ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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突発的に思いついた6月21日を記念した小噺です。

621が「兄さん」呼びを始めた後ではありますが、具体的にどの時期かは考えていないので気にしない方向でお願いします(ガバ)。
一応、「あの出来事」よりは後……と言うのはありますが、それをここで書くと軽度のネタバレになるので……



ハウンズ、──の時間だ。(6月21日記念小噺)

 

Side 612

 

 

 旧世代型にも尊厳はある

 再手術をして 普通の人生を

 

 この言葉に脳を焼かれたレイヴン諸氏は多いのではないだろうか。かく言う私もその1人だが。

 

 まだルビコンでの戦いは続いているから再手術──正確には、普通の人間に戻るための再手術──は受けられないが、できるだけ"普通の人生"に近い生活環境は整えてくれている。

 

 例えば……日々の食事ひとつ取っても、その辺りにいる普通の人間と同じようなものを摂っている。寧ろ、稼ぎが大きいことに加えてRaDの食糧プラントもあるので、下手な富裕層並に充実していると言っても過言ではない。

 

 後は……風呂もそうだな。ACに載せる生体部品として扱うなら、消毒用アルコールとかを染み込ませた布で拭く(もちろん機械か何かで全自動)程度で済まされるだろう。だが、しっかりと湯船もあれば、各自の嗜好に合わせたシャンプーやリンスまで揃っている。

 

 

 ウォルターは、我々ハウンズを文字通り"人間"として扱ってくれている。使い潰す前提で危険な戦場に送り込み続ける極悪非道な奴、あるいは売れ残った少女を買い漁るロリコンなんて言う奴がいれば、その口にチャージパイルバンカー*1をぶち込んでやる。

 

 っと、話が逸れたな。何故こんな話を今したのかと言うと……

 

 

「お兄様、RaDのプラントから卵と小麦、その他の材料が届きました。」

 

 

 617がカゴに詰められた食材を持ってきてくれた。

 

 

「流石に牛乳は無理だったか……だが、脂肪分や糖分、タンパク質で擬似的に再現できるようにしてくれたか。随分な手間だっただろうに。」

 

「お兄、それで……これで何を作るの?」

 

「そうだな……上手く行けば良いが、まぁ見てからのお楽しみだ。」

 

 

 何度かルビコニアンふつうワームを使ってハンバーグを作ったことはあるが、今回はハンバーグでは無い。

 RaDの食糧プラントを視察したときに──というよりも視察は建前だが──練習は何度かしている。それでも上手く行くか不安は残っているが。……まぁ、材料ならかなり多めにある。ある程度不味くない範囲で失敗したらそれはRaDの人員に渡そう。流石に食べられないほど不味くなる失敗はしないはずだ。……はずだ。

 

 

「お兄様、何か手伝えることはありますか?」

 

「そうだな……それなら、オーブンを170℃に余熱しておいて欲しい。余熱モードを使えば良いだけだ。」

 

「わかりましたわ!!」

 

 

 さて……612、調理の時間だ。

 

 

 


 

 

Side 621

 

 

 兄さんが調理場に籠って1時間くらいが経過したわ。

 

 私たちは"とある物"の確認をしている。

 

 

「それで、お兄様は私たちが"コレ"を取り寄せたことは気付いていないんですよね?」

 

「そうね。受け取りはRaDの方でやって貰って、この基地に運び込む時はパイルバンカーの補修パーツに紛れ込ませたから大丈夫よ。」

 

 

 父さんの言う"普通の生活"……それがどんなものなのか、"2周目"を終えた直後の私には何もわからなかったわ。

 "3周目"でも、アイビスの火を起こさなくても済むように人とコーラルの共生を目指していたからそれを考える余裕は無かった。

 

 でも、今ならわかる。

 

 守りたい"家族"がいて、その人たちと一緒に過ごす時間。それが"普通の生活"なんだって。

 ……アーマードコアに乗って殺し合い──ほとんどが私たちによる一方的な殺戮だけれども──をする生活が普通なのかは目を瞑りましょう。仕事をしてお金を稼ぐ。その手段がちょっと物騒なだけよ。

 

 

「お兄様……喜んでくれるでしょうか。」

 

「お兄なら喜ぶ。使う道具には拘りが強いけど、それはクリアできてるはずだから。」

 

