それでは今回もどうぞ。
目の前に飛び交う竜、竜、竜。
空からはワイバーンが。地上からはスケルトンが多数向かってくる。
「――先輩! しっかり捕まっていて下さいっ!!」
「あいよぉ! 任せたよキリエライトさん!」
対しマシュが十字盾を構え、攻撃を防ぎながら、敵を弾き飛ばしていく。
サイクロンメタルとなった一捷はその後ろで彼女にしがみつきながら、必死に振り落とされないよう振動に耐えていた。
戦力を整え、竜の魔女及びジェリルがいると思われるオルレアンへ進撃するカルデア。
数では圧倒的に負けているカルデアがとった戦法は正面突破。無理矢理にでも相手の陣地へ攻め込み、一気に竜の魔女達を打ち倒す。単純だが、今の中で一番勝率の高い作戦はこれしかない。
調達した馬にマシュと一捷、アルトリアとオルガマリーが乗り速度を確保。なるべく一塊となり、障害となる敵だけを蹴散らしながら戦場を駆け抜けていく。
が、相手も当然迎え撃つ準備を整えている。
カルデア陣営が進み城までの距離が半分になった辺りのことだ。
空から巨大な炎が振り注ぎ、全員を木の葉のように吹き飛ばしてしまう。
マシュが盾と防御スキルを展開したお陰で、各人にダメージはほぼなかったが、散り散りになってしまう一捷達。
戦力が分散した彼らの前に、ワイバーンから飛び降りたサーヴァント達が現れる。
オルガマリー、クー・フーリン、百貌のハサン、清姫の前にデオンとアタランテ。
マシュ、アルトリア、エミヤ、エリザベートにヴラド三世とカーミラ。
そして一捷とアマデウスの元にアイスエイジ・ドーパントと、アサシンのサーヴァントが。
『新しい力は馴染んだのかな? 平沢一捷』
「レフ教授……! それに、あなたは……」
「フゥゥゥ……アァァアア……アァアアア……」
「なんて腐れ縁だ。よりにもよって、一番どうでもいいヤツのところに来るなんて」
白髪に黒いローブを着た青年『シャルル=アンリ・サンソン』。十八から十九世紀において、ギロチンを生み出し数多くの人間を処刑した死刑執行人。
そして、マリー・アントワネットの首を落とした人間でもある。
呻き声を上げ足元がおぼつかないサンソン。体の至る所が黒く染まり、顔は左半分が真っ黒になっている。
サンソンがカルデアと戦うのはこれで三度目になる。一度目はティーレックス・ドーパント撃破後、ランスロットと共に追撃をかけたとき。二度目は聖人サーヴァントを探すオルガマリー達の前に現れたときだ。
召喚の際に狂化をかけられていたが、二度目の戦いで深手を負ったサンソンは更に狂化をかけられ、既に心身がボロボロの状態。それでもカルデアの戦力を削れればよいと、戦場へ送り込まれていた。
「やぁ処刑人。その分だとマリアに絶縁状を叩きつけられたかな?」
サンソンは半分挑発するように言ったアマデウスと隣の一捷を確認するなり目を見開き、
「ア、アーーマーーデーーウーースゥゥッ!!!」
手にした刃を振りかぶり、猛然と斬りかかってきた。
『ヒート! メタル!』
一番防御力の高いヒートメタルへハーフチェンジする一捷。次々に振り下ろされる刃をメタルシャフトで防ぎつつ、氷柱と冷気を炎で打ち消し、アマデウスが隙をついて音による衝撃波を撃ち出す。
サンソンはいくつか衝撃波が当たるのも構わず、そのままアマデウスへ突進。カバーに入ろうとする一捷だが、アイスエイジ・ドーパントが氷柱を放ってきて妨害されてしまう。
「ぐっ……!?」
「ファァァァァッ!!」
「ヌウッ!?」
サンソンはアマデウスに一撃を入れると蹴飛ばし、今度は一捷に狙いを定め、刃を閃かせる。
「僕は……おまえらには負けない! 負けてなるものか……!」
「クッ……! 僕と貴方は、初対面のはずですが……?」
刃をメタルシャフトで防ぎながら一捷が言い返すと、サンソンの顔から黒い部分が引いていく。
やり取りの中で少しだけ正気を取り戻したのだ。
冷静な口調でサンソンは言い放つ。
「君のことを知って許せないと思ったんだよ、僕は。マリーが死ぬのを知っていながら、それを見過ごした君が……!」
「ッ……」
「お前、マリアのヤツに何か言われた? 例えば、僕達の方が百倍マシとか。彼女やこっちの事情も知らないのに八つ当たりすんなよ」
「黙れっ……! お前は指先から斬り落としてやる。だがその前に、君だ!」
刃を一捷に叩きつけるサンソン。怒りと憎しみを込め、赤と銀の生体装甲に傷をつけていく。
「彼女が死ぬと分かっていたのに! 救える立場にいたのに! 力も持っているだろうに、それをしなかった! そんな君を……許せるわけないだろうが!! 平沢一捷ァァッ!!!」
「グウゥゥッ!?」
竜の魔女に協力しているAによりサンソン達は一捷の情報を聞かされていた。その中で特に、一捷へ敵意を抱いたのがサンソン。
