ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話 作:CVn-α:コル・カロリ
サブタイトルの元ネタは、お察しの通り「虎の尾を踏む」です。
Side ???
惑星封鎖機構の通信端末にハッキングを開始……完了。
……オーバーシアーがHCセラフを撃破したことにより、封鎖機構は追加の戦力派遣を断念。コーラルの星外輸出を取り締まる方向へ方針転換。
私の計画が……
……いえ、まだやりようはあります。この際プライドは抜きです。保有する戦力を全て出し尽くしましょう。
ゴーストを用いて弾薬庫、その他軍需物資生産施設を襲撃し破壊。これにより解放戦線の継戦能力は大きく減少。その隙に秘匿していたアイビスシリーズでリリースプラントに重大な損傷を与え、ルビコンをコーラルで充満させる。
リリースプラントの地下にあるコーラル溜まりを刺激できれば、噴出分と大気中での増殖分を合わせることで……およそ2ヶ月で"コーラルリリース"は成る。
そして、オーバーシアーはリリースプラントの復旧に全力を注ぐでしょうが、その間に"あの人"を取り込む。また、他のコーラル溜まりも刺激して地表へと噴出させることで、リリースプラントを復旧されたときの予備プラン、あるいは再度リリースプラントを破壊するための時間稼ぎとする。
この方法では"あの人"を確実に取り込むことはできませんが、最悪の場合でも計画が完遂された暁には何とかなるはずです。
ハウンズとレッドガン、有力な戦力が大きく損耗している今でないと勝ち目は無い。
……いざとなれば、ハウンズを無理やりにでも1機撃破して──身体の方に致命傷を負わせて──、Cパルス変異波形とする形でなければ助からないと脅迫するのも良いでしょう。私への協力を対価として。
ええ、そうでした。何も、敵を全て撃破する必要はありません。利害の一致、脅迫……使える手段を全て用いて、"敵でなく"すれば良いのです。
Side 612
オールマインドがこのタイミングで動いたか。
正直に言えば、HCと交戦している最中だったら地上の火消しが完全に不可能で、今頃は戦線をさらに大きく突破されていた可能性もある。となると、オリチャーを走り始めた可能性もあるが……コレが既定路線の可能性もある。
ヤツの暗躍力だけはルビコン随一だ。ある意味、1人で全てを動かしているようなものだからな。何を企んでいるのか、きっちりと証拠を揃えた上で阻止するのは不可能だ。コトを起こされてから対処するしかない。
……事前に対処するのであれば、それこそ"前世"の知識をウォルターやカーラに話すことになる。そして、フロムゲーの定めとして作中で多くが語られることは無い。故に、オールマインドの正体に確信を持てない以上、それは様々な面から悪手にしかならないと判断していた。
それに何より、もはやこの世界は私の遊んだ"ゲーム"とは全くの別物になっている。
617たちは全員生き残り、ウォルターとエアが同じ道を歩んでいて、コーラルに関する問題も地中に"還す"ことで解決の道筋が明確になっている。
もはや"ゲーム"の知識は何の役にも立たないだろう。正確に言えば、《"この世界"ではまだ知ることができていないが、"ゲーム"の知識として知っている》コトは無いに等しい。
この世界でC4-612として目覚めてから、既に丸10年は経過している。ストーリー部分だけを考えれば100時間にも満たないプレイ時間であり、そこから得られた知識がどうして"今の私"を越えられているだろうか。……400時間程度のNESTでの対戦経験も、最初の頃には参考になっていたが、今では思い出すことすらほとんど無い。
「ウォルター、ハウンズはギリギリまで休ませてくれ。その間に機体整備をして、出撃準備を整えて欲しい。」
「わかった。解放戦線から地上への増援要請が届いているが、それにはレッドガンを既に向かわせている。」
「ハウンズはリリースプラントの敵を排除。その後速やかに解放戦線の増援に向かう。」
弾薬庫やその他軍需物資を生産している工場が破壊されたりしたが、ザイレムに積まれているAC向けのパーツや弾薬は全て無事だ。恐らく、ザイレムの方にも破壊工作を仕掛けてそれが事前に露呈、オーバーシアーに気づかれて他の所でも対策をされて……となるのを避けたかったのだろう。
