へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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へっぽこマスター対赤のジャンヌ・ダルク 前編

 時は少しだけ遡り、ジャンヌ・オルタ達を追って城へ突入した一捷。

 

 マシュ、ジャンヌ、アルトリア、エミヤ、エリザベート、清姫共に道中ゾンビ、スケルトン、ワイバーンを蹴散らし、玉座へと到着する。

 

 そこでは戦力を補充しようとジャンヌ・オルタが召喚を行なっていた。現れたシャドウサーヴァントの群れをどうにか突破し、再びジャンヌ・オルタとジルと対峙する一捷達。

 

 決着を着けるべく、ジャンヌとジャンヌ・オルタを筆頭に戦い始める。

 

 

「……どうしても、貴女に聞いておかなければならないことがあります」

 

 

 その中で鍔迫り合いとなったジャンヌがジャンヌ・オルタへ問いかける。

 

 

「――貴女は、自分の家族を覚えていますか?」

 

「……なんですって?」

 

 

 なんてことのない質問。

 

 が、それに答えようとしてジャンヌ・オルタは答えられなかった。

 

 『記憶がない』からだ。

 

 動揺するジャンヌ・オルタの姿にジャンヌは確信する。彼女は自分ではない。英霊の座にも絶対に登録されていないサーヴァントなのだと。

 

 動きがぎこちなくなるジャンヌ・オルタへ、ジャンヌは何度も攻撃を入れる。そのまま勝負を一気に決めようと旗を振り上げ突っ込む。

 

 しかし旗が届く直前、真横から飛来した炎がジャンヌを弾き飛ばしてしまう。

 

 

「くうっ!?」

 

「ジャンヌさん! っ、アイツは!」

 

 

 ジャンヌが咄嗟に旗を盾にしたことでダメージを抑えている。

 

 炎が放たれた先にいたのは、赤いオーラバトラーであった。

 

 

「ジェリル・クチビかっ!」

 

「おぉ! 赤のジャンヌ! 丁度良く現れてくれました。それではあの者どもを滅ぼす為、力を貸しなさい」

 

「……確かにタイミングは良いねぇ」

 

 

 ジェリルの声が発せられ、一捷達は警戒を強める。もう少しでジャンヌ・オルタを倒せたが、ジェリルが加われば押し返されるかもしれない。

 

 相手の攻撃に備え武器を構える。ジェリルも背中の羽を羽ばたかせ、低空での高速飛行。一直線に突っ込んでいった。

 

 

「……がっ!?」

 

「え!?」「何!?」

 

「コイツが弱るのを、ずっと待ってたのさ」

 

 

 真横に一直線。

 

 左手を突き出し、進路上にいたジャンヌ・オルタの首を掴むジェリル。

 

 

「き、貴様! 一体何をして――「うるさいねぇっ!!」ぐわぁぁぁっ!?」

 

 

 叫ぶジルへオーラバルカンとキャノンを連射し吹っ飛ばす。

 

 正面に向き直ると全身の火器を放ちながらジェリルは真っ直ぐ飛ぶ。

 

 マシュ達へ砲撃を浴びせ、次の狙いは一捷だった。

 

 

 

「うぐぁ!?」「先輩!」「マスター!」

 

 

 右手で首根っこを掴まれる。マシュとエミヤの叫びを置き去りにして空中へ連れて行かれてしまう。

 

 二人を捕まえたジェリルは城内を飛び、壁をぶち破り、戦場へと飛び出した。空中で一捷だけを放り投げる。

 

 重力に従って一捷は落下していき、大地へと叩きつけられる。高所からの落下の衝撃、ダメージの蓄積で、アクセルの変身が解除されてしまった。

 

 

「ぐっ、いっ、てぇ……」

 

「平沢!? なんでここに!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

 直ぐ様アマデウスとゲオルギウスが駆け寄る。アクセルの変身により致命傷にはなってないが、激突の衝撃で上手く動けずにいた。

 

