ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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唐突に脳内にリリースされた諸々を良い感じにまとめたものです。
これが本作での"正史"になるかはわからないので、ひとまず外伝とさせて下さい。



外伝〜6周目Afterその1(ある生徒の記録)〜

 

Side とある生徒

 

 

「次の授業の宿題やってきたか?」

 

「AIにまとめさせたからヨユーよ!」

 

「……ご愁傷さま。あの先生、なんでその結論を出したのか過程までご丁寧に聞いてくるって話だぞ。"お前が書いたんだから、内容は大体頭に入っているだろう?"って紙は回収された上でな。」

 

「《ルビコニアン キタナイ=スラング》!!面倒を増やすんじゃねえ!殺すぞ!」

 

 

 生徒たちの何の変哲もない日常が繰り広げられている。そう、ここは中央氷原に設置された『ルビコン防衛大学附属中等教育学校』だ。

 ルビコン統一政府が、ルビコンに侵略してきた企業、そして惑星封鎖機構を駆逐してから2年後に設立され、今では設立から6年が経った。……いや、6年しか経っていないのかな?

 

 ここではルビコン解放戦争を生き残った人たちが教鞭を執り、生徒はルビコン防衛軍の次代となるために日々勉学と訓練に励んでいる。

 

 ちなみに、防衛大学まで進んで優秀な成績を修めると、ルビコン防衛軍ではなくあの"レッドガン"からのスカウトがかかるという話だ。噂なんかじゃない。実例もある。

 解放戦争の際に、無理やり従わされていた企業──そう、あのベイラムグループだ──の軛を抜け出してルビコン解放戦線に味方し、その後の封鎖機構を駆逐する決定的な戦いで大活躍をしたあのレッドガンだ。

 ……多分、ほとんどの生徒はルビコンの外を見てみたいからだろうけど。

 

 

「アイツはただの独立傭兵上がりだろ?MTの戦闘訓練でも見かけねぇから大した事もどうせ無いクセによ……」

 

 

 今回の宿題は、"大規模な戦闘のログを見て、その指揮官がその判断を下した理由を考察しろ"というものだ。防衛大学をまともな成績で卒業すれば、MT部隊の指揮官辺りはほぼ確実なものになる。そのため、来年から防衛大学に進学する6年生ともなればこんな宿題が多くなる。

 

 

「……チッ、チャイムが鳴りやがったか。」

 

 

 ああ、今喋っているコイツは僕じゃない。僕たち普通科の中だとMTの腕は一番だが、頭の方は並くらいの奴だ。……なんで僕はこんなことを考えているのだろうか。別に誰かが聞いている訳でもないのに。

 

 

「お前ら、全員いるな?……よし、じゃあ始めるか。」

 

 

 授業を担当している"犬養"先生が入ってきた。さっきのアイツは"独立傭兵上がりで大したこと無い"なんて言っているけど……僕の勘はそれを否定している。

 

 独立傭兵上がりだとしたら、どうしてこの"戦術論"の授業を担当している?

 本来なら、解放戦争のときにMT部隊の指揮官として戦場に立っていた人が担当しそうなものだ。それに、独立傭兵は金で雇われる存在……つまり、一番危険なところに投入されて使い潰される存在だ。それなのに、企業グループ2つ,封鎖機構,ルビコン解放戦線の四つ巴の解放戦争を生き残っている。……多分だけど、ルビコンでもかなり上澄みの人のはず。

 一度気になって聞いてみたけど、"そんな上澄みの独立傭兵がいたなら、それだけの活躍をした戦闘ログがあるはずだろう?"と言われてしまった。……多分、僕が見つけられていないだけ……かな?

 でも、独立傭兵なら名を売るために盛った話をしそうだし……

 やっぱり勘は勘……なのかな?

 

 

「ああそうだ。宿題を忘れた者はいないな?そんな奴がいたら……ここがレッドガンならミシガン総長が校庭100周を言い渡すだろうな。だが、私は優しいから授業が終わった後に校庭20周に留めてやる。」

 

 

 だけれども、ミシガン総長への理解度が高い。少なくとも、伝聞で知っている程度ではなくて、直接顔を合わせて何度も話したことがある……とは思う。私生活も含めて犬養先生には謎が多い。

 

 ちなみに、犬養先生は隠れた人気を誇っていたりする。特に、主計科コース*1や衛生科コースの女子生徒から。その生徒たち曰く、

「私たちのことを変な(いやらしい)目で見てこない」

「でも逆に女として見られていないみたいで悔しい」

「余裕そうな表情を押し倒してグチャグチャにしたい」

「逆にあのままグチャグチャにされるのもアリ」

「ちくわ大明神」

「首筋辺りに吸い付きたい」

だそうで。……あと誰だお前は?!

