ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話 作:CVn-α:コル・カロリ
本編部分だけでも93話になりましたが、今話で6周目もお姉妹……ではなくてお終いとなります。
外伝とかをもうちょっと書いたり、場合によっては古い話の方からリメイクをしたりするつもりなので投稿はもう少し続く予定です。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
Side ウォルター
612たちの"兄妹喧嘩"は、617たちの勝ちで終わった。
あれだけの激しい戦闘だったが、612にも617たちにも怪我は無かった。最後に612の機体の腕部が欠損したときは冷や汗が止まらなかったが、バイタル情報に異常は見られなかったから何とか一安心することができた。
612がここまでのことをした理由だが、やはり613たちが中心にあった。
セリアとの戦闘のときにコーラルの奔流に呑まれ、そこで612から622までの11人が揃っている光景を見たと言っていた。そして、それを実現するために宇宙をコーラルで満たし、もう一度やり直すと。
カーラが調べた限りでは、あくまでも"それを否定できる材料は見つけられなかった"程度で、可能性はあるとも無いとも言いきれないものだ。だが、612は《私が私になったときと同じように》と言っていた。まずはそこを聞くとしよう。
「……と言うことで、だ。そのままで良いから色々と聞かせてもらう。」
今の612は、617たちに纏わり付かれている。多少の身動ぎくらいしかできないだろう。……果たしてそれで暑くないのか疑問になるが、何度も見てきた光景だ。きっと大丈夫だからそうしているはずだ。
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にわかには信じ難いが、612には"C4-612になる前の記憶"があるという。いや、ただ強化人間になる前の記憶があるだけなら実例もある話だ。だが、その"前の記憶"は、別の肉体……それも人類の生活圏が宇宙に進出する兆しすら見えないほど過去の人間のものだと。
612が"C4-612になる前"は、人類は地球に縛られ続けていて、宇宙への進出が大規模なプロジェクトだった頃……それこそ、月に有人宇宙船が到達して旗を立ててから50年と少ししか経っていない頃の人間だったそうだ。そこでは、周りより多少勉強ができる程度で、どこにでもいるありふれた人間だったと。
思い返せば、カーラは612をRaDの技術陣として欲しがっていたことがあった。それも、"前の世界"で受けた教育が土台になっていたのだろう。あるいは食に拘っていることもあったが、それも"前の世界"の水準に近づけたかった……と考えれば辻褄は合う。
それが、どういう訳かコーラルリリースに巻き込まれ、気が付いたらC4-612になっていたと言う。
まさか地球にもコーラルが眠っているのかと思ったが、それは無いだろうと言う。
612は、この世界──正確には別の運命を辿ったよく似た世界──を"ゲーム"として知っていたと言う。
子供の頃に一度は考えたことがある、《この世界は誰かによって作られた物語ではないのか》がまさか現実だったとは……と思ったが、612曰くそうではないかもしれないらしい。
この世界で"想像上の物語"として知られているものの中に、612が"前の世界"で実際に見聞きしたものがあるそうだ。しかも、覚えている範囲で関係者の名前まで一致していたからただの偶然だとは考えられないと。
コーラルの仕業かどうかわからないが、クリエイターが"思い付いた"物語の中には、もしかすると"別の世界"で実際に起こったことを受信したものがあるのではないか。それが612が立てた仮説だ。
……それだけでなく、621は、612が"ゲーム"として知っていた世界を"実際に生きてきた"と聞かされた。
色々と情報が多すぎて流石に疲れてきた。612の動機や悩み、後悔や希望だけで済むかと思っていたところに、技研の職員ですらも知らなかったであろうコーラルの可能性が実例を伴って現れた。
今日のところはこの辺りで切り上げて、一度休むとしよう。
少なくとも、時間は十分にある。
612も617たちも、どこかスッキリとした顔をしている。兄妹喧嘩を経て、より互いを深く理解したから……だろう。
612は、613たちを喪ったことをずっと引き摺っていた。
そして、613たちを取り戻すためにコーラルリリースを試みた。
だが、自己のあり方に"兄"が深く根付いていたが故に……例え止められるかもしれないとしても、己の"ワガママ"として通そうとした。
そんな612を止められるのは、この世界に617たちを置いて他にはいなかった。そう、612が妹として守ると決めた存在だからだ。
そして、兄妹喧嘩の末に612は止まった。
612がコーラルリリースを企むことはこの先無いだろう。
それをすれば、617たちとの"兄妹喧嘩"を否定することに……617たちの"兄"であることを否定することになるからだ。
