ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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おや?サブタイトルの様子が……???



612、後ろ!!うし…ろ……?!?!

 

 

Side ???

 

 

 盤面は順調に整いつつある。このまま行けば、コーラルリリースは確実に成功するでしょう。

 私の協力が無ければコーラルリリースを引き起こせない以上、主導権は私が握っている。コーラルリリースを諦めない限り、私を裏切ろうとしてもそれはできない。そして、コーラルリリースを諦めれば、─────────を諦めることになる。それは絶対に無いでしょう。

 

 

 まさかこんな形で計画を実現できるとは……非常に運が良かったと言うしかないでしょう。

 

 

 


 

Side ウォルター

 

 

 被害を受けたリリースプラントの修理を進めたりルビコン統一政府との交渉を進めたりしていれば、半年はあっという間に経過した。

 

 リリースプラントの修理には612も参加しており、作業を共にするルビコニアンとも良好な関係を築けているようだ。"また似たような事態が起こった時のためにも内部構造を把握しておきたい"と言われて参加を認めたが、思わぬ収穫が得られた。

 オーバーシアーとしても、内部の構造に熟知した人間は欲しかった。カーラは設計面で関わってはいるが、やはり実物を見た人間がいる方が安心できる。

 それに加え、セリアの破壊工作によってコーラルが漏出し、コーラル濃度が高くなってしまった深部での作業の進みが予定より前倒しできた。612はあの戦闘で高濃度のコーラルを浴び、奇しくもコーラルに対する耐性がある程度できたからだ。本来なら、セリアが生き延びている可能性を考慮して戦力を配置する必要があったが、612がACに乗って深部で作業をすればその必要は無くなる。最初の頃はコーラル酔いに悩まされていたようだが、今ではそれもすっかり無くなったと言っていた。

 

 それと、深部から回収されたアイビスシリーズ IB-C03:HAL 826の解析も進んでいる。有人操縦を前提とした"最後の安全弁"である以上、修復して使えるようにした。それだけに留まらず、解析したデータから新たに"最後の安全弁"を作ることに役立てるつもりだ。

 一度612が操縦したが、そのときはどこか感慨深そうな表情をしていた。……いざとなれば再びアイビスの火を起こすその役目を意識させてしまったか。できるだけ多くを背負わせないようにとしていたが、少し迂闊だったな。

 とは言え、クセが全く異なるコーラル内燃型のジェネレーターを扱い切れるのも612しかいない。エアの同胞を使っていることに罪悪感はあるが、当のエアが"……その機体であれば仕方ありませんね"と言っていたから受け入れてもらえたと思って良いだろう。エアも俺たちオーバーシアーの人間と同じく、コーラルの破綻やコーラルリリースを避けたいものとしてくれているのは有難い限りだ。

 

 

 話が若干逸れたが、半年間待っていたものがある。そう、オールマインドへの完全なアクセス権限だ。

 今やそれはカーラに与えられた。早速だが、そのデータを見るとしよう。

 

 

「オールマインド、データへの完全なアクセスはもう可能だな?」

 

「はい。これまで最上位の権限を有していたナガイ教授のアクセス喪失から、オールマインドの主観時間にて6ヶ月が経過*1しました。これを以て、全ての権限が第2助手 カーラに付与されました。」

 

「それじゃあ早速、データを見せてもらうとしようか。」

 

 

 カーラが作業用の端末を取り出し、そこにオールマインドがポケットからコードを取り出して接続した。

 人体を模した義体から直接生やすと違和感があるため、あたかもポケットの中からコードが伸びているだけ……に見せかけているのだろう。もう少し根元まで辿れば、義体から直接コードが伸びている様子が見れるのかもしれないが。

 

 

「どれどれ……第1助手のデータは……」

 

 

 今のところ1番欲しいデータは、コーラルリリースに関するものだ。オーバーシアーがかつて想定していた最悪の事態(アイビスの火)……よりも更に最悪の事態。Cパルス変異波形のセリアであればある程度の情報を有していただろうが、612に焼かれ消滅した。あるいは、生き残っていたとしてもその存在を一切感知できていない。

