へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

5 / 26
へっぽこマスターの力 後編

「おめぇ……ライダーか!」

 

「キャスター、ですか。そちらは」

 

 

 目の前の黒いサーヴァントは杭のような短剣を手にクー・フーリンへと近づいてくる。

 

 そのクー・フーリンは僕に視線をやると、真横へ跳びルーンの魔術を次々に放つ。敵のサーヴァント、ライダーはそれに釣られ、魔術をかわしながらクー・フーリンを追いかける。

 

 クー・フーリンが一瞥したのをここで理解した。戦うことでライダーと一緒に遠ざかり、戦いに巻き込まれないようにした。そうすれば僕らだけが残る形になり、傷ついているマシュたちを助けられる。

 

 急ぎ所長、マシュの元へ駆け寄り、通信装置を起動。

 

 

「ドクター、ドクター! 聞こえてますよね? 平沢です!」

 

『ひ、平沢君……』

 

「何があったか教えて下さい! 早く! それと、さっきのスクロール? 巻き物の治すやつ! あれ何処に仕舞ってますか!?」

 

『それなら、マシュの盾の裏に』

 

 

 盾は側に落ちていた。ひっくり返し裏にして……いや重いなコレ!? 鉄骨みたいな重さだわ!

 

 一見何もない盾だが魔術で格納スペースがあるそうで、開き方を教わり治癒のスクロールを二つ取り出す。

 

 使い方も簡単で、魔力を通せば良いとのこと。

 

 なら早速、とスクロールを解き、体に力を入れて、

 

 

 

『待った! いきなりそんなことがしたら……』

 

「え?」

 

 

 

 ずぐり、と体の中で何かが開かれる感覚。

 

 裂けて、得体の知れない何かが、流れていく。

 

 全身に。

 

 たまらず、倒れてしまう……っ!

 

 

 

「~~~~〜〜ッッ!!??」

 

「せ、先輩……!」

 

「無茶、しないでよ……! 貴方、魔術なんか禄に使ってないでしょう!?」

 

『体内の魔術回路に、初めて魔力を通したんだ。回路が開き切ってないんだよ! 死ぬ気か!?』

 

「そ……それは、今言っちゃあダメなやつでしょう……」

 

 

 息を荒くしながら、全身から汗を出しながら、なんとか起き上がる……。

 

 うわ、口ん中にまで血出てきた。さっき治してもらった傷も、開いてしまったかもしれない。

 

 とりあえず、今度は失敗しないように……魔力を流してみる。所長らに言われた通り初めてだから、上手いも下手くそもない。スクロールへ翳した両手に細かい裂傷がいくつもできていく。

 

 痛い。すげー痛い。

 

 それでもどうにか魔力は送られたようで、スクロールは浮き上がるとマシュと所長に巻きつき治療が完了した。

 

 

 

「こいつでなんとか……」

 

「なってないでしょう!? バカなの貴方は!?」

 

 

 二人の治療をしたは良いが僕はズタボロだ。ふらついてしまい、所長・マシュに支えられまた治療を受けることになってしまう。

 

 無茶をしたことを叱られながら、ドクターが何があったのか、説明してくれた。

 

 僕らと別れた後、二人はこの場で待機していた。そこにいきなり遠距離から攻撃が飛来。マシュが直ぐ様防いだが、その隙に接近してきたライダーの強襲を受け、やられてしまった……とのことだ。

 

 遠距離攻撃……は恐らく、あのアーチャーだろう。周りに姿らしきものが見えないことから、とんでもない遠距離から狙撃を行っているとみる。

 

 もしかしたら、クー・フーリンとライダーの戦いにも加わっているかもしれない。

 

 治療も終わったので、直ぐにクー・フーリンと合流しないと、と立ち上がる。

 

 

『……平沢君、その。さっきは……』

 

「申し訳ありませんでした」

 

「えっ?」

 

 

 体を90度にして頭を下げる。

 

 いきなりのことだったから、マシュから困惑の声が聞こえた。

 

 

「オルガマリー所長。キリエライトさん。ドクター。さっきはあんな八つ当たりをしてしまい、ごめんなさい。本当に、申し訳なかった」

 

『待ってよ平沢君! それはボクらの台詞だ。何も言わずに、巻き込んでしまったから……』

 

「……申し訳ありませんでした、先輩」

 

「……平沢、ごめんなさい」

 

 

 全員が謝罪すると、向こうから頭を上げるよう言われたので向き直り、しっかりと相手の目を見る。

 