612がコーラルリリースによって613を取り戻そうとしたとき、俺はそれを止めるか迷ってしまった。……613たちを喪うことになった木星戦争、それに独立傭兵として加わることを決めたのは俺だからだ。
故に、613たちを喪った責は俺にある。
仮に、617たちを迎え入れず、612だけでルビコンの戦場を渡り歩いていたなら……俺はコーラルリリースを受け入れただろう。
だが、今の俺たちには617,618,619,620,621がいる。その5人との日々までもが白紙になってしまうのではないか……そう思ったから止める決断を下せた。
612が"兄"として生きている限り、俺も"父"として生きていかなければならないだろう。
それが……この世界で612を目覚めさせた俺の果たすべき生き方だ。
だが、612には……聞いておくべきことができた。
それは明日の朝に聞くとしよう。
Side 612
私が兄妹喧嘩に負けた今日の夜、今は617たちに囲まれて横になっている。
ウォルターたちにこの世界が"ゲーム"として作られた世界だと伝えるのはかなりの躊躇いがあったが、幸いなことに私の
621も自身が"周回者"であることを明かしたときは流石にウォルターも頭を抱えていた。悪いことが重なったというよりは、信じ難い情報の連続で脳がパンクしかけていたのだろう。
私がウォルターの立場だったら、その前にパンクして思考を放棄していた自信がある。そのくらいには荒唐無稽な話だと自覚している。……コーラルの情報導体としての特性を考えれば、完全に荒唐無稽と言いきれないのが更に
「それで……お兄様は"前にいた場所"に帰りたいと思っていますか?」
617が、どこか不安そうな表情で私を見ている。
もうこの世界で過ごして10年以上……四捨五入すれば11年になるが、それでも"前にいた場所"で生きていた時間の方がまだ長い。それに、"血の繋がっている家族"だっていた。
今の617は、私が"血の繋がった家族"と"
「正直に言えば、置いてきてしまった人たちがどうしているのか気にならないと言えば嘘になる。……まあ、それでも帰る選択肢は選ばないさ。」
「そう。お兄はずっと私たちと一緒にいてくれるの?」
「ああ。……"前にいた場所" の "あの時"に戻ってそのまま生きたとしても、"この世界"で過ごしている方が幸せだろうからな。」
仮にあの時に今の記憶を持ったまま戻ったとしても、そのまま大学を出てどこかの企業に就職して……となるだろう。
だが、場合によっては死ぬかもしれない"こちらの世界"で生きていく方が私の性に合っている。もちろん、戦場での殺し合いに魅入られた訳ではない。……"誰のために"頑張るのかがハッキリしているからだ。
「ええ、言わなくてもわかりますわ。それは、私たちがいるから……ですわよね?お兄様?」
「そうだな。向こうに戻ったとしても……自分の成すべきことが見つけられなくて、抜け殻のような人間になる未来が見える。お前たちがいないとダメな人間になってしまったよ。」
「……それを私たちに甘える方に発揮して欲しいんですけどね。私たちのために頑張るのは、もう散々してきましたから。」
オーバーシアーの次代育成が上手く行けばそうなるかもな。
ルビコンで暮らす以上……いや、最悪の事態を考えればどこか遠くの惑星へ移ろうとも、コーラルの扱いがしっかりしたものにならなければ安心できない。中途半端なところで投げ出して、その結果として宇宙にコーラルがばら撒かれたらお終いだからな。
「オーバーシアーの次代へ上手く引き継げたら……だな。それまでは私が中核になって動かないといけない。」
「でも、それって下手をしなくても10年単位の仕事よね?」
「まあな。だが、これまでよりは自由な時間は格段に増えるはずだ。その時に……な?」
617たちが私の方ににじり寄ってくる。……なるほど?確かに今は"自由な時間"だからな。今夜も寝返りはできないかもしれないが、まあ幸せの重みだと思って喜んで受け入れよう。
「それなら、今でも構いませんね?」
「もう後は寝るだけ。私たちも一緒だから。」
「後で増えようとも、今見逃す理由にはなりませんわ!」
「普段から私たちに甘えても良いんですよ?」
「私たちの脳を焼いた責任、取ってもらうわよ?」
ああ、取ってやるさ。死ぬまでずっと……な。
正直に言えば、この人生1回きりだと足りないな。……何度生まれ変わろうともお前たちと一緒になれればそれが1番だ。*1
「それで、お前は……"前の世界"に戻りたいと思っているのか?」
翌朝になり、朝食のために集まった。
やはりウォルターもそれを聞いてくるか。私に"血の繋がった家族"がいて、それと無理やり引き離されてしまったと考えれば無理もない。
「仮に……仮に、だ。お前が"前の世界"に戻ることを望んでいて、その上でその手段がコーラルリリースしか無いとなれば……俺にお前を止めるつもりは無い。」
「"血の繋がった"家族に会いたいとなれば、それを止める権利は俺に無い。その手段を探すために全力を尽くすと約束しよう。」