 二人にどうにか起こしてもらう一捷。彼を庇うようにジークフリートがバルムンクを構えて前に立ち、アマデウスとゲオルギウスはカルデアとオルガマリー達に連絡を入れる。

 

 

「……どこかで見た顔かと思えば。アンタ、あの時の騎士サマじゃあないか」

 

「赤のジャンヌ・ダルク……彼女をどうする気だ」

 

 

 フランスへの攻撃を繰り返していたジェリル。その目的はフランス滅亡を目指すジャンヌ・オルタ達と合っており、曲がりなりに仲間の筈。そのジャンヌ・オルタを締め上げているのは何故なのか、ジークフリート達には疑問だった。

 

 

「私はこいつらの仲間になった憶えはないんだよ、ただ戦うのに都合が良かったから従っていただけ。私の目的は……ハナっからコイツさ」

 

「がぁぁ……き、さ、ま」

 

 

 言い終えたジェリルはジャンヌ・オルタの首を更に強く絞め上げる。

 

 そして空いた右手を退き、

 

 

「はぁっ!!」

 

「がっ……」

 

「「「「なっ!!??」」」」

 

 

 そのままジャンヌ・オルタの胸をぶち抜いて、何かを引きずり出す。人間であれば、そこにあるのは心臓のはず。が、ジャンヌ・オルタから抜かれたそれは臓器ではなく……虹色の結晶体であった。

 

 

『あれは、まさか聖杯か!』

 

「どういうことだ、なんで竜の魔女に聖杯が……?」

 

「種明かしは簡単さ」

 

 

 胸から血を流すジャンヌ・オルタを用済みとばかりに投げ捨て、ジェリルは言い放った。

 

 

「この女が『本来なら存在しない、造られた存在』だからだよ」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「竜の魔女を生み出したのは……貴方ですね? ジル……」

 

「ぐ……」

 

 

 城の玉座。アルトリア達にジェリルを追わせ、一人残ったジャンヌはジルへと問いかけ、彼はそれにゆっくりと頷く。

 

 このフランスで最初に召喚されたのがキャスターのジル・ド・レェだった。

 

 彼は聖杯を手に入れ、真っ先にジャンヌの蘇生を願った。が、その願いは聖杯でも叶えられなかった。

 

 諦めきれなかったジルは、ならば自分の望むジャンヌを、『復讐を望み闇に堕ちたもしものジャンヌ・ダルク』を願い、聖杯で作り上げた。

 

 そうして生み出されたifの存在、ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ。ジルの望んだ聖女。竜の魔女にして、聖杯そのものなのだ。

 

 だからジャンヌ・オルタには記憶がなかった。生み出されたばかりの存在だから。

 

 ジェリルがジャンヌ・オルタを攫ったのは、聖杯を狙ってのことだろうとジルは推測する。

 

 

「ジル。もし、私を蘇らせることができたとしても、私は“竜の魔女”になど、決してなりませんでしたよ」

 

「ジャンヌ……」

 

 

 裏切られ、蔑まれ、無念の最後を迎えたかもしれない。

 

 しかしジャンヌは祖国のフランスを恨んだり、憎むことはしなかった。

 

 それは他ならぬ、ジル達が居たからだとジャンヌは告げた。

 

 

「……お優しい。あまりにお優しい言葉です」

 

 

 聞いたジルはそう返し、「……しかし」と比定した。

 

 

「しかしその優しさ故に一つ忘れておりますぞ……。例え貴女が祖国を憎まずとも――私はこの国を憎んだのです」

 

「ジル……」

 

「そちらのマスターも仰っていたでしょう……憎しみを抱くのは必然だと」

 

 

 ジャンヌが赦したとして、ジルは赦さない。

 

 ジャンヌを裏切った全てを滅ぼすと誓った。

 

 そうして、竜の魔女が生み出されたのだ。

 

 全てを殺し尽くす、ジルの願望を叶えて。

 

 

「……そう、ですね。確かにそれは道理です」

 

 

 ジャンヌはそれを聞いて否定しなかった。

 