彼の一振りで弾き飛ばされる一捷。
サンソンは刃を立てるように構えると、周囲にどす黒い手がいくつも出現。一捷を捕まえんと迫る。
「まずい、逃げろ平沢っ!」
「言わなくても……なっ!?」
『私もいるのだが?』
直ぐ様距離を取ろうとした一捷だが足が動かない。
見ると両足がアイスエイジ・ドーパントの放った冷気により凍っていた。
ヒートの炎で溶かす間もなく、無数の手に捕まり、目の前に現れた断頭台に引きずりこまれ、巨大な刃――処刑器具のギロチンが落とされる。
「この痛みが最後の救いになるはずだ。――“
「がはぁっ……!!!!」
落下したギロチンがヒートメタルのボディを一閃。
即死判定も行われるサンソンの宝具。幸い即死こそ一捷は免れたが、宝具の一撃により変身が解除され倒れ込む。
左肩から右腰にかけて大きな切り傷が刻まれ、血が礼装を赤く染めていく。
(……? 何だ、今の感触は)
普通なら即死判定がなくとも威力だけで死んでしまう。一捷が生き残れたのはWに変身していたからだ。
一捷へ敵意をむき出しにしていたサンソンは僅かに怪訝な表情となる。
処刑人として人体の何処を傷つければ死なないのか。後遺症が残らないのか、などを研究していたサンソン。だからそ、ギロチンが一捷に落とされた瞬間に違和感を感じていた。
――こいつは、本当に人間なのか?
サンソンが見下ろす先で、流れ出た赤い血が乾いた地面に染み込んでいく。
◆◆◆
……痛い、痛い、痛い。
体が裂けるような、激痛。いや、本当に切られたからなんだけど。
サンソンの宝具……ギロチンをモロに食らってしまった。
どうにか即死判定にはならなかったみたいだけど……体に走る痛みに、僕はどうすることもできない。
痛い思いは既に味わった。ランサーらしきサーヴァントに手を貫かれ、マルタに指を曲げられ、アシルさんには足を刺された。
どれもとてつもなく痛かった。けど、そんな痛みを味わったのだから、この先もどうにか痛みを堪えられる……何の確証もないのに、どこかでそう考えていた。
……一瞬で、そんな甘い考えは吹き飛んだ。
(宝具を食らったのなんて……初めてだ。これは……威力が違い過ぎる……)
サーヴァントの逸話や武器が奇蹟にして切り札。
その力は、今まで食らったどの攻撃よりも重く、強い。
体だけじゃない、心や魂に直接響くようなパワーがある。それは体を切り裂いて……僕の精神に直接ダメージをぶつけてきた。
揺らぐ。
心がぐらぐらと。ちっぽけな覚悟はあっさりと砕け散る。
……逃げたい。思わずそう考えてしまう。こんな力は知らない、聞いてない、更に強力なパワーを浴びたら耐えられない……。
なんでこんな目に遭っている?
何故僕は戦っているのだ。こんな痛みを味わってまで。
どうして? 何故? なんで……?
――…………ごめんな、さい……
「……ぐぅっ、んんんっ……!」
脳裏に浮かんだ『彼女』。
その姿に、体の奥で沸き上がるものがある。二つ。
突き刺すような痛み。それと……これは『怒り』。
立ち上がる。痛みをこらえて、怒りの力で無理矢理に稼働させる。
「平沢!? 生きてるか!」
「今ので生きてるなんて。……本当に人間か?」
「人間ですよ……痛いなんてものじゃあない……」
死ななかっただけで深手を負った。
足がふらつき視界がぼやける。それでもなんとか踏ん張り、意識を失わぬよう繋ぎ止め、サンソンへ視線を返す。
「ならば死ね。直ぐ楽にしてやる。そして、あの世でマリーに詫びてこい」
「そりゃあ、いつかは死にますよ人間だから。けどそれは今じゃあない」
「偉そうに何を言う。マリーを助けられなかった男が……!」
「……えぇそうですよ。知っていたのに助けられなかった。それが僕だ。恨まれても、憎まれても、文句は言えない」
言い切る。これはまごうことなき僕の本心。
……それでも。
言葉を続ける。
「だからこそ……ここで死ねないんですよ。そのことを後悔しているからこそ」
「っ……」
「平沢、お前」
言う度、会ったこともないカルデアのスタッフやマスター達、マリー王妃、アンナちゃんの姿が浮かんで、胸がずきりと痛む。
この痛みから逃げてはいけない。
ここで止まらない、止まってはいけない、止まってなんかやらない。
痛みを忘れず……それでいて、今は戦い抜く。
そう心に決め、僕を睨むサンソンを睨み返してやる。
「……いいだろう。ならば今度こそ、その首を落とす」
僕の目あるいは言葉が癪に障ったのか、刃を構え突撃したくるサンソン。
早い。アマデウスさんがこちらを援護しようとするも、アイスエイジ・ドーパントに迫られ邪魔される。
おまけに僕の方は痛みで視界がぼやけ、上手く体を動かせない……!
