「……これで良し、と。キャスター、周辺に敵影は?」
「今の所ねぇな。ルーンにも反応は無し。しばらくは安心していいだろう」
「そう。……マシュ、ロマニ。平沢の様子は?」
「特に変化はありません。呼吸は安定していますし、先輩の身体に外傷も見られません」
『バイタル、魔術回路も共に問題なし。今の所、至って健康体ですよ平沢君は』
家の周辺に簡易的な結界を張り終えたオルガマリーは、クー・フーリン、マシュ、ロマニからの報告をそれぞれ聞いて、分かったわと頷き返した。
この特異点で目を覚ました時、オルガマリーは一人で廃墟に放り出されていた。しかも運悪く、骸骨の敵スケルトンが側にいる場所に。
幸いなことに、すぐ近くに武装したマシュがいたので、襲いかかってきた敵は倒され事なきを得た。
更にその場ではキャスターのクー・フーリンとも遭遇。この地で何があったのかを聞き、カルデアの事情を説明すると協力を申し出てくれた。
本人曰く「説明できないがとてつもなく嫌な予感がする」とのこと。少しでも特異点についての戦力や情報を求めており、カルデアと利害が一致したのだ。
オルガマリーはクー・フーリンとマシュに守られながら、この冬木の何処かに居るマスター……48番目の適合者である一捷を探しに出る。
そしてカルデアとの通信が切れたポイントへ急ぎ赴いたい時……一捷が敵サーヴァントに目の前で殺され、同時に敵サーヴァントを倒す光景を目の当たりにした。
(今でも信じられないわ。あんな簡単に、サーヴァントを倒してしまうなんて)
その一捷は敵を倒した直後に気を失ってしまった。
ひとまずオルガマリー達は側の家屋を簡単に片付けると、他の敵に襲われぬよう家の周囲に結界を設置。居間にて一捷を寝かせ、目覚めるのを待っている。
一体、彼は何者なのだろうか。
初対面ではいきなり居眠りをかました失礼な奴。世界を救う任務には相応しくない、ただの人間。それがオルガマリーの、一捷に対する最初の評価。
だが蓋を開けてみれば、魔術において最上級の使い魔であるサーヴァントを安々と打ち倒してしまった。それを目撃した身として。カルデア所長として、彼の評価を見直せざるを得ない。
最初の失礼は演技で、実は実力を隠していたのではないかと。魔術の世界に身を置いているオルガマリーには珍しいことではない。
(とにかく話を聞かないと……。この剣のこともあるし)
そう言いオルガマリーは右手に持つ青緑の短剣に視線を落とした。
この剣は、一捷が振るっていたあの青緑の光剣が、気を失うと同時に変化した姿。回収して通信越しにロマニへ調べてもらったが……何一つ分からなかった。
構成物質、構造全てが不明。魔力らしき反応はあるが、内部に未知のエネルギーが満ち溢れている。
とどのつまり、詳しいことは分からない。ほとんど。
レフならば何か分かったかもしれない……と、オルガマリーが信頼する技師が頭に浮かんだ。
だがの技師ことレフ教授は、カルデアで起きた爆破工作に巻き込まれ行方不明。設備はボロボロで、スタッフや正規のマスター適合者達も多数が死亡または瀕死の状態。
マスター達に関しては、違反と分かっていながらも、凍結処理を指示したので一先ずはなんとかなっているが、こちらの現状は良いとは言えない。
(唯一のマスターはまだ目を覚まさないし……私にどうしろっていうのよ? これ以上……)
ちらりと一捷の方を、その左手へ視線をやるオルガマリー。
今の彼女は所長としての責任。世界を救わなければいけないという重圧。カルデアへの被害といった様々なものを抱え、押し潰されそうになっていた。
自分が所長に向いていない、スタッフ達になんと思われているか位は理解している。
この特異点解決にしても、オルガマリーは魔術の才能こそあってもあと一つの敵性がなく、関われない筈だった。何故か今はこうして特異点にいるのだが。
それなのに。
よりによって自分に失礼をかました奴が、未知なる力で華々しい活躍を挙げ、その手にはマスター証すら宿しているではないか。
もう一度一捷の左手に視線をやるオルガマリー。
そこには嫉妬があった。羨望があった。なぜ自分ではないのかという人間の感情が、込められていた。
「……う、うーん……」
それが通じたのか否か。
件の人物がゆっくりと目を覚ます。
色々言いたいことはあるが、まずは話を聞かなければならない。
そう心の中で呟いて、オルガマリーは目覚めたマスター――平沢一捷の元へ歩んでいくのだった。
◆◆◆
「うぅー、うぅ~ん……」
「目が覚めましたか? 先輩」
「……キリエライトさん? ――あ゛っ!?」
目を開けていくと紫の髪をしたマシュの顔。かわいい。
頭が少しずつ覚醒してきて……全身に痛みが駆け抜ける。
「いっだ!! あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛お゛ぉ゛〜〜!!??」
「先輩!? 大丈夫ですか!?」
大丈夫じゃないですキリエライトさん!
