ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話 作:CVn-α:コル・カロリ
年末に滑り込み更新です。
Side 612
ミシガンにより私の素性を暴露せざるを得なくなった日の夜、私はエアを呼び出して頼み事をしていた。
「それで、私を呼び出したのなら調べ事だとは思いますが、調査対象は?……こっそり録画をしていた生徒の監視でしょうか。」
「いや、違う。まずは、空振りになる見込みが極めて高いがミシガンとフラットウェルが直通でやり取りしたか。本命は、ミシガンの腹心とフラットウェルの腹心が直接会う機会があったかどうかだ。」
エアは随分と怪訝そうな顔をしているが、無理も無いだろう。私がしている頼み事の内容を踏まえれば、"今回の騒動はフラットウェルの仕込みで行われた"と言っているに等しいのだから。
「……わかりました。ただ、調べる範囲を明確にするためにも背景を詳細に説明して下さい。」
「もちろんだ。」
さて、今回の騒動をフラットウェルが起こしたと考えた理由は以下の通りだ。
まず前提として、オーバーシアーは"裏の組織"であり、表に出てはいけない。そのため、オーバーシアーの秘匿性を維持するためにも、所属している誰かが大きく注目されるような事になるのはマズい。
裏を返せば、誰かが大きく注目されれば……それだけでオーバーシアーの活動に制約が追加されることになる。
「なるほど。オーバーシアーの活動を制限したいがためというのはわかりました。ですが、フラットウェルがコーラルの星外輸出を目論んでいる兆候は見られませんでした。」
「それはそうだろうな。仮にコーラルに手を再び出せば、オーバーシアーとの全面衝突にすらなり得る。レッドガンが星外へ出て行った以上、RaDの生産力を背景にハウンズ6機が武力行使に出れば、甚大な被害を被るだろう。」
「だとすればどうして……」
さて、少し例え話になるが……
例えば、包丁が様々な犯罪に使われていることを理由に、警察に対して各家庭にある包丁の場所や本数,状態を確認できる権限が与えられたとしよう。もちろん、そのためなら(事前の通知はあるかもしれないが)家の中にズカズカと入ってくる。
そうなったときに、いくら警察だからと言っても大半の人間は忌避感を覚えるだろう。あるいは、その立場を盾にして目的外の情報収集をしていると疑う人間も出てくるはずだ。
今のオーバーシアーもそれと同じ──いや、もっと警戒度は跳ね上がっているだろう──扱いだ。
警察であれば、市民一般に知られている存在だから"警察を監視監督する上位組織"に訴えを送れる。しかし、オーバーシアーは"裏の組織"であるが故にそんなものは無い。それどころか、いざとなれば"第2のアイビスの火"を検討してもおかしくない組織だと思われているだろう。
故に、オーバーシアーは"潜在的な敵"、そこまでは行かなくとも"将来暴走しかねない組織"として見られていてもおかしくない。
「わかりました。オーバーシアーの暴走に釘を刺すためにあなたを有名人に仕立て上げ、裏での動きを取りづらくする。その計略の一環ということですね。」
「ああ、その通りだ。」
「……正直に言えば、裏での動きを取りづらくすることが目的なら、効果は覿面だ。そのために私の経歴を偽装させて、617たちの戦果も可能な限りレッドガンに擦り付けた。」
そして恐らくだが、フラットウェルであれば私がここまで読むことも想定の範囲内だろう。だからこそ、ミシガンとやり取りをしたのであれば電子的なデータではしていないはずだ。
とは言えども、様々な場所にある監視カメラやその他細かな通信ログまで全てを偽装できるとは思えない。仮にできたとしても、大掛かりな作業になるからその痕跡は掴める。
ドルマヤンに対してエアの存在を秘匿したのがこんな形で活きてくるとはな。流石に、Cパルス変異波形の電子戦能力までは掴みきれていないだろう。あくまでも、"天才的な技量を持った人間が複数人いる"程度の認識を向こうは持っているはずだ。
「……ですが、617たちの戦果を偽装させた目的は他にもありますよね?」
……君のような勘のいいCパルス変異波形は嫌いだよ。
「621*1もそうですが、617たちは全員美少女……いえ、今の肉体年齢的には美女ですか。あれだけの戦果を挙げたとなれば、"ルビコン解放の女神たち"のような形で有名人になるでしょう。」
「そして、それを許したくなかった……612、あなたの独占欲もふんだんに入っていますね?」
「ああ。……フラットウェルとしても、そう言った形でルビコン統一政府以外の旗印ができるのは避けたい思惑があった。両者の利害が一致したからこそ、ここまでの情報統制ができていたのだがな。」
恐らくだが、フラットウェルはルビコン統一政府内での地盤固めを終えたと見ていいだろう。解放戦争の終結*2から既に10年が経っている。それだけの時間があれば不思議ではない。
そして、そのタイミングで……ルビコン統一政府が完全な掌握権を握っている訳ではないオーバーシアーへの干渉も始めたとすれば辻褄は合う。
「ですが、今となってはオーバーシアーを警戒して釘を刺すフェーズに入った……と。仮にこの予想が正しければ、ルビコン統一政府は恩を仇で返そうとしていることになりますね。」
