へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

6 / 26
へっぽこマスターと正義の味方 前編

「青緑の剣は危険だ。使うのは気をつけた方がいい」

 

 

 オリジナル◯ソートから各々好きなお菓子を取ると、クー・フーリンさんがそう切り出してきた。

 

 

「いきなりどうしたんですかクー・フーリンさん。あ、ゴミはこちらで貰いますね」

 

「言葉の通りさ。出会った時から言おうと思ってたんだが、中々機会がなくてな。セイバー達と戦う前には言っておきたかったんだ。どうでもいいがこの◯マンドってやつすげぇ菓子クズ落ちるな」

 

「一口か何か敷いて食べるのをオススメします、このハンカチどうぞ。確かに、普通の武器ではないとは思ってましたけど……」

 

「先程の家屋で私達が見た際は、短剣ではなく、同じ色の光の剣、といった見た目をしていました。……ホワイト◯リータ甘いです」

 

「けど直後の戦いから今まで、光の剣にはならなかったし、なる訳じゃない。そうなのよね平沢?」

 

 

 オルガマリー所長に頷く。件のランサー&アサシン戦から、青緑の短剣は短剣のままで光の剣とやらになったのを、僕はまだ見ていない。使おうとしてもできなかった、何も反応しなかったのだ。というか所長とり過ぎやお菓子。しかもチョ◯リエールとバ◯ムロールとエリー◯二色とか美味しいやつばっか。

 

 でも青緑の短剣が、一体どういう風に危なのだろう?

 

 

「……オレも上手くは言えないんだがな。その短剣からはとてつもない力を感じる。サーヴァントから見ても、だ。そして……オレの親父と同じ気配を感じる」

 

 

 ……はい? クー・フーリンさんの、お父さん?

 

 待って待って待って。クー・フーリンの父って確か……。

 

 

『太陽神ルー、だね。ケルト神話に登場する光の神。ダーナ神族の一員で、工芸・武術・医療・魔術といった様々な技能に優れサウィルダーナハ、長腕のルーともあだ名される、クー・フーリンの父。あ、◯リーゼは二色とも残しといてね』

 

 

 まさに神の中の神。ケルト神話におけるビッグネームで、非常に重要な神様だ。

 

 その気配が、この短剣からする?

 

 

「え゛っ!? じゃあまさかこの剣フラガラッハ!?」

 

「ちょっ! 平沢近づけないでそれ! 離れなさいアナタ!!」

 

「いや流石にフラガラッハじゃねぇからな」

 

 

 わーわーとあらぬ勘違いで騒いでしまうが直ぐ様否定されました。あぶねぇ……治らない傷ができるとビビってしまった……。

 

 それによく考えたらFGOもしくはFate世界ならフラガラッハ、いやフラガラックはバゼット(もしくはマナナン)が持ってるから違うわ。

 

 でもそれ以外だと、ルーが持っていたとされる武器の中に剣は無い筈。

 

 

「それ以外はオレにも分からん。ただ、親父の力がある武器だとしたら、サーヴァントを倒せたのには一応納得がいく。そんなもんをこれからも使うんだとしたら、相当覚悟がいるぞ」

 

「覚悟……」

 

 

 個人的に歴史は興味があった。FateとFGOにハマってからは元ネタを知りたいと調べた。

 

 その中に出てくる神様。太陽神ルーの力がやどっているかもしれない短剣。

 

 もし本当にそうなら大きな力になる……が、それを使うのは僕だ。

 

 神の力をただの人間が振るう。

 

 それが、どんなに危険なことか。

 

 ただでは済まないだろうし、何かしらの代償を求められるかもしれない。大きなリスクがあるとしてもおかしくない。

 

 ……この剣、本当に使っていいのだろうか?

