ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話 作:CVn-α:コル・カロリ
脳内にコーラルリリースされて受信した幻覚の出力です。
Side 速水
どうも。シュナイダー社の速水です。
私たちシュナイダー社の社員は、一部がルビコンに支社を構える形で滞在していました。ただ、コーラルを巡る企業間の争いは極めて不幸な結末を生み出しました。
幸いなことに、ハウンズリーダー等の助けもあり"第2のアイビスの火"によるシュナイダー社員の損失は発生しませんでした。
今はルビコンから帰還し、本社にて報告をしているところです。
「我々シュナイダー社にとって、今回の出来事は……プラスに働くことではありました。アーキバスの傘下から独立し、ルビコンで多くの戦闘データを得ることができました。」
「戦闘データについては実に得難いものです。それが集まったのは技術革新の良い土台となるでしょう。」
「コーラルは、機体に搭載する燃料として有望でしたが……今後、コーラルを使用するプランの一切を放棄します。"政府"の指示を仰ぎますが、必要とあればコーラルに関する研究データの一切を処分することも含めて、です。」
「あなたからの報告書を読む限り、これは人間に扱い切れるものではありません。」
様々な企業から"頭のネジが吹っ飛んでいる"などと言われているのは知っていますが、これだけ冷静な判断ができる企業は果たしてどれだけあるのでしょうか。恐らくシュナイダーを除いて無いでしょう。
他の企業は、あくまでも"政府"による制裁を恐れたり、そもそも資本や技術の不足で渋々諦めるといった具合でしょう。
ですが、シュナイダーは違います。
あまりの速さに制御を失った機体のコントロールを取り戻すのは至難の技です。そうなってしまえば、いくら優秀なパイロットとは言えども無駄死にしてしまいます。
速さを追い求める我が社にとって、人材よりも得難いものはありません。……意外に思うかもしれませんが、我が社においてテストパイロットの"事故死"は極めて稀な出来事です。最初はAIに操縦を任せることでパイロットの損失を可能な限り減らしていますから。
……話が逸れましたね。とにかく、シュナイダーは速さを筆頭に、"人間の手でコントロールできないもの"の恐ろしさは身に染みています。ですので、コーラルを目の前にしても利益に目が眩んで迂闊に手を出す……なんてことは起こらないのです。
「既にオーバーシアーから物資輸送依頼が入っており、"政府"からの承認が降りればルビコンに再び降り立つことができます。オーバーシアーからは、物資輸送の見返りにルビコンを試験場として使用可能にする……と。」
「なるほど。ただ、それには"政府"の許可が必要になるでしょう。オーバーシアーはそれに口添えをする……その程度の期待に留めておきます。」
速さ一辺倒だと思われている我がシュナイダー社ですが、その辺りのバランス感覚もしっかりしています。
寧ろ、空力で空を飛ぶ私たちにバランス感覚が無ければどうなるでしょうか。答えを火を見るより明らかでしょう。……政治的なバランス感覚と航空力学的な意味でのバランス感覚が違うという指摘は無視します。
「さて……ルビコンで活動する中で、我が社に引き入れたい人材はいましたか?恐らく、"彼"はその筆頭だと思いますが。」
シュナイダー社は、空力に理解と適正があれば新入社員は大歓迎です。常に引き抜きの機会は伺っています。
「彼は……我がシュナイダー社に是非とも引き入れたい人材ではあります。ですが、一つだけ問題が。」
「問題……と。"第2のアイビスの火"については特に気にしません。事情は我々上層部も把握していますから。」
やはり私の読み通りでしたか。上層部は、"第2のアイビスの火"を起こしたことを理由にはしないと。
ルビコンの状況が一斉に様々なメディアでリークされ、惑星封鎖機構──そしてそれを管轄していた軍部──への大々的なバッシングが起こりましたが、十中八九オーバーシアーによる情報工作でしょう。もちろん、嘘は含まれていませんでしたが。
今回の評価も……いえ、まだ志願の意思すら確認していないので気が早すぎますが、その情報工作の影響を受けているはずです。
まあ、大事な部分はそこでは無いのですが。
「いえ、それではなく……恐らく、彼がルビコンから出ることは二度と無いかもしれません。」
「ルビコンから出ることは無いと。……コーラルの監視は政府から任命されるでしょうが、政府側の人員を育成した後に引き継ぎ、そしてルビコンから出ることもできるはずです。」
普通の人間ならそうするでしょう。もはや死の星と化したルビコンに留まる理由なんてありませんから。