 ただ受け止め、その上で戦うと力強く返す。

 

 

「それでも私は貴方を止めます。竜の魔女も。そして赤のジャンヌ・ダルクも」

 

 

 踵を返すジャンヌ。その背中へジルは問いかける。

 

 

「……あの余所者と共に戦うというのですか」

 

「その通りです」

 

「何が分かると言うのですか、あの者に! ただ知識だけで我らのことを知った気になっている男などに!」

 

「……私はまだ、平沢殿……平沢一捷という人間がどんなものかは分かりきっていません。でも……」

 

 

 かつて自分を支えてくれた男へ、ジャンヌは振り返る。

 

 

「彼は手にした力でフランスのために戦おうとしている。私はそれに力を貸したいと思った。それだけのことなのです」

 

「それだけ……それだけのことで!」

 

 

 反論しようとしたが、精神が混乱していてジルは上手く言葉にできなかった。

 

 会話を終わらせ、ジャンヌは駆け出す。

 

 フランスを守るため。もう一人の自分、異世界のジャンヌ

と決着をつける、恐らく最後になるだろう戦いへ向かって。

 

 

「ジャンヌ……ジャンヌ……! 私は、私は……」

 

 

 ジャンヌがいなくなり、願望のジャンヌを失い、異なるジャンヌは裏切った。

 

 自分の前から聖女が尽くいなくなった。

 

 一人だけになったジルの言葉は、誰もいなくなった城の中へ、消えていくしかなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……ぐ、あ」

 

 

 一捷らの直ぐ側へ投げ捨てられ、血溜まりの中でもがき苦しむジャンヌ・オルタ。

 

 血の混じった荒い呼吸をし、伸びた手はゆらゆらと空中を泳いでいる。

 

 

「竜の、魔女……」

 

「アイツはほっとけ、平沢。何もしなくても、あの傷なら消えていくだろうよ」

 

 

 そう言いアマデウスはジェリルの方へ向かう。

 

 意識を向けなければならないのはそちらだ。一捷も頭では分かっている。

 

 なのに。

 

 瀕死のジャンヌ・オルタの姿を見て感じていた。頭が痺れるような、変な感覚を。

 

 それは彼女とこのフランスで初めて会ったときに感じたものだ。

 

 

「……嫌、いや、よ……」

 

「っ……」

 

 

 血の跡を縦に残しながら、這いずってきたジャンヌ・オルタが、一捷の側まで来ていた。

 

 今の彼女に抵抗する力はなく、本当なら、敵であるジャンヌ・オルタは倒さなければならないのだろう。

 

 だけど一捷に、それはできなかった。しようとは思わなかった。

 

 殺戮を繰り返した竜の魔女。フランス軍兵士からすれば何故放っておくんだと怒りを買うに違いない、と思った。

 

 それでも一捷は……ただジャンヌ・オルタを見ていた。

 

 血だらけの右手が、一捷の足を掴む。

 

 

「こんなの……嫌よ……死ぬなんて、このまま、消えるなんて」

 

「……貴女がずっとやって来たことなんじゃあないのか」

 

「だって……そんなの、知らなかった……作られたなんて。恨みしかなかったから……そうするしか、なくて……」

 

 

 どの口が、だと思わなくもなかった。

 

 自分が殺しをしてきて、いざ自分がとなったら受け入れられない。そんなことは無いことだと。

 

 理屈ではそうなのだが、一捷はジャンヌ・オルタから視線を外せなかった。

 

 

「(……どうして、彼女を見ているんだろう。可哀想だから? 消えかけているから? なんで?)」 

 

「消えたく、ない……消えたくない……」

 

 

 両手で掴んでくるジャンヌ・オルタ。

 

 血だらけその手に一捷は……。

 

 そっと、自分の手を重ねた。

 

 

「…………何よ、今更……助ける気?」

 

「なんで、かな。どうしてやってるのか、僕も分からない」

 

 

