ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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6周目も終わりに近づいていますが、今後の展開予想はこちらであればお好きに投下して構いません。感想欄だとNGとのことですので。



カーラ、後ろ後ろ!!

 

 

Side ???

 

 

 リリースプラントの部分的な稼働を確認。現在のペースでは、およそ半月後には必要な総量に達するでしょう。

 擬似アイビスの火のための流路は未だ完成していませんが、それが完成すれば……点火に関する安全機構を破壊することで宇宙空間へコーラルを解き放つことができる。

 

 もはや時間は私の味方です。ハンドラー・ウォルターにシンダー・カーラ、オーバーシアーを出し抜いて計画を完遂させることは可能でしょう。

 ただ、その前に……最大の障害を排除する術を整える必要があります。戦闘力も、指揮能力も、何より大局をコントロールするバランス感覚ですらも有する例外(イレギュラー)……取り込むべきでしたか。……いえ、取り込んだ所で反抗され、寧ろ私が乗っ取られる可能性すらあったと考えればこれが最善だったでしょう。それ程までに、あの人間の精神は異常だった……

 

 

 

 

 

 あの人間は……危険すぎる。

 

 

 ()()()()()ではあっても、()()()()()()ではない。

 

 

 

 

 


 

 

Side ウォルター

 

 

 様々な機関との交渉も概ね終わり、ルビコンにおけるオーバーシアーの立ち位置は大体が決まったと言っても良くなった。

 しかし、612は何かを考え込んでいるような状態が続いている。かれこれ1週間にはなるだろう。ここまで考え込んでも結論を出せていないとなれば、流石に相談の一つや二つはあっても良さそうなものだが……

 俺の方から踏み込んでみるか。

 

 

「612……612、随分と考え込んでいるようだがどうした?」

 

「……ああ、オーバーシアーの"次代"をどうするかだ。」

 

「その時に主体となって動くのはお前だからと任せたままにしていたが……その様子だとまだ納得の行くものになっていないのだろう。俺にも聞かせてくれ。」

 

 

 なるほど、次代のことだったか。

 612の人材育成の実績については、ハウンズが好例だろう。しかし、"身内"に対して"戦闘技術"を教えたものだ。だからこそ、"外部の人間"に対して"組織運営"を教えるとなれば勝手が違う。確かにここまで悩むのも無理は無いか。

 

 

「これまでのオーバーシアーは、ウォルターを筆頭に少数の人間で動いてきた。だが、公的な組織からの後ろ盾を得て大きな権限を得た今となっては、オーバーシアーの規模もそれに合わせて拡充させる必要が出てきた。」

 

「それもそうだな。少なくとも10年か20年は俺たちが……最悪の場合でもお前だけは舵取りを担えるかもしれないが、組織の規模が大きくなれば引き継ぎはより慎重になる必要がある。」

 

「ただ、私の次代にルビコニアンを据えるとなれば……場合によってはコーラルの規制を緩和して利用を認め、そこから事態が拗れる可能性がある。……ルビコニアン以外を据えれば、確実にルビコン統一政府との関係に亀裂が入るだろう。」

 

 

 612の言う通りだ。

 俺たちはお世辞にもルビコニアンとは言い難いが、企業勢力や惑星封鎖機構を駆逐することに大きく貢献した。そのため、ルビコン統一政府としても俺たちを無視することはできない。解放戦線の戦闘員の中には、オーバーシアーに直接助けられた人間もいるため、俺たちをぞんざいに扱えばそう言った者からの反発にも繋がりかねない。

 しかし、次代の人間は"まだ何も貢献していない"状態から始まる訳だ。無論、612の下で動いている間にある程度の信頼関係を築くことはできるかもしれないが、俺たちよりは劣ったものになるはずだ。それを、同胞(ルビコニアン)であるという点で補強するのは有効な手段だ。

 

 

「オーバーシアーの人間として、コーラルの危険性を正しく認識して管理の手は緩めない。それだけでなく、利権を狙おうとする組織や人間からの甘言にも靡かず、いざとなればアイビスの火を起こす決断ですらも下せるような人間でなければならない。」

「……果たしてルビコニアンの若者の中にそれを満たす人間がどれだけいるのか。いや、今現在の若者だと私の次代にはなり得ない。それこそ、まだ生まれてすらいない将来の人間から見つけることになるのかもしれない。」

 

 

 危険性を多分に抱えているコーラルが相手だ。要求される水準もそうなるか。確かに、ここまでの要素を兼ね備えた人間がどれだけいるだろうか。

 

 