 

『……本当なら。キミは予備のマスター候補だったんだ。正規のマスターや、優秀者だけのチームが既に用意されていた。マシュもそうだったんだ。……でも、キミを除いて今はマスターが一人もいない』

 

「だから僕を頼るしかない。力を持っているなら尚更。それは確かにそうです」

 

「ですが! それで先輩はお怪我を……」

 

「それに関しては僕だって何も言わなかったでしょう。半分は僕のせいでもある」

 

「……そう言うってことは、平沢。貴方、戦ってくれるの……?」

 

 

 オルガマリー所長に問われ、直ぐに返事はできなかった。

 

 戦うこと。それは命のやり取りだ。血塗れの戦場で、生き抜く為に。

 

 しかもこの先には、これよりも厳しい戦いがごまんと待ち構えている。目を背け逃げ出したくなるような、辛くて苦しい戦いが。

 

 

「……正直に言いますわ。僕には今、戦う覚悟なんてない。状況は理解しきれてないし、何が起こってるかもさっぱりだ」

 

 

 ……だけど。そんな中で言えることだってある。

 

 

「戦いは怖いですよ。痛いのも怖いのも勘弁だ。……それでも、ここで何もしないのは、所長やキリエライトさん、ドクターやクー・フーリンさんが死ぬことになる。それは、嫌なんですよ。僕は」

 

 

 言いたいことたくさんある。でも、目の前の人達には死んでほしくない。今はそれだけ。

 

 

「言いたいことはお互いあると思います。ただ、一度それは考えないようにしましょう。やること終わってからです。……今はどうか、所長達の力を貸して下さい。この特異点を、生き抜く為に」

 

「先輩……!」

 

 

 再度頭を下げての懇願。

 

 どれくらい下げていたかは正確には分からない。

 

 ただ、所長から頭を上げるよう言われたので上げると、大きく息を吐くオルガマリー所長。

 

 

「分かったわ……。どちらにせよ、今は貴方を頼るしかないのよ。私達は。では平沢一捷、貴方にマスターとしての協力してもらいます。良いですね?」

 

「はい」

 

「マシュ、貴方は半英霊として私達の護衛と戦闘を」

 

「はい!」

 

「そしてロマニ、引き続きカルデアからのサポートをお願いするわ」

 

『了解です!』

 

 

 特異点解決の為、団結する僕ら。

 

 まずは二騎のサーヴァントが繰り広げる戦いの中へ向かう。

 

 走って10分も経たない交差点。

 

 そこでクー・フーリンとライダーは戦いを繰り広げていた。

 

 

「クー・フーリンさん!」

 

「やあっと来たか! なら手ぇ貸して貰うぞ!」

 

「マシュ! 前に出て敵サーヴァントを抑えて!」

 

「はいっ!」

 

『敵のサーヴァントはライダーのクラスだ! 乗り物に乗られると強化される、気を付けて!』

 

 

 飛び出したマシュの盾と、相手の短剣がぶつかり合い火花を散らす。空気が震え、コンクリートにはヒビがいくつも入る。

 

 ライダーは盾を蹴り距離を取る。そこへクー・フーリンが空中に描いたルーンから放たれる炎がいくつも飛んでいく。

 

 

「私だって、援護くらい!」

 

 

 加えて、オルガマリー所長の放つ魔術。屈折しながら飛び交う光が、ライダーの行く先に降り注ぐ。

 

 

「鬱陶しいですね……」

 

 

 だがライダーにあまりダメージはない様子。炎と光を素早い身のこなしで避け、短剣と蹴り弾く。流れ弾はマシュやクー・フーリンが防いでくれるが、決定打がない。

 

 マシュは盾を振り回し、シールドバッシュでライダーを戦っているが、相手のスピードに翻弄され、ダメージが入ってない。

 

 

(相手のサーヴァントは、多分メドゥーサだ。宝具を使われる前に、なんとか倒したい所だけど……)

 

 

 戦いに意識をやりつつ、ちらりと左手に目をやる。

 

 そこには、いつの間にか刻まれていた赤色の紋章のようなもの――マスターの証である『令呪』が輝いている。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 三画の令呪を一つ消費するこで、サーヴァントの体力を全快させたり、宝具を使う為の魔力をチャージさせることが可能だ。

 

 だが令呪は三つ。カルデアの令呪は時間経過で回復するが、それでも軽々しくは使えない。タイミングを見極めないと、こちらが負けかねない。

 

 戦いの基本も分からず、魔術も使えない。今の僕にあるとしたら訳の分からない短剣と令呪だけ。

 

 ここで令呪を切るべきか?