 ジャンヌ・オルタの手は血まみれで、自分の手も赤くなる。体の端は光になり始め、消えかけている。

 

 

「というかあなた……この世界のこと知ってたんでしょう。なら、私のことだって分かったんじゃあ、ないの……?」

 

「……知っていたよ」

 

「だったら……私のことなんとかできたんじゃないの」

 

 

 

「事前に知っていたんでしょう」

 

 

 

「正体が分かっていたんでしょう」

 

 

 

「なら、やりようはあった筈よ」

 

 

 

 

 

 ジャンヌ・オルタの、怨嗟の言葉が込められた瞳が、一捷への突き刺さる。

 

 一捷は振り払うことも、言い返すのもせず、ただ彼女を見返し、聞いている。

 

 

 

 

 

 

「アンタ…………酷いわよ。全部分かってて、何もしないなんて」

 

 

 

 

 

 

「最低じゃないのよ……そんなの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後まで怨みをぶつけて、ジャンヌ・オルタは消えていった。

 

 残った一捷。血だらけの手を見る。耳には爆音や叫び声だけが響いてくる。

 

 

「(…………僕は、一体何をしたかったんだ? 何をするべきだった?)」

 

 

 内なる問いかけの答えは分からない。

 

 きっと、この先ずっと考え続けることにはなるのだとは、恐らくだが思った。

 

 血まみれの手を握りしめる。

 

 反転。

 

 ジークフリート達が戦うジェリルへと視線を向ける。

 

 

「これが聖杯かい。キラキラしちゃってまぁ」

 

 

 レプラカーンが握っている聖杯。それは手から放されると浮かび上がり、胸から入って取り込まれていく。

 

 するとどうしたことか。レプラカーンの全身に力が漲り出し、溢れたオーラが炎のように揺らめき出した。

 

 明らかに強化された状態だった。警戒するしかない様子。

 

 背中の砲口が光り、連装オーラバルカンが発射。空気を揺るがす爆発と轟音。

 

 熱風が巻き起こり、近くにいたフランス軍兵士が紙のように吹き飛ばされた。一捷達も顔を覆って屈み、吹き飛ばされぬよう耐える。

 

 

「はっはっはぁっ! 良い威力じゃあないか。これが聖杯の力ってやつかい!」

 

「なんて破壊力……! パワーアップしている!?」

 

 

 高笑いしながら遠距離武器を撃ちまくるジェリル。

 

 その威力は凄まじく、このままいけば本当にフランスを滅ぼしかねない。爆風に耐えつつ、一捷はカルデアへ叫んだ。

 

 

「ドクター! 僕が行きます、周囲の状況はそのときに通信を!」

 

『平沢君!?』

 

「オーラバトラーにはオーラバトラーでないと! あの威力をほっとくわけにもいかないでしょう!」

 

『分かった! 見た所敵は聖杯を取り込んで出力が上昇している、十分に警戒するんだ!』

 

「……それとエミヤさん達が合流したら、打ち合わせ通りに進めることを伝えてください!」

 

 

 了解、とロマニの返答。戦いになればまともに会話する余裕らない。話せるだけのことを話し、一捷は青緑の短剣を握る。

 

 トカマクダンバインをイメージしながらトリガーを引くと、剣と同色の光が一捷を包み込み、その体を緑のダンバインへと変えていった。

 

 精神を集中。オーラ力を漲らせることでオーラコンバーターの出力を上げ、開いた羽を羽ばたかせる。

 

 飛翔。

 

 フランス軍へ向けられた弾丸の前に飛び出し、両腕を組むガードの体勢でそれらを防ぎ切る。

 

 

「出てきたかい、ヒラサワイッカとかいうやつ」

 

「ジェリル・クチビ……!」

 

「生意気なお前とは決着を付けたかったからね」

 

 

 左腕のシールドよりオーラソードを引き抜くジェリル。一捷も背中からソードを抜刀。

 

 その際も一捷の手は震えていた。無意識だった。ジェリルと戦う、倒すことがどういうことなのか、分かっていたからなのかもしれない。

 