 左手の薬指に指輪を付けていないから多分独身……だとは思うけど、同じ独立傭兵出身のエリー先生といるところを時々見かけたりする。時々と言っても、他の先生に比べればかなり多い。多分あの人と恋人だったりするんじゃないかな……

 

 

「忘れた奴はいないか。それじゃあ回収する。宿題の講評は……今から個別に呼び出して行う。つまり、今日はその間は自習だな。」

 

 

 休み時間を挟んで2コマ連続の授業だから時間は100分ある。このクラスは20人だから、1人あたり5…いや、こうした時間もあるから4分くらいか。

 皆は自習なことに喜んでいるけど……先生の口元が悪い笑みを我慢しているようなものに見える。それに気付かないとは… 不憫だ…

 

 

「自習と言うとだましたことになるな。悪いが、自習の内容は既に決まっていてな……これをやってもらう。」

 

 

 そう言って渡されたのは、別の先生が担当しているはずの物理学のプリントだ。……多分、この前の抜き打ちテストの点数が全体的に酷かったからかな。クラスが阿鼻叫喚に包まれるけど、犬養先生はその程度のことでは全く動じない。下手したら、

「また1分、お前たちのせいで無駄になったぞ。」

なんて小言で刺し返されるだろう。

 幸い、僕は物理は得意な方だ。早めに終わらせて他の授業の宿題を処理する時間に充てよう。

 

 

──────

────

──

 

 

 宿題の講評はどんどん進み、アイツはAIに任せたことを見抜かれて随分と酷い目にあったようだ。酷い目と言っても、理詰めで問い詰められて全く答えられずに、やり直しと再提出の処分程度だけれども。これがMT操縦訓練の先生とかだったら、鉄拳制裁と校庭100周になっていてもおかしくなかった。

 

 

 順番が回ってきて、次は僕の番だ。正直に言うと、選んだ大規模戦闘が失敗だったかもしれない。途中から指揮官の意図が読めなくなって、そこは考察過程だけ書いて投げ出してしまったからだ。

 

 

「……まあ座れ。戦闘の終盤が未完成なのは……この戦闘については仕方ないだろう。」

 

「仕方ない……ですか?」

 

「ああ。」

 

 

 果たしてどういうことだろうか。戦術論を教えている先生でも読み取れない、なおかつ戦闘中の通信記録が一切残っていない……とか?

 

 

「惑星封鎖機構のHC部隊と、レッドガン,現防衛軍のラスティ,それと1つの独立傭兵集団が投入されたこの戦いだが……まあ、ルビコニアンとしてこの戦いを選びたくなる気持ちはわかる。だが、指揮系統が4つもあるから難しいのは当然だ。」

 

「はい。ですが、主力はレッドガンですのでレッドガンに注目して考察を進めました。」

 

 

 この戦いでは、()()()()()()H()C()1()5()()()()()()()、残りの9機をラスティさんが3機,独立傭兵集団が6機相手にした戦いだ。

 レッドガンが1機辺り2機のHCを撃破して、ラスティさんは単騎でHC3機を撃破した。正に、数的不利を戦術で覆した好例だと思ったけれども……

 

 先生は苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

 

「……お前たちにはまだ教えていないことだが、惑星封鎖機構の指揮系統は知っているか?」

 

「いいえ。知らないです。」

 

「惑星封鎖機構は、AIからのトップダウンで指示が出されていた。恐らく、人の情なんかで惑星封鎖が揺らがないように……そんな狙いがあったのかもしれん。あるいは、単に人間が"惑星封鎖"なんて大それた責任から逃げただけかもしれないが……」

 

 

 なるほど。もしかしたら、惑星封鎖機構側の意図を読み取れなかったのはそのせいかもしれない。

 

 

「と言うことで、だ。惑星封鎖機構側の通信ログなんかが不足している以上、私が講評しようとしてもそれが正解かどうかはわからない。……ひとまず、書き上がっている分を見ていくとしよう。」

 

 

 レッドガンはいつもの戦い方に見合わず最初から引き撃ちに徹していたが、それを数的不利を埋めるためと考察したのは正解だと言われた。事前に補給箇所をいくつも設けていたのも、最初から数的不利を予見して引き撃ちに徹することを作戦の骨格にしていたのも当たっていた。