 

 いやまだ敵サーヴァントが控えている……クッソ、どうすればいい!?

 

 

「邪魔、です」

 

「ぬぁっ!?」「きゃあ!?」

 

「クー・フーリンさん! オルガマリー所長!」

 

「何!?」

 

「まとめて、片付けて差し上げます」

 

 

 一瞬意識が戦いから離れた時、流れが変わった。

 

 ルーンを掻い潜ったライダーがクー・フーリンの首に組み付くと投げ飛ばす。短剣を高速で振り抜き防御魔術を張ったオルガマリー所長を吹き飛ばしてしまう。

 

 そこからライダーは、短剣を自らの首に突き刺し、掻っ捌く。噴き出す赤い血。その血は空中に留まると、丸い陣のようなものを描いてく。

 

 

(不味い、コイツは!!)

 

 

 初代作品の光景が頭によぎり思わず前に出た。

 

 が、その瞬間には陣は完成してしまっていた。

 

 完成した魔方陣より純白の何かが飛び出し灰色の空へ昇っていく。

 

 

『あれは、幻想種! しかも天馬!? ランクはA+……敵の宝具だ!』

 

「宝具っ……!」

 

「マジかよぉ!」

 

 

 発動前に倒すのは失敗。しかもクー・フーリンと所長がやられている。このままじゃ、僕らまで……!

 

 そう思った時だ、マシュが盾を翳して僕の前に出た。

 

 

「先輩……逃げて下さい。ここは私が」

 

「キリエライトさん!? まさかあれを防ごうってのか!」

 

「私しか、やれません。所長とクー・フーリンさんを連れて、少しでも遠くに……」

 

『無茶だマシュ! いくら英霊と融合していても、宝具もなしに防げるものじゃない! 城壁が突っ込んでくるようなものなんだぞ!?』

 

「それでも……! 先輩のサーヴァントなんです、私は。だから、やらないと……!」

 

 

 この時点でキリエライトさん、マシュは宝具を使えない筈。

 

 それでも、目の前の彼女は本気で立ち向かうつもりだ。相手の宝具に。

 

 ……あんな、無茶苦茶に重い盾だけを頼りに、だ。

 

 だったら。だったらさぁ。

 

 やることは……一つだよな。

 

 見上げた先には白い光がこっちに向かって落ちてくる。

 

 もう回避も、逃亡も不可能な速さと位置。

 

 僕は、それに対して――

 

 

『宝具が来る! 二人共逃げろぉぉぉっ!!!』

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 初めて会った時。私は、“その人”に私は叱られた。 

 

 そんなに大したことはないと、謙遜したつもりで先輩へ返事をした。けど先輩からは、質問に答えろと。何故先輩と呼ぶのかと叱責されてしまった。

 

 レイシフトした特異点では目の前で殺されたにもか関わらず、何故か復活し、光の剣でサーヴァントの敵すら倒してしまった。

 

 もしかして、凄く怖くて、そして強い人ではないか。思わずそう思ってしまった。 

 

 ……けどそれはただの思い違い。

 

 先輩は私達に怒りをぶつけた。命がけの戦いに巻き込んだこと。死にかけたこと。世界を救いたいのなら自分でやれと。

 

 ……私は何を勘違いしていたのだろう。

 

 ただ叱責されただけで先輩が怖い。力を持っていたから強い人などと、何故思ってしまったのか。私はただ、同年代の方から叱責されたり、指摘されたことが無かっただけ。

 

 力についても正体不明の力がただ現れただけ。英霊の力を借りている私だって、同じようなものなのに。

 

 

 先輩は“普通”の人なんだ。魔術や命のやり取りに関わっていない、英霊へ立ち向かえる力などない、ごく普通の一般人。

 

 

『宝具が来る! 二人共逃げろぉぉぉっ!!!』

 

 

 通信越しにドクターが叫ぶ。

 

 上空から、幻想種の天馬に乗ったライダーのサーヴァントが落下してくる。

 

 魔力をため込み、落下のエネルギーを加えたそれはまさに白い流星。着弾すれば、間違いなく先輩達はひとたまりもない。

 

 霊基(からだ)が、震える。それでも後ろには先輩達がいる、逃げる訳にはいかない。

 

 私は未熟なサーヴァントで、スキルや宝具を使うことはまだできない。

 

 それでも……この盾だけでも、防がなければ。

 

 死にかけたのに、頭を下げ、協力してくれると言ってくだざった先輩を、守る為に……!

