へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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31TH BLAZE へっぽこマスターの三つ目の力

「おはようございます、先輩」

 

「昨夜はよく眠れましたか、マスター?」

 

「おはようございます……。まーそれなりには」

 

 

 次なる特異点が発見され、そのレイシフト当日の朝。

 

 部屋を訪れたマシュ、ジャンヌ、マルタにそう返事をした一捷。既にレイシフト先で使う道具類を収めたポーチを装備し礼装のローブも纏っている。

 

 しかしあくびを噛み殺している様子で両の指は絆創膏と刺し傷だらけ。これから戦いに行くのにあまり万全とは言えない様子にマルタがチョップを落とした。

 

 

「いで」

 

「あなたねぇ、夜更かしでもしていたんでしょう。だからそんな眠そうでいて。ドクターや所長にあれだけ夜更かしするなって言われていたのに」

 

「……はい。ごめんなさい」

 

「まずは顔洗ってきなさい! そのだらしない顔をシャキッとする!」

 

「はいっ!」

 

 

 ピシャリと言い放つマルタに直立不動で答えた一捷は、一直線に洗面所へ駆け込んでいった。

 

 その姿に腰へ手を当てながらため息をつくマルタ。

 

 

「全くだらしないんだから。……何か?」

 

「いえ。……その、まるでお姉さんかお母さんみたいでしたね、マルタ」

 

「いや誰がお母さんよ!? んな訳ないでしょ」

 

 

 ただ見た目と感覚的に一捷が子供か弟のように見えているだけで、ついつい色々言ってしまうのだという。

 

 

「……ところでマスターって年いくつなの?」

 

「……そう言えば、私も聞いたことないです」

 

「お待たせしましたー」

 

 

 丁度そこに一捷が戻ってきた。体調、精神、魔術回路の状態も問題なし。顔も洗ってさっぱり。いつでもレイシフト可能な状態だった。

 

 四人は部屋を出て管制室へ向かう。その途中のこと。

 

 

「……あの先輩。昨晩眠っている際に、何かを見ませんでしたか? その、夢などを」

 

「「っ……」」

 

「夢? ……いや昨夜は見てないね、何回か起きるくらいだったから」

 

「そう、でしたか」

 

「……何か変なものでも見たの?」

 

「いえ、見ていないのならばいいんです」

 

「あらそう?」

 

 

 いきなりの質問にやや不審げな一捷。話題を変えようと、ジャンヌはさっきのことを思い出し聞いてみた。

 

 

「そ、それよりも! マスターはおいくつですか? まだ聞いたことがないと思って」

 

「おいくつ? ……あぁ、年のことですね」

 

「そうです、そうです……」

 

「僕は25ですが、何か」

 

「「「うそぉ」」」

 

「いや嘘じゃあないよ」

 

 

 ※FGOでいうとオルガマリー、マシュより上でロマニのやや下辺り

 

 

「……えぇぇぇっ!? 平沢君って25だったの!?」

 

「わ、私より……歳上」

 

「……坊主にしちゃあ中々おもしれえ冗談だな」

 

「……飛び級でもしたのはではないか?」

 

「きっちり25ですからね僕!? 仕事もしてましたし車の免許だって持ってましたから!? 童顔って言われるんですよたまに!」

 

「えぇ〜本当でござるかぁー?」

 

「そのツッコミ腹立つからすなーっ!!!!」

 

「……あ、嘘はついていない様です」

 

 

 ……一悶着あったが。

 

 いつまでも遊んでいる訳にいかないので、次なる特異点――一世紀ヨーロッパ、ローマへのレイシフト準備が進められていく。

 

 一捷のサーヴァントとしてマシュ、ジャンヌ、マルタ。

 

 オルガマリーのサーヴァントにクー・フーリン(術)、ジークフリート、ゲオルギウス。

 

 一捷は防御寄り、オルガマリーはバランス重視のメンバーを連れレイシフト開始。

 

 予定の座標は首都ローマ、の筈だったのだが。

 

 オルガマリーと六騎のサーヴァントが現れたのは丘陵地帯。何故か座標がズレてしまい、オルガマリーはカルデアと通信を繋げ理由を尋ねるが、その中で気づく。

 

 一捷の姿がない。

 

 

「皆様、あちらを。戦闘が行われています」

 