 ただ、封鎖機構の動き方が途中からおかしく──損害を気にせず(いたずら)に突っ込んでいる──なったのが理解できなかった。

 

 

「……強いていえば、ラスティがHCを2機撃破して、この独立傭兵集団も4機撃破している。これらの戦力がレッドガンに合流される前に決着を付けたかった……そんなところだろうな。」

 

「ですが、ザイレムを放置したとしても上空で留まっている強襲艦隊の大きな脅威にはならなかったはずです。撤退して、地上でSGやLCと共に戦っていればレッドガンはより苦境に立たされていたんじゃないかと。」

 

「その通りだな。ザイレム単艦では強襲艦隊を相手に砲撃戦を仕掛けるには不安が残る。かと言ってレッドガンのAC部隊で殴り込みを掛けても、機動力の問題から勝ち目は薄かっただろう。お前の言う通りだ。」

 

 

 先生の言う通りだ。……やはりAIだから戦局を正しく読み切れず変な指示になってしまったのか。

 

 

「……そろそろ時間か。まあ、この学校で入手できている通信ログで答え合わせをできる範囲内においては、お前の考察は満点だ。それ以外は流石に採点の対象外だな。次の奴を呼んできてくれ。」

 

「わかりました。ありがとうございました。」

 

 

 とりあえず、採点できる範囲では満点……ということは、今回の宿題の評価としても満点を貰えると思って良さそうだ。

 さて、次の人を呼びに行こう。

 

 

 

「まさか偽装した戦闘ログに違和感を抱く奴が出てくるとはな。ハウンズが目立たないように工作したが……いや、これに気づける奴の方が例外か。まあ、また後で考えるとしよう……」

 

 

 


 

 

 時は進み、防衛大学の2年生となった。幸いなことに、僕の配属はMT科ではなくAC科となった。戦術論を含む座学での授業成績とMT操縦訓練での成績、それと身体的な適正からACパイロットとしての適性を見出された。

 防衛大学においてAC科は、前線に出て戦闘をする人間を育成するコースの中ではエリート中のエリートだ。MT科が500人程度なのに対し、AC科は僅か30人しかいない。さらに、防衛大学を卒業していなくともルビコン防衛軍のMT乗りになる道はあるけど、ACパイロットになるためにはこのコースを卒業するしかない。

 

 ルビコン解放戦争のときには、確かに数的な主力はMTだった。凡人が乗るACは、それこそ訓練を受けたMT乗りが操るMT10機で落とせるレベル……つまり、高級なMT程度の驚異でしかない。

 それならACは不要でひたすらMTを作れば良いと思うかもしれないけど、ACの真価は熟練パイロットが乗ったときにある。惑星封鎖機構のHCにも単独で勝ち、超大型兵器──確かバルテウスやカタフラクトという名前だったかな──にすら勝つポテンシャルを秘めている。と言うよりも、実際に勝った例はそこそこある。

 

 ただ、いわゆる"強化人間手術"と呼ばれるものがあり、それを受けた人間と生身の人間では何もかもが違う……らしい。"らしい"と言うのも、ルビコン解放戦争において()()()A()C()()()()……癪なことに、侵略してきた企業の1つであるアーキバス、そのヴェスパー部隊の第1隊長()()()()()()()()()()()。そのフロイトが生身の人間だったからだ。

 果たして生身の人間な僕だけれども、そのフロイトのように名だたるACパイロットになれるのだろうか……

 

 

 ちなみにだけれども、犬養先生は防衛大学でも戦術論の授業をしている。とは言っても、担当しているのはAC科の方の戦術論だ。……やっぱり、この人はルビコンでも上澄みのACパイロットだったに違いない。そうでなければ、ここに立っているのは……多分防衛軍のラスティさんだったかもしれない。

 

 

「さて、お前ら。聞いて喜べ。来週の授業スケジュールが大幅に変更される。……来週は1週間ミッチリACの操縦訓練と模擬戦だ。」

 

 

 ……正直、こうなるときはロクなことが起こった試しがない。

 この前は、

「お前らは座学にも飽きただろう?1週間座学が無くなると言ったら泣いて喜ぶか?」

と言われて、平日丸5日を使ってサバイバル訓練をさせられた。食料は現地調達で、飲み水や寝る場所も自分で何とかさせられた。もちろん、健康管理はされていて危険な状態になる前に様々な手当は受けられたけれども、成績は容赦なく減点されていた。先生は撃破された後に自力で帰還する訓練だと言っていたから必要性は確かに理解できたけど……