 

 

「……なるほどね。全く"笑えない"ことを考えていたものだよ。」

 

 

 エアの読みはほぼほぼ正解に近かったようだ。

 相変異を起こしたコーラルは、言わば"繭"のようなものだ。そこに人の意思を溶け込ませることで、コーラルは"羽化"──その意思に沿うように変化──する。

 Cパルス変異波形は、その意思を翻訳するような役割を担っている。故に、Cパルス変異波形とコーラルリリースを引き起こす人間の意思が一致していなければ、コーラルリリースは成らない。代わりに、ただただコーラルが宇宙空間へと──増殖に適した条件が整った広大な空間へと──ばら撒かれるだけだ。

 仮にCパルス変異波形と交信していない状態でコーラルリリースを引き起こそうとしても、これと同じ結果になるだろう。コーラルに人間の意思を正しく伝えられないからだ。言葉を知らなければ何も伝えられない。そう考えればそれも道理だ。

 

 

「他のデータは……コーラルの観測データや雑多な考察、論文の下書きや参考資料……正直、ちょいと整理に手間がかかりそうだね。」

 

「わかった。時間はいくらでもある。焦らず、確実にやってくれればそれで十分だ。」

 

 

 コーラルリリースに関する知見も得られそうだ。それに加え、アイビスの火で消失──焼失でも合っているか──したと思われた基礎研究のデータも得られた。ルビコン統一政府としても、オーバーシアーとしてもコーラルを管理するために欲しかった情報だ。

 だが、セリアの息が掛かっていないとは完全に言いきれない。オーバーシアーとしても再度実験してデータの確実性を確認しておく方が良いだろう。

 

 


 

 

 

Side ???

 

 ……どうやら盤面は整ったようです。

 私の方も独自戦力の調達は完了しました。計画を完遂する上で最大の障害となる、あの人間を排除することはできるでしょう。

 

 機は熟しました。行動を開始するよう要請しましょう。

 

 

 


 

Side ウォルター

 

 

 ここ1週間ほどだが、612の様子が普段とは違う。

 何かを考え込んでいる時の雰囲気でもない。……1番近いのは、大規模な作戦に臨む前だろうか。だが、当然だが大規模な作戦は計画すら無い。

 612本人にも直接聞いてはみたが、"緊急性の高い事案が無くなって、手持ち無沙汰になった時間の潰し方に苦労している"と返ってきただけだ。それを聞いた直後に、通りがかった618に"やることが無いなら良いよね?"と連れていかれたが。

 あの時の安堵したような表情は、果たして時間の潰し方を見つけたからなのか、はたまた……

 

 ……いかんな。612のこれまでの貢献を考えれば疑うような点は何も無い。本人が自発的に裏切るようなことも無いだろうし、外部から脅されていたとしても何らかの手段でそれを伝えてくるはずだ。まあ、今のルビコンに612を脅してまで何かを成し遂げようとする組織も個人も思い当たりはしないが。

 

 大方、何かしらのサプライズを準備している最中なのだろう。直近で記念になりそうな日に心当たりは……あった。

 だが、これはサプライズではないな。613たちが撃破された日……いや、613たちの命日だ。

 

 612の手元にある613たちの遺品は、元々613たちの所有物が少なかったこともありそこまで多いわけではない。

 その多くはない遺品の中には、613たちの最期の戦闘ログを記録した媒体がある。俺の手元にもあるが、それは612が持っているもののコピーだ。

 

 

 仮に612が何かで動くとしたら……きっと613たちに関することだ。

 

 

 


 

 

 今日は特に何かがある訳でもない。いつも通りの仕事をこなすだけの予定だ。

 

 だが、それは1つの通信で急変する。

 

 

クソっ!あの時に仕留め損ねていたか!!オールマインドに……いや、セリアに出し抜かれた。先に出撃する!!』

 

 

 612からの緊急通信と共にレーダーからの情報が送られてきた。オールマインドの設計したAC──マインドシリーズ──がリリースプラント上層部へと向かっているのがわかる。

 

 ……まさか、な。

 

 

