「冗談じゃあないよ! さっきの今で何を言っているんだっ、アンタらさはぁ!!」
「引き受けたのはこっちだからそりゃあ偉そうなこと言えないよ。……でもだ! 訳分からないまま話進めて、力使ったらこれだよ!」
「死にかけてまで、やってられるかこんなこと! そんなに世界救済がやりたいなら、アンタらがやれよやぁ!!!!」
「……まぁな。そのアレだ。そっちの気持ちは分かるぞ? 戦力が少ないから、少しでも力を貸して貰う必要があるのは」
クー・フーリンが言う先にはオルガマリー、マシュ、ロマニの三人。
「けどよ。坊主の言うことは最もだ。自分でも分からねえ力使わされて、そんで死にかけたとなりゃあ、もう使いたくない、戦いたくないと思ったっておかしかねぇよ。それは、分かるだろ?」
「「『…………はい』」」
渋い表情で指摘していくクー・フーリンに、俯いて答えるオルガマリー達三人。その表情は暗く良いとは言えない。
何があったかと言えば、あの後戦ってもらうことになった一捷があっさり返り討ちにされて大怪我をし、そんなことをさせたカルデア陣にブチ切れてしまったのだ。
サーヴァントを瞬殺した光の剣。あれが使えれば大きな戦力になる……と思ったのだが。何故か剣は使えず、スケルトンのエネミーに青緑の短剣は跳ね返され、全く効かなかった。
治癒のスクロールや魔術、礼装によって傷が抑えられたことで一命は取り留めたが、顔を真っ赤にしカルデアを非難しまくる一捷。
その間にクー・フーリンが入り、というのが今の状況。
一捷は怒りから戦うの拒絶してしまい、オルガマリー達から少し離れた位置で待機している。
彼を一瞥してから、クー・フーリンはカルデアへ提案を持ちかけた。
「……ほんの少しの時間だが。坊主を借りるわ。アイツを連れて、この先の偵察に行ってくるわ。他のサーヴァントもまだ彷徨いてるだろうからな」
『ですが、今の状態で少ない戦力を割くのは……』
「今だから、だよ。あんな状態の坊主が協力してくれるか? 違うだろ? この場は坊主とおめぇら、無理矢理にでも離れとかなきゃ、良い風にはならん」
無論、互いに通信手段を持ち、何かあれば直ぐに駆けつける状態で、だ。
現状、マスターが一捷しかいないカルデアは提案を受け入れるしかなく、一捷もそれを了承。
まだまだ最初の特異点にて、亀裂が入ってしまった両者。
それをどうにかする為、一旦別れるのであった。
◆◆◆
「いやー言っちまったなぁ坊主! めちゃくちゃ落ち込んでだぜぇ、盾の嬢ちゃん達」
「直前までシリアス言ってたのになんでそんな風に言えるんですか……」
だからこそだろ、と一捷のバシバシ背中を叩くクー・フーリン。パラメータがEだろうとサーヴァントの筋力で。
「いや痛いですからねそれぇ!? 骨、骨が!!」
「あ、悪い」
(全く何考えてんだこの人!? あんなことになったばかりなのに……)
周囲を警戒しながら廃墟を進んでいく一捷にクー・フーリン。
時折襲ってくるスケルトンを、クー・フーリンは杖やルーン魔術で難なく倒していく。
戦いに縁のない一捷の素人目でも分かる。クー・フーリンの力は、洗練され、制御されたもの。
多くの戦い、冒険を潜り抜け、努力という言葉では片付けられない程の修練を積み、強靭な心と精神力でコントロールされた、『力』。
ただ強いだけの力を振り回すのとは違う、正真正銘本物の強さであった。
間近で見る強さに、一捷は自分が酷く惨めに思えてきた。
俯き考え込む一捷へ最後のスケルトンを倒し終えたクー・フーリンが話しかける。
「どうだい。少しは頭が冷えてきたか?」
「……さっきのことなら、分かっていますよ。自分が何を言ったかくらい」
「確かにカルデアの奴らも、話を進め過ぎたわな。……それにしたって坊主も自分を棚上げして、好き勝手言ってたな」
「う……」
クー・フーリンからの指摘は、思いの外一捷の心に突き刺さった。
分かっていたつもりだったが、感情を抑えきれなかったのだ、どうしても。
「オレもあの青緑の剣を使うのに何も言わなかったが。あの場に流されてたよな、お前。そんで使ったはいいが効かなくて、ボコボコにされて、怒った」