(くっそ……頼む動けよ僕の体……! 痛いのは分かってる。けどここでどうにかしなきゃ……)
回避でも防御でも、とにかくなんとか動かないと首が飛ぶ。直感で感じた。
相手はサーヴァント? そんなこと分かりきってる、地力にどうしようもない差がありすぎることなんて。
それでも、それでもなんとかするのだ。
この痛みと一緒に。堪えて。
決して忘れず……それでいて、『痛みを振り切る』覚悟で戦わないといけないんだ……!!!
――そこまで思うならやってみろ。この力でな。
……脳裏に、『誰かの声』が聞こえた瞬間。
手の中に重みを感じる。現れた『それ』を両手で握りしめ、振り抜く。
丁度それは、サンソンが繰り出した刃とぶつかり合い、凄まじい金属音と火花を発して、僕とサンソンはお互い退く形となった。
「ぐっ……なんだ……!?」
「……これは!」
ほぼ無意識で体を動かしていた。
なんだ今の声……? いやそれよりも!
我に返った僕は手の中にある物体に目をやる。サンソンを迎え撃ったそれは……大きな片刃の剣だ。
重い。とにかく重い。両手で支え踏ん張っていないと直ぐに落としてしまいそうなくらい。
ぎらりと光る銀色の刃。引き金がある赤と黒の持ち手。
対ドーパント用の多機能大型剣――その名は『エンジンブレード』。
どうしてこの剣がここに?
そう思った瞬間、僕の腰と目の前が赤く光り、二種類のアイテムが現れる。
一つは腰に装着された、バイクのハンドルのようなバックル『アクセルドライバー』。
目の前に現れたのは赤いガイアメモリ。イニシャルは『A』。タコメーターでAを描いたメモリ――『加速の記憶』を宿す『アクセルメモリ』。
「何……? 武器を隠し持っていたのか?」
『バカな、新しいガイアメモリだと! 一体何処から現れた……!』
これらも変身アイテムだ。Wと共に戦うもうひとりの仮面ライダーへ変身するための。
……これらが現れたのなら、やることは一つ。
恐らくアイスエイジ・ドーパントに合わせて、マオーが用意していたんだろう。
ならばそれを……使わせてもらう!
この瞬間だけは、痛みを振り切って戦うために!
力強く、アクセルメモリのスイッチを押し込む。
『アクセル!』
◆◆◆
アクセルメモリを起動すると、一捷はエンジンブレードを地面に刺し、メモリをアクセルドライバー中央のスロット『モノスロット』へと挿入。
エンジンがかかるような音声が流れ、一捷がドライバー右側のスロットル『パワースロットル』を手前にひねる。
『アクセル!』
「ハァァァァッ……!」
それにより、アクセルメモリのパワーが開放。エンジンを吹かす音声と共に一捷の全身へと送られる。
礼装のローブ部分がなくなり、全身が赤い強化皮膚『ライディングアーマー』へと変化。胸と両肩にアーマーが装着され、腕、腰を銀色のフレームが覆い、足には同じく銀色の装甲を纏う。
両足首には半分割されたタイヤ『ホイールシールド』、背中には巨大なタイヤ『ランドホイール』が装着され、最後に一捷の目が青くなる。
「マスター平沢一捷の姿が……変貌! Wではない、未知の姿です!」
「この姿は……!」
変身シークエンスをモニターしていたカルデアでは、新たな姿となった一捷の姿にロマニ達が驚愕していた。
スマートなWとは違い、全身を強固なアーマーやタイヤで覆った真紅の姿。
ロマニとダ・ヴィンチは思い出していた。
以前Wの説明を受けた際、軽くだが聞いたこと。
Wと共に戦う、もうひとりの仮面ライダーがいることを。
その名を――『仮面ライダーアクセル』。
超加速する真紅の戦士、アクセル!
(今回は貴方の台詞をお借りします。……照井竜さん)
「今だけは……振り切る! 痛みと貴方達を!」
決意と共に叫ぶ一捷。エンジンブレードを抜き放ち、サンソンとアイスエイジ・ドーパントへ相対する。
(……これは、予想外だな。こんな早期にアクセルの力が覚醒するとは。……ま、それはそれで良いかもしれない。後のことを考えればWとアクセル、どちらの力にも慣れて貰わないとね……)
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
-
オルガマリー
-
マシュ