ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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そう言えば、scaryって「怖い」という意味ではありますが、「怖がっている状態を表す」よりは「人を怖がらせる」というようなニュアンスで使うそうですね。
scary movie →ホラー映画 のような感じで。

そうすると、某古王と付き合うあのミッションではまさにピッタリな使用場面……になるんですかね。

英語ネイティブではなく、受験英語としてある種のパズルゲーのようにやっていたのでその辺りはサッパリなのです。



Remember , your hands(hounds) are blooded.

 

Side ウォルター

 

 617たちから出撃したいと言われ、それを612に伝えると

「……次にする訓練で合格点を出せたなら、初めての戦場で死ぬことはまず無いはずだ。」

と言われた。

 訓練に関しては612に一任していたが、その様子を見るとこの短期間で精鋭部隊……とまでは行かなくとも、その1歩手前までは鍛え上げられていた。はっきりと言えば、これだけの練度であれば企業エースと遭遇しても撤退はほぼ確実にできるだろう。

 612からはそのテストの様子を見に来て欲しいと言われていた。いつになく真剣な様子だったため、何かがあるのかもしれないと思っていた。

 

 訓練が始まってすぐに異変は起こった。

 617たちの動きが精細を欠いている……それどころか、一時的とはいえ棒立ちさえしていることもあった。

 最初は機体に異常が発生したときの対応を見ているのかと思ったが、通信の様子が転送されてきて疑問は解けた。

 

 ──617たちは、殺すことを恐れていた。

 

 612が617たちに"人を殺す"ことの重みを突き付けているのがわかった。

 意図しているかどうかはわからないが、そして……この俺にも。

 

 起動直後からの612は感情が無く、ただ淡々と任務を……いや、殺戮をこなしていた。

 613たちもそうだった。身体に異常は起きなかったものの、精神に異常をきたした影響で不良品扱いされ、俺の手に渡ってきた。

 だが、612は再手術をする度に感情を取り戻していた。つまり……人を殺したことの重さも認識するようになっていたはずだ。それにも関わらず、612は罪悪感などに押しつぶされた様子は一切見せなかった。

 

 

 "強化人間にも尊厳はある。普通の人間と同じように過ごす権利がある。"

 

 そう思っていたが、普通の人間に"殺し"は無縁なものであるべきだ。

 あろうことか俺がそれを忘れ、目的を達成するために、そして何よりも612や彼女たちが死なないために強くあって欲しい。そう願ったのだ。

 

 612は「殺すという選択肢を自分の手で選べ。」と言った。だが、それは俺が612や617たちを買ったから……そして何よりも、あの悍ましい強化人間の手術が生まれたから選ばざるを得ないだけだ。

 ……全ての責任は俺にあるはずだ。だが612はそう思っていないようだ。

 

地獄に堕ちるのは俺だけで良い。

いや、俺だけでなければならない。

 

 "ハンドラー"として、できるだけ死ぬ人数が……いや、612たちが殺す人数が少なくなる選択肢を求めて足掻き続けねばならない。それが、生み出したもの、そしてそれに連なるものとしての責任だ。

 

 

 


 

 

Side 618

 

 私──強化人間C4-618は酷く狼狽えていた。

 

 これまでの612先輩は、時々おかしい*1ことをしていたが、それでも私たちへの優しさを感じていた。だけれども、今回は……優しさは一欠片も無かった。

 いつものミッションではウォルターが無線傍受をしてくれているらしく、それも再現されていた。敵の動きが分かればそれだけ戦闘を有利に進められる。そう思って訓練に臨んだけれど……

 

 無線から聞こえてくるのは、苦痛に塗れた悲鳴、命乞い、罵倒、死に際で頭がおかしくなった人間の戯言……およそ戦況分析に役立つようなものは何も無かった。

 耳を塞ごうとしても神経接続だからそんなことはできない。意識だけでも背けようとして声の背景にある雑音のほうに意識を向けると、「あの猟犬の生き残りだ」なんて声が薄らと聞こえた。

 もしかしてだけど、この音声は作り物なんかじゃなくて612先輩が実際に聞いてきたもの……これが本当の戦場。

 