 

 うむむむと俯き考える……。

 

 ……大丈夫なのだろうか。本当に。

 

 

「おい、おい坊主。聞いてるか? 話」

 

「あ……すみません。考え込んでました……」

 

「さっき嬢ちゃんに下向くなって言ったのはお前だろうが。オレが言ったことだが考え過ぎるな。考えるのは重要だがな。とにかく、気をつけてりゃいいんだよ。使うにしたって」

 

 

 デカい力があるのは確かなんだからな、と励ましてくれるクー・フーリンさん。

 

 自分が言い出しっぺなのに考えがマイナスになることをしてしまった……いかんいかん。

 

 考え込んでしまうのは僕の悪い癖だ。それで自分を追い詰めてしまう。

 

 

(……それじゃあダメだって、知っているだろう僕)

 

「さて。休憩は終わりだ。そろそろセイバーの根城に向かうとするぞ」

 

 

 クー・フーリンさんが立ち上がるのを見て、休憩の後片付けをしてから移動を再開する。

 

 街から山側へ。円蔵山の長い長い石階段を上がり、SNでアサシンが守る山門を潜って柳洞寺を抜ける。切り立った崖に出来た鍾乳洞に入り暗い穴を警戒しつつ進んでいく。

 

 道中、魔獣やらスケルトンに襲われたがキリエライトさんとクー・フーリンさんとオルガマリー所長が難なく撃破。僕も出せる時は指示を出したり落ちたアイテムを回収。

 

 互いに何ができるのか・使えるのかを事前に打ち合わせ、使えそう物があれば所長に強化の魔術を施してもらい、できる限りの準備はした。……筈。

 

 

『前方にサーヴァントの反応。これは、アーチャークラスだ!』

 

 

 淀んた空気の洞窟内を進むこと数分、ドクターの警告が入る。

 

 暗闇から現れたのは二刀流の男。

 

 真っ白な髪に鍛えられた体。第二再臨のエミヤだ。

 

 

「信奉者のお出ましって訳か。アーチャー」

 

「信奉者になった覚えはないがね。だが、つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

 

 

 クー・フーリンさんと言葉を交わしたエミヤはこちら側の人間を注視していく。

 

 

「そこの女が……いや、男がマスターか――ッ!?」

 

 

 何故かエミヤは僕を見て目を見開いた。驚いたのか? 何に?

 

 驚愕の表情はこちらを睨みつける鬼のような表情へ変わる。

 

 ……怖い。冗談抜きで、怖い。

 

 

「そうか……それが、原因か」

 

(原因?)「マスターッ!!」

 

 

 怒りの目線に体が固まった、その瞬間に突き飛ばされ、衝撃と火花が生じた。

 

 なんだ!? 撃たれた? 遠距離攻撃?

 

 見れば、エミヤはいつの間にか弓を持っていた。矢を撃ってきたのか!? 全然気づかなかった……!

 

 キリエライトさんが反応し防いでくれたから良かったが、あのままだったら撃ち殺されていただろう。

 

 バトルスタートの合図があるわけがない。最初っから僕を殺す気で、攻撃してきたのだ……!

 

 今更なのに、殺されかけたことに恐怖を感じてしまう。

 

 怖い、さっきより、ずっと……!

 

 

「惚けている場合か! 来るぞ!!」

 

 

 杖でどつかれたことで、意識が現実に戻される。

 

 いや……今は目の前の状況に、敵に対処しないと……!

 

 最初の攻撃を皮切りにエミヤは次々と攻めてくる。

 

 時間差で撃たれる矢が僕やクー・フーリンさんを狙う。

 

 空中に投影された様々な刀剣が放たれルーンや光の魔術を撃ち落とす。

 

 白と黒の夫婦剣による二刀流で接近戦を仕掛けたキリエライトさんを弾き返し切りかかる。

 

 数ではこっちが上なのに、ほとんど攻めきれない。

 

 

(これがエミヤの実力……しかも場所が悪い!)

 

 

 あまり広くない洞窟内。天井は高いものの両側はごつごつとした石の壁。上には高いが横は狭い。気をつけなければ壁へ直ぐにぶつかってしまうし、誰かを巻き込んで倒れてしまうかもしれない。

 

 しかも一本道で脇道は無い。それでいて、向こうは弓矢や投影魔術で遠距離手段がある。一方的に遠くから攻撃できるんだ、このままじゃやられる……!

 

 

「どうした。貴様はマスターなのだろう、策の一つもないのか」

 

「なにを……!」

 

 

 何かないかと考えていると、矢を放つエミヤから声が届く。

 

 それを今考えているんじゃあないか……!