 

 

 

 

「優しく蹴散らしてあげましょう。――“騎英の手綱(ベルレフォーン)”!」

 

 

 

 

「――うぅぅぅぅぅっ!!?」

 

「うぉぉぉぉ!! こいつはぁ、やべぇっ!!」

 

「……え!?」

 

 

 凄まじい衝撃が、盾越しに伝わってくる。

 

 一瞬でも気を抜けば、盾ごと砕かれてしまいそうな一撃。

 

 これが宝具。サーヴァントの威力。

 

 必死に耐えるその時。横から声が聞こえた。

 

 真横を向くとそこにいつの間にか……先輩!?

 

 先輩が、盾を支えていたのだ。隣で。

 

 

「どうして先輩が!? 離れて! 巻き込まれてしまいます!」

 

「離れられないよ今更! それこそお陀仏だわ! 第一、手ぇ放したらキリエライトさんが危ないだろう!」

 

 

 しかし二人がかりでも、押し込まれていく。

 

 相手は宝具、例え先輩が加わっても、恐らく防ぎきれない。

 

 

(私じゃ、ダメだ。先輩を失望させて、助けに入られてるようじゃ……)

 

 

 

 

 

「下向くなマシュ・キリエライトォ!!!!」

 

 

 

 

「!?」

 

「下向けば考えがマイナスになる、上げるんだ! 力で勝てないなんて分かってる僕だって最初っから!」

 

 

 叫ぶ先輩の口からは血が滲み出ている。

 

 

「それでも! 勝とうとするんだ! 気持ちだけでも!」

 

 

 宝具の余波で皮膚が傷だらけになっている。

 

 

「それが、生き残るってことなんだ! そのはずなんだよ!! だからさぁ――」

 

 

 それでもその顔は、笑みを浮かべていて、

 

 

 

 

 

「一人じゃ無理でも、一緒に、戦ってくれよ。マシュ・キリエライト。僕と、平沢一捷と一緒にさ」

 

 

 

 

 

「……先輩」

 

 

 ……やっぱり、この人は強いのかもしれない。

 

 普通なのだけど、強い人。

 

 英霊でなくても、勇敢でなくても、自分に出来ることをやってくれている。側にいる。

 

 

(……だったら、私もやらないと)

 

 

 

 怖くても、立ち向かわなければ。立ち上がらなくては。

 

 例えこの身が英雄じゃなくても、私は……先輩のサーヴァントなのだから。

 

 盾の持ち手を握り直す。先輩が手を重ね、二人で盾を構える。

 

 だから今、この一撃を防がなければ。隣の先輩や、周りのオルガマリー所長達を守らなければ。

 

 宝具から守る為に、私もできることをやらなければ、みんなが消えてしまう。

 

 例え、偽物でもいい。

 

 今だけでもいい。

 

 この……霊基に宿る力を。

 

 私がちゃんと、使わなければ!

 

 

 

 

 

 

 ――先輩のサーヴァントとして!!!!

 

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

「でぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ――その時、不思議なことが起こった。

 

 一捷の令呪が赤い光を放ちマシュに力が送られる。

 

 二人が持つ十字盾が輝き、光が膨れ上がる。その光は魔方陣を大きくしたような虹色のバリアとなり、天馬を押し返す。

 

 

「何っ……!?」

 

 

 仮想宝具、疑似展開。

 

 マシュの思いに応え、宝具か発動したのだ。

 

 更に、一捷の叫びに応えるように。礼装の中へ仕舞っている青緑の短剣が同色に光り、星型の防壁となって、虹色のバリアの前面に展開される。

 

 防壁と宝具の力が合わさり、押し返されるライダー。

 

 そしてそれだけに留まらず。

 

 星型防壁へヒビが入り、独りでに砕け散る。無数の欠片となったそれらは、まるで意思がある矢のように、ライダーと天馬へと襲いかかる!

