ハウンズ美少女概念の世界線で重い感情を向けられる話   作:CVn-α:コル・カロリ

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遅れました(恒例のパルブレ切腹済み)



外伝〜6周目Afterその4〜

 

Side とある生徒

 

 

 あれから3ヶ月くらいが経過した。

 訓練の合間に大規模戦闘のログを見たりして、犬養先生が戦ったとされるものを調べた。もちろん、それ以外にも調べられる限りは調べたけど。

 

 結論から言えば、犬養先生周りの戦闘ログは改竄されている可能性が極めて高い……んじゃないかと思っている。

 犬養先生の戦術への造詣の深さに対して、動き(操縦技術ではなくて戦術的な面)がお粗末なように感じられた。あの人ならもっと上手く動けたはず。……もちろん、僕がまだ未熟な故に、「僕が考える最善の動き」が犬養先生にとっては最善ではない可能性もある。

 

 

「犬養先生、この後お時間よろしいでしょうか。」

 

「この後か。どのくらいかかりそうなんだ?」

 

「……何とも言えません。戦闘ログに対する僕の分析に講評を頂きたいのですが。」

 

「そういう事か。それなら……少し待ってくれ。私がこの後に担当する業務の中から、他の人間に任せても大丈夫な分を引き継がせてからになる。準備ができたら呼び出すからそれまで待っていてくれ。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

 

 ひとまず、犬養先生との約束は取り付けられた。後は"本当の目的"を悟られないように気を付けて立ち回るだけだ。

 

 

 

──────

────

──

 

 

「それで、講評する戦闘ログだが……ほう、懐かしいな。私が戦ったものも含まれているな。」

 

「はい。犬養先生が辿って来た道を自分でも確認すれば何か掴めるのではないか……と思いまして。」

 

「途中経過や試行錯誤の過程も含めて分析しようとした訳か。その姿勢は素晴らしいな。」

 

 

 ……今のところは怪しまれていないかな?「次はありません」の人の件があるから、ログを閲覧する時には「その年の戦闘ログを古い方から順番に」とか、「参加AC機数の多い順」とかでソートして見るようにしていた。これなら犬養先生が狙いだとはバレないはず。

 

 

「それで、この場面ですが、この動きだとこの僚機が────」

 

「そうだな。お前の指摘は尤もだ。……私もあの頃はまだ未熟だった。何せ、ルビコンに降り立ってから1年しか経っていない時期だからな。解放戦争が終結するまでにまだ2年は残っていた頃だ。」

 

 

 もしかして僕の考えすぎだった?

 ……確かに、"今の犬養先生"ばかりに気を取られて、"当時の犬養先生"が戦っていたことをすっかり見落としていた。ある意味ではバイアスに陥っていたのかもしれない。自分の予想が正しいと裏付ける証拠だけを集めようとするバイアスに。

 

 

「犬養先生も未熟だった頃があるんですね。」

 

「私を何だと思っている?人間だから何度も失敗したさ。予め最悪の事態に備えておいて、それが功を奏することは時々あったがな。」

 

「集団でとは言えども、あの頃には既にHCを撃破した経験があったんですよね?それなのに驕らず備えられるのは凄いと思うのですが……」

 

 

 MT科にいる他の戦闘教官とは違って、犬養先生は自分の戦績をひけらかしたりはしない。何かを隠しているのならそれはそれで辻褄が合うけど、単に謙虚なだけの可能性もまだ残されている。

 

 

「逆だ。集団で囲まないとHCを撃破できなかったんだ。仮に単機で遭遇したら……あの時の私では逃げ一択だっただろうな。だから、常に最悪の事態には備えていたんだ。」

 

 

 ……ますますわからなくなってきた。何かを隠していると思って考えれば考えるほどに確信を持ててしまうし、逆に思い違いだとしても辻褄は合ってしまう。

 ただ、深入りしていることがバレてしまえばとんでもないことになるはず。犬養先生とルビコン政府との密約がある以上、僕が犬養先生を嗅ぎ回っていると知られれば危険因子として排除されかねない。けれども、今更全てを忘れることなんてできない。きっといつか、燻らせたままの火種が大きくなる時が来る。

