ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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これにて5周目もお姉妹……いえ、お終いです。

もしかしたらちょこっとした小噺を挟んでから6周目かもしれないですし、良い話が思いつかずにそのまま6周目かもしれないです。




────の解放者

Side ウォルター

 

 

 612たちの活躍により封鎖機構の突出部は全て刈り取られ、完全に包囲された封鎖機構は撃破,投降を含め全て無力化された。現在は追加の増援が確認されていないため、ゆっくり休息を取らせることができている。

 エアによると、封鎖機構はHCセラフの撃破を受けてルビコンの封鎖を断念。代わりにルビコン周辺での輸送船取り締まりに切り替えたようだが、今回の失態を受けて軍を基盤とする派閥の求心力が低下。その隙を突いて内務系の派閥が伸長し、内密にルビコン解放戦線と接触すらしていると聞かされた。

 

 リリースプラントの修理計画も策定され、必要な物資,人員の調達も滞りなく進む見込みだ。俺が引き継いできた"仕事"は完成間近と言って良い。

 だが、"破綻の阻止"は達成されても、今度はコーラルの密輸阻止やリリースプラントの管理のような仕事が生まれる。それこそ、コーラルの危険性を未来永劫に渡って伝えるために教育や政治にまで首を突っ込む必要すら出てくるだろう。もちろん、俺やカーラが死んだ後でもそれは継続されなければならない。

 

 そうなると、俺たちの跡を継ぐ人間が必要になる。

 

 ……正直に言えば、実務能力やその他諸々を鑑みても612以上の適任はいないだろう。

 ハウンズの実力を以てすれば、星外からの武力行使は跳ね返せる。また、612であれば解放戦線(後々は実質ルビコン統一政府になるだろう)との折衝も任せられる。612の跡を継ぐ人間については……気が早すぎるだろうが、その選定、あるいは教育も上手くやってくれるだろう。

 

 それを踏まえても尚、612をオーバーシアーの後継者とすることに躊躇っている。その理由は……

 

 

「それで、オーバーシアーの跡継ぎは……612にでもするのかい?」

 

「そのことだが……正直に言えば迷っている。」

 

「実務面で言えば文句無し……どころかすぐにでも譲りたいくらいさ。だけどまあ……迷っている理由は何となくわかる。」

「612を……いや、ハウンズをこれ以上オーバーシアーに縛り付けたくない。違うかい?」

 

 

 カーラの言う通りだ。

 612を筆頭に、ハウンズは長年オーバーシアーに貢献してくれていた。それこそ、612に至っては最近になって丸10年の付き合いを越した。617たちが5年、最後に加わった621でも3年以上だ。

 そして、612たちは俺のような老い先短い人間とは違い、未だに青年と呼べるような年齢だ。この先も数十年はオーバーシアーに縛り付けることになってしまう。

 

 

「ああ。そもそも、612たちは"買われた"存在だ。こうしてオーバーシアーに所属しているのも、自由意志で選択した結果ではない。」

「前に、"自由意志の下に俺の仕事を手伝う"と言って貰えたが……今思い返せば他の選択肢は無かった。仮にあの時に俺の下を去っていれば、コーラルの破綻によってその後の全てが台無しになっていてもおかしくなかった。」

 

「なるほどね。ただオーバーシアーに縛り付けるだけじゃなくて、"自分の自由意志で選んだ"と思わせただけに余計にタチが悪かったと。そう言いたいんだね?」

 

「そうだ。」

 

 

 

 ……ああ、俺はどれほどの罪人なのだろうか。

 

 

 613,614,615,616はハウンズとしての作戦中に死んだ。

 

 617,618,619,620,621はハウンズとして多くの人間を殺めてきた。これまでの戦闘を全て合わせれば、1人あたり1000人は下らないだろう。

 

 612は……それだけではない。これからもオーバーシアーの一員として人生を縛り続けられるだろう。

 

 

 一体どれだけの人間の人生を歪めてしまったのか。

 

 そして、それにどれだけの人間を巻き込んでしまったのか。

 

 

 例え、コーラルによる破綻を防ぐためだったとはいえ……その罪から逃げることは許されない。

 

 

 

 

善良な科学者もいた

男の罪を肩代わりし 全てに火を点け…

そして満足して死んだ

 

 

 その善良な人間でさえそうしたのだ。ならば、俺も全ての罪を背負い……地獄の業火で焼かれ続けて償うべきだ。例えそれが魂魄100万回生まれ変わろうとも償いきれないものだとしても、だ。612たちには一欠片だろうと背負わせるつもりは無い。

