カードゲームで悪の組織から助け出した女の子に求婚されてる 作:らかぶ
当たり前のようにカードですべてを決める世界に転生した俺は、なんやかんやあってカードの世界を楽しんでいた。
そりゃあ、時には悪の組織との戦いもあるけれど。
その中で大変な目に合うことも多々あるけれど。
それでも、俺はこの世界を楽しんでいたのだ。
前世の頃から好きだった、カードゲームというものに熱中できる世界。
ただまぁ、カードゲーム世界だからって、俺は油断していたんだと思う。
だってカードゲームってホビーアニメじゃん?
ホビーアニメってことは、そんな濃い色恋なんて起こらないと思ってたんだよ。
油断してたと言ってもいい。
いや、それでも。
流石に褐色ロリ巨乳銀髪ムチムチ美少女が押しかけてくるなんて、流石に他の世界に転生しても読めないって!
□
「俺のターン、ドロー!」
俺が高らかに宣言すると、ドローしたカードを見る。
……よし、絶望的な状況だが反撃は可能だ。
「悪いが……こっから逆転させてもらうぞ!」
「できるもんならやってみろよ! 俺の<ドルドラード・ドラゴン>はそう簡単に倒せやしないぜ!」
「……プレイング・カードに不可能はない!」
”プレイング・カード”。
それがこの世界のカードゲームの名前だ。
シンプルなその名前に違わぬ、直感的なルールと見た目に反して複雑極まりない処理の数々。
実にカードゲームって感じのゲームだ。
ベースは非マナコスト系TCG、つまり遊戯の王。
プレイヤーは、そのままズバリ”カードプレイヤー”とよばれていた。
そんな世界で――
「打ち崩せ! <天装騎兵 マキシナイズ・ピュリフィシア>!」
俺は、今日もカードバトルを楽しんでいた。
んで――
「だー、負けたぜ!」
「ふぅ、これでようやく今日の勝敗を五分五分に戻せたな」
「次は俺が勝ってやるぜ、”ジョウ”!」
「次も勝つのは俺だよ、”ダイブ”」
俺は、たった今までカードバトルをしていた相手と話をしている。
俺の名前は”神矢ジョウ”。
そして、眼の前にいるこの特徴的な髪型の少年が、”
見ての通り、ホビアニの主人公みたいなやつである。
「ふたりともお疲れ様ー、いいカードバトルだったよ!」
「おう! ありがとな”ミツキ”。でも惜しかったぜ」
「次は勝てるよ!」
んで、そんな俺達に飲み物を手渡してくれる少女が一人。
快活そうな笑みを浮かべる元気っ子、茶色の神を一つにまとめてメガネをかけている。
”蒼羽ミツキ”、俺達……というか、ダイブの幼馴染だな。
俺も小学校の頃からの付き合いではあるんだが、ミツキとダイブは家が隣同士だし家族ぐるみの付き合いだからな。
ともかく。
「少しやったら、もう一戦やるか?」
「んー、もちろんやるけどよ、少しデッキを調整してからにするぜ」
「ならちょうどいい、俺もそうするか」
俺とダイブ、それからミツキの三人は昔からの友人だ。
昔からダイブと俺がライバル関係で、ダイブの幼馴染であるミツキも自然と俺達とつるむような、そんな関係。
ミツキは当然のようにダイブに惚れているので、若干形見を狭い思いをすることもあるものの。
それでも、俺達の関係はこれからも続いていくものだと思っていた。
すくなくとも、大人になるまでは。
そう、思っていたんだが――
「見つけたデス!」
不意に、声がした。
俺達がいるのは、カードバトル用に街のあちこちに設置されている空き地の一つで、俺達以外に人はいない。
だから、声が言う「見つけた」とは自然と俺達のことになるのだが。
正直、心当たりなら山ほどある。
何せ俺達は、結構いろんな事件に巻き込まれてはそれを解決しているのだ。
良くも悪くも、何かしらの存在に絡まれる理由なら山ほどある。
最近だと、半年前に解決した洗脳教団の残党とか。
ただこのとき俺は、その「見つけた」とやらが、まさか自分のことだとは思っていなかったのだ。
なんというか、基本的に俺は裏方気質で、悪の組織の親玉を直接叩くことはあまりない。