基本的に"関わっていた人間"がオーバーシアーの中で閉じていたからだと思うが、エアはそういった所には随分と純真なようだ。外部からの悪意に晒されたときも、"集積コーラル到達競争"のような形で明確な目的があった。
しかし、今の状況は"将来起こるか不明瞭な事態に備えてこちらへ干渉している"状態だ。自分たちの中だけで完結させるならまだしも、こちらへ干渉してきているのが不愉快なのだろう。
「惑星を統治するともなれば綺麗事だけでは回らない……ということだ。……まあ、我々も最後の手段として"第2のアイビスの火"を検討するような組織だからな。そこはお互い様だ。仮にアーキバス鹵獲艦隊の自爆特攻を防ぎきれていなければ……そうなっていたかもしれない可能性はあっただろう。」
「……はぁ。私には、あなたが時々わからなくなります。」
「617たちを溺愛しているだけかと思えば、オーバーシアーの一員としての冷静な目線も忘れていない。それに……"前の世界"でただの学生だったとは思えません。あなたが教えている生徒たちを見ても、そこからあなた程の人間に成長するとは思えないのです。」
「私の場合は……613たちを喪い、そしてオーバーシアーの中核として動いてきた経験があるからな。まだ人間の1人も殺していないし、殺されてもいない人間と意識の持ちようを比べれば雲泥の差だろう。」
仮にだが、アイツらの中からレッドガンへ入隊し、そしてそこで責任ある立場となって大規模な戦争を潜り抜ければ……私に並ぶ人間に成長してもおかしくはない。
"マニュアルは誰かの血で書かれている"なんて言われたりするが、正しくそれだ。私の場合だと、そのマニュアルは殺してきた相手と……何よりも、613たちの血で書かれている訳だが。
「それだと、大規模な戦争を運良く生き残れば、誰でもあなたのようになるかもしれない……そう言っているのですか?」
「ああ。その通りだ。……それと、"運良く"とは言ったが、最前線に出て指揮を取っているのなら最低限の実力は無いと無理だ。ルビコン解放戦争並の規模の戦いなら、運と実力のどちらかが欠けていれば最後まで戦いを生き残れない。」
実際のところ、私も含めてハウンズから死者が出ていてもおかしくない場面はあった。
ルビコン入りする前の戦闘ではフロイトと戦ったときに。
ルビコン入りするときでも衛星砲に撃たれたらお終いだった。
アーキバスからの偽の依頼もウォルターが、そして途中からはエアも加わって弾いていた。
あるいはベイラム基地で襲撃されたときに、身柄の確保ではなく確実な殺害を重視して建物全体にミサイルを撃ち込まれていればそこで死んでいただろう。
「……っと、話が逸れたな。とりあえず、今の私になったのは危機意識と経験の両方があるからだ。多少は私個人の才覚はあるかもしれないが……大部分はそうだろうな。」
「なるほど。……そう考えれば、ある意味では長い戦いによって変えられてしまった"被害者"でもありますね。」
「"被害者"……か。今の私には617たちとウォルター、カーラがいるからな。命の危険が常にある殺伐とした"この世界"に放り込まれたが、それで良かったと思っているさ。」
「617たちがいるから、ですか。愛する人間がいるから頑張れた……と。シスコンですね。」
シスコンか。私にとってはただの褒め言葉だな。*3
Side ???
────からの依頼で────の隠されていた素性を一部の人間に伝える……正確には無理やり暴くことになったが、"裏の参謀"たる──は最後までこの依頼を受けるかどうか迷っていた。
───によるルビコンとの貿易中継は成長を続ける部門であり、元々の武器開発,製造による利益を追い越したのが数年前のことだ。
その利益を確実なものにするのであれば、この依頼は二つ返事で受けるべきだろう。だが、それをすれば────を……そして、何よりその武力の中核を担う──を敵に回しかねない。そうなれば、最悪の場合は……地獄のようなルビコン解放戦争をくぐり抜けた俺たち───でさえも壊滅させられるだろう。
最終的な決断は、俺と──,──、それに次の総長たる──の話し合いで決めることになった。普段なら表向きのことに関しては俺と──、あるいは表に出せない裏の部分については俺と──で済ませることがほとんどだった。だが、今回ばかりは"最悪の事態"の重みが違う。
結論は、
・我々はルビコン解放戦線に"騙された側"だと判断されるようなカバーストーリーを作る
・いざとなればルビコン絡みの利権は全て放棄する
・────に"探られたとしても致命傷にならない情報"は、やろうと思えば抜き取れる管理体制にして囮にする
・対象にするのは────ただ一人のみとする
ことになった。
特に最重要なのは一番最後だ。対象がアイツだけの間は、"最悪の事態"になるまでに、警告、そして見せしめの武力行使の2段階は猶予があるだろう。その間に死に物狂いで手を引けば間に合うかもしれない。
だが、仮にアイツ以外の────構成員に飛び火すれば……もはや交渉の余地すら無く"最悪の事態"が現実のものになりかねない。