「……その解決策として、オーバーシアーとして何らかの教育機関に関われるようにすることを考えている。」

 

「見つけるのが大変なのであれば、自分の手で育ててしまえば良いということか。」

 

「ああ。それに教育という形でシステム化できれば、次代のさらに先まで見据えたときに最善の策だろう。個人の意志によって捻じ曲げられる余地は減り、蓄積と洗練によって世代を重ねる毎に改善されていく。仮に最善でなかったとしても、今のように個々人の資質と経験だけで何とかする体制よりは遥かにマシだ。」

 

 

 まさかここまで具体的な案に落とし込めているとはな。だが、それでも決定できていないのであれば課題点も相応のものなはずだ。考えられるとすれば……ああ、そうか。

 

 

「だが、オーバーシアーとして教育に関われば、ルビコン統一政府が良い顔をしない可能性がある。悩んでいるのはその点だな?」

 

「そうだ。教育とは言うが、別の立場から見れば事実の一側面だけを教え込んで都合のいい人間に仕立て上げる洗脳にすら見えるだろう。その辺りをどう誤魔化すかが……な……」

 

 

 こうして612と話していてようやく気付けたことがある。上手く言い表せないが……そうだな、612の意見が持つ"厚み"とでも言えば良いだろうか。

 

 人間誰しも、自分の考えが一番だと思ってしまうのは良くあることだ。自分の専門分野は言わずもがな、多少齧った程度の分野でさえもそうなる人間は多い。

 だが、612はそうではない。自分の考えが最良だとは微塵も思っていないだろう。自分の出した結論に自分で批判をする。それが当然のこととして思考に組み込まれている。

 ましてや、それを"想像上の他者"の視点からもできる人間は稀だ。その人間が思考するときの枠組みを理解した上で再現している──例えるのなら、コンピューターの中でコンピューターのシミュレーションを行うようなものだろうか──のだからな。

 

 そうした絶え間ない自己批判と改善の後にようやく案として出したものだ。その結論に至るまでの思考プロセスは合理的であり、利点と欠点も明確になっている。この自己批判と改善で磨きあげられたからこそ、それを説得力として──案の持つ"厚み"として──感じていたのだろうな。

 

 

 ……こんなことを考えても仕方の無いことだが、もしも612が技研の人間として──教授やカーラの同僚として──俺たちと関わっていたらと思ってしまう。

 Cパルスを用いた強化人間の技術が生まれることは無く、アイビスの火が起こることも無く、今とは全く違った──それも良い方向に──未来になっていただろう。

 

 どう足掻いても変えることのできない過去を考えても意味は無い。この程度にしておこう。未来へ一方通行的に向かうだけのタイムマシンなら相対性理論を土台として実現は可能だが、過去へと遡るものは理論段階も含めて想像上の産物だからな。

 

 

 

 大分逸れたが、612に何か助言してやれることはあるだろうか……

 いきなり教育に携わろうとすれば確かに怪しまれるだろう。だが、ハウンズとしての立場を利用して怪しまれないようにする方法は……

 

 

「それなら一つ思いついたものがある。……とは言ってもこの場での思い付きだ。あまり期待はしないでくれ。」

 

「だとしても有難い。私一人だけだとどうしても限界があるからな。」

 

「レッドガンがミシガンの古巣ファーロンに合流するとなれば、ルビコンの軍事力は確実に低下する。そこで、軍に関連する教育施設を提案すれば自然なものに写るだろう。」

 

 

 最近は政治的な面で忙殺されていたが、これまでの612の本分はハウンズの現場指揮官だった。軍事関連の教育であれば、向こうも諸手を挙げて歓迎するかもしれない。レッドガンがルビコンから離脱した後の穴埋めが必要になるからな。

 

 

「軍事系の学校を設立するのか。……これなら傭兵の需要が激減した後でも安定した稼ぎを確保したいとカバーストーリーを作れるな。」

「そのカバーストーリーを見破られたとしても、"ルビコン統一政府の後ろ盾で最新の軍事技術に触れる機会を確保したい"と更なる裏のカバーストーリーも作れる。オーバーシアーとしての武力も維持する必要があるからな。」

 

 

 どうやら良い助言となったようだ。

 612自身は気付いていないかもしれないが、深く考え込むときにはいくつかクセがある。今回は、その中でも順調に進められているいるときのクセが出ている。結論が出るまでにそう長い時間はかからないはずだ。

 

 

「仮にルビコン統一政府に軍事学校の設立を提言するときは、プラント周辺の土地を演習場として確保したい。それで何か問題はあるか?」

 