あったとしてもダイブとのタッグバトルだな。
だから、まさか自分を探しているとは思わなかったのだ。
だから、呑気に視線を声の方に向けて――それから俺は、惚けてしまった。
眼を見張るほどの美少女が、そこにいたからだ。
癖一つない透き通るような銀髪はストレートのロングで。
背丈は百五十ないくらいの小柄さだが、なんというか発育は良い。
健康的な白ワンピースと、褐色肌がベストマッチだ。
何より、そのあどけない顔に浮かべられた、あまりにも無垢で爛漫な笑み。
俺は思わずその笑みに、惹かれてしまい――反応が遅れた。
「あ、まずいジョウ!」
「ジョウくん!」
親友二人の言葉に、ハッと意識を取り戻し。
けれども間に合わず。
「――――会いたかったデス、ジョウ!」
その少女は、俺に飛びついてきた。
「……は?」
浮遊する身体。
全力疾走で飛び込んできたものだから、俺ごと少女が宙を舞う。
まずい、と思った時には、すでに体が動いていた。
強引に地面に足をつけると、少女を思い切り
ホビアニ世界の人間は身体能力が高いのだ。
――じゃない!
「だ、大丈夫か!?」
「あ、あう……ご、ごめんなさいデス!」
少女は、なんだか俺に顔を埋めながら謝ってくれた。
思わず感情が発露してしまっただけで、決してこんなつもりではなかったのだろう。
とにかく、少女が落ち着くのを待って彼女に問いかける。
「ええと……君は? 俺の名前は知ってるみたいだけど」
「あ、……はいデス! ニコはニコっていいマス!」
バッと、顔を上げて少女――ニコの視線が俺と合う。
その瞳は、あまりにも幸せそうで。
何より、嬉しさに輝いていて。
そして――
「ジョウ! ニコをジョウのお嫁さんにしてほしいデス!」
お嫁さんにして欲しいデス。
して欲しいデス。
欲しいデス。
なぜか、そんなはずはないのに。
ニコと名乗った少女の言葉が、俺の脳内で何度も反響するのだった。
□
いやまぁ、とんでもない爆弾発言が飛び出したものの。
話を聞けば、俺の予想は当たらずも遠からず。
ニコは以前、俺とダイブが壊滅させた洗脳教団の”巫女”をしていたらしい。
というか、戦ったわ、カードバトルしたわ。
あの時俺とダイブは洗脳装置を破壊しつつ黒幕を叩くため、二手に分かれていた。
そのうち洗脳装置の破壊を担当したのが俺で、洗脳装置を守っていたのが”巫女”――つまり、ニコだった。
いやでも、その時のニコはなんというか、性別もわからないような拘束着を来させられていて。
更には洗脳されているものだから、自由意志なんてものはどこにもない。
そんな状態のニコと、今のニコを一致させるのは不可能である。
最終的に俺がニコを倒すことで、彼女を洗脳から解き放ったものの。
その後のゴタゴタで、俺はニコを知り合いのナツキさんに任せるほか無かったからな。
蒼羽ナツキさん、ミツキの母親でカードドクターなる職業についている。
んで、話によると――
「ミツキが言ってたデス! これからニコはジョウと暮らすデス!」
「聞いてないけど!?」
途端、震えるスマホ。
取り出すとそこには「申し訳ないけどよろしくネ☆ 生活費は色つけて出します」というナツキさんからのメッセージ。
急転直下過ぎる。
「ジョウと一緒に暮らすってことは、つまり家族になるってことデス!」
「お、おう」
「だからニコ、お嫁さんになるデス!」
「絶対ナツキさんに変なこと吹き込まれてるよな!?」
いやもうなんていうか、カオスだ。
ホビアニ世界ならこれくらいよくあるだろ、と思うかもしれないが。
流石に美少女が押しかけてくるなんてことはほとんどない。
むしろもっとこう、更にぶっ飛んだ何かが飛び込んでくることはあるが。
い、いやでもしかし。
さっきからずっと抱きつかれていて意識せざるを得ないのだけど。
ニコの体も体外ぶっ飛んでるというか……じゃない。
何ふらちなことを考えてるんだ、カードプレイヤー失格だぞ!