 緑と赤。現在この世界に存在する二機のオーラバトラーが剣を抜いて向かい合う。

 

 

「この力……アンタで思いっきり試させて貰うよっ!!」

 

「させるもんか。聖杯は、回収させてもらう!!」

 

 

 ほぼ同時に二機は飛び出し、オーラソードをぶつけ合った。

 

 空中で何度も切り合うダンバインとレプラカーン。

 

 互いに一歩も退かず、オーラソードを相手の機体へ振るい続ける。

 

 

「そらぁっ!」「くぅっ!」

 

 

 振り抜かれたソードを受け止めきれず、衝撃で後退させられる一捷。

 

 それを利用し距離をとる。

 

 

「逃さないよ!」

 

 

 背中のオーラバルカンとフレイボムの連射。引きつけ、どうにかかわす一捷。負けじとダンバインの左腕に装備されている射撃兵装『オーラショット』で対抗する。

 

 並列四連装の砲口から弾丸を発射。が、いとも簡単にジェリルは回避し、逆に砲撃を返しながら迫りくる。

 

 

「くそっ! ドクター、攻撃が来たら合図を!」

 

 

 迎撃しきれないことを悟り、一捷はジェリルに対し背を向けて飛び始めた。今発揮できる全力での高速飛行。一捷を狙い砲撃が飛んでくると、

 

 

『砲撃二発、来るよ! 続いて弾丸の連射、更にナパーム!』

 

 

 カルデアからの通信でタイミングを計り、身をひねる、加速もしくは減速、急ブレーキなどで回避行動。ギリギリでジェリルの攻撃をかわしていく。

 

 今の一捷の力では、かろうじて飛行しながら戦うのが精一杯だった。飛ぶこと、戦うことに全力で集中するしかなく、他の行動にまで回せる余裕がない。

 

 なので、オルレアンに来るまでに行ったダンバインの訓練。その中で出来ること出来ないことをはっきりさせ、ダンバインでの全力戦闘ではカルデアのサポートを受けて戦うことになっていた。

 

 敵の攻撃タイミングと内容を言ってもらうのがその一つ。

 

 それでなんとかジェリルに対抗出来てはいる。

 

 だが、あくまでなんとかだ。

 

 元より存在する、力の差は簡単に埋められない。

 

 

「(オーラの力、武器の手数、どの面でも負けている……! しかも、このパワーが厄介だ!)」

 

「この力凄いじゃあないか! 流石は音に聞こえし聖杯ってかぁぁぁぁ!!」

 

 

 加えてジェリルは聖杯を取り込んでいる。

 

 聖杯の魔力がオーラ力を強化しているようで、レプラカーンの破壊力はとてつもない。攻撃を防いでも、衝撃で体とボディが軋む。サーヴァントと戦う時かそれ以上のパワーを、一捷に叩きつけてくる。

 

 このままでは、勝てない。

 

 一人では。ジェリル・クチビに。

 

 

「動きがトロいねぇ! オーラバトラーを使いこなせていないんだよ!」

 

「そっちが聖杯を吸収しているのも、あるのでは!?」

 

 

 フレイボムの炎をオーラショットで撃ち落とす。広がる爆風。黒煙を裂いて振り上げられたレプラカーンのオーラソードが、ダンバインへ振り下ろされる。

 

 ソードとソードが激突し、鍔迫り合いへ。

 

 

「だとしてもそのパワーを私は制御している! 問題はない私に、勝てる道理はない!」

 

 

 股間部のオーラキャノンが火を噴く。ダンバインへと直撃し、吹っ飛ばす。

 

 

「そんなこと……!」

 

「昨日今日オーラバトラーに乗った聖戦士もどきと、バイストン・ウェルと地上で戦ってきた私とじゃあ、比べるべくもない。そいつを分かりな!」

 

「………………いや、あるんだろうな」

 

 

 一捷は下半身を後ろへ振りブレーキをかけなんとか持ち直す。

 

