと不味いね。せめて……ここでの戦いが終わるまで、保つかなこれは?』

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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