「何より、私たちが真剣に選んだのですから、それで喜ばないはずがありませんわ!」

 

 

 そうよね。兄さんならそうなるはずだわ。

 

 ……あっ、兄さんが調理場から出てきたわね。ワゴンを押してきているけど、何を載せているのかは……蓋?がされていて見えないわね。

 

 

「待たせたな。……準備は全部終わっていたか。」

 

 

 兄さんがワゴンに載せられた何かをテーブルの上に置いた。

 コレが兄さんからの誕生日プレゼント……なのかしら。

 

 

「今までの中で1番上手く作れた。……さて、私からのプレゼントだ。」

 

 

 これは……いわゆるバースデーケーキよね?まさかコレを兄さんが?!

 

 

「お兄様……もしかしてRaDのプラントに何度も行っていたのはこれのためですか?」

 

「白状するとそうだな。お前たちを少し驚かせてやりたくて……な。」

 

 

 兄さんが相変わらず兄さんね。

 

 

「そしたら……コイツを切るのを手伝ってくれないか?何せ8人分で大きいからな。」

 

 

 姉さんたちがアイコンタクトで何かを伝え合って……それとも牽制し合っているのかしら?

 

 

「……621、私たちは"姉"として末っ子のあなたに譲ります。」

 

 

 末っ子……確かに617姉さんたちは同じタイミングで迎え入れられたから、私一人だけがイレギュラーなのよね。

 有難く末っ子特権を使わせてもらいましょう。

 

 

「そう言えばあんたたち知ってるかい?地球だと結婚式のときに新郎新婦がケーキを一緒に切るらしい。」

 

 

 兄さんから変な声?音?が聞こえたわね。

 

 

「カーラ?!どうしてそれを今このタイミングで言った?!」

 

 

 兄さんが私の知る限りで一番動揺しているわ。

 ちょっと兄さんをからかってみましょう。

 

 

「兄さん……そんな、私と結婚したいだなんて///」

 

「621、そうなると話は別。」

 

「……一度言った手前……いえ、流石にこればかりは譲れませんわ!!」

 

「ふふふ。お兄様?誰を選びますか?」

 

 

 あら、兄さんが意外と早く落ち着いたわね。解決策を思い付いた顔もしているわ。

 

 

「ケーキはもう1個ある。そうなると、切るのは6回だ。お前たち全員できるから安心しろ。」

 

「……なるほどね。そう来たか。なら、あんたたち5人で余った最後の1回は私がもら……冗談だよ。ウォルターもやれば丁度ピッタリだ。」

 

 

 姉さんたちの目線が、中央氷原よりもずっと冷たくなったわね。

 これ、私が何とかしないといけないのかしら。

 

 

「それじゃあ兄さん……初めて、貰うわね?」

 

 

 姉さんたちの冷たい視線が、今度は私に全部刺さったわ。

 私は一体何を間違え……あっ

 

 

 


 

 

Side 612

 

 

 カーラの爆弾発言や621の自爆発言などがあったが、ケーキは無事に2つとも切り分けられた。

 

 "前世"でも稀に食べていたが、流石に味の比較はできないな。素人が作ったのもあるが、何より味を覚えられていない。それでも結構美味しいと思えるのは、自分で作った補正がかかっているのか、それともちゃんと美味しいからなのか……

 まあ、食べている617たちの反応を見る限り、後者の方だろう。

 

 

「さて……それでは、次は私たちの番です。」

 

 

 617たちも準備してくれていたか。

 特に何かを取り寄せた様子は無かったが……ウォルターかカーラ辺りが協力したんだろうな。

 

 

「ん、この箱の中に全部入ってる。」

 

「お兄様、早く開けて下さい。きっと喜んでもらえるはずですわ!」

 

「中身は……お楽しみですよ?」

 

 

 中身は……なるほど。これは確かに有難いな。

 

 

「トレーニングウェアにその他器具……私が購入を検討していたものか。」

「普段使いできる物なのは有難いな。意識しない限り使う機会の無い物なら、部屋に置きっぱなしになって日の目を見ることが無い。これはこれで消耗した後に捨てられないのが少しアレだが……」

 