全身! 全身が痛い! 特に手足! 筋肉痛で痛くなることはあるけど、それとは比べ物にならないくらい痛い!
なにコレマジで、痛い痛い痛い!!!
……しばらくの間、痛みで悶絶。
「……そろそろ落ち着いたかしら? 平沢」
「はい……なんとか」
痛みが引くまで約15分(ドクターが測っていた)。
どうにかこうにか話せるまで回復した僕を、オルガマリー所長、マシュ、モニターのドクターが囲んでいる。
少し離れた場所には敵を警戒するキャスターのクー・フーリン。あれ、いつの間に合流したの? ゲームより早くない?
「彼はキャスターのサーヴァント、クー・フーリンよ。アイルランドの光の御子」
「この特異点で最初に遭遇したサーヴァントの方で、私と所長を助けてくださったんです」
「つー訳だ。よろしくな、マスターの坊主」
「これはどうもご丁寧に……平沢一捷ですよろしくお願いします」
『仕事の挨拶みたいになってるよ平沢君』
いや、つい癖で……。
なんて軽いノリはここだけ。特異点の中で僕らは初めて合流した、まずは現状確認が最優先。
この場の全員の情報を交換し合う。
カルデアは爆破工作でボロボロ。マシュはカルデアが用意していた英霊と融合し半英霊に。
この冬木で万能の願望機『聖杯』をかけての聖杯戦争が発生。だが途中からおかしくなり、今は全七騎の殆どがセイバーに倒され、その配下となった。
……そしてその内、ランサーとアサシンらしきサーヴァントを僕が倒した……そうだ。
うん、待とうか。
「いやおかしいの入ってますよ。最後。なんかおかしい」
「それは私達もそうよ。……けどね、実際に貴方がやったのよ。それは」
思わずタメ口でつっこんだ……そりゃそうでしょ!?
けどもオルガマリー所長の言葉に続くようにして見せられた映像……僕が光る剣を持ち、四騎のサーヴァントを倒していく場面に、固まってしまう。
「僕が……僕がやったんですか? これを? サーヴァントを、やっつけた……?」
「信じられねぇだろうが、事実だ。俺もこの目で見たんだからな」
「私もです。全く気が付きませんでした、先輩がこのような力を持たれていたなんて」
『戦力を心配していたけどこれなら安心だ。特異点の解決にも大きく役立ってくれるだろう』
いやちょ、なんか話変な風に進んでません?
僕の方は訳分からないままなんですが……。
だが話はトントン拍子で進んでいき、僕も戦うことに。
……その結果。
「……あっ? え」
「先輩っっっ!!!」
腹を槍でぶち抜かれ、矢を浴び、剣に切り裂かれる。
自分の血で真っ赤に染まる視界。
マシュの声が聞こえたのを最後に意識は暗闇の中へ落ちていった……。
マシュとドクターの性格が少し違うかな?
大きな力を見たら是非協力してほしい、という風になるかもしれないと思ったのですが、あまりにも違和感があれば
遠慮なくご意見を下さい。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
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オルガマリー
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マシュ