617たちにはもっと休息を取らせてやりたかったが、機体の整備完了が近いのでもう行動を起こさないといけない。
連戦*1に次ぐ連戦*2になるから、疲労によるミスには一層気を付けねば。
私は休めたのかって?十分な休みは取れていないが、敵はそんなのお構い無しだ。寧ろ、消耗している今だからこそ畳み掛けてきたのだろう。
休むのはこの戦いが終わってからだ。そうすれば、次の戦いはどんなに早くても封鎖機構の増援第二陣(今のところは兆候無し)になるだろう。それまでには十分すぎる時間がある。あるいは、これが最後の戦いになる可能性だって十分にある。
「ハウンズ、十分とは言えない休息だが次の戦いだ。」
「目標は、リリースプラントの防衛。」
「現在、リリースプラントは内側から攻撃を受けている。このままでは、大規模なコーラル溜まりから外部までが繋がり、下手をすれば"破綻"を招きかねないほどの漏出になる恐れがある。」
動いているのは十中八九オールマインドだ。そして、その目的はコーラルリリースだろう。
リリースプラントを破壊しようとしているのも、コーラルをルビコンに充満させて"破綻"を引き起こそうとしていると考えれば辻褄は合う。
だからこそ、オーバーシアーが取るべき手段は至ってシンプルだ。
「プランは至ってシンプルだ。現地に向かい、見つけた敵を片っ端から排除する。敵の戦力が不明な今は、この程度しか方針を決められないだけでもあるが。」
リリースプラントを破壊させなければ良い。あるいは破壊されてしまったとしても、その後の復旧作業への妨害をさせないためにここで叩きのめす。
……一つだけ気がかりがあるとすれば、619が主導となって立てていた「あのプラン」だ。
アーキバスによる襲撃のときは私が現地で指揮を執ったから阻止できたが、今回もずっとそれをやれる保証は無い。621が探りを入れてくれるのを待つか?しかしそんな時間も無いだろうしな……
まあ、いざとなれば私が死ぬ気で動けば良いだけの話だ。
オーバーシアーの一員として……そして、617たちの兄としてやるべきことをやるだけだ。
あの
私が前に立てていた計画を再稼働させる機会ではありますが……
「619、あの"計画"をもう一度やるつもりですか?」
「いえ、やりませんわ。仮にまた同じような機会が巡ってきたとしても、少なくとも私が実行に移すことは二度とありませんわ。」
ええ、あの時の私は"自由になったお父様とお兄様"のために計画を練っていました。ですが、ルビコンが再び大火に包まれた後に──これまでの"仕事"が全て無に帰したときに──、果たしてお父様とお兄様は自らの幸せを考えてくれるのでしょうか。
恐らく……いえ、確信を持って言えますが、お父様とお兄様は第2のアイビスの火を防げなかった罪悪感に苛まれ続けるでしょう。
"自由"というどこまでも続く道を、ズタズタになった裸足で歩き続ける。そこに"幸せ"はあるのでしょうか。
そして、お父様とお兄様はその罪悪感からは逃れられない。
いえ、"死んで逃げること"ですらも許されない。……私たちを遺すことになるからですわ。
だからこそ、例えコーラルを管理し続ける必要があろうとも、オーバーシアーとしての"仕事"を完遂する。それがお父様とお兄様の幸せへの近道だと理解できましたわ。
「私も同じ。例え私たちだけの手で成し遂げたとしても、2人とも自分の責任として全てを抱え込むはず。」
「そうですね。私たちは"自由"が尊ばれるべきものだと頭では知っていても、その使い方を知りませんから。……えぇ、あの時の私たちはまだまだ未熟でしたね。」
「……という訳ですから、621。別にコソコソしなくても構いませんわ。……なるほど、あの時の私たちの"計画"はお兄様に筒抜けだったようですわね。」
621が私たちに協力してくれていたのも、お兄様からの指示だったのでしょう。……お兄様が私たちのことを愛しているからこそ、些細な様子から何かを企んでいると勘づいたのでしょう。そして、621がそれに加担していないことにも。
まったく……お兄様からこんなにも愛されているなんて幸せですわ!!