 

 

 それが、使命から解放された後の俺がするべき"仕事"だ。

 

 

 

 

 

 612はルビコンの解放に大きく貢献した。

 今度は、ルビコン……あるいはルビコンでなくともどこでも構わない。

 

 612たちの可能性を広げるために俺たちは動かねばならない。

 

 

 

"5周目"

END『ルビコンの解放者』

 

 

 

 

 


 

 

Side 621

 

 

「……揃いましたね。それでは始めましょうか。」

 

 

 今は617姉さんたちとエアが集まっている。父さんや兄さんはいない。……と言うよりは、父さんと兄さんには聞かれたくない話みたいね。

 

 

「単刀直入に聞きましょう。……お兄様の様子が最近変わったと思いませんか?」

 

「……そうだね。吹っ切れた感じがする。」

 

「オーバーシアーの仕事がひと段落して落ち着いた……という訳でもありませんわね。」

 

「そうですね。肩の荷を下ろしたと言うよりは、余計なものを捨て去ったような感じでしょうか。」

 

 

 620姉さんの言う通りね。ただ、それが合っているとしたら"捨てたもの"が何かわからないわ。

 人とコーラルが共生する未来……なのかしら。コーラルがルビコンの外に持ち出されないように、全てのコーラルを地中へ還そうとしている訳だし。同じルビコンという惑星に存在していたとしても、手を取り合っている訳じゃない。ただ抑圧し続けるだけ……そう思われても仕方のないことをしている自覚はあるわ。

 

 

「現状だと、人とコーラルが共生できているかって言われると……何とも言えないわ。もしかしたらその辺りを気にしていたんじゃないかしら。」

 

「なるほど。確かにコーラルは地中へと集められ、地上に出てくるケースは激減するはずです。そう考えれば、人間によるコーラルの抑圧……そう捉える人間がいてもおかしくはありません。」

「……私は同胞のそのような処遇も含めて、この計画に協力しているから気に病まないで下さい。」

 

 

 エアにも随分と気を遣わせてしまっているみたいね。

 

 ……ドアがノックされた。多分兄さんかしら。

 

 

「入っても良いか?」

 

 

 617姉さんと619姉さんはボードゲームで対戦しているフリをしている。618姉さんと620姉さんは本を開いて、エアは私に寄りかかって私を吸っているフリをする。……フリじゃなくて本当に吸っているわね。

 

 

「大丈夫ですよ。お兄様。」

 

 

 兄さんや父さんが来るかもしれないと思って、こうして誤魔化す準備をしておいて正解だったわね。まだ確信が持ててない以上、ズケズケと踏み込む訳にもいかないから。

 

 

「寛いでいたところだったか。こうしてまとまった休みを取れるのが久しぶりでな。……時間を持て余していたんだ。迷惑じゃなかったか?」

 

「お兄ならいつでも歓迎。」

 

「そうですね。……とりあえずこっちに来てください。」

 

 

 618姉さんと620姉さんが本を読む(フリをしていた)手を止めて兄さんを呼び寄せる。あっ、抱きついて吸い始めたわね。

 

 

「617、さっさと終わらせますわよ。お兄様を待たせていますわ!」

 

「619がお兄様を待っているのでは……あっ、チェックメイトです。」

 

「ンギッ?!まだそのナイトをポーンで取れ……キャスリングで動いてきてたルークの射線を忘れてましたわ。」

 

 

 ……多分これも2人の仕込みね。619姉さんが兄さんに気を取られてミスをした……なんて筋書きにしたいんだと思うわ。きっとそうよ。*1

 

 

 兄さんの様子を見ていても、私たちに構っている間は今までと変わっていない。私たちのことがどうしようもないくらい大好きで、私たちからも愛されて幸せそうにしているその姿のまま。

 

 

 私たちの思い違い……なのかしら。

 

 そうだと……良いのだけれども……

 

 

 


 

 

Side エリー

 

 

「……なるほどね。まさかこうなるとは思ってもいなかったわ。」

 

 

 彼が妹たちとの時間を過ごした後、私のところへやって来た。

 いつも通り、彼女たちに(ギリギリ健全な)アレコレをされてから私を"使う"ために来たのかと思っていたけれども……普段と様子が違っていた。

 

 

「まさか、"弱い自分"を切り捨てるなんてね。」

 

 

 諜報に携わる人間の中には、潜入のために何度も"新たな自分"になった人もいた。そんな人間は、何時しかどれが本当の自分だったのかを見失い、取り戻すことを諦めて、"自分を捨てる"選択をすることもあった。

