へっぽこマスターが物申す(改)   作:剣聖龍

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サブタイ通り、原作にはイレギュラーが発生。

タグにある多重クロスオーバーが出てきます。


へっぽこマスターとイレギュラー

 岩山に立ち僕らを見下ろす、黒い騎士王アルトリア・ペンドラゴン・オルタ。

 

 岩に突き立てていた黒いエクスカリバーを抜くと、一瞬でその姿が消えた。

 

 と思えば、凄まじい轟音と衝撃が響き渡る。飛び出したキリエライトさんが十字盾でアルトリア・オルタの剣を受けていた。そのまま強引にエクスカリバーを振り抜き、飛び退くアルトリア・オルタ。

 

 

Ansuz(アンサズ)!」

 

「行きなさいっ!」

 

 

 ルーンの炎と所長の光魔術が放たれるが、アルトリア・オルタはエクスカリバーを振るっただけでかき消す。

 

 でも少しだけ時間は稼げた。

 

 地面を蹴ったキリエライトさんが盾を構え突撃。エクスカリバーで防がれ、そのまま盾とエクスカリバーが何度もぶつかり合う。

 

 相手が距離を取ろうとすれば直ぐにオルガマリー所長とクー・フーリンさんが魔術で狙い撃ち、キリエライトさんが盾での近接戦闘に持ち込む。

 

 アルトリア・オルタは聖杯戦争で最優と言われるセイバーのクラス。それが聖杯の呪いにより黒く染まった、アルトリア・ペンドラゴンの別側面。

 

 筋力、耐久はAランクで魔力と宝具は共にそれ以上のパラメータ。初登場のSNでは最強クラスに入るサーヴァントだろう。

 

 魔術と盾による打撃でダメージを重ねているけど、オルタにはあまり苦になっていない。

 

 

「砕けろ」

 

「うぅぅぅっ!」

 

 

 闇の魔力を纏わせたエクスカリバーで右腕だけで振るいキリエライトさんを後退させる。そのままエクスカリバーを地面に突き立てると、闇が壁のように噴き出し、こちらの魔術が遮られてしまう。

 

 ――その闇の壁を、次の瞬間突き抜けて、アルトリア・オルタが飛んできた。

 

 僕の方!?

 

 

「坊主!! 逃げ、ぐぁぁっ!!」

 

「退け」

 

「きゃあっ!?」

 

「クー・フーリンさん! 所長!」

 

 

 キリエライトさんを追い抜き、僕の前に割って入ってきたクー・フーリンさんを吹き飛ばす。その余波で所長も人形のように吹っ飛んでしまう。

 

 クー・フーリンさんが割り込んだお陰でオルタは止まった、だけども。

 

 一瞬にして僕の側まで現れ、エクスカリバーが振りかざされる。

 

 

「おおぉぉっ!!?」

 

「ほう。これを避けるか」

 

 

 本当に、本当に偶然、身を捩ったことで、それはかわすことが出来た……が、無傷ではない。

 

 右腕の数cm上を通り過ぎた闇の魔力が、礼装の袖を焼き下の皮膚まで焦がす。

 

 焼け付くような痛み。じくじくと、染み渡る激痛が伝わり、血が滲み出てくる。涙が浮かび歯を食いしばる。掠っただけで、なんて痛みだ……。

 

 でも痛みに悶える暇もない、とにかく離れなければ!

 

 駆け出そうとした瞬間、地面が爆発し視界が回る。

 

 縦にぐるんぐるんと。視界の上と下が何度も逆さまになり、背中から叩きつけられる。

 

 全身に激痛。そこに突きつけられる……黒いエクスカリバー。

 

 

「ぐぁぁ……っ」

 

「初撃を避けてみせたのは褒めてやろう。カルデアのマスター。大人しく逝くがいい」

 

「し、死んでたまるかよ……ここで!」

 

「我が剣を前にして、まだ吠えるか。仮にもアーチャーを倒しただけはある……」

 

 

 目の前には黒いエクスカリバー。それに対抗せんと、反射的に、青緑の短剣を礼装から抜く。

 

 

「その短剣で私と切り結ぶ気か? 止めておけ、そんなものに縋るのは」

 

「何にでも縋らなきゃいけないでしょうが、今の状況……!」

 

「なればこそだ。アーチャーを倒したのはなら、言の葉を交わした筈。聞いているだろう、短剣の危険性を」

 

 

 ……確かに、エミヤは言っていた。この青緑の短剣は良いものではない。災いをもたらし僕に何かを失わせると。

 

 

「それはこの世ならざる場所で生まれたモノ。内に宿る膨大な力は数多の意思によって作られた。担い手を選び力を貸す、大いなる無色の力」

 

「それって……!」

 

 

 そんなのまるで、アレじゃないか。今突きつけられているあの剣にそっくりじゃないか!