改めて聞いて、一捷はとにかく自分のことを恥じた。
そう、青緑の光剣が戦力になると思われ戦いに組み込まれた。もし戦うのを拒否するのであれば、その時点で自分の意見を言わなければならなかった。実際にできるかは置いておいてだ。
一捷はそのことへ、特に何も言わず流されてしまった。
ただ場の空気に流されるまま戦いに出て、負傷。さっきのブチ切れ事件。
端から聞けば、何も言わなかった奴が後から文句を言って怒った。
バカな話である。
実際に行えば信頼を失いかねない、酷い行為。
「あぁ〜……やっちまったぁ……」
「あぁ。やっちまったな坊主」
一捷はなんてことをしたんだと本気で後悔した。
蹲り頭を抑え更に考え込む。
「あんなこと言ったら嫌われるよなぁ……」
「だろうな」
「何も言わずに文句言うとかダメなやつじゃないかぁ……」
「ダメだな」
「普通に最低じゃないですかぁ……こんなの人として……」
「酷いわな、確かに」
「……こん畜生ォォォォォォォ〜〜〜〜ッ!!!」
終いに後悔からの大絶叫。
本気の本気で後悔していた。
FGO世界に来て、冬木で追い回され、死にかけて。
立て続けに色々起こっても、それを八つ当たりしていい筈がないのに、と。
自分だけが辛いと思い込んでいたか?
人任せにしていなかったか?
訳の分からない力を手に入れて浮かれていなかっただろうか?
疑念がぐるぐる渦巻いて、完全にネガティブな状態へ一捷は入ってしまった。
うわぁーと後悔しまくっている一捷に、周囲を警戒しながら側で聞いていたクー・フーリンが声をかける。
「そこまで後悔してるんなら自分が悪かったことは分かるよな? 坊主」
「……はい。自分のことを棚に上げて、キリエライトさん達に酷いことを言いました……」
「ならどうすれば良い?」
……簡単なことである。
今の自分にできることは……反省し、謝罪することだ。
ゆっくり立ち上がり一捷。
未だに後悔の感情はあるものの。マシュ達と離れた時よりその表情は良くなっていた。
「謝ります、僕。キリエライトさん達に。……戦うのは怖いですけど」
「よし。ならそろそろ戻るしようや。どうやら残りのサーヴァントは、こっちには居なかったみてぇだ」
「残りのサーヴァント、というと……」
キャスターのクー・フーリンと、倒されたランサーとアサシン。そしてクー・フーリン曰く森の奥にある城付近から動かないバーサーカーは除外される。
残りは三騎。
ライダー、アーチャー、そしてセイバー。
もしもこの世界がゲーム通りなら。FGOプレイヤーの一捷には敵サーヴァントの正体が分かるが、アニメや漫画のパターンも考えられる。
アーチャーとセイバーは恐らく固定だとしても、ライダーが誰かは絞り込めない。
(……いや。もしかしたら、ゲーム知識なんて役に立たないのかもな……)
まずはマシュ達に謝らなければ。
例えそれで嫌われたとしても、それは仕方のないこと。
そう決めてクー・フーリンと共に、元の場所へ戻った時。
「坊主、下がれっ!」
いきなりクー・フーリンに突き飛ばされ、直後、細長い物体が飛来する。
杖で弾き返されたそれは、鎖に繋がれた短剣で、主の元へ戻っていく。
「……まだ、生き残りが、いたのですね」
「あ……う……」
「ぐっ……うぅ」
短剣を構え直す敵――黒い靄を纏ったサーヴァントが、前方にいる。
その足下で、身体の所々を負傷したマシュとオルガマリーが倒れ伏していた。
一捷の行動と言葉は話の中で指摘されたように、信頼を失いかねない行為です。
なあなあのまま一捷は戦い、怪我をしました。
それで文句の言うのは、自分も「それは違うだろ」と思いました。
こんな風にやらかしたり、感情を吐き出しまくる一捷がどうなるのか、お楽しみに。
絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?
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オルガマリー
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マシュ