 

 ……覚悟を決めよう。やるなら徹底的に。ほんの些細な気の緩みから尻尾を掴まれるかもしれない。

 独り言を端末のマイクから聞かれているかもしれない。下手したら、僕が出したゴミを漁られてその中のメモやら何やらを確認されていたっておかしくない。だから、情報的な観点から見て安全な場所は……多分、僕の脳内だけ。そのくらいの気持ちで動こう。

 

 

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 犬養先生が随分と真剣な顔をしている。

 

 

「……さて、お前たちに1つ話がある。受けるも受けないもお前たち次第だ。どんな選択をしようとも成績に一切の影響は与えないと約束しよう。」

 

 

 成績に一切の影響は与えない……一体どういうことだろうか。仮に何らかの特別訓練だったり特別講座なら、成績に反映させるはず。かと言って、訓練や講義に関係の無い話を持ち込んで来たりするはずは無いだろうし……

 

 

「かつてのドーザー勢力と呼ばれていた集団は、現在においてはコーラルを入手できなくなったことにより離散したかと思われた。だが……戦場跡から回収したACやMTなどを修理することで再び集結した。」

「そして、かつてのコーラル採掘坑道跡を占拠し、コーラルの採掘を始めようとしている。」

 

 

 解放戦争を戦っていた頃は、コーラルは重要な資源だった。それこそ、発電施設からミールワームの飼育まで使われていたくらいには。

 しかし、向精神薬としての作用も有していることから、現在では厳しい規制がされている。それこそ、工業レベルでの大量な使用許可は一部の発電所くらいにしか交付されていないし、そこにコーラルを運搬する道中には防衛軍のMTやACが護衛に付くのが当たり前の光景になっている。他には医療用に限定的な使用が認められているくらいで、厳格な数量管理は当然として抜き打ち検査まである。

 

 

「本題だ。本来であれば防衛軍のみで対処するはずだが……お前たちの中から希望者を集めて"実戦"に参加する許可が下りている。」

「ちなみにだが、この話はAC科の生徒にしか来ていない。拡張機能をターミナルアーマー固定とすることで死亡リスクを極力減らすためだな。」

 

 

 確かに、この話はAC科の生徒……それも、最低限の戦闘カリキュラムを終わらせている僕たちの学年でないと持ち込めないものだ。そして、成績に反映させることができないのも頷ける。

 実戦になるとは言え、かなり手厚い支援体制によって死ぬ確率はかなり低いはず。だけれども、"0じゃない"。

 

 

「……仮にこれに参加すれば、実際の命をかけた戦いになる。繰り返しになるが、参加しなくても一切のペナルティは無いし、参加して無様な動きをしたとしても成績に影響させない。」

「参加を希望するものは、この講義が終わってから20時までの間に私に言え。諸々の詳細については後で伝える。もちろん、私に参加希望を伝えた後で取り消ししても構わん。」

 

 

 それでも、犬養先生が久しぶりに"実戦"の場に立つことには変わらない。きっと大きな成果が得られるはず。

 

 

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 あの後で参加する意向を伝えて、指定された日時にとある講義室へ集合するよう伝えられた。今はその講義室で犬養先生を待っている。

 

 

「これで現段階で参加を希望している者は全員揃ったな。始めるか。」

「まず最初になるが……まさかとは思うが、この中にピクニック気分で参加を希望している奴はいないな?」

 

 

 この段階で何人かの生徒は気まずそうな顔をしている。犬養先生も当然それに気付いているようで、手元の名簿に何かを書き込んでいるみたい。

 

 

「お前たちの中には数名ほど防衛軍のAC部隊パイロットと遜色ない実力を持った者はいるが、それでも防衛軍AC部隊のパイロットとは決定的な違いがある。」

「簡単な話だ。実際の敵機を撃破したことがあるかどうかだ。」

 

 

 何人かの生徒は頷いているみたいだけれども、犬養先生は寧ろ不服そうな表情をしている。上辺だけの理解を咎める時の感じと似ている。

 

 