 そんな人間を見てきたからわかったのだけれども、今の彼にはそんな"自分を捨てた"人間の雰囲気がある。だけれども、全てを捨てた訳ではない。それどころか、余計なものを削ぎ落とし、研ぎ澄まされた刃を思わせる雰囲気ね。

 

 

「今のあなたは、人間……と言うよりは、もはや人間だったナニカって表現する方がしっくりくるわよ。」

 

「人間だったナニカ……か。ある意味、当たらずとも遠からずかもしれないな。」

「脳を焼かれ、ACを動かす機能以外を全て失っていたんだ。例え再手術をして取り戻そうとも、"普通の人間"と同じように再び成長するはずは無いだろう?」

 

「待って……そんな……それじゃまるで……」

 

 

 普通の子供なら、両親から愛情を注がれて育つはず。そうでなかった子供は、普通の社会にはあまり馴染めずに希薄な関わりだけで生きるか……あるいは、裏の世界で生きることになる。

 いわゆるスラム街で育ったような子供なら、運が良ければ孤児院に入れて普通の社会との接点を確保できる。でも、大半の子供はギャングの構成員になったりするか……争いに敗れて死んでいく。

 

 確かに、彼は愛情……と呼んでも良いものを注がれてここまでやって来たわ。だけれども、親に相当する人間は"使命"に縛られていて、それのために己の人生を費やそうとしていた。

 そして、子供に相当する彼は、その背中を見て……今や共に並んで生きてきた。途中で背負うものもできてしまった。故に、投げ出すことすら叶わない。

 

 

 さっきは"ギャングの構成員"なんて例を出したけれども、それよりも悲惨な例もあるわ。

 

 何らかの思想を掲げる集団に拾われ、洗脳され、少年兵として使われる子供もいた。中には戦いを生き残り、大人になった人間もいた。その人間たちは、主体的に思考,判断をする能力を取り戻していたと言っても良かった。

 ……別に洗脳が解けていた訳じゃないわ。()()()()()()()()()()()()()"その思想に殉ずることが当たり前だ"と思っていた。

 

 今の彼は……それと同じよ。

 

 

 

 

 

「だが、()()()()()。617たちの兄にして……なにより、ハンドラー・ウォルターの猟犬だからな。それ以外の生き方は知らないし、()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 今の彼は、少し前に話していた"兄としてかくあるべき姿"を完璧に実現してしまったのかもしれない。だからこそ、それが崩れ去ることを恐れている。

 それでも、彼なら死ぬまでずっとそれを維持してしまうのかもしれない。それだけの能力的な下地はあるし、経験もこれから積み重ねるはず。

 

 

 今の彼は、"自由"になった人間からは程遠いわ。

 

 

 自分で自分を動かす操り人形。

 

 自分の定めた生き方に殉じる奴隷。

 

 自分が描いた物語を遂行するための"主人公"。

 

 

塗り固められた(ARMORED)本心(CORE)

 

 

 

 そんな形容が思い浮かんでくる。

 

 

「……だが、"一度生まれたものは そう簡単には死なない"」

「切り捨てたはずの"弱い(前世の)私"が再び出てきたら……お前を"使わせて"もらうかもしれないな。」

 

 

 ……はぁ。内心では散々に言ったクセに、こうして彼から必要とされるかもしれないと思うと、何だかんだで嬉しく思っちゃうのよね。

 要らないものを"捨てる"ために私は手元に置かれているだけだけれども、彼が彼の望む"完璧な自分"であるためにはそれが必要で……だから、オマケ程度ではあるけれども守ってもらえている。オマケ程度だとしても、このルビコンでここ以上に安全な場所なんて無いのだから。

 

 

 ホンッッット、惚れた弱みってヤツよね。

 

 

 


 

 

Side 612

 

 

 ハウンズの……いや、オーバーシアーの"仕事"は大きな区切りを迎えた。コーラルの破綻を防ぐ手段が完成し、それを管理,維持するフェーズになった。

 だが、このフェーズの方が本番と言えるだろう。ここで失敗すれば、再び破綻阻止のために奔走することになる。場合によっては"第2のアイビスの火"を起こす必要にすら迫られるかもしれない。

 

 今の私が為すべきことは、星外からの敵の排除や、ルビコン解放戦線……いや、ルビコン統一政府との折衝だけではない。更なる次代の育成も考えなければならない。

 "次代"には617たちがいるだろうって?私が言っている"次代"はその程度ではない。私が死んだ後のことだ。……無論、617たちを遺す訳にはいかないから戦いの中で死ぬつもりは微塵も無い。天寿を全うしてやる。