 

 

「まさか、この剣がエクスカリバーだというのか!?」

 

「そこまで答えてやる義理はない。そうかもしれぬし、違う剣か、槍かもしれぬ。いや、もしくは全く別のものかもしれぬぞ?」

 

 

 結局はぐらかされてしまった。この口ぶり……エミヤやオルタは剣のことを知っているのか? 何処まで?

 

 って、そんなことは考えてる場合じゃあない! どうにか逃げないとだよこの危機を!

 

 

「問答は終わりだ。死ね、カルデアのマスター」

 

 

 倒れた僕に振り下ろされるエクスカリバー。

 

 痛みは引いてきてなんとか立てる、だけど避けれない!

 

 他の人はこちらに向かってるけど間に合わないだろうし、今の僕にあるのは短剣だけ。

 

 

(……だったら、せめて!)

 

「一か八かなんだよぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 短剣を両手で握りエクスカリバーを迎え撃つ!

 

 向こうに比べればこっちの刃は小さい。頼りなく思える。スケルトンにすら弾き返されてしまった。

 

 だけど、言い変えると。

 

 少なくとも、敵とぶつかっても壊れはしなかった、ということ。今まで傷一つついていない。

 

 それだけでは理由として弱い。とても弱いけど……これしかないのなら、これで対抗!

 

 全力で体に込め、エクスカリバーを、短剣で受け止める……!!

 

 

 

 

 ――ガッギィィィィィン!!!!

 

 

 

 

「あぁ〜………っ!! ぐぅぅあぁぁぁっ!!」

 

「防いだ、か」

 

 

 確かに防いだ、刃の部分は。

 

 だけど込められた力は、衝撃までは消せない。

 

 大岩がぶつかってきたかのような、凄まじい力。サーヴァントの力が、人間の僕の身体中を貫く。

 

 痛みがぶり返し変な音が体より聞こえてくる。骨にヒビが入り内臓も傷ついたかもしれない。特に短剣の柄を握る手の部分は衝撃で皮膚が裂けて血塗れ。痛みと血で握るのが、とても辛くなっている。

 

 

(せめて……このまま剣を……!)

 

 

 どうにかこのまま斬られるだけは、と短剣を傾けエクスカリバーを受け流す。

 

 しかし、直ぐ様返される敵の剣。

 

 

「そのまま勝てるとでも思ったか」

 

「僕が勝とうとなんて、思ってない!!」

 

 

 短剣から左手を離しアルトリア・オルタへ振り抜く。

 

 それによって血が撒き散らされ、相手の顔へ纏わりつく!

 

 

「抵抗はするけどねぇ!」

 

「ちぃ、小癪な!」

 

「それで良いんだよぉっ!!」

 

「はぁぁぁぁーーっ!!」

 

 

 

 血の目潰しで僅かに剣の軌道がぶれ、どうにかかわせた。

 

 そこに突っ込んでくる、キリエライトさん。シールドバッシュでアルトリア・オルタを僕から遠ざけていき、その僕には風が纏わりついて運ばれる。

 

 行き先は復活した、クー・フーリンさんとオルガマリー所長の所。

 

 

「また無茶をして、貴方は!」

 

「だがよく切り抜けた。まさかそのちっこい剣で、聖剣を受けるなんてな」

 

「ギリギリでしたがね……」

 

 

 エクスカリバーが振り下ろされた時、三人が復帰したのが見えていた。助けが間に合うかもしれないと抵抗し、どうにか間に合った。

 

 傷だらけの両腕を治癒してもらう。この場はなんとか保ちそうだ。

 

 治療終了と同時に、相手を遠ざけタキリエライトさんが戻って来る。

 

 

『敵セイバーの魔力増大を確認! 宝具か来るよ!!』

 

「キリエライトさん、頼む!」

 

「はいっ!」

 

 

 二画目の令呪を発動。良かった、なんとか成功だ。

 

 痛みを堪えつつアルトリア・オルタに目をやる。黒いエクスカリバーを後ろに構え、刀身に溜め込まれた闇の魔力が刀大きな剣を形作る。

 

 

「『卑王鉄槌』――極光は反転する」

 

 

 本来とは逆のモーション、切り上げるようにエクスカリバーが振るわれ、真っ黒に染まった光が、放たれる……!

