事故死幽霊はだらけたい   作:Haidorahooru

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プロローグ 事故死幽霊 爆誕

幽霊とは

その1 死んだ者が成仏できず姿を現したもの

その2 死者の霊が現れたもの

 

引用 Wikipediaより

 

死ぬに死に切れず現世に現れ、未練たらたら現世を彷徨う者であったり、強い意志を持って顕現する、人智を超えた者だったり、その種類は多岐にわたる。少なくとも分かっているとことは、人には見えず触れられず、彼ら彼女らの周りには様々な不可解な現象が巻き起こるということだ(※個体差があります。また全ての幽霊がこの例に含まれるとは限らないので、悪しからず)

基本的に未練をこの世に残さず死んだ者は幽霊にはならずそのまま黄泉へと行くのみではあるが...この世には常に例外というものが存在する。

魂の質によっては、未練が無くとも、現世に縛られる...そしてその幽霊は、あの世へ行くことはできないのだ!

悲しきかな、異端者とは常に摂理の外側なのだ...

 

 

 

そしてこれは、そんな異端者の物語。

未練残さず散っていった者の、静かなる(??)現世の旅...

その幕は、今ここに...!

 

「...やっば、DVDのレンタル昨日までじゃん」

 

ポテチの袋と共に開かれた

 

 

 

 

 

「延滞料金払わないとじゃん...」

あちゃー、と、黒髪のYシャツ青年が顔に手を思いっきり当ててぶつぶつと何やら呟いている。

彼の名前は上本新一(うえもとしんいち)。ごく普通の男子高校生。高2

自分の髪型はショートじゃないと嫌だと異常なまでに駄々を捏ねること以外は普通の高校生である。あと、尋常じゃ無いほどの助平だ。

 

黒い袋の中に入ったDVDを忌々し気に眺めながら、新一はポテチをボリボリ食べながらため息をついた

「行きたくねー...外暑いし、部屋快適だし、ゲームもまだ途中だし」

 

つきっぱのモニターの画面には、途中で中断してあるゲームが映し出されている。少し前に流行っていたFPSというやつだ。キャンペーンモードの評価が高いものを買ったようで、まだ二時間しか遊んでいないのにハマっているのだ。

「でもこれを放っておくと面倒だからなぁ」

彼がDVDの延滞料金を支払うことになったのは、これが初めてじゃない。5回くらい面倒臭いからと言うのが原因で、夏(今回は秋)と冬に同じことを繰り返している。一度それが原因で店主に突撃隣の晩御飯!されたこともあったくらいだ。

 

「...しゃーねー...行くか」

ふぅっ、と一回だけ息を吐いてから立ち上がり、黒い袋を持って出かける支度をする。と言っても財布を持って行くだけだけど。

数時間ぶりに動かした首は、ゴリゴリと音を鳴らしている。なんなら全身座りっぱだったので、音が鳴り響いていく。

階段を降りればすぐさま自転車の鍵を玄関の鍵入れから拝借、お気に入りのスニーカーを履いて外に出る。

 

「これ買ってくれた婆ちゃん、今元気にしてるかねぇ」

太陽が照りつける空を見上げながら、いい笑顔で言っている。太陽が一瞬、驚いた時のおばあちゃんの顔に見えた。一番輝いていた瞬間と言っても過言では無い顔だった。

また会いたいなぁ...と漏らしながら、ガレージから自転車を引っ張り出して鍵を指し、ロックを解除!

「さーてと、今日も一日中ご安全にー!」

サドルに跨り、彼は元気よく漕ぎ出した。

 

彼の目指しているビデオ屋は、彼の家のある住宅街からほんのちょっとだけ近い位置にある。99歳の老婆が経営しているその店は、子供達に大人気!特に新一を〆る時の姿がかっこいいとの噂だ。

AVの入荷をせがむ新一にジャーマンスープレックスを決めた時は店の売り上げが経営してから10年の間で過去最高額にもなったという。

 

だが、毎度のごとく延滞をしたりビデオ屋で騒いだり土下座する新一をなんだかんだで受け入れてくれる、心の優しいおばあちゃんでもあるのだ。

「いやぁ...今日どんな言い訳しよう。テスト勉強で忙しくて...ってことでいいかなぁ...」

店に迷惑をかけては、毎度の如く関節技なりプロレス技を決められるので、彼も流石にそれは避けたい様子。ただまぁ、だとしたら何でそんな直近で借りたんだと言う話になるが。

「ビデオのこと忘れちゃってて...いやいや、婆さんに殺されちゃうよ...返しに行くつもりが予定が噛み合わなくて...ダメだあそこ無駄に開店時間長いわ...いっそこと山に埋もれてるのをようやく発掘したとか...化石かこのビデオは!」

秋とは思えないかんかん照りのせいで、どうも思考が回らない。夜のオカズを探す時はあんなに回るのに、どうして...どうして...!

 

「つ、着いてから考えればいいから...今は余計なこととか考えずにビデオ返しに行こう」

しばかれるのは怖いけど、それを回避する方法は着いてから考えればいいんだよ!...着いたらしばかれるんじゃね?