 そう思うと、ただのシミュレーションだと理解していても、今の自分が訓練していることは……そして、早くさせろと強請っていたのが人殺しであると否応なく現実を突きつけられた。

 

 そこからはまともな精神状態を保てる訳もなく、杜撰な動きしかできなかった。いつもならリペアキットを残してクリアできるはずの訓練メニューなのに、撃破されてしまった。いや、今は訓練だから"撃破"で済んでいるけど、これが本番だったら"殺されていた"はず。

 

 這這の体でコックピットから抜け出し、612先輩の下へ向かった。いつもの612先輩なら優しい言葉をかけてくれるはずと信じて。

 

 

「選んで殺せ。」

「殺すという選択肢を、自分の手で選ぶんだ。」

 

 そこには普段の612先輩はいなかった。

 感情が抜け落ちて氷のように冷たい先輩がいた。

 

 ──あぁ、私は甘く見ていた。戦場を、"殺す"ことの重さを。

 そして612先輩は敵を殺したし、613先輩を筆頭に仲間を殺されもした。やらなければやられる、それが当たり前の世界で生き抜いてきた。

 

私は恐れている。死ぬことを。

私は恐れている。殺すことを。

それが今の私がわかっていることだ。

今の私は恐れに満ちている。

全てはシミュレーション……机上の空論に過ぎなかった。

華々しく活躍する私の姿を妄想しているだけだった。

 

 


 

 

Side 612

 

 あの訓練をしてから617たちの動きは悪くなった。特に模擬戦では著しい。

 その中でも618は殊更にひどく、引き撃ちに徹しすぎて攻めるべき場面でも前に出られなくなっている。

 

 ラスティの言葉を借りれば「死ぬことも殺すことも恐れている」……となるだろうな。

 

 だが、戦場に出る前にそれを理解できただけでも大きな収穫だと思わなければならない。流石に4人を庇いながらAC2機以上に攻められると、全員を守り切れる自信はない。

 実戦に立つ機会が下手をすれば数ヶ月単位で遅れるかもしれないが、ウォルターにもあの訓練の必要性は理解してもらえた。と言うよりも、「すまない、お前があの訓練をやっていなければ……俺は大きな過ちを犯すところだった。」と言われた。

 南北戦争とかベトナム戦争とかでも新兵の発砲率が低いって言われてたりしていたからその辺りの対策は抜かりなくやりますよ。*2

 

 とは言え、これを克服できない限り戦場に立たせる訳にはいかないので、早く克服してくれることを願おう。もちろん、本人たちに無理強いをすることは無いが。

 ……例え訓練で克服できたとしても、"本番"の後でどうなるのかが怖いところではあるが。

 

 

 


 

 

Side 619

 

 私──強化人間C4-619は悩んでいます。

 

 612先輩が言っていた「選んで殺す」ことを私はできるのか。

 殺さなければ殺される。私自身だけでなく、仲間を、先輩を、そして主人を。そう考えれば殺すしかないのは明白です。ですが、例え脳を焼かれて強化人間となっても、心の奥底にある人殺しを嫌がる自分を消し去ることはできません。

 

 

 先輩はどうなのかと聞いたところ、

 

「……最初の頃はそう感じる心すら喪っていた。だから初めの1歩をどう踏み出すのかはわからない。」

「それでも、今は守るべきものがあるから立ち止まっていられないだけだ。」

「地獄に引きずり込もうとする亡者の手を踏み潰して前に進む。そうしないと守れないものがあるから。」

 

 そう返ってきました。

 

 

 先輩は強いと思っていました。それでも、実際は強くあろうと見せていただけ。本当はそこまで強くない心でも、私たちを守るために茨の道を進んでいただけなのです。

 

 

 ──私は覚悟を決めました。

 

 

 ただ守られているだけの存在ではいられないと。

 誰かの「生きたい」意志を踏み躙り、私の「死なせたくない」ワガママを押し通すことを。

 

──私も、その茨の道を共に進むことを。

 

 

 


 

 612先輩が付き添う形で任務に出撃することになりました。もちろん、これが初めての任務です。

 ……そうです、私は今から手を血で染める(人を殺す)のです。

 