「ああ、ピンと来てないかもしれないのか。もっとわかりやすく言おう。」

 

 

「人を殺したことがあるかどうかだ。」

 

 

「故に、だ。人を殺す覚悟ができていないのなら退出しろ。……私は5分程席を外す。戻ってきたら続きを話す。」

 

 

 そう言って犬養先生は一度退出した……のだけれども、その直後に犬養先生のノートパソコンから音声が流れ出した。

 その音声は……恐らく、犬養先生が"実戦"の中で集めたであろう通信ログ。それも、撃破される間際のものを集めたものばかり。つまり……殺される直前の断末魔とかだ。

 

 1人、また1人と生徒が部屋を出て行き……最終的に残ったのは僕ともう1人だけになった。

 

 

「残ったのは2人か。いくら私と言えども何人もの新兵……いや、新兵未満を抱えて全員無傷で返せる確信は持てていないからな。これで丁度良い。」

 

 

 


 

 

 あれから少し経ち、実戦の日が来た。今はドーザーたちが占拠している廃坑の外にいる。

 

 

『お前たちは完全に包囲されている!!武装をパージした上でゆっくりと外に出てこい。そうすれば命と人道的な扱いは保証される。繰り返す!お前たちは完全に包囲されている!!』

 

『……向こうからの反応は無いですね。』

 

『今言ったばかりだからな。事前の計画に従って30分待つ。各員、久々の実戦になるかもしれん。機体の状態確認は念入りにしろ。』

 

 

 この廃坑道の中で籠っているのは、惑星封鎖機構でもベイラムでも、ましてやアーキバスでもない。僕たちの同胞であるルビコニアンだ。殺さずに済むのならそれが良いに決まっている。

 

 

『お前たち、今の指示は聞こえていたな?相手は貧弱な設備で修理したボロ機体だろう。だが、それでもまともなパイロットが乗ればまぁまぁの脅威にはなる。油断はするな。』

『それだけの腕をもった奴なら、防衛軍に入ればまともな暮らしを送れただろうにな……』

 

 

 犬養先生の口調とかは普段のものからそこまで変わっていない。これまでに踏んだ場数の違いなのか、過度な緊張もしていなければ、油断もしていないように感じられる。それこそ、普段の戦闘訓練に臨む時と同じ精神状態だと言われても頷けるくらい。

 ……僕は緊張で心臓が痛いけど。

 

 機体の最終確認を5周くらいしたところで時間になった。残念なことに投降してきた機体はゼロ。……戦闘が確定的なものになってしまった。

 

 

『これより坑道内に突入する。詳細な地形データはあるが、奴らに占拠される前のものだ。最悪の場合は中が要塞化されていることも考えられる。各員、注意して進め。』

『それと、学生隊は必ず引率の犬養教員の指示に従うように。私からの指示は、あくまでも犬養教員を経由して行う。お前たちの実力や判断力、その他諸々を私は熟知していないからな。』

 

『……これほどの規模の戦闘は、解放戦争以来10年ぶりだ。詳細なデータを取られて根掘り葉掘り調べ尽くされるぞ。それに恥じない動きをしろ。』

 

 

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────

──

 

 

 廃坑だったはずの施設は、最低限坑道と呼べるくらいには復旧,整備されているみたい。道幅を拡張した形跡もあれば、やっつけ仕事で配線されたような電気設備も見られる。

 

 最初の大広間に到達したけれども、そこに戦闘に関するものは何も無かった。生活スペースに使っていると思われるプレハブ小屋とかはあっても、そこに人の気配は無い。

 

 

『まだここでは仕掛けてこないか。気を緩めるな。必ず、どこかで仕掛けてくる。』

 

 

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──

 

 

『…っ!全隊、止まれ!』

 

『お前たち、ここで停止だ。そうだな、少し後ろに……さっき通過してきた広間付近まで下がるぞ。』

 

 

 犬養先生からの指示で一度下がる。停止の号令がかかった以上、何かしらの異変があったはず。

 

 

『この先に敵の大規模なMT部隊が待機している。ジェネレーターも稼働していて機体間通信も活発だ。先程の広間に戻って偵さ──

 

 

 犬養先生が広間に戻る判断をしたのは正解だったみたい。早めに動いていなければ僕たちのせいでつっかえてい──爆発音!?!?