 

 

「あぁぁぁぁぁっ! こ、これはっ!?」

 

「――隙ありだぜ、ライダー」

 

「なっ、キャ――がふっ!?」

 

 

 

 全身を切り裂かれ、天馬は矢に貫かれ消滅。大ダメージを負わされたライダーは、チャンスを伺っていたクー・フーリンによって止めを刺される。

 

 杖を槍に見立てた一突き。心臓を完璧に貫かれていた。

 

 それによりライダーは消滅。

 

 残る敵サーヴァントは、二騎。

 

 

「ハッ。まさか土壇場で宝具まで使うとはな。オレの出番は無かったってわけだ」

 

 

 息も絶え絶えになったマシュと一捷。

 

 絶体絶命の状況で一皮剥けてみせた二人へ、クー・フーリンはニヤリと笑ってみせた。

 

 まるで、弟子の成長を喜ぶ師匠のようにだ。

 

 ……しかし。

 

 宝具解放については嬉しいことだが、クー・フーリンには素直に喜べない部分があり、表情を曇らせる。

 

 鋭い視線は一捷の礼装。その中にある青緑の短剣へと向けられていた。

 

 

(あの剣。間違いねえ。アレから感じるのは……親父の気配だ)

 

 

 英雄としての直感で、あの短剣が嫌な予感の正体だと、クー・フーリンは感じとっていた。

 

 そしてそれは……未来において、現実となる。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「全くアンタって奴は! 何考えるのよ本当にもうー!!」

 

 

「……はい。ごめんなさい」

 

 

 戦闘終了後。

 

 オルガマリーとクー・フーリンが戻りとりあえず一件落着……とはならない。

 

 そのオルガマリーより説教を受け、正座させられている一捷。ドクターとマシュがどうにか宥めているが、オルガマリーの怒りは止まらない。

 

 

「宝具に突っ込むなんて自殺行為以外のなんでもないのよ!? 今回はたまたま令呪が成功して、マシュの宝具が発動したからいいものを、普通だったらまず死んでるわよ!!」

 

 

 そう。防いだ時、無意識に一捷は令呪を発動していたのだ。令呪の力とマシュの思いが重なった結果、宝具が発動。事なきを得た。

 

 だが一捷が逃げずに無茶をしたのも事実。逃げる隙が無かったのあるが、命を投げ出すような行動に、所長としてオルガマリーは怒らないわけがいかなかった。

 

 

『所長……もうその辺りで。それもそうですが、何より大きな怪我は無かったんです。こうして皆無事なんですから』

 

「ロマニ……それは分かるけど」

 

「所長、怒られる気持ちはご尤もだと思います。それでも……先輩のご助力があったからこそ、私は宝具を発動できたんです。だから……」

 

「それなら、尚更命を捨てる行動を控えないといけないでしょう……」

 

「ご尤もです、所長」

 

「良いじゃねぇーか所長さんよ。そっちの医者が言うように、オレたちゃ全員無事だ。今はそれを喜ぼうや」

 

 

 クー・フーリンも加わったことで、大きくため息をつきながらもオルガマリーは「分かったわよ」と怒りの矛を納めた。

 

 当然、一捷へ厳重注意をしてから、だが。

 

 

「さて、ライダーもなんとか倒したワケだが。残りの奴らはここから離れた場所にいる。だから、今の内に休んどけ。休憩は最後にしたい」

 

 

 戦いの直後で消耗していたのと、残るアーチャー・セイバー戦に備えて休憩をとる一同。

 

 マシュの盾に格納された水と携帯食料、オルガマリーが持ち歩いていたドライフルーツで栄養補給。

 

 

「あ。そう言えば」

 

 

 二人が物を出したので自分も何かないかと考え、唐突にあることを思い出す一捷。

 

 

「僕もお菓子持ってたんですよ、少しですけど」

 

「お、気が利くじゃねぇか。どんなのだ?」

 

「えーと確かここに……はい、どうぞ」

 

 

 

 

 

「某お菓子の詰め合わせ、オ◯ジナ◯ア◯ート」

 

 

 

 

 

「いや何処に入ってたのよそれ!?」

 

「サイズおかしいだろ、どうやって服から出した今」

 

「え、それは中に……」

 

 

 当然だが、結構かさばるので礼装には入らない。

 

 

「……どうやって持ってたんでしょう。僕は」

 

「知らないわよ!!」

 

「あのドクターから通信が……」

 

『平沢くーん! 出来れば全部食べないでそれ! ボクらにも残しておいてぇぇぇぇ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 賑やかな休憩の中で、誰にも分からないように。

 

 一捷は震える手を、きつく握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初の挿絵として、一捷の令呪を載せました。

消し跡など残ってますので、見にくかったら申し訳ありません。

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。