 

どうしようもない真実に辿り着いてしまい、一人勝手に絶望する。それでも漕ぐことをやめない辺り、行くという意思だけはあるようだ。もっとも、前進量は微々たるものだが。

そもそも近いと言っても、4kmほどはある。自転車で漕いで行けばすぐだが、歩くにはちと遠すぎる距離だ。ちょうど帰りが嫌になる距離である。

「暑い...暑いよ...暑すぎて溶けてドロドロのスライムになりそうだ...」

まだ半分も走っていないけど、もう汗をかき始めている。その汗が、この残暑の辛さを物語っていた。

 

「っふぃ...少しくらいでろーんってしても誰も怒らないでしょ...」

あじぃ、とみっともなく呟き、頭をハンドルに乗せて、ダラダラとペダルを踏むその姿は周りにはどのように見えるだろうか。いや、決まっているな。滑稽に見えるに違いない。

最低限の動きだけで自転車をノロノロ進ませていく。急がないと地獄が長引くのは知っているけど、疲れるのも大っ嫌いだ。汗でぐちょぐちょになるのも嫌だけどね。

 

洪水のような汗が、脚を伝って靴下へと染み込んでいく。足の裏や表面からも出てくるそれが、どんどん足先の感覚を悪化させていく。

それだけじゃ無い。ハンドルを握る手も、手汗まみれになってヌルヌルしてきた...ちょっとずつ、滑るようになってきてしまった。

不快、不快、とにかく不快!...そんな思いが、彼の人生を終わらせる決定的な一打となった。

 

「ぐぬぉぉ...もういい...ダラダラ言い訳せず、漕ぎ切ってやるぅ...!」

汁だくならぬ汗だくになってしまうのは勘弁願いたいのが、若干イラつきながらも元のスピードに戻して、勢いよく漕ぎ進めていく。まさに風の如く。濡れたシャツが体にべっちょり着いたのは言うまでも無い。

加速する苛立ちによって、彼の注意力は散漫する。結果として、目の前にあったバナナの皮を見落としてしまった!

 

 

その結果...

 

「おっ...!?」

 

ツルッと滑って回転。意味の分からない高さまで自転車がすっ飛んでいく

 

ガンッ!

 

「グオッ!?」

 

頭を思いっきり強打しているが、まだ息はある。そこに

 

ゴシャア!

 

「オ“ッ”」

 

先程の高く飛んだ自転車が首に激突。思いっきり首をへし折られ...

 

「アッ...ゴオッ...」

 

そのまま、白目を剥いて亡くなってしまった。享年16歳。その一生に膜を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...んぅ...ぐっ...んっ...」

死亡から30分後、彼は何事もなかったかのように立ち上がる。見事に首をへし折られたのに、だ。

「...あれ...俺なんで道端で寝てたんだ?」

むくりと起き上がると、地面に思いっきりぶつけた頭をぱっぱっと払って立ち上がる...ったく、こんなとこで寝てる暇なんてないのに...

「えーと...自転車自転車...あっ、会った」

なんか倒れてるけど...どこかが壊れてるわけでもないっぽいし、このまま漕いでも大丈夫そうだ。婆さんにしばかれる前にビデオ返しに行かないとー...そういえば

「今、全然暑くないな」

 

「んっんー...やっと着いたー...!」

自転車を適当な場所に停めて降りる。ドアを開けて入れば、ちょっとだけレトロな雰囲気がするビデオ屋の内装が見える。若者向けに最近のもバンバン取り扱ってるけど、基本的には味のある昔の映画がズラリと並んでいる。例えば、大脱走とか、ジョーズとか、ターミネーターとかね。

「ここら辺は全部見たよ...ジョーズは少し肌に合わなかったけど、どれも一流の名作たちだ」

最近はエイリアンが好き女の子とかもいたしね。あの造形美に目をつけるとは中々センスがあるな...おっといかんいかん。ビデオを返しにきたんだからな。借りるのはまた今度だ。

 

「さてと...今は婆さんがいないみたいだし...」

ここの店主を通す必要がないので、返却BOXにビデオを入れて、カウンターの壁の延滞料金表を見る。一日200円ずつか...一日だけ遅れたし、200円だけ置いておくか。

返すものを返す終わったら、もうここに用はない。さっさと出て、家に帰ってゲームしよう!

「撤収!撤収!おさらばー!」

いつも通り騒々しく店を出れば、スタンドを蹴って自転車にまたがり逃走する。後ろを振り返ってみれば、真顔の白髪のおばはんがこっちをガン見していた。やべぇ!

