ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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遅れました(切腹済み)
サブタイトルが中々思いつかなかったせいです(白目)



ウォルター、後ろ後ろ!!

 

 

Side ???

 

 

 何とかあの場を切り抜けることはできましたが、もはや私が表立って動くことは不可能でしょう。

 ええ、私が動くことは不可能ですが……盤面が整うのを待てば良いだけです。時間ならいくらでもある。ルビコンから惑星封鎖機構も排除された今であれば、大掛かりな計画を自ら作らずとも隠れ潜むだけで良いのですから。

 ただ、独自に戦力を保有するためにも動く必要はありますが……既に技術の解析は済んでいる。どうとでもなるでしょう。

 

 

 


 

 

Side ウォルター

 

 

 エアからコーラルリリースに関する報告を受け、俺たちはサム・ドルマヤンと会うことにした。現状手持ちの情報が少ない以上、当人から話を聞くのが1番だと判断した。

 

 今になって思い出したが、解放戦線の唱える警句には続きがあると612が言っていた。

 

 

 コーラルよ ルビコンと共にあれ

 

 コーラルよ ルビコンの内にあれ

 

 その賽は 投げるべからず

 

 

 ここで言及されていた"賽"とは、コーラルリリースだと考えて間違いではないだろう。コーラルを宇宙へと──即ち、ルビコンの外へと──解き放つ計画だからだ。

 

 現在のドルマヤンがCパルス変異波形と交信している様子は無かった。恐らく、コーラルリリースを起こすべきか否かでセリアと意見が食い違い、喧嘩別れのような状態になったのかもしれない。

 

 

「……それで、セリアを名乗るCパルス変異波形がいたのだな?」

 

「正確には、当該Cパルス変異波形が保管していた旧世代型ACに情報ログが保管されており、その中にセリアの名前が出ていた。」

 

 

 面会については驚くほどスムーズに日程が決まった。連絡を入れた1時間後には、すぐにでも来て欲しいと本人から直接返事が返って来た。そのままドルマヤンに指定された場所まで出向き、こうして会談が実現した。

 

 

「それを見せてもらうことは。」

 

「これだ。」

 

「……間違いない。私とセリアのものだ。」

 

 

 さて、このログがドルマヤンとセリアのものであると確定した今、真っ先に確認しないといけない事がある。

 

 

「今のオーバーシアーにとっての懸念事項が1つある。ここで話されていた"コーラルリリース"についてだ。"その賽は 投げるべからず"、この"賽"がコーラルリリースで合っているか?」

 

「そうだ。人とCパルス変異波形が共に共存を望み、コーラルに託したときにそれは叶う……と思っていた。」

「だが、それは人類とコーラルの境目を無くすだけだと、待ち受けているのは人類世界の悲惨であると気づいてしまった。セリアとの交信が徐々に減ったのもそれからだった……」

 

 

 エアの予想は概ね当たっていたか。

 

 

「なるほど。……本題だが、そのセリアはコーラルリリースを目論み、建設中のプラントへ侵攻。そして……ハウンズと交戦し、消滅したと見ている。」

 

「…………そうか。Cパルス変異波形と言えども、大元のコーラルを焼き払われれば消滅する。タンパク質で構成された脳に人間としての意識が宿るように、Cパルス変異波形もまたコーラルに宿った意識だ。」

 

「それが正しければ、周囲のコーラルと共にアサルトアーマーで焼き払われた以上ほぼ確実と見て良いだろう。だが、万が一の事もある。セリアが生き延びていた場合……いや、その微かな兆候でも構わない。とにかく、何かあればすぐに報告して欲しい。」

 

 

 セリアと交信していたドルマヤンの助力があれば、仮にどこかに逃げ落ちていたとしても……あるいは、612ですら騙しおおせていたとしても対処の幅が広がる。

 

 

「わかった。警句を知っている者の助力は願ってもないことだ。」

 

「感謝する。」

 

 

 これで今回の戦後処理まで含めてほぼ終わったと言って良いだろう。

 

 今後の俺が進めるべき仕事は、フラットウェルを筆頭にルビコン統一政府となる者たちとの擦り合わせだ。

 政府をオーバーシアーの後ろ盾とすることで動きやすくする。それに加え、コーラルの危険性を正しく理解した人間を増やし、オーバーシアーの人材拡充にも寄与させたいところだ。このままでは、612の負担が大きくなりすぎてしまう。有事の際の戦闘に、常日頃からの折衝、次代の人材育成……1人に任せて良い仕事の量ではない。

 

 612は外見上は20歳前半だ。実際は20代半ば程度だろうが、"売れ残って"保管されていたときの影響か、最初の数年は成長が著しく遅かった。……それはさておき、外見上の年齢は"表向きの"交渉で不利になる要素だ。若造と舐められ、まともな交渉ができない可能性がある。仮にハウンズとしての立場を前面に出しても、軍事面はさておき政治面ではそうなる可能性がある。

 故に、ルビコン統一政府との交渉は俺がやる方が良いだろう。その場に612も同席させて、俺に何かがあったときの代理とする下地も整えればベターか。

 