 そこを狙いオーラソードを繰り出すレプラカーン。

 

 

「さっさと落ちな! アンタを倒して、私は最高の気分で戦うのを続けさせて貰うんだから!」

 

「……だから、僕は」

 

『――来たぞ! 平沢君、離れろ!』

 

 

 

 

 

 

「――一人じゃあ、戦わないっ!!」

 

「……なにぃっ!?」

 

 

 

 

 

 ソードを振りかぶったジェリルと一捷の間、スレスレを通り抜けるようにして矢が突き抜けていった。

 

 思わず後退したレプラカーンに降り注ぐ、火の玉や音の衝撃波、光。

 

 一捷とジェリルが下へ視線をやる。二人の目が、攻撃の主を映した。

 

 

「サーヴァントども!?」

 

「皆さん……間に合ったのか!」

 

『待たせたね。オルガマリー所長達やジャンヌ・ダルク達、全員が揃ったよ!』

 

 

 城内に残っていたジャンヌを含め六人がオルガマリー達と合流。

 

 それまでに、ジークフリートら三人はフランス軍を可能な限り下がらせており、現在一捷とジェリルの周囲には、カルデアのメンバーしかいない状態。

 

 全員が揃ったことで、一捷は反撃に転じる。

 

 

「ハッ! 英雄だろうが、空も飛べない奴らが束になったってさぁ!」

 

 

 高速で飛び回るレプラカーンに対し、エミヤ、クー・フーリン、アマデウス、エリザベート、清姫、オルガマリーが各々の遠距離攻撃を放つ。ジェリルの移動先や回避先に魔術や炎を撃って移動を制限。当たれば御の字で妨害・援護を行い続ける。

 

 ジャンヌ、ゲオルギウス、マシュはレプラカーンの攻撃を防ぎ、アルトリアと百貌のハサンは基本防御に回りつつ、レプラカーンが高度を下げた瞬間を狙って斬りかかりにいく。

 

 

「数ですり潰そうってのかい!」

 

 

 ダメージはそれ程ないものの、地上からの攻撃を鬱陶しく感じ、ジェリルはまとめて吹き飛ばしてやろうと全砲門を発射。爆風で一捷とサーヴァント達を怯ませると、脹脛の装甲を開き中の武器を取り出した。

 

 手投げ爆弾グリネイド。

 

 左側のそれを投げつける。当たればオーラバトラーすら一撃で破壊する威力。

 

 

『……エミヤさん! 左のグリネイドが来ましたっ!』

 

『……よし。君は退け、マスター!』

 

 

 対し一捷は後退しながらオーラショットを連射。グリネイドを撃ち落とし、爆発が発生する。

 

 レプラカーンとダンバインの間に広がる黒煙。互いの視界が黒一色に覆いつくされた。

 

 流石のジェリルも相手を見失う。それにより一瞬気が緩む。

 

 その瞬間だった。

 

 煙を抜け、光る物体が吸い込まれるように、レプラカーンの左脹脛――グリネイドを格納していた部分へと突き刺さった。

 

 

「なにぃ!?」

 

 

 痛みを感じ叫び声をあげるジェリル。戦いで傷を負うのは当たり前。が、どうしても衝撃を受けずにはいられなかった。

 

 地上からの狙撃。しかも飛べない奴が、煙で見えない筈なのに、装甲が開いた箇所を正確に撃ってきた。

 

 

「まさか、こんな悪条件の中で奴は当てたっていうのかい!? あの赤い奴は!?」

 

 

 ジェリルの見た先にいる赤いサーヴァント――エミヤは次の矢を生み出し弓に番えていた。極めて冷静に。二の矢の鏃が光るのを見て、ジェリルはたまらず上昇。狙撃範囲の外へ逃げる。

 

 

『レプラカーン、左脹脛に損傷確認! 効いてるよ!』

 

「よし……予想通りか!」

 

 

 エミヤの攻撃が効いたのを見て、少しだけ勝ちの目が出てきたと喜びの声を上げる一捷。

 