後、そっちで様子を見てるダイブとミツキは助けてくれ!
「いやぁでも、家に人が押しかけてくるくらいなら、たまにあると思うぜ?」
「ご、ごめんねー、お母さんがいきなり無理言っちゃって……」
「ところでどうしてミツキは俺の目を塞ぐんだ、何も視えないぜ」
ダイブはまさしく泰然自若、本人の言う通り誰かが突然押しかけてくることもよくあることなんだろう。
俺はあんまりないけど。
ただ、ダイブの場合それが美少女ってことはなさそうだ。
あと、ミツキは謝りながらダイブの目を塞いでいた。
いやまぁ、今の俺とニコの状況は色々よろしくない気はするけれど。
ダイブももう中学生なんだから、少しくらい情操教育というものをだね。
中学生だから不味い? まぁ、そりゃご尤もで。
「……ジョウ、ニコと一緒……迷惑だったデス?」
「ああいや、それは別に問題ないよ。うちは元々一人暮らしだから部屋も余ってるし」
「ほんとデス!?」
ほんとほんと。
何よりカードドクターのナツキさんが、悪の組織から助けた少女を俺に預けるというのだ。
ソレはすなわち、ドクターとして必要な処置にほかならない。
そういうことなら、一カードプレイヤーとしてそれに協力するのは吝かではないのだ。
「やったデス! やったデス! ジョウと家族デス! お嫁さんデスー!」
「ええっと……」
「……ここまで喜んでると、否定するのも悪い気がするね」
俺の腕の中で、満面の笑みを浮かべて喜びを顕にするニコ。
困った様子で視線をミツキに向けると、ミツキも同じように苦笑しながらそういった。
というか、アレだ!
腕の中で暴れないでくれ!
こう、感触が、やばいから!
「と、とりあえず何だけど……悪いダイブ! これから一旦家に帰ってニコと作戦会議するから!」
「ちくしょー、勝ち逃げとかずるいぜ。でもまぁ、大変そうだしな。また明日だぜー」
「ああ、また明日」
「それとミツキは早く手を話してほしいんだぜ」
あ、ごめん! というミツキの言葉を背に。
俺は一旦、ダイブたちと解れて家に戻ることにするのだった。
ところで、このひっついたままのニコはどうしよう……。
□
その後、ニコを何とか説得して離れてもらい。
俺達は自宅へと帰った。
というか、帰ろうとした。
ただ、途中で問題が起きたんだ。
具体的に言うと――
「……ニコは電車の乗り方知らないのか?」
「……? 多分わかんないデス!」
デーーーーーースッ! みたいな無垢な顔。
いやどんな顔だよ、とにかくこう、自信ありげに分からないことを表明する感じの顔だ。
なんとなくそんな気はしていたんだ。
笑顔で俺の後ろをついてきて、辺りにあるものをキョロキョロと眺めたり。
その都度、俺にそれが何かを問いかけてきたり。
彼女はなんというか、世間知らずなようだ。
それが、改札を通り抜けようという段階で、ただ俺の後を憑いてこようとした時点で明確になったのだ。
悪の組織の巫女なんていう、明らかに特殊な立場の人間なのだからしょうがないと言えばしょうがない。
「だったら、もう少しくらい色々常識を身に着けてから送り込んでくれよ、ナツキさん……!」
「……? あ、ナツキからデス!」
『目覚めたら、即ジョウくんに会いたいって言って聞かなかったの。止める暇もなく出て行っちゃって、ごめんなさいね?』
それは説明してくれてもいいんじゃないですかねナツキさん……!
ニコの見せてくれたメッセージに突っ込みつつ。
こんな的確にメッセージ送ってくる辺り、やっぱ見てるんじゃないだろうなあの人。
いや、GPSくらいは持たせてると思うけどさ、流石に。
「……というか、ナツキさんの医療センターからここまで、結構距離あるけどどうやって来たの?」
「飛んできたデス!」
「そ、そう……」
よっぽど俺に会いたかったんだろうか……。
……比喩だよね?