 

 

「ハハハ、この前はだまして悪かったな。だが、今回は泣いて喜ぶと約束しよう。……それも、レッドガンのナンバー持ちが訓練を付けてくれることになったからな。」

 

 

 途端に教室が沸く。現金な奴らだ……と思いたいけど、僕もその沸いた人間の1人だから人のことは言えない。

 

 


 

 

「まさか総長サマが自らお出ましとはな。……ああ、後進の育成を考えているのはそっちもか。」

 

「貴様も随分と手塩に掛けて育てているようだな。……いや、話を聞く限り、貴様が育てているのは頭の方だけか。」

 

「まあな。」

 

 

 今回の訓練には、まさかのミシガン総長とG4ヴォルタさん、G6レッドさんが来て下さった。他にもレッドガンのACパイロット(ナンバー持ちではない)も複数名いらっしゃる。

 ミシガン総長は解放戦争のときに比べると少し覇気が無くなったような気がするけれども、やはり生ける伝説とは言えども年には勝てないのかもしれない。代わりに、G6レッドさんは風格が増している。

 

 ……それにしても、犬養先生とミシガン総長の距離が近い気がする。軽口を叩いたり、互いに目的を言わずとも察したりとお互いをある程度理解しているように思える。

 この人はやっぱり何者だ?

 

 

「それで、このヒヨッ子どもにどんな訓練を付けて欲しいんだ?」

 

「なに、レッドガンの流儀を叩き込んでくれればそれで良い。それで心が圧し折れるようなら、ソイツはそこまでの人間だ。」

 

 

 ……今回ばかりは犬養先生も手厳しいことを言っている。いつもなら多少の失敗はしっかりと面倒を見てくれるけれども、ここまで突き放すような言い方は初めてだ。

 

 

「随分と手厳しいな。ここまで育て上げたのに惜しくないのか?」

 

「惜しくないな。この程度で折れていたら、戦場に出た時にどうなるかわかったものじゃない。……味方の陣形を乱して敵に利するくらいなら、そもそも戦場に立たせるべきではない。」

 

「……そうか。ここで教鞭を執っているのは貴様だ。そこは貴様の流儀に従うとしよう。」

 

 

 ……うん。やっぱりこの人は只者じゃない。ミシガン総長が認めているような人だ。なら、どうして戦闘ログが残っていないのか。もしかして、元々はレッドガンでMT部隊の育成をしていた裏方の人……だったり……???だとしても独立傭兵上がりと経歴を偽る意味も無いし……謎は深まるばかりだ。

 

 


 

 

 いちにちめがおわった。たすてけ。

 

 ひたすらもぎせん。もぎせん。もぎせん。なんどおとされてももぎせん。

 れっどがんのひとたちがたりないから、もぎせんができないあいだはとれーにんぐ。

 

 もうねなきゃ。

 

 


 

 

 2日目の朝になった。夢すら見ないほど疲れていて、文字通り泥のように眠っていた。

 これから朝ごはんを食べたらまたあの1日が始まる。レッドガンの人がわざわざ来てくださったんだ。少しも無駄にしてたまるか。

 

 

──────

────

──

 

 

 ふつかめがおわった。tすえkて。

 

 もぎせん。はんせいてんを してき されてまたもぎせん。

 やっぱり あいまに とれーにんぐ。

 

 もうねな

 

 


 

 

 ……何とか最終日の5日目までやって来れた。

 普段の1ヶ月分の戦闘訓練を詰め込まれている気がする。

 それに、レッドガンのACパイロットは質が高くて、1回の模擬戦から得られる経験値が違う。

 

 今日も頑張ろう。

 

 

──────

────

──

 

 

「さて、貴様らは産まれたてのヒヨッ子から産まれて5日目のヒヨッ子程度にはなれた。……そうだな、次は貴様らが目指すべき"上澄み"同士の戦いを見せてやろう。」

 

「と言うことだ。お前ら、レッドガンのナンバー持ち同士の戦闘はそう簡単に見れるものじゃない。目に良く焼き付けておけ。」

 

 

 ……あれ?ミシガン総長が随分と悪い顔をしている。犬養先生はこっちを見ていてそれに気付かない。

 

 

「何を言っている?一番の"上澄み"がここにいるだろう?おい、ヴォルタ!そこの犬をシミュレータにぶち込んでこい!!」

 

「なっ?!ミシガン、貴様謀ったな?!やめろヴォルタ!離せ!!」

 

 

 先生のあんなに慌てふためく姿は見たことがない。多分、これを主計科や衛生科の女子生徒に話せば良いネタになることだろう。

 それよりも、"一番の上澄みがここにいる"……まさか犬養先生はレッドガンのナンバー持ちよりも強い……??