 これは戦闘前から考えていた内容だった。

 

 サーヴァントの攻撃は、他世界の存在に通じるのかどうかという。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「ライダー、ゲオルギウスと申します。よろしくお願いします、平沢殿」

 

「こちらこそよろしくお願いします、ゲオルギウスさん」

 

 

 時間はオルレアンへ進撃するより前。ゲオルギウスと合流した頃。

 

 挨拶を交わすと、一捷はダンバインを展開。空中へ飛び、エミヤ・ジークフリート・ゲオルギウスと戦い始めた。

 

 目的は二つ。

 

 ダンバインの訓練とサーヴァントの攻撃やスキルがどの程度まで通じるのか。

 

 オーラバトラーに対して、サーヴァントでも撃破するのことが可能なのか。どの程度まで魔術の効果が現れるのか。そう言った諸々の確認である。

 

 結論から言うと、攻撃やスキルは通る。

 

 ダンバインの装甲の一部を切り離し攻撃すれば、エミヤの矢は通り、ジークフリートの剣が切り裂く。

 

 ゲオルギウスの宝具にある付与を使えば、その特性が反映される。

 

 もちろんダンバインを壊すわけにもいかないので撃破までは確認できなかったが、ダメージや付与はきっちり発生するのは判明。

 

 ならば空を飛ぶ相手だろうとやりようはある。

 

 サーヴァントの攻撃を組み込み、一捷は訓練を思い出しながら、ダンバインをレプラカーンへと向かわせた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「でやぁぁぁっ!」

 

「くっ、コイツぅーーっ!」

 

 

 脹脛の損傷で一瞬動きが止まったレプラカーンに対し、上昇してスピードと落下を乗せての突撃をかける一捷。

 

 オーラソードを構えての突撃。ジェリルもソードで迎え撃とうと見上げた。

 

 その瞬間、丁度太陽と重なるように飛んできた一捷の姿が映り、太陽光がジェリルの視界に振り注いだ。

 

 

「くぅっっっ!? 小癪な手を、なぁっ!?」

 

 

 思わず目を逸らすジェリルだが、更に次の変化が目を覆い尽くした。

 

 真っ暗闇。

 

 眩しい光の次は、視界が黒い布に覆われたのだ。

 

 次いで、後ろから衝撃。

 

 

『ヒート! トリガー!』

 

「でぇぇぇぇいっ!!」

 

 

 ジェリルが視線を逸らした瞬間、一捷はダンバインを解除していたのだ。

 

 落下しながら魔術礼装からローブを外し、レプラカーンの背中へ組み付くとローブを頭部に巻き付ける。

 

 そしてヒートトリガーへ変身し、炎の弾丸と火炎放射を右オーラコンバーターへとぶちこむ。

 

 

「食らえよぉぉぉっ!!」

 

「このっ、貴様ぁ! クソっ固結びしてぇ!」

 

 

 なんとかローブを剥ぎ取ろうとするも、きつく結んだことで中々外れずにいる。機体を振り回して一捷を落とそうとするジェリルだが、それでも堪えながら引き金を引き続ける一捷。

 

 バルカンの砲口、コンバーターへ弾丸と火炎の連射。

 

 装甲で覆えないスラスターから何度も攻撃を受け、遂に右オーラコンバーターが爆発、レプラカーンの片羽根が千切れ飛んだ。

 

 

「ぬうぅぅぅぅっ!!」

 

「貴様よくもぉっ!」

 

 

 自分も爆風を浴びながらも、一捷はダンバインを再展開。地面にぶつかるギリギリで、再度空へ舞い上がる。

 

 対しジェリルはオーラバルカンでローブを破るも、片側のコンバーターがやられたことで機体の高度が下がり始めていた。

 

 

「今だぁっ、皆!!」

 

 

 叫んだ一捷は後退。体勢を直そうとしているジェリルに向けて、サーヴァント達の攻撃が降り注いだ。

 