ウォルターが覚悟を決めた目で私を見ている。
本当に僅かな可能性かもしれないが、オーバーシアーとして最悪の事態ですらも容認すると言っている。これまで"仕事"に捧げてきた全てが無駄になるかもしれないとしても、私を尊重しようとしてくれている。
だが、私が何かを言う前にどこか安堵したような表情になった。
背後にいる617たちの表情は見えないが、何の不安も抱いてない表情をしているのは想像に難くない。そして、そこから私が"前の世界"に戻るつもりは無いと読み取るのも。
「617たちの
「……別に"前の世界"で酷い環境にいたとかそんな訳ではないから安心してくれ。ただ、"前の世界"で見つけられたかもしれない"私のやりたいこと"よりも、"この世界"で見つけた"私のやりたいこと"の方が良いだけだ。」
「…………そうか。そう言ってくれるか。」
ウォルターが気恥ずかしそうに横を向いた。こんな姿は初めて見るな。
「……それで、だ。もしも"この世界"でも家族が必要なら……俺は父親代わりにはなってやれる。……必要ならそう言ってくれ。」
………………ウォルター、それは反則だ。少しばかりイジワルで仕返ししても罰は当たらないだろう。
……仕返しとは言ったが、紛うことなき本心なのだがな。
「父親"代わり"だなんて寂しいことは言わないでくれ。……ずっと前から父親だと思っていた…さ……」
……最後の方は私も恥ずかしくなってしまった。
617たちからの何とも言えない目線が痛い。こう……ほんわかするシーンを見守っているような感じが半分、もう半分はからかうような感じだ。
「……もうまどろっこしいですわね!!こんなときはこうすれば解決しますわ!!やっておしまい!!」
「待て、617,618何をす──
「620,621?私を急に立ち上がらせて何を──
そのまま私とウォルターを無理やりくっ付けて、617たち5人に外側から囲うように抱きしめられた。
「あんたたち、私を除け者にするなんて随分と水臭いじゃないか。私も混ぜてもらおうかね。」
「お兄様には近づけさせません。」
「お兄は私たちのものだから。」
「お兄様は渡しませんわ!!」
「お兄様を誑かそうとしても無駄ですよ?」
「……随分と賑やかになったわね。」
ウォルターにカーラ、617,618,619,620,621がいる。
心の中には613,614,615,616が。もちろん、622もだ。
まだ、これを日常と呼ぶには戦い終わって日も浅い。
だが、これを日常と呼べる日はそう遠く無いだろう。
私の心を覆っていた……いや、私の心を形作っていた"兄としての殻"は壊された。だが、全てが壊された訳ではない。
"完璧な兄"でなくても良いと……欠点があろうとも、情けない姿を見せようとも、"兄"であることに変わりは無いと。
私の心を覆っていた殻は、一部だけが壊された。
故に、その殻は……もはや私の本心を閉じ込めるものではなくなった。
いつでも帰れる、私の心の家となった。
"
6周目にして、ようやくお兄様が救われるルートです。
5周目は、『完璧な兄』としての殻が完成してしまい、"前世の私"が二度と表に出てくることが無い(殻に閉じ込められてそのまま窒息死するイメージ)ルートです。
一方6周目は、『完璧な兄』でなくとも良いとわからされて、閉じた殻からいつでも帰れる家(出入りが自由にできる)になりました。ようやく、"前世の私"と"C4-612としての私"の区別がなくなり、素のままでいられるようになったルートです。
もちろん、"殻"の大部分は残っているので617たちの兄であることは捨てていません。
ルート名の『リリース』は、これまでのルート名がレイヴンの火,ルビコンの解放者を一部改変したものだった流れに沿い、『コーラルリリース』を改変したものになります。そして、お兄様の本心が"解放"されたことも表しています。
正直な話、かな〜り初期のころの私のオリチャーに助けられました。そう、"先輩"呼びから"お兄様(お兄)(兄さん)呼び"に変わったことです。
前書きで「ここまで読んで下さり 感激だ…」とブルートゥが顔を出してきましたが、流石に真面目な回だったので引っ込んでもらいました()
……ふぅ。やりきったぜ。
ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)
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C4-617
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C4-618
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C4-619
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C4-620
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C4-621