自分に降りかかる火の粉は払うだけで済ませるかもしれないが、"家族"に降りかかる火の粉は徹底的に火元から叩き潰さないと止まらないだろう。……もちろん、火元を叩き潰す間に"家族"の中から死者が出ると見積もれば引くかもしれない。だが、今後手を出すことが無いように安全マージンの中で最大限の損害を与えてから手を引くはずだ。それでも、想定される損害を考えれば割に合わないことこの上ない。
「……まさか俺たちがあの若造1人にここまで振り回されるとはな。」
「ええ。あの者は理気の流れを読む者ではなく……もはや理気の流れを"作る"者へとなりました。鯉が滝を登り竜と成る……ルビコン解放戦争で竜と成ったと思っていましたが、あの時ですらも稚魚が成魚に成っただけでした。」
「しかも選んだ道が"軍事学校の教員"であり、生徒からの人望も厚いのだろう?……組織の維持,拡大を考えている証左だ。仮にアイツが死んだとしても、少なくともそれまでにまともな"次代"がいるはずだ。」
「アイツがこの先に戦死するとは思えませんから、それは少なく見積っても数十年先のことではないでしょうか。それだけの時間があれば、"次代の育成"に留まらず、"次代の育成をする体制の構築"まで終わらせていると思います。」
──の言う通りだ。──の次代は3代目になる。そして、"組織は3代目がダメにする"の言葉がある。よって、自分が3代目を育成する重要性を認識している。それ故の発想だろう。
「"次代を育成する体制の構築"……か。俺がくたばるまでにそれができるかはわからん。幸いなことに、今は腑抜けていても余程のマヌケでなければ死なないくらいには平和だ。この間に貴様が主導になってやれ。」
普通の人間であれば、私利私欲からどこかで必ずボロを出す。仮にアイツであれば、ルビコン解放戦争での戦績を喧伝して金も地位も名声も全て手に入れることができたはずだ。
……だが、アイツはそうしなかった。それどころか、────の一員として最前手を打つために、それらを全て投げ捨てた。それこそが、アイツが組織の上に立ったときの恐ろしさを表している。
俺たちが意図的に攻撃をしない限りは向こうから手を出してくることは無いだろう。だが、俺と俺の次代たる──はともかく、さらにその先まではわからない。
ならば、───を存続させるためにも組織の教育体制は今のうちに固め、改善するサイクルを早めに生み出す必要がある。
……だから、
「貴様をここまで育てたのは誰だと思っている?貴様が成長してきた道を思い出せば、それは必ずやり遂げられるはずだ。いいな?」
「…!G6 レッド、了解致しました!」
「折角─罫線─を使って秘匿性を高めていたのですが……無駄になってしまいましたか。」
「あまりメタいことを言うなG3。雰囲気が台無しだ。」
「その言葉、そのままお返ししますよG2。」
Side とある生徒
学年も1つ上がり、防衛大学3年生になった。
そして……今年は、1つ大きな人事異動が行われた。
「見た?AC科の操縦・戦闘教官に犬養先生だってさ。戦術論もこれまで通り担当するから、AC科専門の教育は完全に犬養先生が主導する感じだな。」
「うん。統一政府との"話し合い"の結果としてこれまで隠していたはずのに、急にどうしてなんだろう……」
「犬養先生の表情……アレは不承不承っぽいかも。だから、犬養先生が表舞台に出るとしたら政府の方が主導しているのかも。」
そう、犬養先生がAC科の中で大きく影響力を持つようになった。犬養先生の実力だけを考えれば当然のことだけれども、ルビコン統一政府との"密約"を知っている身としては"裏"があるんじゃないかと疑ってしまう。
『あーあー、テステス…AC科の専属になった犬養だ。独立傭兵上がりという事でこれまでは戦闘訓練とかを担当していなかったが、今年度から担当することになった。』
MT科や非戦闘系学科の生徒からは少しざわめきが聞こえる……と言うよりは、僕たちの学年のAC科以外からと言う方が早いか。
……一部は黄色い声も混ざっているけど。この歳まで独身みたいだから、何人かの生徒は本気で狙っていてもおかしくないのかもしれない。
『中には腕前を疑っている人もいるとは承知している。まあ、期待外れだったときは年度末のアンケートでそう書いてくれれば良い。学生からの意見となれば人事課も無視できないだろうしな。』
少なくとも、一年間だけでも犬養先生に教わればそんなことを書く人はいなくなるはず。むしろ僕たちとしては、犬養先生の技量を隠す必要が無くなるから話のタネが増える。
……素性について話したら、『次はありません』 が現実になりそうだから話さないけれども。
果たして、犬養先生とルビコン統一政府の"密約"はどうなったのか。色々気になることができたから後で聞いてみよう。
……どこまで答えてくれるかはわからないけれども。
私はまだギリギリ社会人にはなっていないのですが、サークルの方で"次代育成の重要性"を身に染みてわかってしまったのです……
そこに加えて葦原先生のワールドトリガー(特に246話とかとか)が刺さりまして……
アーマードコアなのに闘争しないで闘争の後始末とか前準備とかそっちの方にばっかり逸れてますな()
ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)
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