「619姉さんが急に壊れたようなカオをし始めたけど……まあ良いわ。兄さんが気付いていたのは正解よ。」
お兄様、安心して下さい。私たちはもう間違えませんわ。
「……急に冷静になられてもそれはそれで怖いわね。」
リリースプラントに到着した。
攻撃されているのが内側からだから、当然外では何も起こっていない。寧ろ、外側でも戦闘が起きていたら、コーラルの漏出が秒読みの段階ということだ。
「場所によっては、高濃度コーラルの影響でレーダーが動作しない、あるいは機体が侵食されて継続的なダメージが入る可能性がある。異常があればすぐに報告しろ。」
大型重機や資材搬入のために設けられた出入口から入る。
損傷を検知している区画とリリースプラントの見取り図を照らし合わせると、コーラルの流路に沿って侵攻しているようだ。
「アイビスシリーズと……未確認機体のお出ましか。それなら……621、未確認機体を任せた。617,618,619,620、この2機を任せる。」
未確認機体とは言ったが、あの見た目は"コーラルリリース"で戦ったオールマインド製の機体だろう。621なら"ゲーム"ではなく、"実際に"撃破している。私よりも621の方が適任だろう。
「私は奥へ進んで、リリースプラントの隔壁破壊を阻止してくる。」
617たちはアイビスシリーズの足止めを遂行してくれている。
戦況も優勢で、再起動をされる程度なら問題ないだろう。そして、恐れるとしたら再々起動だが、それはジェネレーターを木っ端微塵にすれば防げる。最初に戦ったときのような失態はしないだろう。
621から、617たちが"計画"を放棄したことは聞かされている。だから後顧の憂いは無い。
オールマインドとの戦いに決着をつける事に集中しよう。
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コーラル溜まりと外界とを隔てる空間。そこに1機のACがいる。
隔壁を破られた影響からか、この空間は高濃度のコーラルで満たされている。しかし幸いなことにコーラルを地中へ還すための機構は正常に動作していて、EN ANOMALY の表示こそ出ていても機体への侵食はまだ起こっていない。
『……随分と早い到着ですね。私の予想ではもう1時間は粘れていましたが。』
……待て、まさかその機体は。
「貴様……どこでその機体を……いや、そんなことはどうでも良い。」
『おや?この機体を知っていると……いえ、技研の生き残りたるハンドラー・ウォルターにシンダー・カーラがいれば知っていても不思議ではありませんか。』
まさか
「オールマインド、貴様の正体はもはやどうでもいい。……ソレを穢した。ただその1点だけで殺すには十分な理由だ。」
ああ、少し前に"ゲームだった頃の知識は役に立たない"と言ったが……今の私は随分と"ゲームの知識"に引っ張られている。
ソレは……ウォルターのモノだ。
『感情を失った強化人間……いえ、再手術を経てその機能は取り戻しているはずですが、まさかここまでとは……気を抜けば噛み砕かれそうです。』
「噛み砕く?生温いな。存在していた痕跡の一切を消し去ってやる。」
ENの消費が通常の2割程度にまで抑えられている。ブレードキャンセルを多用して距離を詰める。
向こうのコーラル兵器も威力が上がっているが、それは障害にはならない。
『オーバーシアーもこの武装のデータは所持していなかったはず……それなのにこうも当たらないとは……?!』
また"ゲーム"の記憶に助けられるとはな。武器のモーションは覚えていたから、今のところ大きな被弾はしていない。
コーラルシールドが多少厄介な程度か。ダメージレースで2:1程度しか有利を取れていない。この環境なら……IGでなくともAPダメージ,衝撃値共に7割程度抑えられている可能性すらあるか。
ブレードキャンセルで詰める。マニュアルエイムに切り替えて、QBを吹かしてコーラルシールドが無くなった隙にSONGBIRDSを叩き込む。付近のコーラルを多少巻き込んで爆発しているから、ダメージも衝撃値も増加しているだろう。
スタッガーしたからパルスブレード……を後方QBで即座にキャンセル。アサルトアーマーを誘発できた。しかし、250m程度は距離を取っていたはずだが、多少ダメージと衝撃値が入ってしまった。付近のコーラルも巻き込んだことで威力も範囲も増えたのだろう。
今度はオールマインドの方から距離を詰めてくる。私の衝撃値は5割程度溜まっているから、ここでスタッガーを取りきってダメージレースで優位に立つ算段だろう。
距離をやや空けてからミサイルを撃つ。コーラルシールドで防がれるが、回避されて当たらないよりは遥かにマシだ。
200m程度距離を空けたところで、コーラルブレードのチャージ横薙ぎ。ABを即座に起動して左側から後ろへ抜けるように機動を……っ?!