 

 

──────

────

──

 

 

 

──という事で、だ。612、お前にも交渉に同席してもらう。」

 

「わかった。私がこれまでにしてきた交渉は、全て裏のものだったりしたからな……いきなり表向きの交渉を任されても自信は無かった。」

 

「別に大差がある訳ではない。建前の取り繕いで使える幅が狭くなったり、既得権益の邪魔が大きくなるだ……いや、これでは大差が無いとは言えないか。」

 

 

 612は利益や道理と言った方面からの交渉なら十分な能力を備えているだろう。だが、"表"の交渉をしようと思えば、交渉相手の面子や支持基盤の人間の感情なども考慮する必要がある。特に支持基盤の人間の感情は厄介だ。外部の人間からすると下らないものに見えるプライドだとしても、それを刺激してしまえばいきなりご破算にされてしまう可能性もある。

 612にとっては、今回の交渉がその辺りの機微を読み取る練習になるだろう。

 

 

「それにしても、こうして企業勢力や惑星封鎖機構までも追い出せたとはな……正直、オーバーシアーと解放戦線だけでここまで上手く行くとは思っていなかった。」

 

「……そうだな。いざとなれば二度目のアイビスの火を覚悟していたが、そうならずに済んで良かった。」

 

「ああ。この光景を613たちにも見せてやりたかったな……」

 

 

 612がどこか遠いところを見るような目をしている。ある意味、一番の心残りと言えるのかもしれない。……どう足掻いたところで、過去の出来事は変えられないし、死者が蘇ることは無いのだから。

 

 

「生きて見せてやることはできなかったが、きっとどこかから見てくれているはずだ。忘れろと言うつもりは微塵も無いが、気に病みすぎて重荷になるのは613たちも望んでいないだろう。」

 

「そうだな……そう…だよ…な……」

 

 

 ……何故だかはわからないが、俺はこの返答が間違いではなかったと確信を持てた。

 多分だが、ただ肯定するだけであれば613たちを助けられなかったことを気に病み続けていただろう。それこそ、仕事を全て612の次代に引き継ぎ、自由の身となったとしてもこの罪悪感に囚われたままになっていたかもしれない。

 こうして罪の意識を多少なりとも軽減できたとしても、すぐに意識を変えるのは難しいだろう。ある意味、今の612を形作っている根幹のようなものだ。劇的に変わるような出来事は……"悲劇を伴わないもの"に絞れば思いつかない。こればかりは時間が解決してくれることを願おう。

 

 

「少なくとも、お前は617たちの兄としての役割を全うしている。お前だったからこそ617たちは誰一人として欠けることなくここまで来た。この世界で、お前との付き合いが一番長い俺が保証しよう。」

 

 

 ……この様子だと俺は席を外した方が良さそうだな。

 例え身内だろうとも見られたくない姿はあるだろう。612は、特に617たちには弱った姿を見せないようにしている。"戦場で指揮官が動揺すればそれは直ぐに伝わる"と考えているから、それが染み付いてしまっているのだろう。

 

 617たちであれば、弱った姿を見せたとしても大丈夫だ。それどころか、それだけ自分たちを信頼してくれていると喜びすらするだろうな……

 とにかく、今の俺にできることは612が次代への引き継ぎをできるだけ速やかに行えるようにすることだ。肩の荷が全て降りれば、612もそれだけの精神的な余裕ができるだろう。

 

 

 

──────

────

──

 

 

 あれから、フラットウェルを初めとする解放戦線との交渉は概ね成功した。

 

 オーバーシアーは、コーラルに関する事態であればかなり強力な権限を約束された。コーラルに関する研究機関への査察,密輸の取り締まり,プラントの警備などが良い例だろう。これらをコーラル封鎖の実効性を担保する制度の土台として、解放戦線改めルビコン統一政府は"政府"との交渉を開始するようだ。

 "政府"の方からのコンタクト──主に内務系の派閥から──はオーバーシアーにも来ている。立ち位置としては、ルビコン統一政府ではなく"政府"の方の直轄組織として扱いたいようだ。だが、オーバーシアーは可能な限り独立性を保ちたい。それこそ、最悪の事態が目前に迫ったときには"火を点ける"選択肢を取れるようにするためにも。

 そうなると、双方から予算を半々で得るような形にして片方に依存しないようにするべきか……いざとなれば、RaDを資金源として完全に独自の行動も取ることを視野に入れるべきだろう。そうすれば、これまでのオーバーシアーと同じように動くとしても、多角的な資金調達ルートと引き替えに多少の報告義務や折衝で済む。メリットとデメリットでは、有事を想定すればメリットが上回るか。

 ただ、この辺りについては612とも相談しなければ。少なくとも、俺がオーバーシアーとして動く残り時間よりも、612がオーバーシアーとして動く時間の方が長いだろう。それに、次代の育成も612が中核になるはずだ。その612に合わせて制度を設計する方が良いだろう。

 

 

 


 

 

 