 だが、それだけの年月が過ぎれば、アイビスの火を直接知る人間はとっくのとうに死んでいる。今回のルビコンを巡る一連の戦いを生き延びた人間すらも少なくなっているだろう。そうなれば、コーラルに対する危機感は薄れ、あるいはコーラルの利点にだけ目を向けて我がモノにせんと企む輩が出てくることは想像に難くない。

 その輩が、ただの一個人や企業程度ならまだマシな方だ。ルビコン統一政府の支援下でハウンズ、或いはその後釜となる武力組織で叩き潰せば良い。最悪なのは、その輩がルビコン統一政府の内側から出てくることだ。それを阻止するためにも、オーバーシアーの理念を理解した人間を増やす必要がある。それこそ、政府の中枢に食い込むレベルには。

 

 

 

 思い返せば、随分と遠くまで来たものだ。

 10年と少し前に、この世界でC4-612として私は目覚めた。今になって思い返せば、その時から私は"歪み"始めていたのだろう。

 

 感情の機能すらも失った人間の脳に、感情を失っていない人間の意識が入ればどうなるだろうか。そのまま正常に馴染むはずが無い。例えるのなら……鉛筆と消しゴムしか手元に用意されていないのに、色彩豊かな絵を描けと言われているようなものだ。

 そして、感情も含めた様々な機能を取り戻す手術を受けはしたが、それは既に遅かった。一度歪んだシワ寄せは必ずどこかに現れる。

 

 私が"兄"であることに……何より、ウォルターの猟犬であることに拘るのもその現れなのだろう。

 

 前世での家族も失い、かつて頼りとしてきた規範も道徳も倫理観も大きく変わり……何より、全く別の肉体、脳に移り変わった。寧ろ、"前世の"と但し書きが付いたとしても"私"だと認識できていた方が不思議なくらいだ。それこそ、《冷凍保存されている間に、やたらとリアルな夢で誰かの人生をその人視点で覗き見していた》と言われた方がよっぽど納得しやすい。

 

 そんな理由から、私は"私"であり続けるためにわかりやすい"役割"を求めたのだろう。それが、"兄"であり、"ウォルターの猟犬"であっただけで。

 

 そして、これまでの私はその役割を果たし続け、その過程を経てその認識はより強固なものとなった。

 最初の頃はあっても無くても大差ない程度のものだっただろう。だが、今となっては必要不可欠なものに……いや、それが"本当の私"に成り代わるまでに強固なものとなった。

 

 

 

 

一度生まれたもの(歪み)は そう簡単には死な(治ら)ない

 

 

 

 

 

 ウォルターたちの仕事は終わった。コーラルとそれを取り巻く使命に縛られ続けたのもこれで終わりだ。

 

 だが、この宇宙からコーラルは消えていない。

 

 故に……私がその使命を引き継ごう。

 

 

 

 

 コーラルを観測し、いざとなれば火を点けるその使命を。

 

 

 

 

 恐らく、私は残りの人生をこの使命に費やすだろう。だが、それで良い。

 ウォルターは今も生きている。そして、ウォルターを縛り付ける使命は私が──C4-612が引き継いだ。

 

 ……そう、これで良い。

 

 

 

 

 

 

ウォルターは自由になれたのだから(私は一生果たし続ける役割を得たのだから)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"5周目"

『ルビコンの解放者』

END『ウォルターの解放者』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
そっ、その通りですわ!流石621ですわね!!





5周目は、ルビコンの解放者ではなく「ウォルターの解放者」となりました。

いや〜、ウォルターも、617,618,619,620,621も、なによりお兄様も生存してルビコンの夜明けを切り拓けましたね。きっとこれにはラスティもニッコリ。カーラとチャティも笑ってくれていることでしょう!


使命はお兄様が引き継いでくれたからオーバーシアーは安泰だよ!やったねウォルター!()







お兄様が"兄"になったのは、《脳を焼かれた強化人間の身体》に、《感情を持った人間》が《転生》したからだったんですね。キッチリと転生したことを伏線として回収できて私は満足です()

いや〜……6周目は果たしてどうなるんですかねぇ?


あっ、ちなみにですが……
この作品を書き始めた段階で5周目のプロットは完全な白紙だったのでオリチャーを完走しきったことになります。破綻した設定の妥当な末路にならなくて一安心です。

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

  • C4-617
  • C4-618
  • C4-619
  • C4-620
  • C4-621
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