 

 

「光を呑め――‘約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)’!!」

 

 

 地面を薙ぎながら突き進む黒い極光。呑まれれば人間など一瞬で消え去る(ひかり)

 

 

「宝具、展開します――‘仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)’!!」

 

 

 阻むのは虹色の防壁。敵の宝具は光の壁にぶつかって拡散し、後ろの僕達を守りきった。

 

 ちなみにキリエライトさんの宝具、名前はライダー戦の後に所長が名付けてくれた。そういうところは原作通りなのね。

 

 

(……それ通りなら、所長は)

 

 

 今の所長は体が死んで魂だけの存在。特異点が終わると消えてしまう。

 

 先を知っているから、どうにか手を打たないと、と思ってしまう。

 

 どうにか、所長を助けたいと思う。

 

 

「防いだか……。既に宝具が使えるようだな」

 

『敵セイバーは宝具の使用で魔力が減っている、攻めるなら今だ!』

 

 

 宝具使用で動きが鈍るアルトリア・オルタに、チャンスとばかりにクー・フーリンさん、キリエライトさんが猛攻を仕掛ける。

 

 ……まずは目の前の相手を倒してからだ。そして最後に出てくるレフ教授をどうにかしてから。

 

 そう思い、最後だと緩みかけた気を込め直した――

 

 

 

 

「浅ましい。吐き気が込み上げてくるな」

 

 

 

 

 ……そんな甘い考えを、木っ端微塵にする存在が、この場に現れる。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 突如として響いた男の声。

 

 全員が思わずその出先に視線をやり驚愕する。

 

 岩山に立つ、緑色のスーツとシルクハットをかぶった茶髪の男性。

 

 真っ先に反応したのは、オルガマリーであった。

 

 

「レフ……? レフなのね? レフ・ライノール! 生きていたのね!?」

 

「やぁオルガ。キミもここに来ていたんだね」

 

 

 慕っていた人物の生存。思わずオルガマリーは駆け寄ろうとする。

 

 しかしそれを、クー・フーリンとマシュが手で制した。

 

 

「行くんじゃねぇ!」

 

「オルガマリー所長、アレに近づいてはいけません。私達の知る教授とは、何かが違う……!」

 

「な、何を言ってるの、マシュ。クー・フーリンも」

 

『もしもし! こちらカルデア管制室、ロマニ・アーキマンだ。……レフ教授、キミ、生きていたんだな』

 

「ああ、カルデアからの通信か。しかもロマニ、君からか。なるほど、君も生き残ってしまったのか。まったく……どいつもこいつも、統率のとれていないクズばかりだなぁ」

 

 

 丁寧な口調が、罵倒の言葉に。

 

 荒くなった言葉でレフは続けていく。

 

 

「デミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライト。私の言うことも聞かず生き残ったロマニ・アーキマン。とことんこちらを不愉快にさせるオルガマリー・アニムスフィア。本当に予想外のことばかりで頭にくる」

 

「れ、レフ……?」

 

「その中でも最も予想外なのは……『君』だ。イレギュラーとはいえマスターとなった48番目の適合者」

 

 

 やれやれと呆れた様子で言ってから、一捷へと視線を移すレフ。

 

 その瞳は、真っ赤だった。

 

 十字のような切れ込みが入った、赤い目。

 

 

「偶然とはいえサーヴァントを倒し、ここまで来た。足掻きに足掻いて。当初の予定ではとっくに死んでいると見たのだがね。こちらも事情が変わって、やや早くではあるが、足を運ばせてもらったよ」

 

(事情が変わった? やや早くだって? 確かに原作より登場場面が少しだけ早いが……)

 

「君達にこの特異点は攻略させない。手を出させていただく」

 

 

 レフは言い終えるとパチン、と指を鳴らし、魔術を起動する。

 

 すると彼の周囲にいくつも炎が出現し、中から豹の形をした獣が現れ出した。魔術で生み出された獣、魔獣だ。

 