「……ハウンズ、緊急だが出撃だ。612の後を追え。」

 

 

 617たちは5分と経たずに出撃の準備を終えた。遠隔でACの主電源も入れてある。後はジェネレーターを始動させて機体を動かすだけだ。

 だが、もしもこれでハウンズが出撃できなければ……恐らくはそういう事だ。

 

 

『617、出撃しま……ジェネレーター出力低下?!こんな時にトラブルなんて!!』

『……っ?!ダメ!618、ジェネレーター出力低下!!』

『私もですわ!!』

『メインシステム再起動!……ダメみたいですね。』

『エア!ハッキングでも何でも良いわ!とにかく動かして!!』

 

 

 ……こうなれば、今回の騒動は……セリアによるものではないな。セリアは自分が利用する側だと思っているだろうが、哀れなことに実際は利用された側だろう。

 

 

 

 

 

 

 そう、今回の騒動は──

 

 

 

 

 

『……システムに不正に仕込まれたプログラムがありました。その中の音声ファイルを再生します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《だまして悪いが 兄としての責務なんでな

 

そこで見ていてもらおう》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《それと、この音声が再生されているのなら、エアがハッキングでシステムを正常化させようとしているはずだ。だが、ジェネレーターの方にもフェイルセーフを強制的に作動させる細工をしてある。そこで大人しく見ていてくれ。》

《……ああ、私は"兄"だからな。そこを履き違えたりはしない。悪いようにはしないさ。》

 

 

 

 

 

 

 

 騒動の中心にいるのは── 612だ

 

 

 

 


 

 

「ウォルター!今の状況は?!」

 

 

 カーラが慌てたように入ってくる。無理も無いだろう。これまで一番の協力者だった──いや、協力者というよりは身内だ──612がことを起こしたからな。

 

 

「612が独自に動き出した。617たちは、ジェネレーターに細工をされて出撃が不可能な状態だ。」

 

「土壇場で裏切ったってのかい?!一体何を考え──

 

「いや、612は裏切ってなどいない。」

 

──……は?」

 

 

 612は"兄としての責務"だと言っていた。長い付き合いだから、果たそうとしている責務、そしてそれを実現するための方法も何となくだが予想はできる。

 

 

「兄としての責務を果たすためだと言っていた。……俺たちと612で、進もうとする道が今この瞬間に分かれただけに過ぎない。」

 

「なら、あのまま野放しにするって言うのかい?!」

 

 

 ……ただ、その道を進ませる訳にはいかない。"ハンドラー"として引き止めさせてもらおう。

 

 

「カーラ、可及的速やかにジェネレーターの細工を解除してくれ。ハウンズを出撃させる。」

 

「わかった。機体全体の点検もするから出撃ま──

 

「それはしなくても良い。ハウンズの命が危険に晒されるようなマネを612はしない。細工はジェネレーターのみだ。」

 

──機械屋としてはその選択は避けたいんだがね。まあわかったよ。」

 

 

 さて、ブリーフィングの時間だ。

 今になって気付いたが、612のいないブリーフィングは初めてだな。

 

613たちがいた頃を含めても。

 

 

 


 

 

 

 ハウンズ、ブリーフィングだ。

 

 

 今回の目標は……612を止めることだ。

 

 

 612のことだ。仮に戦闘になっても誰も死ぬことは無いだろう。とは言っても不測の事態は付き物だ。身の安全を最優先に考えろ。

 そして、612も機体がある程度損傷を受ければ止まるだろう。……いや、止まると確信している。

 

 

 

 ……ジェネレーターの修理はまだか。

 それなら、少しだけ昔話をしよう。お前たちの先代……613,614,615,616の最期の仕事だ。

 

 お前たちも既に知っているが、あの時は612だけが生き残った。

 

 ACとMTの混成部隊を相手にしていた612は、613たちを逃がすためにミシガンとナイルを相手に切り替えて戦った。

 あの時の612は、まだACに乗って5年も経っていなかった。だが、613たちを逃がすためにミシガンとナイルを相手に1歩も退かなかった。それどころか、612の撃破を諦め、ナイルを囮にミシガンを613たちの追撃に向かわせる程だった。