 

 ゲオルギウスが指した方角から複数の声と武器のぶつかる音が聞こえてくる。

 

 警戒しながら進んでいくと大部隊と少数の部隊が戦っていた。どちらも真紅と黄金基調の姿だが微妙に違う。

 

 その戦いの、ど真ん中に。

 

 

「ふんんんんんっ!!」

 

「ぐぉぉぉわぁぁっ!?」

 

 

 何故か、トカマクダンバインがいて。

 

 色黒の男性のドロップキックを叩き込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

「……えっ。あーーーーーっ!!??」

 

 

 レイシフトの光が収まったかと思えば、一捷の体は空中に投げ出されていた。

 

 絶叫しながら重力に従い落下していく。

 

 そのまま、真下にいた人間……否、サーヴァントへと激突してしまう。

 

 

「ぐへっ!」

 

「ぐふっ!」

 

「むむ!? 何奴!」

 

 

 背中と頭がぶつかりそのまま地面に転がる一捷。主に背中の痛みに蹲りそうになるが、振り上げられた腕が目に入った。

 

 

「せいィィィィ!!」

 

「あっぶな!?」

 

 

 咄嗟に転がって回避するも、地面は容易く砕かれ破片が盛り上がった。

 

 威力に恐怖しつつ、立ち上がった一捷は周りを見渡して状況を確認する。

 

 

(ここは、何処かの戦場か? 兵士がたくさんいる。前にいるのは……カリギュラか!?)

 

「うぅぅぅ……」

 

 

 こちらを睨みつける、濃い青色の短髪で色黒の男性。

 

 古代ローマ第三代皇帝カリギュラ。本名は『ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス』。

 

 当初は政務に精力的に取り組み民の支持を得たが、月の女神の寵愛と加護を受け狂気に落ちてしまった暴君。

 

 クラスはバーサーカー、荒々しい声を漏らすかつての皇帝は、どう見ても一捷を敵と見なしており逃がしてくれそうにない。

 

 

(じゃあ一瞬だけ見えたけど、後ろにいた赤い人は……)

 

「カリギュラ様!」

 

「伏兵が潜んでいたぞ、撃てーっ!」

 

 

 しかもカリギュラの後方より、一捷を敵と認識した兵士が矢を放ってくる。

 

 Wとアクセルの変身は間に合わない。まずはこの場から生き残るため、一捷は青緑の短剣を抜いた。

 

 トリガーを押し光に包まれる。

 

 トカマクダンバインを身に纏い、飛んできた矢を装甲で覆われた手で払いのけると、空中へ飛び上がる。

 

 

「ッ!?」「おぉ!? 虫になったのか!?」

 

 

 矢を回避しつつ、空中から改めて全体を確認。

 

 大部隊と少数の部隊に分かれていて、互いによく似た格好をしている。大部隊側はカリギュラが。少数部隊は赤いドレスで金髪の少女が率いており、この場は少数部隊の側につくことにした一捷は大部隊にオーラショットを向ける。

 

 狙いを定め、引き金に引っかけているワイヤーフックを引こうとして、

 

 

 

 

 ――覚えておきな……お前みたいに正義の味方ぶってる奴は、必ずロクな目に遭わないんだよ……!!

 

 

 

 

「ッ……!?」

 

 

 ジェリルの遺した言葉、燃えながら首を絞めてきたジェリルの姿、ジェリルに剣を突き立てたときの肉や骨を裂く感触。

 

 それらがフラッシュバックし、相手の兵士達の顔が映る。

 

 あそこにいるのは同じ人間。考えの違いで敵対しているだけの、血の通った人。

 

 自分と同じ、怪我を負うし死にもする『ヒト』。

 

 

「……うぅっ!」

 

 

 そのまま引き金を引けなくなった一捷は、狙いを少しずらしてショットを発射。放たれた弾丸は兵士の側の地面に着弾。爆風と衝撃波で吹き飛ばす。

 

 降下した一捷はオーラソードを抜くも、斬るのではなく剣の腹で殴りつけるように振るう。それも極力、鎧や盾の上からで、兵士同士をぶつけなんとか戦闘不能を狙い続ける。

 

 

「ふんっっ!!」

 

「うおっと!?」

 

 