 

 

 

「へっ!テメェには10年とちょっと前に良いようにやられたからな。利子も付けて返してやるよ!」

 

「ヴォルタ……お前……利子なんて難しい概念を良く理解できたな。五花海から習ったのか……」

 

「んなっ?!テメェ馬鹿にしやがって!!この後タダで済むと思うんじゃねえぞ!!五花海から習ったのは合っているけどよ……

 

 

 ……うん。これは面白いものが見れそうだ。

 

 

──────

────

──

 

 

『おいミシガン!1対3とはどんな了見だ貴様!!』

 

『どんな了見かだと?貴様がまさにその"猟犬"だろうが。その牙がナマクラになっていないか……見させてもらうぞ。将来のレッドガンに入るかもしれない奴等を育てているんだ。これくらいは当然だろう?』

 

『……おい、お前ら聞こえているな。ミシガンがふざけたことを言い出してからのことは他言無用だ。理由は後で話す。……ミシガン、お前に付き合ってやるが……少し待て。』

 

 

 他言無用と言われているけれども、こんなに面白いことを見過ごす僕ではない。中央氷原に幽閉されていて娯楽の種類が少ないんだ。この位は大目に見てもらおう。……と言うことでコッソリ端末の録画モードをONにする。

 おっと、エリー先生が入ってきた。上手く隠しながら撮らないとか。

 

 

『……待たせたな。これで今日のここでの出来事は"無かったこと"にできる。』

『ここまでお膳立てされて負けたとなれば、"猟犬"の名が廃る。手加減は期待するなよ。』

 

 

 先生の声から伝わってくる"圧"が変わった。模擬戦で戦ったレッドガンのACパイロット……それこそミシガン総長にすら劣らないものだ。

 

 

『……全く。解放戦争のときに貴様らと敵対しない道を選んで正解だったな。』

 

 

 そこから、先生と、ミシガン総長,ヴォルタさん,レッドさんの1対3が始まった。お調子者の発案で、講義室の中では先生が何秒持つかの賭けが始まった。

 ……そこにまさかのエリー先生が賭けに加わった。……これは面白そうだから、僕も"犬養先生が勝つ"に賭けるとしよう。ちなみに、()()なのは、エリー先生が犬養先生の勝ちに賭けて、僕がそれに便乗したからだ。

 

 

 犬養先生はシュナイダー社の軽量逆関節を主軸にした赤い機体に乗っている。正直、エリー先生が犬養先生の勝ちに賭けていなかったら、僕は……"ミシガン総長とのタイマンまでもつれ込んで落とされる"に賭けていたと思う。そのくらいアレは扱いが難しいことで有名だ。

 

 そのはずなのに、先生はミシガン総長のSONGBIRDS,ヴォルタさんの勾陳にジマーマンにSONGBIRDS,レッドさんの玄戈を的確に回避している。特に、ジマーマンを避けられているのはおかしい。アレはアラートが鳴らないはずなのに。

 

 

 先生は機動力を活かして3機の陣形が乱れる隙を作ろうとしているけれども、流石はレッドガンのナンバー持ち。陣形が全く乱れていない。

 

 そこで、一番耐久が低いと思われるレッドさんに狙いを定めて、逆関節のQBで翻弄しながらヒットアンドアウェイを叩き込む。

 そのときに、遠くからブレードを機動してQBでキャンセルしている。……確かAC内装概論で習った、KIKAKUブースターの近接攻撃推力の高さを無理やり引き出すテクニックだったはず。ただ、それは尋常じゃない加速度が身体を襲うから、強化人間でもない限り使えないもののはず。

 

 そうこうしているうちに、集中的に狙われたレッドさんが撃破された。犬養先生はAPをリペアキット1個分しか削られていない。

 ……となると、多分犬養先生はリペアキットを1個残して勝つのかもしれない。

 

 

──────

────

──

 

 

 教室中の皆が信じられないものを見た顔をしている。例外はエリー先生くらい。……僕だって半信半疑くらいの顔だ。

 

 あの模擬戦は、犬養先生がリペアキットを使い切ってAP8500程度を残して勝った。ミシガン総長はルビコン解放戦争の頃と比べたら衰えているかもしれないけど、それを考えたってこうなるなんて信じられない。