とにかく、しょうがないので切符の買い方をニコへ教えることとする。
ニコはあくまで常識を”知らない”だけで、覚えることへの抵抗はなさそうだ。
なんというか、案外すんなり切符の買い方を覚えてくれた。
お金? お金はニコの財布にたんまりとありましたよ。
まぁナツキさんが持たせてくれたものだけど。
「と、こんな感じで切符を買って、それで電車に乗るんだ」
「お金、使って……サービス、してもらう? デス?」
「そうそう、そういうこと。ニコは本当に飲み込みが速いな」
「デース!」
俺が褒めると、ニコは目を輝かせた。
しかしなんというか、本当に無知っ子って感じだな。
世間のことを何も知らず、純粋で無垢だ。
ただ、この世界に馴染もうとする気概は感じられる。
俺の言う事を素直に聞いてくれるし、何よりニコ自身が聞きたいと思ってくれている。
お陰で、理解も早くて大助かりだ。
ただまぁ……なんというか。
「えへへ、電車、電車。ジョウと二人で電車デス!」
「うわぁ! いきなりひっつかないでくれ!」
「あわわっ、ご、ごめんなさいデス!」
スキンシップが、めちゃくちゃ多い。
好きを体中で表現してくるし、めちゃくちゃひっついてくる。
それでいて、引き剥がそうとすると聞いてはくれるのだがめちゃくちゃ寂しそう。
こちらとしても罪悪感でついつい、ニコを甘やかしてしまう。
そしてその度に俺の腕へ柔らかいものが色々当たるわけだから、俺としてはもうどうにかなってしまいそうだ。
俺が凄腕カードプレイヤーじゃなかったら、今頃ニコはどうなっていることか。
ええい、意識を集中させろ、カードのことを考えるのだ。
あと、周囲からの視線はむしろ羞恥心を掻き立て理性を保つ武器と考えるのだ。
アドだよ、アド!
――そうこうしているうちに、家についた。
俺の家はデカイマンションの上階に位置する。
まぁ、結構裕福なご家庭なのだ。
この世界の金持ちは規格外だから、この程度じゃお金持ちとは言えないけど。
部屋なら、両親が帰ってきた時に使う部屋を除いてもまだあまりがある。
「と、言うわけでここが俺の部屋だ」
「ジョウのお家デース! これからここでお嫁さんになるデス!」
「お、お嫁さんはまだ早いかな……」
なんかこう、最初はお友達くらいでお願いします。
それから、家の中を案内する。
俺の部屋と、両親――今は不在で、海外に行っている――の部屋。
それから開いている部屋に案内して、しばらくはここをニコの部屋にしようと伝える。
家具とかは最低限設置されていて、今日一日休む分には問題ない。
休日になったら買い物に行こう、というとニコはまた喜んでくれた。
その後、俺はニコと二人で色々なものを片付ける。
別に散らかっているわけではないのだが、なんかこう。
暮らす人が増えるのに生活感が感じられるのはなんか気恥ずかしいのだ。
本当は一人でやりたかったが、待っているニコが手持ち無沙汰な感じなので二人でやった。
「おそうじおそうじ! お嫁さん!」
「ニコのお嫁さん像はどうなってるんだ……」
なんて、楽しげに掃除機をかけるニコ。
初めて使うにしては、とても様になっていた。
んで、他にも色々やってから、俺は風呂に入ることとした。
ニコをその間一人にするのはどうかと思ったのだが、素直に待っていてくれているとのことなので、ソレに甘えることに。
ニコは医療センターで風呂に入ったかもしれないが、俺は朝からずっと外にいて汚れてるんだ。
流石にそのまま寝るわけにも行かない。
ニコの教育にも悪いし。
とか、思っていたら。
「ナツキから聞いたデス! 背中、お流しするデス!」
バーン、とニコが風呂に入っていた。
当然の権利のように、服は来ていない。
な、ナツキさん――!?
驚愕しながら、硬直する俺。
なんというか、こう。
ニコが来てからここまで、とにかく。
あまりにも、あまりにも展開が早い――――!
ラブコメメインの架空カードゲームモノです。
カードゲーム部分は薄いですがカードゲームアニメあるあるみたいなのは多めにしたいです。