「すいやせんっしたァァァァァ!!!」

大きな音を立てながら、彼は尻尾を巻いて逃げていく。

 

....彼は気づいていなかった。

 

老婆の目が、自分ではなく自転車(・・・)に行っていたことに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暑い秋のお昼過ぎ。買い物帰りの老婆が、自分の店、兼家に帰ろうとしていた。

老婆の名前は釘本敏恵(くぎもととしえ)。生涯独身。10月いっぱいで100歳になる、長生きな老人だ。

その歳に負けることなく、今でもバリバリに動けるお方で、よく店で騒ぐイタズラ小僧をお仕置きしている。

ビデオ屋にはよく子供が来るので、外にいる子供たちの相手をしながら接客をすることも多い。

そんな彼女の支えは、意外にも、子供達の他に...そんなイタズラ小僧が含まれていた。

何故あんな迷惑客が支えになっているのかは、誰にも知られることはない。それは、彼女だけの秘密だから。

歳に見合わない心だと分かっていても、今日も来てはくれないかと、心を躍らせながら、待ち続けているのが楽しいのだ。

 

そして、前述の通り、商店街からの帰り道...非現実的なものを目の当たりにしてしまう。

 

ガタンッ!

 

突然、ビデオ屋の方から不可解な音がなった。自転車のスタンドを下げる音だ。あれと似たような音が出るものなんて、ビデオ屋の外には置いていない。最初の方はお客さんが来たのかと思ったが...よく見てみると、人っ子一人の気配すら感じられない。扉が勝手に開いた時、彼女はそれがようやく異常なことであると気付かされる。今日は、風なんて吹いてないのに。

 

ゆっくりと、店へと近づき、遠くから店内を見ようとする。

 

ダァン!

 

しかし、見る暇もなく、大きな音を立てて扉は開く。スタンドを上げる音が響けば、自転車は一人でに走り出していった。

自転車に向かって慌てて走るような音が響くが、すぐに鳴り止み、それは店内の方へと移った。レジの近くのカウンターの上には、200円がポツンと置かれている。もしやと思い、返却BOXを覗くと、そこには...あのイタズラ小僧が借りていたDVDがあった。

 

なぜ自転車が一人で動いたのか...このDVDと延滞料金の関係性はなんなのか...彼女にはまるで分からなかった。ただ一つ言えることがあるとすれば...あの自転車は間違いなく、彼のものだった。ならば...

 

「一体...何が起こってるんだい...?」

 

なんで一人でに返却されているのか、不思議でしょうがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「っふぅ...たっだいまー!」

ビデオ屋から帰還したあと、ガレージにささっと自転車を仕舞って、スニーカーを揃えてから元気よく帰りの挨拶。まぁ両親共働きだから今誰もいないんだけど。昔なら爺ちゃん婆ちゃんがいたんだけどね。

「まぁこの寂しんぼにも慣れてきたけど...」

夜まで両親は帰ってこないので、その間に夕食などを作っておく...んだけど今すっごく疲れてるし、ちょっと休憩してから作ることに。

 

「取り敢えず、冷蔵庫の中のプリンとミルクセーキ。消耗しちゃいますか!」

そうと決まれば話は早い。台所の方へとダッシュして、まずは手洗いうがいをしっかりと!

爪先までゴシゴシ洗ったら、お水でしっかりと流しましょう...

そうすればあら不思議

「おててがピッカリーン...ってね」

濡れたおててをよく拭いてから、ガバっと冷蔵庫を開ける。

「飲まれてないし食われて無いね...よぉし!」

500mlのペットボトルミルクセーキと、プッチンプリン3つを手に取れば、プリンたちをお皿に出して、一手間加える。

「やっぱり、これが無いとね」

取り出したるわさくらんぼとホイップクリーム。やることは簡単。プリンの上にホイップクリームを絞り...さくらんぼを乗せるだけだ。こうするだけでグッとデザートっぽさが増す。

待ち切れなかったのか、お行儀悪く立っている状態で頂いている。プリンは飲み物とはよく言ったものか、ものの数秒で全部なくなってしまった。ミルクセーキも、一気飲みによってすぐに空に...わんこ蕎麦のような勢いだ。

床に座って一息ついてから...休憩は終わりだと立ち上がる。やるべきことをしっかりとやらないとね。

「取り敢えずプッチンプリンを買ってきてくれたお袋には感謝だな...」

この恩返し、必ずや、と心に誓いながら、洗い物をシンクへと持っていき、手早く洗おうとする。

 

 

そこで、今の自分の状況を気付かされることになった。

 

 

「...へ?」

シンクに映らない間抜けヅラに似合った呆けた声を出しながら、持っていた皿を落としてしまった。ショックの余りに。

 

破片など気にせず前に踏み出してしまう。シンクに映るはずの自分の顔を探すために。破片で足が切られることはなかった。その部分が霧のようになって、破片が足に刺さることはなかった。しかし、いくら探しても自分の姿が映ることはなかった。

「...どう言うことだ...?」

顔に冷や汗を浮かべながら、洗面台の方へ向かう。鏡なら自分の姿が映るはずだろうと、己に言い聞かせながら走った。

 

 

 

だが

 

その鏡に、自分自身の姿が映ることはなかった。

 

「...一体...どういうことだよ...」

 

自分の顔が、酷くやつれていっていることだけは、分かった。

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