 

 思わず荒い言葉を漏らすと、エミヤは鼻で笑う。

 

 

「この程度で感情を乱されていては、戦いを生き残るなど不可能だぞ?」

 

「それくらい、貴方に言われなくたって分かっている!」

 

「それが感情的になっていると言うのだ、たわけめ」

 

 

 言い返すが、剣を変化させた矢による射撃が指摘と共に帰ってくる。

 

 

「下がって、先輩!」

 

 

 キリエライトさんのシールドが防いでくれる。クソ……これじゃいけない! 

 

 役に立てていないじゃあないか、僕は!

 

 

(だったら一か八かでも、あの剣を……)

 

 

 クー・フーリンさんの警告を忘れたわけじゃないが……もしかしたら何か変えられるかもしれない。

 

 青緑の短剣を取り出す……その瞬間、剣が投影される。

 

 一本、二本、四本、十……多い!?

 

 

「やべぇ、オレの後ろに入れぇっ! 嬢ちゃん!」

 

「防御、入りますっ!!」

 

「――全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)

 

 

 次の瞬間、降り注ぐ剣、剣、剣!!

 

 金属が砕ける音、ぶつかる音、閃光が撒き散らされる。

 

 

「きゃああぁぁっ!?」「うぉわああぁ!!」

 

 

 クー・フーリンさんとキリエライトさんがガードしてくれるお陰で後ろの僕と所長に剣は届かない……けど、聞こえてくる音と衝撃はとてつもない。いつ剣が飛んでくるのでは、と心臓がバクバク鳴って体がバクバク震える。

 

 こんなのを浴びて、前の二人は大丈夫なのか!?

 

 

「……ほう。それなりに魔力を使ったのだが、防ぎきられてしまったか」

 

 

 やがて音が収まっていく。

 

 どうやら、全ての剣が防がれた……らしい。

 

 良かった、キリエライトさんとクー・フーリンさんは無事のようだ……。

 

 

「く、クー・フーリンさん! 腕が!」

 

「……あぁっ!? そ、そんな!」

 

「へっ……情けない声出すな。こんくらい、なんでもねぇさ」

 

 

 いや違った。キリエライトさんは細かい傷しかなかったが、クー・フーリンさんは左腕の肘から先を失っていた……。

 

 防ぎきれなかったんだ……僕達を守ったから……!

 

 

「気にするな。サーヴァントはこれよりひでぇ目に遭っても戦うんだからよ。ま、生きてる間も酷かったしな」

 

 

 冗談のつもりなのか笑って見せるクー・フーリンさん。

 

 クー・フーリンがそんなこと言わないでよ……冗談じゃないよそれは……。

 

 

「やれやれ。私を目の前にしてお気楽なものだ……。そうまで彼の肩を持つというのか、キャスター」

 

「あたりめーだ。だからオレは、テメエやセイバーの敵になったんだから……よ!」

 

 

 残ったローブをキツく巻き付け、噛んで縛ることで止血。口についた血を吐き捨て、クー・フーリンさんはエミヤに言い放った。

 

 対し、やれやれと首を横に振るエミヤ。

 

 

「やはり貴様とは相容れん。太陽神の子であれば、私より理解していると思ったが期待外れだったようだ」

 

 

 そして目線を、僕に向けてくる。

 

 

「そこのマスター。貴様が持っているであろう、妙な剣があるだろう。それを今すぐ渡したまえ」

 

「なんだって? いきなり何を言うんだ」

 

「そのままの意味だ。それは、その剣は、危険極まりない。貴様がどう思っているかは知らんが、便利なアイテムなどではないのだよ」

 

 

 そう言い、エミヤは夫婦剣「干将・莫耶」を展開して足下に突き刺し、続いて黒い弓を出すと矢をつがえる。

 

 狙いは言わずもがな。僕。

 

 そして、短剣? 短剣も狙っている? 

 

 

 

 

「その剣はいずれ災いをもたらす。その結果、君は大切はものを失っていくだろう。――その前に、死んでもらう」

 

 

 

 

 

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。