 音の衝撃波✕2、火球の群れ、閃光がレプラカーンのボディを滅多打ちにし、矢が左連装オーラバルカンへ突き刺さる。

 

 ハサンの群れの打撃・ダガーがオーラシールドを割り、エクスカリバーが股間のキャノンを斬り飛ばし、シールドの打撃は頭部のバルカンを潰す。

 

 

「くそがぁ……!」

 

 

 毒づくシェリルにジャンヌが旗を叩きつけにいった。

 

 思わぬ反撃を食らい続け苛ついたのもあるが、相手がジャンヌ・ダルクだと気づくと、頭部装甲越しに彼女を強く睨みつける。

 

 

「貴様、ジャンヌ・ダルクだね! この時代にいた、本物の!」

 

「これ以上の暴挙は許しません、赤のジャンヌ!」

 

「偉そうに! たかが本物が、調子に乗るんじゃあないよ!」

 

 

 ジャンヌを迎撃するジェリルだが、ダメージを受け過ぎており動きが鈍い。右コンバーターを失い、左コンバーターも損傷で力が上がらず、繰り出したオーラソードはあっさりと旗に跳ね返されてしまう。

 

 光を纏わせた旗の連撃が、レプラカーンへ突き刺さる。

 

 全身が割れ、ソードが手から弾かれ、残る右のグリネイドは装甲ごともぎ取られ誘爆。残るワイヤーフックとフレイボムも飛び退かれ回避される。

 

 

「バカな……私が、こんな奴等に!? あんな、オーラバトラーの乗りたての奴に、負けるって言うのか……!!」

 

 

 隙をさらしたそこへ一捷のダンバインが突っ込んでいく。

 

 

「ジェリル・クチビ、覚悟おぉぉーーーっ!!」

 

「……ふざ、けるな」

 

 

 レプラカーンは大破。武器も力も残っておらず、聖杯もどう役立てていいのか分からない。

 

 九割九分勝負はついた。が、それでもジェリルは敵意をみなぎらせていた。

 

 いやむしろ、最初より強くなっていた。

 

 死んだと思ったらおかしな存在によって異世界に連れてこられ、暴れたはいいものの、そこでもまたやられて死ぬ。

 

 ふざけるな。やられてたまるものか。こんな奴等に。

 

 何も知らない英雄様に。本物のジャンヌ・ダルクに。未熟な聖戦士なんかに。

 

 自分はやられない。これから戦うのだから。力があるのだから。

 

 ジェリルの中で敵意、憎しみ、殺意といったマイナス感情が高まっていく。

 

 それらは混ざり、融合し。聖杯の魔力という更なる力を得て……ジェリルの体より、放たれる!

 

 

 

 

 

 

 

 

「――私を、舐めるなあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ジェリルの絶叫と共に放たれた『それ』は、一捷を弾き飛ばし、大気を揺るがした。

 

 

「ぐぁぁぁぁぁっ!?」

 

「先輩っ!!」

 

「くっ、何が起きた!? この光は!」

 

 

 膨大な光を発して、レプラカーンが膨らむ。大きくなる。巨大化する。

 

 サーヴァント達全員を覆い尽くすほどに、大きく、大きく!

 

 

「なんだよこりゃあ……!?」

 

「何かの魔術なの!?」

 

「いや、違うこれは……力そのもの!?」

 

「な、なんだあれはぁ!?」

 

「あ、赤のジャンヌ・ダルク!」

 

「バカな、これは一体……!」

 

「お、おおおぉ!? 赤のジャンヌ、一体何をしたのです貴方は!!」

 

 

 カルデアだけでなくフランス軍も、セイバーとキャスターのジルも混乱していた。

 

 彼らが見たもの……それは、オルレアンの城よりも『巨大化』したレプラカーン。

 

 空中でなんとか持ち直した一捷はそれを見て、皆と同じように呆然とし。

 

 その巨大化現象の名を、叫ぶしかなった。

 

 

「……嘘、だろ? まさか、あれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハイパー化』を起こしたって言うのか!?」

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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