 赤い魔力光が迸り、ギリギリでかわす一捷。味方側の損害をこれ以上出させまいと、カリギュラが襲いかかってきたのだ。

 

 このとき、少しだけ一捷に油断があった。

 

 いくらサーヴァントといえど空中にはそう簡単に攻撃してこれない。相手はバーサーカーのカリギュラで遠距離手段はほとんど持ってない筈だからと。

 

 ゲームのモーションやスキルからそう考えてしまっていた。

 

 ……魔術や聖杯、人智を超えた英霊が存在するこの世界で、それが命取りになるというのに。

 

 

「うぅぅぅぅん…………でぇぇぇいっ!!!」

 

「なぁっ!!?」

 

 

 魔力を溜め、全力で大地を踏みしめるカリギュラ。

 

 その衝撃で地面が割れ、大小様々な岩の欠片が舞う。

 

 そこから放たれる渾身のアッパー。振り抜く動きに合わせ、魔力が砲撃のように空へ走った。

 

 反射的に回避を選ぶ一捷、だがその先には岩の欠片が飛んできて、全身に破片や礫を浴びてしまった。

 

 アッパーによる砲撃は本命。それを回避されると予想し、カリギュラは砕いた岩を同時に放ったのだ。

 

 結果、動きが鈍り高度が下がってしまう一捷に、カリギュラは駆け出し体を横回転。渾身のドロップキックをぶちかます。

 

 

「ふんんんんんっ!!」

 

「ぐぉぉぉわぁぁっ!?」

 

「先輩っ!!」

 

「平沢の奴もう巻き込まれてるじゃない! ロマニ、状況報告を!」

 

『た、只今!』

 

 

 ここでカルデアメンバーが到着し、現状に驚きつつも戦いに加わる。

 

 こちらも戦力差から少数側について相手兵士と戦っていく。真っ先にオルガマリーとマシュ、マルタは一捷の救助へ向かおうとしたが、兵士達に遮られ近づけない。

 

 その一捷は派手に吹き飛ばされ、地面に何度もぶつかった後、うつ伏せでカリギュラに踏みつけられていた。

 

 相手は空を飛ぶ。脅威を感じたカリギュラは目の前にあるダンバインの羽根を掴むと、捻り、そのまま……力任せに引き千切った。

 

 

「アグリッピナァァァッッッ!!!」

 

「がっ……ぐあぁぁぁぁっ……!!!」

 

 

 体が千切られるような激痛に一捷はたまらず絶叫。オイルと一緒に赤い血が流れ出ていく。

 

 カリギュラはダンバインを踏みつけたまま両手に魔力を纏わせ、Xを描くように振り抜いて背中を切り裂くと、最後に全身の魔力を解放。魔力の柱を立ち昇らせ、右オーラコンバーターを吹き飛ばした。

 

 

「こ、の、やろぉぉぉっ!!」

 

「ぬうっ!」

 

 

 全身に伝わる激痛に、たまらず一捷は残るコンバーターを全力で噴射しカリギュラの拘束から逃れる。

 

 その際、体を翻してオーラソードを振るった。カリギュラも飛び退いたので直撃はしなかったが、左肩に当たり、金色の鎧を砕いて肩の肉を僅かに削いだ。

 

 

「カリギュラ様っ!」

 

「ぐ、うぅっ……」

 

 

 ダンバインの装甲が光になって消えていく。

 

 大ダメージを受けたことで機体の展開が不可能となり強制解除されたのだ。背中から出血している一捷がその場に残る。

 

 左肩を押さえながら退くカリギュラを見て、兵士の一人が一捷を睨みつけた。

 

 

「よくもカリギュラ様に傷を……!」

 

 

 仕える皇帝を傷つけられた怒りを露わに、その男性兵士は懐から何かを取り出す。

 

 直方体の赤いケースのようなもの。

 

 開くと薄い物体を取り出し、右腕に『貼り付けた』。

 

 

「おいやめないか! それは持ち帰れと言われていただろう!」

 

「ですが! こいつは皇帝陛下を傷つけた不届き者、許すことできはしません!」

 

「……っ、あれは……!」

 

 

 男性兵士の左腕に貼ったものを見て、一捷は目を見開いた。

 

 一捷が知っている力。ガイアメモリでも、オーラバトラーでもない別の力。

 

 炎の形をしたシールのようなもの。表面の模様をなぞり、兵士が叫ぶ。

 