 現れた豹型の魔獣は三体。しなやかな動きと速さで、カルデアに襲いかかってくる。

 

 

『未知の術式、ですがこれは召喚魔術の類です!』

 

「めんどくさいの呼びやがって! 嬢ちゃん、セイバーを警戒しながら一体ずつ確実に片付けるぞ!」

 

「はい!」

 

「坊主は所長さんにの側についてな! 何かありゃ、連れて逃げろ!」

 

「分かりました!」

 

「レフ……どうして」

 

 

 レフの変貌にオルガマリーはショックを受け、呆然としてしまっていた。戦いどころではない。彼女を庇いアルトリア・オルタにも警戒しつつ、戦う必要がある。

 

 

「ガアゥッ!」

 

「邪魔すんじゃねぇ!」

 

「バウッ!」

 

「これで、倒れて!」

 

 

 豹型魔獣は動きこそ早く、レフの元から生み出された続けているが、一体の強さはそこまで高くない。武器は炎を纏わせた手足の爪と噛みつき。口から放つ火の玉。

 

 ルーン魔術を浴びせ杖で殴りつける。盾で粉砕する。

 

 サーヴァントとデミ・サーヴァントの力の前に、豹型魔獣は次々と倒され消えていく。

 

 この間、アルトリア・オルタには意識をやりつつも、攻撃などを行える程、カルデア側に余裕は無かった。この隙を攻められたら危なかったが、幸いそうはならなかった。

 

 

「おのれ。目障りな……」

 

 

 豹型魔獣はアルトリア・オルタにも攻撃していたからだ。理由は不明だが、レフはどちらの陣営にも魔獣をけしかけ、戦いを混乱させている。

 

 カルデアを仕留めるより、まずは鬱陶しい輩を排除する方にアルトリア・オルタは切り替え、豹の魔獣をエクスカリバーで切り捨てていく。

 

 このまま倒されていけば、いくら生み出されていても、その前に限界が来てレフにまで攻撃が届かねないだろう。

 

 ふむ、と手を顎に当てレフ。豹型魔獣をけしかけものの効果が芳しくないのを見て、周囲の炎と一緒に岩山から地面に降り立つ。

 

 

「この程度では妨害が関の山、か。ならば仕方ない。私もカードを切らせてもらう」

 

 

 何かを仕掛けてくる。

 

 レフの言葉を聞いた全員が警戒。何が来ても直ぐ対応しようと行動に注目する。

 

 そのレフはたくさんの視線を浴びながら、懐から小型のアイテムを取り出した。

 

 細長い、ごつごつとした物体だ。端子のような部分が端にあり、真ん中にはアルファベットの『М』が描かれている。

 

 

「なんだありゃ」

 

「何らかの魔術礼装でしょうか?」

 

『いや、あれは……記憶媒体か?』

 

「……?」

 

 

 見たことのないアイテムだったので、クー・フーリンにマシュ、ロマニ、アルトリア・オルタは見たままを言うかひとまず警戒するしかなかった。

 

 

「は?」

 

 

 だがただ一人。

 

 一捷だけは、違う反応をしていた。

 

 そのアイテムが何か、知っていたからだ。

 

 正確に言うと、一捷のいた世界で放送されていた、ある番組に登場していた、架空の物体。

 

 色は赤く、骨のような形で、Мのアルファベットは噴火した山を模した、USBメモリ型のアイテム。

 

 

 

 

 

 

「……ガイアメモリ!?」

 

 

 

 

 

 一捷のその言葉が聞いたのか、レフはニヤリと笑うと左腕のスーツを捲り、肌にある四角い入れ墨のような部分にアイテム――ガイアメモリを突き刺す。

 

 

マグマ!》

 

「……ウゥゥアァァァァァァ!!」

 

 

 ガイアメモリから音声が発せられると、レフの両目が赤く光り、全身が燃え始める。

 

 そして、レフが割れるようにして、中から何かが姿を現す。

 

 

『フハハハハ……これはいい。想像以上だ』

 

 

 流れ出る溶岩と岩が人型になった異形の存在――『マグマ・ドーパント』。

 

 この世界のイレギュラーが、牙を剥き始めた瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

絵を描くとして、早く上手に描けるのはどちらだと思いますか?

  • オルガマリー
  • マシュ
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