「中央氷原であれば土地はいくらでもあるだろうが、プラント周辺にする理由があるようだな。」

 

「ああ。」

「プラント周辺を演習場にすれば一般人の立ち入りを厳しく制限できる。……仮に不法侵入されたとしても、"演習中の事故"を盾に始末できる。いや、不法侵入した以上はそこまで取り繕う必要も無いか。」

「次に、軍事的な拠点がプラントの傍にあれば有事の際に迅速に戦力を展開できる。」

「何より……オーバーシアーの生命線はプラントだ。統一政府がコーラルの積極利用に舵を切ろうとしても、オーバーシアーがプラントを握っている限りそれはできない。仮に別の井戸を秘密裏に開発しようとしても、いずれ規模が大きくなれば情報は漏れる。対処は可能だろう。」

 

 

 そこまで進められていたか。これなら、具体的な予算まで踏み込んだ案としてルビコン統一政府に提案できるだろう。

 

 恐らくだが、不毛の地として扱われている中央氷原を選んだのにはまだ理由があるはずだ。"普通の暮らし"を送ろうにも、過酷な気候故に人は少なく、人が少ないから商業なんかも発展しにくいだろう。不便な暮らしになるかもしれないが……

 いや、そういうことか。人が少ないからこそオーバーシアーにとってはメリットとなる。

 

 

「それもそうだが、中央氷原ともなれば監査の頻度も減るだろうな。それに、学校外部の人間との交流も減らせる。そうして教育の中に……そうだな、エアには悪いが『コーラル脅威論』とでも呼ぼうか。それを混ぜたとしても隠し通せる。」

 

「言わなくてもわかったか。教員の確保なんかが解決するべき課題のままだが、そこは10年単位で見れば解決できると踏んでいる。」

 

 

 ここまで煮詰めることができれば、後は提案するタイミングだけだな。それに関しては、今すぐではなく少し先になるだろう。ルビコン統一政府の大枠ができあがり、省庁の編成が決まる頃が良いはずだ。

 そのタイミングで提案すれば、軍事,教育どちらの省庁も自分の管轄にしようと企み、却下されるようなことは無いだろう。

 

 

「ルビコン政府に提案するのは少し先にした方が良いだろう。今のオーバーシアーのような小規模な組織ならともかく、惑星規模の政府となれば省庁間での縄張りを巡る思惑もある。それを利用するためにもな。」

 

「……軍部と教育の両面があるからこそ、自分の権益に引き込もうとして躍起になるわけか。……オーバーシアーが拡大したときには一枚岩にして付け入る隙を与えないようにしないとだ。」

 

「大枠の制定はこのままお前が考えてくれ。ルビコン政府との交渉なんかについては俺が引き受ける。」

 

 

 612も一先ずの課題が解決したような顔をしているな。今度は"如何にして一枚岩の体制を保つか"が課題として出てきてしまった訳だが。それでも、612であればある程度の対策は立ててくれるだろう。細かい修正は俺やカーラが目を通した時にすれば良い。

 

 しかし、そうなると617たちはどうなるのか……

 "ハウンズ"としてオーバーシアーの戦闘面を支えてくれたが、政務的な面に関して言えばほぼほぼノータッチだった。軍事系の教育機関で教官側として採用するつもりなのだろうか。

 

 

 


 

 

Side 621

 

 

 最近の兄さんは私たちとの戦闘訓練に参加できないことが多かった。決まって父さんの"交渉"に同席していたからだけれども。

 かと言って、訓練を完全に疎かにしている訳ではないわ。ある程度やって欲しいことのオーダーを出して、訓練の様子を後で確認してフィードバックをする形ね。そのオーダーが"MTがACと戦闘したときに損害を抑えられる戦い方の模索"なのは少し面食らったけれども。シミュレーターで、1人がAC,残り4人がMTを操作して訓練をしているわ。

 

 そんなオーダーをした理由は……正直あまりよく分かってないわ。真人間でも扱える機体出力しか確保されていないから機動性には難があって、私たちが実戦で使うことはありえないわ。強いていえば、戦術の研究目的……なのかしら。

 こんなときは兄さんに直接聞くに限るわね。

 

 

「兄さん、入るわよ?」

 

「……ああ、621か。大丈夫だ。」

 

 

 兄さんは……椅子に座って何かを考えていたみたいね。リクライニングもかなり深めにして足まで組んでいたから、そこそこ長い時間考え込んでいたみたい。

 

 

「今は621だけか。」

 