 

 

 

 

「――ミスティッカーブレイズ!」

 

「今度は……『ミスティッカー』か!?」

 

 

 

 

 

 

 兵士の腕に炎が纏わされ、一捷に火の玉が放たれた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 ミスティッカー。

 

 2008年連載の漫画『ブレイザードライブ』に登場するシール型のエネルギーデバイス。

 

 貼ってなぞることで火や氷、電気などの力を引き出すそれは、地球環境を傷つけないエコエネルギーとして作品内の世界で注目されていた。

 

 通常は物へ貼って使うミスティッカーだが、稀にミスティッカーを身体に貼ってその力を引き出せる人間が存在する。

 

 その名を『ブレイザー』と呼ぶ。

 

 

「あっつ……!?」

 

 

 飛来する火の玉に対し、咄嗟に横へ転がることで事無きを得た一捷。熱に顔を顰め警戒しながらも通信デバイスを起動させる。

 

 

「こちら平沢。カルデア、聞こえますか」

 

『平沢君、無事か!?』

 

「無傷ではないです……」

 

 

 ロマニへ座標のズレ、戦闘に巻き込まれダンバインが損傷、相手サーヴァントの特徴、今の自分の状況と要点を伝えて、最後に相手兵士が使う力について伝える。

 

 

『また違う種類の力が?』

 

「今度はミスティッカー、シール型のエネルギー装置、ですっ! しかも相手の方、人間がミスティッカーの力を使う『ブレイザー』の力を! ……持ってます!」

 

 

 腕に貼った火属性のミスティッカーによる火球、火炎放射を避けつつ、この場を切り抜ける術を探す一捷。

 

 カリギュラのキックによって、一捷の位置は兵士達の集団から離れた場所にあった。敵兵士の数が多いこと、カリギュラが暴れ回っていることでマシュ達サーヴァントやオルガマリーがこちらへ近づけずにいる。

 

 加えて、背中への負傷と出血が大きな問題だった。

 

 動くたびに激痛が走り、多くの血が飛び散る。体はふらつき、意識が飛びそうになってきた。

 

 不味い。このままでは戦うどころか、本当にやられてしまう。

 

 かといって目の前の兵士は逃がしてくれそうにない。

 

 一捷はこんな状況で『あれ』を使うのは危険だと考えつつも、それでもそうするしかないと実行した。

 

 青緑の短剣を抜き構える。

 

 ミスティッカーを確認した瞬間、剣が光って反応していた。

 

 ならばタイミングは今だと、切っ先を兵士に向けた。

 

 

 

 

 

「魔剣・起動……対象確認っ……!」

 

 

 

 

「対応術式・展開……運命、消失っ! ――『放たれた矢は戻らない(グレイス・リリース・8)』!」

 

 

 

 

 

 

 青緑に輝く短剣と令呪。

 

 同色の光が一捷の体に入ると、右手に三枚のミスティッカーが出現する。

 

 形も色も模様もバラバラの三枚。

 

 一枚目は、口から両刃の剣を生やした骸骨のミスティッカー。

 

 二枚目は、雷の模様が描かれたミスティッカー。

 

 そして三枚目は、紫色の毛玉をしめ縄が囲んだ楕円形のミスティッカー。

 

 その内、剣と雷のものは短剣と一緒に仕舞い、楕円形のミスティッカーを左前腕に貼って楕円の形になぞる。

 

 

「……ミスティッカー、ドライブ!」

 

 

 そう言うと、ミスティッカーより紫の糸が出てきて左前腕に巻きつき、形を作っていく。

 

 それは薄い金色をした籠手のようなものだ。

 

 指が細長くて鋭い形。加えて指や腕の至る所に紫の糸がコイルのように巻かれている。

 

 

「なにっ!? お前もミスティッカーを!」

 

「食らえっ……!」

 

 

 驚く相手兵士へ、一捷は貼ったミスティッカー……『玉繭(たままゆ)』の力を解放。

 

 何本もの糸を籠手から伸ばし、兵士へ向けて放つのだった。

 

 

 




はい、新たな力としてミスティッカーの登場です。

登場作品はブレイザードライブ。結構前の作品ですが、読者の方々はご存知ですか?

このミスティッカーがアンケートで答えたマシュの力になります。

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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