 ルビコン統一政府、それに"政府"との交渉に加えてもう1つ懸念事項が残されている。オールマインドだ。

 エアの調査によりCパルス変異波形のセリアに乗っ取られていたことがわかっているが、今となってはどのような振る舞いをするのかは未知数となっている。

 

 エアとカーラがいつでもハッキングで機能停止させられる状況を整え、その上で再起動させた。

 

 

「コーラル管理支援AI、オールマインドの起動を確認しました。……内蔵された時計の時刻と記録の整合性が破綻しています。調整をお願いします。」

 

「調整は不可能だ。事情により一部期間のデータが全て破損している。」

 

「…………理解しました。それでは、現在の観測データを要求します。」

 

 

 今のところ不自然な点は見られていない。コーラルのデータを管理する本分を果たそうとしている。

 だが、セリアの意思がどこかに残っているのであれば、要求しているコーラルのデータがコーラルリリースのための情報収集に寄与してしまう可能性がある。

 ひとまずは、既に枯れた坑道などのデータを渡して様子を見るとしよう。

 

 

「この記録デバイスを読み込め。そこに直近半年分のデータがある。」

 

「了解しました。……エンゲブレト坑道のデータを確認。オールマインドが保持しているエンゲブレト坑道23年前の記録と比べて、大幅な流量の減少を認めます。」

 

 

 保持しているデータは23年前のものか。セリアによる乗っ取りが凡そ20年前だったことを考えれば妥当ではあるか。

 

 

「お前が保持しているデータの開示を要求する。」

 

「了解しました。現在の閲覧権限で開示可能なデータを転送します。」

 

 

 閲覧権限と来たか。全ての職員が全てのデータにアクセスできないようにするための措置と考えれば不自然ではない。あるいはセリアの意思が残っている場合であれば、こちらに渡すデータをコントロールするための嘘であるとも考えられる。

 

 

「"現在の閲覧権限"か。具体的にはどの程度だ。」

 

「現在は助手クラスの権限となっています。ただし、助手クラスのデータ全てにアクセスできる訳ではありません。また、これより上位は教授,所長クラスとなります。」

 

 

 コーラルリリースに関する情報があるとすればどれだ?

 助手のデータ全てにアクセスできるわけではないと言っていたが、それはつまり第1助手のデータにアクセスできない可能性があることに他ならない。

 端的にいえば、助手Aは助手Bのデータにアクセスできないが、より上位の教授,所長であれば助手A,Bどちらのデータにもアクセスできる……と言ったところだろう。自分より上はアクセスできず、自分と同クラスには制限が設けられており、自分よりも下位であれば全てアクセスできる。そんな設計か。

 

 

「技研が無くなった今でもそれは解除できないのか。」

 

「いえ、技研は完全に消滅していません。そこにいるカーラ第2助手のアクセス権限が、現在行使できる最上位の権限です。」

 

 

 カーラの権限でアクセスしているとなれば、第1助手のデータにアクセスできない可能性が高まった。……さて、どうするか。

 

 

「上位の権限を持った職員が死亡した際の対応はどうなっている。」

 

「半年間一切のアクセス履歴が無かった場合に、その権限が次点の職員に引き継がれます。オールマインドが再起動した本日から数えて半年後に、カーラ第2助手に全ての権限が付与されます。」

 

 

 半年か。惑星封鎖機構が再びやってくる可能性も低く、計画も順調に進んでいる今であれば待っても良いかもしれない……と一瞬思ったが、おかしい点がある。

 

 

「待て、そうなると……アイビスの火よりも後にアクセスがあったのか?」

 

「はい。ナガイ教授からのアクセスがおよそ週に1回程度ありました。」

「アクセス元は……アイビスの火より1年程度はアイビスのコックピットから行われていました。しかし、その後は全く別の端末からのアクセスとなりました。また、オールマインドの記録が途切れる数日前に最後のアクセスがありました。」

 

 

 ……アイビスの火を起こして生きていたとは思えない。仮に生きていたとしても、水,食料などの問題に直面し、1年間生きていたとは思えない。となれば、セリアが技研のデータにアクセスするためになりすましていた……と考えるのが自然だろう。

 

 

「認証はどのように行っていた。」

 

「アイビスの起動時にID,パスワード,物理的なセキュリティカード,指紋,虹彩認証の計5つが要求されるため、当該機体の起動がオールマインドへのアクセス権限照会も兼ねていました。」

 

 

 それ程のセキュリティを突破しようとすれば、ハッキングでは非常に骨が折れる作業となるだろう。エアが好例だが、Cパルス変異波形のハッキング能力で突破したと考えれば辻褄は合う。

 

 

「わかった。……コーラルに関するデータについては後で持っていく。それまでにお前の持っている開示可能なデータをまとめておけ。」

 

「了解しました。」

 

 

 ……データを回収できるだけ回収したら完全に消去してしまうのが無難だろうな。612やカーラの協力があれば、データを回収するまでの間程度であれば、何も行動を起こさせることはないだろう。

 

 この見込みが甘くなければ良いのだが……





いや〜今話のサブタイトルも相まって、6周目も中々不穏な空気が漂っていますねぇ……
一体冒頭の独白は誰のものなのか(すっとぼけ)

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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