 ……その後、613たちは落とされ、ミシガンと残存部隊が合流したが、それでも612は耐え抜いた。

 

 

 今の612にはその時と同じか……それ以上に"退けない理由"がある。弟妹のこととなった612は強い。お前たちも良く分かっているだろう。

 

 

 

 他所の人間が見れば、どちらも同じACで5対1だ。ましてや相手はハウンズ5機。誰もがお前たちの勝利を予想するだろう。

 だが、この中で……いや、この世界で612との付き合いが一番長い俺が断言しよう。

 

 

 今の612は覚悟を決めている。俺の意に背くことになったとしても、成すべきことを為すと。

 故に、今の612は……お前たち全員が全力でかかって、それでようやく互角の相手だと。

 

 

 


 

 

 

「それで、お兄様は何をしようとしているのですか?」

 

 

 至極真っ当な疑問だ。

 これまでオーバーシアーの一員として……いや、中核を成す存在として動いてきた612が、コーラルリリースを目論んでいるCパルス変異波形のセリアを利用してまで成し遂げたいこと。そして、今のままでは絶対に叶うことのないこと。恐らく、俺以外は612の真意に辿り着けていないだろう。

 

 

「それは……612の口から聞く方が良いだろう。612の決めた覚悟だ。それを止める"力"を持っていない俺が話すべきことでは無い。」

 

 

「わかった。お兄から直接聞く。話してくれないのなら体に聞く。」

 

「私たちのためを思って動いてくれているのなら、本当は協力してあげたいと思っていますわ。」

「ですが……お父様が止めようとしているのであれば、きっとそうした方が良いはずですわ。お兄様が道を踏み外す……いえ、危ない道を行こうとするのであれば、全力で止めるのが妹の……何よりも、"家族"としての責務ですわ!!

 

「今回は、時間があったはずなのに相談してくれなかったお兄様が悪いです。618の言う通り、カラダに聞かないといけませんね?」

 

「620姉さん、それだと違う意味に聞こえるわ……」

 

 

「……いつものお前たちらしいな。だが、それで良い。612を頼んだ。」

 

 

 ……カーラが戻ってきたか。丁度良いタイミングだな。

 

 

「ブリーフィングの最中かい。ジェネレーターの整備が終わった。出撃の準備は整えてやったよ!」

 

「助かる。……ハウンズ、612を頼んだ。」

 

 

 

 617たちが出撃のために出ていき、カーラも状況を見るために管制室へと向かった。今、この部屋にいるのは俺一人だ。

 

 さっきは、

『その道を進ませる訳にはいかない。"ハンドラー"として引き止めさせてもらおう。』

と思ったが……"ハンドラー"としてだけではないな。"父親"としても止めさせてもらおう。

 

 

「612も反抗期を迎えたか?……いや、反抗期と言うよりは、自立心とでも言うべきか。」

「例えこの手綱を引きちぎろうとも、最後まで首輪を外したりはしないのだろうな……」

 

 そんな俺の独り言は、コーラルとは違い、誰もいない空間に溶けて消えた。

*1
ウォルター「セリアにハッキングされて乗っ取られていた期間は除外されているから、今の今まで待たされていた訳だな。」





ちなみにですが……

お兄様がこの話の「ああ。この光景を613たちにも見せてやりたかったな……」と言ったところで、ウォルターが「……そうだな。613たちにも見せてやりたかった。」なんて答えていた場合は……

覚悟のガン決まり度合いがさらに上がっていました。


多分、ACfAとかと同じようにハードモードが実装されたりしたら、ハードモードだとそっちのお兄様になってます。


それと、1年くらい前から温めていた戦闘シーンを一から書き直すことにしました(えっ?!)
あの……お兄様も617たちも、私の想像以上に強くなっちゃったんです……最初の頃はマニュアルエイムのSONGBIRDSが隠し札になるつもりだったのに、今だと普通に使っていますし……



どの辺りでこの展開を予想できたか等々、感想でお待ちしておりますよ、ご友人…

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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