仮に静かな暮らしを望むとしても、医療設備やその他インフラ面の都合から"のどかな地域"を選べば良いだけです。
ですが、彼は恐らくそうしないでしょう。
「彼には、異常なまでの"家族"への執着が見られます。それと……これは私の推測になりますが、彼はルビコンで家族を失っている。」
「少なくともハウンズから戦死者が出た報告は……およそ7年前の木星戦争が最後のはずです。ルビコンでは一体誰が?」
「ルビコン解放戦線経由ではありますが、シュナイダールビコン支社でもハウンズの戦闘ログを見ることができました。……しかし、ある戦いについては頑なに提供を拒まれました。」
「ヴェスパーの"2代目"ゲルニカ……V.Ⅸ ゲルニカとの戦闘ログです。」
私の方からも、直接戦闘ログを提供して欲しいとお願いしようとしたことがあります。もちろん、正当な対価は支払うつもりでした。
ですが……
「彼の前でその名前を口にしただけで雰囲気が変わる程でした。"それ以上踏み込むな"と警告するようなものに。……正直に言えば、ルビコン解放戦線との協力関係で繋がっていなければ"敵"として見なされていてもおかしくなかったと思う程でした。」
「……なるほど。となると、その"ゲルニカ"には第4世代の強化人間が──それも、番号が近い……下手をすれば"連番"──になっていた可能性があると。」
「はい。そして、彼はその"家族"が眠る星を守ろうとしている。故に、ルビコンの外へ飛び立つことはもう無いでしょう。」
「事実、解放戦線との最後の戦いでは《私にもルビコンで守るべきものができた》《罪は既に背負っている》と言っていましたから。」
本音を言えば、彼がシュナイダー社の社員として羽ばたく姿を見てみたかったです。しかし、私たちが提供できるメリットでは彼の決意を覆すのに足りることは無いでしょう。
「……わかりました。では、彼には必要な時にシュナイダーの外部テストパイロットとして依頼を出す形にしましょう。独立傭兵としてルビコンに留まり続けるのであれば、これが1番丸く収まるはずです。」
「丸く収まる……きっと彼がこの場にいれば、"シュナイダーは次は円盤型の飛行物体でも作るつもりか"と言っていたでしょうね。」*1
「そう言えば、彼は"鼻が高い"に対して"空力パーツにするつもりか"と返したとの報告も読みました。そんな彼であればそれも頷けますね。」
いっそのこと、開発局をルビコンに設置できれば……流石に"政府"が許しはしないでしょうから叶わないでしょうけれども。
「……あっ、今までタイミングが無くて切り出せていませんでしたが、解放戦線との最後の戦いのログ──正確には、そこから再現したホログラムの立体映像をお見せします。」
「……これは?!あの機体はAB中に機体を変形させて"飛ぶ"ことに特化させたもののはずですが……QBを絶え間なく使い続けることによって、別ベクトルの"速さ"を実現している……!!」
ホバー形態でのQB連続使用を見て驚いています。私も真似をしようかと思いましたが、暴力的なまでの加速度に体が耐えられないだろうと判断してやめました。いくらシュナイダー社特性の耐Gスーツを着ていても無理そうでしたから。
「こればかりは強化人間──身体も脳も両方とも──でないと不可能な機動です。ただの真人間がやるには自殺行為です。」
「つまり、LAMMERGEIERは真人間が扱う場合は"真っ直ぐな速さ"を、強化人間が扱う場合は"舞うような速さ"を追求すれば良いと。」
「彼はこの機体に新たな可能性を見せてくれました。……衝撃値が溜まってきたここからが本番です。」
ABを起動し、その直後からAQBを間断無く使って弾幕を躱す。先程までの機動が水平方向メイン──4脚のホバー形態を利用したもの──だったのに対し、これは3次元的に機動していますね。
「……ハハッ……ハハハハッ!!これが……これが我がシュナイダー社の誇るLAMMERGEIERの真の姿ですか!!」
「私たちは空を飛ぶ鳥を目標としていました。わかりやすい指針と言えば聞こえは良いですか……裏を返せば、そこで頭打ちになってしまう。」
「私たちの目標は"より速く空を飛ぶ"ことです。"鳥のように空を飛ぶ"ことではない。彼が……鳥(
やはりシュナイダーの上層部です。これを魅せつけられて空力魂が焚き付けられない訳がありませんでした。
「速水さん。あなたを本日付でプロジェクトリーダーに任命します。」
「プロジェクトの目的は……LAMMERGEIERをさらに発展させることです。"
「承りました。」
願わくば、新たな機体が彼の翼にならんことを。
ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)
-
C4-617
-
C4-618
-
C4-619
-
C4-620
-
C4-621