 

 

『ここで罠か!!状況報告!!』

 

『爆発により坑道が一部崩落しました!!学生隊と第4小隊AC1機が完全に分断されました。』

 

 

 ドーザーたちはやっぱり策を用意していた。ほとんどの人たちが坑道の奥側に閉じ込められてしまった。岩盤の下敷きになってしまった機体もあるみたいだけれども、MTやACの装甲があるから潰されてはいないみたい。

 犬養先生が広間に戻る判断をしていなければ、僕たちもあの中にいた可能性が高い。

 

 そして何より……機体のレーダーに大量のMTが映っている。それも、僕たちが来た道の方から。

 

 

『中隊長より学生隊へ。今我々が有している機材では崩落させられた坑道をどうにもできない。よって、学生隊とそちらにいる防衛軍所属ACパイロットの完全な指揮権限を引率の犬養教員に移譲する。』

 

『こちら学生隊引率の犬養。了解した。敵戦力を速やかに壊滅させ、工作部隊が安全に進入できるよう努める。この状況だ、敵への再度の降伏勧告は省いて構わないな?』

 

『……構わない。我々から死者を出さないで済むならそれが最善だ。』

 

 

 どうやら、ドーザーたちはMTをジェネレーターまで完全に切って隠していたみたい。そして隠し通路は崩落した坑道に擬態させて隠しておけば……レーダーも岩盤を貫通することはできないから探知できない。

 

 

『さて、お前たち。ドーザー共のお出ましだ。遠足の時間は終わった。ここからは命の取り合いだ。』

 

 

 ドーザーたちが近づいてきたから、レーダーの精度が上がった。スキャン機能にはおよそ50機近くのMTが示されている。修理で間に合わせた機体がほとんどだとしても、AC4機しかいない僕たちには荷が重い。

 

 

『お前たちは下がって自衛していれば良い。私であれば、この程度ならまあ大丈夫だろう。』

 

 

 この数を相手にするのなら、いくら犬養先生とは言えども…と思ったけど、声色だったりは坑道に入る前と何も変わっていない。緊張を打ち消すために自分を奮い立たせている訳でもなく、本当に勝てると思っている。

 

 

『防衛軍のお前は……その名前、もしかして中央氷原で標準機体の第1期パイロットとして訓練を受けたりしていたか?』

 

『はい!……その声はまさかとは思っていましたが、本当にあなたでしたか。』

 

 

 どうやら、犬養先生とこの人は面識があるみたい。声色から悲壮感を感じられないから、この人も犬養先生の本当の実力を知っているのかもしれない。

 

 

『そうか。やはりお前だったか。なら、その機体での実戦経験もあるな?コイツらを守れ、死ぬ気でだ。』

 

『了解。……私の出番は無さそうですけどね。』

 

『かもしれないが、"不測の事態を予測しろ"。それは気を抜いて良い理由にはならない。』

 

 

 不測の事態を予測しろ……か。矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、ありとあらゆる可能性を想定して動けって意味なんだろう。

 

 

『了解。そこの2人は私の後ろに。』

 

 

『さて、1人でこの数を相手にするのはいつぶりか……いや、1人での出撃はほとんど無くなったから違うか。』

 

『囲め囲めぇ!!人質なら既に部隊丸ごと確保済みだぁ!!コイツらさえ消せば調子に乗った政府もビビるだろうよぉ!!』

 

 

 僕たちも自分の身は自分で守らないとだ。最低限、犬養先生の足を引っ張らないようにしよう。出しゃばって迷惑を掛けたりなんてしたら目も当てられない。

 

 

 戦闘が始まった。ドーザーたちのMTからミサイルやバズーカ、その他雑多な銃火器からの銃弾が犬養先生の機体に向かう……けれども、それらはほとんどが躱されて壁を虚しく叩くだけ。

 垂直ジャンプと横へのQBを連続して使ったり、広間程度の高さとは言えども上昇と自由落下、左右への機体振りを織り交ぜている。バズーカの回避で空中QBを使ったりしているけれども、ジェネレーターを焼き切っている様子がまるで無い。