 

『こちら612と619、ミッションエリアに到達した。事前にあったブリーフィングの通りで敵の展開数はそこまで多くない。いつも行っているMT部隊殲滅の訓練メニューに比べれば半分程度だ。』

 

『……もしも619が動けなくなったとしても、私だけで片付けられる。自分のことだけを考えていれば良い。』

 

『612の言う通りだ。まずは、必ず生きて帰れ。……それがお前の最重要目標だ。』

 

 

 大丈夫です。覚悟は決めています。

 

「了解。619、状況を開始します。」

 

 

 

 ABを起動して基地の上空へと躍り出る。

 

『IFF*3に反応のないAC!迎撃用意!』

 

 標準的な二脚MTが視界に映る。

 FCSがロックオンを完了する。

 

 ──引き金を引く。

 MTのコア部分を貫き、機体が沈黙する(中の人間が死ぬ)

 

 

『こちらへの攻撃を確認!本部に報告!』

 

『……ダメです!通信繋がりません!』

 

『有線通信は!?』

 

『通信機器そのものがハッキングされています!』

 

 

 相手は通信を遮断されて混乱しています。体制を整えられる前に可能な限り殲滅しましょう。

 

 

『なんでここにACが来るんだ!』

 

『やだ!こんなところで死にたくない!』

 

『もう第3小隊が全滅しているんだ!勝てるわけが無い!』

 

 

 ウォルターのおかげで増援は来なさそうです。

 今はAC操縦のために身体機能の一部も脳深部コーラル管理デバイスの管理下にありますが、それでもなお胃から込み上げてくるナニカが感じられるような気がします。

 

『……機器からケーブルを引っこ抜いて直接モールス信号で送れ!異常発生だけでも知らせるんだ!』

 

 ……もしかしたらモタモタしていると増援が来るかもしれない状況になりました。

 今は目の前の敵を殲滅することに集中しましょう。

 

 

『612、敵増援に備えて広域スキャンモードで待機しろ。こちらでも増援の確認を最優先にする。』

 

『612、了解。』

 

 

 


 

 

 

『……基地及び周辺に動くものは無い。殲滅は完了した。』

 

 こうして私の初めての任務は完了しました。

 あの訓練の前よりは少しだけ動きがぎこちなかった自覚はありますが、それでも最後まで遂行することができました。

 

「ウォルター、619状況を完了しました。」

 

『了解した。敵の増援は確認されていない。それでも周囲を警戒しつつ所定のルートで帰還しろ。』

 

「619、了解。」

 

 

 あれから敵の増援と遭遇することも無く帰還し、コックピットから降りて自分の掌を見つめました。

 

──血で汚したこの手を。

 

 

 ……これでようやく、あの人と─612先輩と同じところに立てる。

 

 もう、私は迷いも立ち止まりもしません。

 

 

 強化人間の実験体として売られた私に、新たな人生を与えてくれたウォルターに報いるために。

 私を育ててくれた612先輩と背中を守り合えるようになるために。

 

 そのためなら、もうこの手を汚すことを躊躇ったりはしません。

 

 もう綺麗にすることなんてできないのですから。

 

*1
自分の命を顧みていないように思えるほど敵に接近し続ける戦い方とか

*2
実はここでアンジャッシュのすれ違いコントが起きている。

*3
敵味方識別装置





タイトルにもチラッと出しましたが、618の独白の最後は歌詞をモチーフ(というよりは618に当て嵌めた?)にしています。
そう、あのRememberですね。

書いている途中にビビッと来たのでいれちゃいました。

それと、ウォルターの独白で察した方もいるかもしれませんが、ルビコンを焼き尽くす第2のアイビスの火√がこれで遠ざかりましたね。
きっとこれには621もニッコリ。


ちなみにですが、前から書き溜めをしていた訳ではなく、ある程度流れが作れて9/18くらいから見切り発車で書いているので次話の投稿日は未定です。
621加入回はある程度書けていますが、今話の次にするのかもう少し間の話を挟むのかが決まっていないのです。

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

  • C4-617
  • C4-618
  • C4-619
  • C4-620
  • C4-621
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