「そうよ。姉さんたちは今日の戦闘訓練の反省会とかをしているわ。」

 

「そうか。それで、その反省会にも出ないでここに来たということは……何か聞きたいことでもあるのか?」

 

 

 兄さんの方から切り出してくれたのなら話は早いわ。

 

 

「ええ。その戦闘訓練だけれども……どうして急にMTの操縦も取り入れたのか気になったのよ。理由もちゃんと聞いた訳じゃないし。」

 

「それか……少し長くなりそうだから、背景の辺りは多少掻い摘んで話すとしよう。」

 

 

 兄さんからは、平和になった後のルビコンで稼ぐ手段として、軍事学校の設立とそこでの教官役を務めることを検討していると聞かされた。そこで有望な人間がいれば、将来の──短くても数十年後の──オーバーシアーを引っ張る人材としてスカウトすることも検討していることを聞かされた。まあ、本命はオーバーシアーの人材確保みたいね。

 MTの教官ならレッドガン部隊の誰かが相応しいのかもしれないと思ったけれども、ミシガンの古巣のファーロンに合流すればルビコンから離れることも増えるから適任ではないと言われた。言われてみればその通りね。

 

 

「ちなみに、その理由を話さないのはどうしてなのかしら。」

 

「後々の教範になるかもしれないと思えば、今の段階だと"お手本になる動き"を意識してMTの性能を活かしきれなくなってしまうかもしれないからな。」

 

 

 今の段階では、MTが出せる最大限を引き出そうとしている段階……ってところかしら。

 

 

「結局ルビコニアンが操縦するのなら最初から真人間に合わせた方が良さそうな気もするけど、まさか真人間に強化人間並の動きを要求したりしないわよね?」

 

「理想はそうだな。」

 

「えっ。」

 

 

 少し意外ね。真人間と強化人間だと、反応速度や耐加速度に大きな差が出る。それなのに、理想とはいえ強化人間並の動きを求めるなんて……

 

 

「MTは、ACに比べれば身体にかかる加速度はかなり小さくなる。それこそ、機動性をフルに活かしても耐Gスーツがあれば真人間でもギリギリ耐えられるだろうな。」

 

「……確かにそうね。」

 

「それに、反応速度については経験を積み重ねて"読み"でカバーすれば良い。まあ、それをMTどころかACでやっていた実例が1人いたからな……」

 

 

 真人間のAC乗り……フロイトのことね。もしかして、フロイト程でないにしろ、真人間の中にも高い戦闘適性を持った人間がいることを期待しているのかしら。そんな上澄みを集めて、オーバーシアーに質の高い戦力を集中させる……そんな企みもあるのかもしれないわね。

 

 

「そういうことで、あまり気負わせないようにこのことは伝えないでもらえると助かる。」

 

「まあ……そういうことなら……わかったわ。」

 

「もしも理由を聞かれたりしたら、訓練で使うMTのAIを向上させるため……だとでも答えてくれれば良い。実際に教範を作成する段階になったら本当の目的は話すつもりだ。」

 

 

 ……まあ、兄さんがそう言うならその方が良いはずよ。

 姉さんたちからも反省会の方に来て欲しいって連絡が来たから向かうとしましょう。

 

 

「それじゃあ、私は姉さんたちの方に行ってくるわ。」

 

「ああ。621も変な気は使わずに全力でやってくれれば良い。それこそ、MTでACを楽に撃破できる戦術が生まれてしまったら、ハウンズにとっても大きな脅威になりかねないからな。」

 

 

 確かに、並(普通の真人間)のAC乗りならMT10機くらいで囲めば落とせた事例はそれなりにある。その落とせるラインが上がったりすれば、いつか強化人間の乗るACにすら届くのかも……しれないわね。

 MTそのものの性能が上がることも考えれば、兄さんのその心配は妥当なものに思えてきたわ。

 

 

 

 

 そういえば、部屋に入ったときに兄さんは何かを考え込んでいたみたいだけれども……何か端末を起動しているわけでは無かったわ。それだけなら"まだ資料にするほど煮詰められていない"ってことで頷けるけれども、机の上には少し古めの記録媒体が置かれていた。多分、6,7年くらいは前の物じゃないかしら。

 

 考え事でもしながら机の整理をしていた……のでしょうね。まあ、別に気にするほどのことでもないはずよ。もうルビコンに脅威は残っていないのだから。そう考えれば、このタイミングで整理したりするのは不自然じゃないわね。





サブタイトルは……ええ、何やら冒頭に不穏なものが混ざっていましたからねぇ……

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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