"ゲーム"の記憶からはかけ離れてコーラルライフルのフルチャージ並の太さになっており、躱しきれずに被弾。そこにすかさずフルチャージされたコーラルライフルを撃ち込まれる。こちらは……直径だけで見ても"ゲーム"の2倍は下らないだろう。
リペアキットを使った直後にアサルトアーマーを発動。スタッガーさせられるが、APはギリギリ持ち堪えた。
コーラルブレードは冷却が間に合っていなかったのか、こちらが動き始めてから振りかぶってきた。リペアキット2つ目を使って蹴りで迎撃。怯ませたところでパルスブレード2段。2段目をコーラルシールドで軽減された。
これまでのダメージ量を1:1程度に持ち込まれたのもまずいが、それよりもさっき浴びせられたコーラルの奔流も中々にキツい。621はこれよりも大量のコーラルを……それこそ致死量のコーラルを3度も浴びていたのか。
キツいとは言っても、思考や感覚が鈍るようなものではない。寧ろその逆で、研ぎ澄まされすぎているような感覚だ。フロイトとの戦いで30秒間だけ使った機体操縦権限の全移譲と似ている。それをAC周辺の空間にまで拡張させたような感じだ。情報の処理に脳と私の思考が追いついていない。
……落ち着け。まずは回避に集中だ。
これに慣れてしまえば良いだけの話だ。余計な情報を削ぎ落とせ。
コーラルライフルを持つ腕を上げた。
腕部ブースターから炎が見えた。この攻撃はブラフ。
コーラルミサイルのチャージ完了が間近だ。マニュアルエイムに切り替えてランセツをスタンバイ。
発射に合わせてランセツで撃つ。命中して爆発。無力化どころか、オールマインドにダメージが入っただろう。
左腕を大きく下げた。即座にクイックターンからのABで距離を大きく取る。
背後からコーラルが迫る気配がする。右前方へのAQBで時間をやや稼いで横薙ぎを回避。
コーラルライフルの1段階チャージ射撃。銃口の向きからして、QB回避をする前提で回避後の位置を狙っているのがわかる。
何もせずにそのまま直進。弾は横を通り過ぎて行った。
ああ、ドーザーの妄言として拾える"情報ログ"にはこんなことが書かれていたな。
《パチパチ弾けて 脳みそ幸せだぜ》
今の私は、まさにそんな状態だ。
そこからはもはや一方的な蹂躙になった。
攻撃は予備動作で見切り、ブレードキャンセルでまとわりついて常に圧をかけ続ける。
攻撃を避けるために後方へQBを使えば、その度にSONGBIRDSを撃ち込む。コーラルシールドがあろうと上から削りきれば良いだけだ。
そして、今の私にはそれができる。
『コーラルの奔流で戦闘力を低下させられたかと思いましたが、まさかこうなるとは……やはり
「イレギュラー……か。なるほど、私もそう呼ばれるようになったか。」
どうやら、私が背負っている"612"の名前に偽りは無かったようだ。
「オールマインド、お前がコーラルリリースを経てどんな秩序を作ろうとしているのかは知らないが、私には関係の無いことだ。ここでお前は消えるからな。」
『あなたにとっても、この"コーラルリリース"は悪くない話のはずです。コーラルで宇宙を満たせば、あなたが喪った"家族"もCパルス変異波形として取り戻せ──
最後で聞くことも無く蹴りを叩き込む。
死んだ者は蘇らない。過去から未来まで、変わることのない事実だ。
そして何より、私自身が613たちと622の死を受け入れている。……私が前に進むためにも。二度と喪わせないように、私自身への戒めのためにも。
──ぐっ……聞く耳すら持ちませんか。ならば……』
それを踏み躙ろうとしたお前は……ここで消す。
オールマインドの機体はもはや限界だ。次の一撃で破壊する。二度と私たちの邪魔をできないようにするために。
そして私はHI-32:BU-TT/Aをチャージ斬りで振りかぶった。
戦闘中ですが、文字数が7000を越していい展開になったのでここでTo be continuedです。
次話で戦いの後始末だったり戦線をぶち抜かれた解放戦線への対処だったりを書いて良い感じの文字数になる……というガバガバな見立てです()
ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)
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C4-617
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C4-618
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C4-619
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C4-620
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C4-621