「それなら、来年も同じようにプレゼントします。そうすれば消耗を気にすることなく普段通りに使えるはずです。」

 

「それと……捨てるくらいなら私たちに頂戴。」

 

 

 私が使い込んだ後のトレーニングウェアだったりを欲しがるとは一体何に……

 いや、考えないでおこう。貰った本人よりは、贈った側の人間の方が捨てる心理的ハードルが低いはずだ。その点を慮ってくれているだけ……きっとそうに違いない。うん。

 

 

「なんて大胆なことを……普段は洗濯物を任された時だけですのに……ナイスですわ、618。」

 

 

 ウン、ワタシ、ナニモ キイテ イナイ。

 ウォルターとカーラも思わず苦笑いしているが、それも見ていないことにしよう。うん。

 

 待てよ?"私が購入を検討していたもの"……なるほどエアか。もう性癖は暴露されているからな。どのファイルを見られても、もはや問題にはならない。……いやそれはそれで大問題なのだが。

 

 

「……さて、俺の番だな。」

 

 

 ウォルターも準備してくれていたのか。

 

 正直、ウォルターは何を用意しているのか全くわからない。

 恐らく、617たちが何を準備していたのかは知っているだろう。それと被らないようにするとなると……想像が付かない。

 

 

「まずは……612、お前からだ。」

 

 

 箱から何かを取り出した。これは……

 

 

「認識票……ドッグタグか。」

 

「そうだ。」

 

 

 確かに、今まではそう言った物を身につけていなかった。……乗っているACがそのまま識別になっていたからな。

 それに……仮に、仮に撃破されていたら……殺されていたら、ドッグタグはおろか、四肢のどれかひとつでも原型を留めていれば幸運な方だろう。

 

 

「フチにはしっかりとゴム製の覆いが付いていて、激しく動いても音があまり鳴らないようになっている。それに……首から掛ける紐も肌触りの良い素材だ。首を絞めたりすることがないように、ヒモがどこかに引っかかると外れる安全対策もされている。」

 

「まずはそこを確認するか……ふっ、お前らしいな。」

 

 

 617たちもウォルターにドッグタグを付けてもらった。

 お揃いのものが増えるのは良いな。そして、それが"ウォルターの猟犬"であることを示すものとなれば尚更だ。

 

 しかし、何故今になってドッグタグを……

 仮に何か理由があるとしたら……ドッグタグがよく用いられているのは軍事組織でだが、それに何らかの忌避感を覚えていたとかだろうか。

 

 

 


 

 

Side ウォルター

 

 

 612たちは……ドッグタグを喜んでくれているようだ。

 きっと、24時間肌身離さず……とまでは行かなくとも、かなりの割合で付けて過ごすだろう。

 

 ドッグタグを今になって贈ったのには、理由がある。

 

 ルビコンでの仕事が終わった後、612たちには"普通の人生"を送ってもらいたい。だが、今のままでは……恐らく、"ウォルターの猟犬"であることに拘り続けるだろう。

 ウォルターの猟犬"であった"ことを誇ってくれるのならば、それは喜ばしいことだ。だが、ウォルターの猟犬"であり続けようとする"のは……

 

 故に、仕事が終わった後で区切りを付けられるように……ウォルターの猟犬"であった"と思えるようにするために贈った。

 

 本来の用途は、死亡したときの身元確認のためであるが……612がそんなことにはさせないだろう。

 

 このドッグタグは、ウォルターの猟犬であることの証明ではなく、ウォルターの猟犬であったことの証明として使われて欲しいものだ。

 

 いつか……いや、できるだけ早く、その日が来ることを願おう。

 

 お前たち……誕生日、おめでとう。

 

*1
もちろんACに搭載するサイズのままだ





連続して誕生日を迎えることになるので、最後の621の日に盛大にやろうと。


えっ、ウォルターに迎え入れられた日が誕生日でも良いんじゃないかって?アーマードコアの発売日が誕生日でも良いんじゃないかって??

本作時空ではこの誕生日です(職権濫用)

それと、6時21分ではなく18時21分なのは、誕生日会がこんな朝早くからだとアレだよなぁ……という極めて合理的な判断によるものです。決して書き上がるのが遅くなってズラした訳ではありません。いいね。(アッハイ)
なお、この後書きは10:30頃に書いています()

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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