 

 

「だましていて悪かったが、"上"からの指示なんでな。箝口令には従ってもらう。」

 

「さて、貴様らも見た通り……このルビコンにおいて最強のAC乗りは、フロイトではなかった。コイツが1番のAC乗りだ。」

 

 

 いくらミシガン総長の言うことだとしても、にわかには信じ難い。けれども、シミュレーターでの戦闘とは言えアレを見せられたら信じるしかない。

 

 

「コイツは、強化人間手術を受ける前だけでなく、受けた後のフロイトにすら勝った。フロイトの死因は、表向きはベリウス地方の封鎖機構を壊滅させた戦いで戦死したことになっているがな。」

 

「……お前ら、1回静かにしろ。さっきも言ったが理由を説明してやる。」

 

 

 そこから、犬養先生の口からその理由が語られた。

 

 ルビコン解放戦線がルビコン統一政府となるときに、その権威の大部分は解放戦争を勝利に導いたことが元になっている。そんな中で、"最強"の人間が統一政府の人間でないことは不都合だと。

 いや、確かに最強のAC乗りはフロイトとして知られている。だけれども、フロイトが死んだ後はラスティさんかミシガン総長のどちらかになる。その2人なら、明確にルビコン解放戦線の側の人間だから都合は悪くない。

 でも、実際は金で雇われていた独立傭兵だとなればどうだろうか。……恐らく、より高い金を積んで雇い、ルビコン統一政府に圧を掛けるヤツが出てくるかもしれない。それこそ、手段を選ばなければ……今度はルビコンが内戦に陥るかもしれない。

 

 犬養先生はそれを危惧して、後世に伝える歴史の一部を改竄させたのだと言う。……もちろん、ルビコン統一政府から"口止め料"は貰っているようだけれども。

 

 

「先生、だとしたらそれを言ってしまっても良かったんですか?」

 

「……今回はそこのミシガンに嵌められたからな。不可抗力だ。何か問題が起これば、首が飛ぶのは老い先短いミシガンと、漏らした馬鹿者だけだ。」

「ああ、そうだ。漏らそうとしても"証拠は無くなっているから"この場で何か言ったりはできないが……漏らしたら覚悟をしておけよ?ルビコン統一政府が全力で消しにかかるかもしれないからな。」

 

 

 ……ん?待てよ?"証拠は無くなっているから"だって??

 

 ……血の気が引いた。録画していたはずのデータがいつの間にか消されていて、代わりに"次はありません"の文字だけが映されている動画ファイルに置き換えられていたからだ。それに、それを言っているときの先生は明らかに僕を含めて数人の生徒を見ていた。どんなトリックを使ったのかはわからないけれども、全部バレてると見て良いだろう。

 

 

 ……ああ、この人を甘く見ていた。

 この人は、文字通り戦場を"生き延びて"きた人だ。

 ただACの戦いで強いだけなら、目障りに思った企業や……それこそ、統一政府から"消されて"いてもおかしくない。そうなっていないのは、きっと"裏"のやり方にも通じているから。

 

 

「貴様らは随分と幸運な奴らだ。コイツの教鞭でここを卒業できるからな。喜べ、コイツからレッドガンに推薦されたら無条件で採用だ。後はお前たち次第だ。」

 

「……そういうことだ。さて、午後からは訓練を再開する。」

「ああ、それと。教官側の人数が少ないようだったから、レッドガンの方からもう1人来てくれたみたいだ。素性は明かせないとのことだが、実力は折り紙付きのようだな。ソイツから指名された奴は泣いて喜べよ?」

 

 

 ……あっ、僕死んだな。どう考えても犬養先生(素性は明かせない)だ。コッソリ録画したりしていた生徒を呼び出して"お話"をするに違いない。もしかしたら模擬戦のステージも地下駐車場で固定かも。……いや、逆関節だからそれは違うか。

 

 

 

 生きて帰れると良いなあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……待てよ?これを聞いて全く動じていないエリー先生は最初から全てを知っていたってことだろうから……

 

 やっぱりエリー先生と犬養先生は恋人?!*2

 

*1
補給や事務といった、いわゆる裏方

*2
……あまりそれを考えないでちょうだい。彼が"八つ当たり"されちゃうから。





お兄様は独身(戸籍上)です。

仮にルビコンで重婚が認められるようになったら……まあ、はい。
おらっ!責任取って幸せにするんだよっ!!

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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