 

 

『坑道での作戦行動を想定して追加装甲を付けたか。それでも耐えられる弾数が2発増えた程度だが。』

 

『おい!こっちは50機で囲んでんだぞ!さっさと当てろよ!!』

『チクショウ!なんだよコイツは!!』

 

 

『……これ、犬養さん一人で大丈夫そうだな。』

「……そうですね。」

 

 

 ミサイルの射程ギリギリで援護しようとしてはいるけれども、犬養先生に気を取られているのかこっちまで近寄ってきてはくれない。もう100mは近づかないとロックできないだろうけれども、そこまで進めば僕たちもドーザーから狙われてしまうはず。そうなれば、犬養先生は自分自身に加えて、少し離れた所にいる僕たちも気にする必要が出てくる。

 

 

『クソッ!アレを出せ!!アイツを何としてでも止めろ!!』

 

 

 重い足取りで4脚MTが出てきた。追加装甲の枚数からして、あれがジェネレーターとブースターを全力運転させて出せる最高速なのかもしれない。

 

 

『追加装甲が山盛りか。面倒なことになった。コイツの対処から先にする。そっちに漏れたMTは自分で対処してくれ。良いな?』

 

『了解。』

『りょっ、了解です!』

「わかりました。」

 

 

──────

────

──

 

 

 

 戦闘が終わり、坑道内部には静けさが戻った。最初と比べれば随分と散らかったけれど……も……

 

 

『なあ、あの機体から漏れ出てる赤いのって……』

 

 

 機体の潤滑油でもない。あれはどこからどう見たって……

 

 

『あの機体を撃破したのは俺なんだ。まさか……まさか!』

 

『どうした?お前は"ソレ"を覚悟して出撃を志願したんだろう?事前説明は何回もしたはずだ。それとも、敵機を撃破して英雄気取りでもしたかっただけなのか?自分が人を殺した事実からは目を背けて。』

 

『ちがっ…そんなつもりじゃ…!』

 

 

 犬養先生は、今回の出撃までに生徒をふるい落としてきた。それこそ、あの部屋で聞かされた断末魔とかをまとめた音声が最たる例。

 ……確かに、生徒全員を引き連れてこうなっていたら収集が付かなくなっていた。そう考えると、ある程度覚悟を決められた生徒を数人しか連れて来る気は無かったんだと思う。

 

 

『……1997機。これまでに私が撃破してきたMT,ACその他諸々を全て合わせた機数だ。ああ、今回の分も入れてある。』

『もちろん、僚機との共同撃破もあるし、撃破した機体のパイロット全員が死んだ訳でもない。だが、それを差し引いた上でどれだけ少なく見積っても、間違いなく3桁は"殺して"きた。』

 

 

 犬養先生は殺人に快楽を覚えるような人格破綻者じゃない。あるいは、独立傭兵としてお金を稼いでもそれで豪遊したりしている様子も見られない。

 それなのに、ここまでの撃破数は尋常じゃない。考えられるとすれば、戦いそのものを楽しんでいるか……あるいは、何かそうしないといけない理由があったからか。

 金銭が必要な理由だとすれば、そもそもACを買うお金で十分足りるはず。それでも足りないのであれば……もはやその額は"個人的な事情"では済まないはず。

 

 

『お前が戦場で人を殺すことに愉悦を覚えるような人間でなかったと分かっただけで十分だ。……ここからはお前の問題だ。自分がした選択とその結果、それに何を見出すのかは自分自身にしかできないことだ。』

 

 

 多分だけれども、これで間違い無いはず。

 犬養先生は……何らかの組織に所属している。下手をすればルビコン統一政府にすら圧力を掛けられるほどの。そして、その組織はルビコンで大掛かりなことをしようとしている。あるいは、もう既に成し遂げた後かもしれない。

 そうでもない限り、その撃破数は説明が付けられない。報酬がどこに消えたのかを追えれば大きな手がかりになるはず。

 

 

──────

────

──

 

 

 

 今は防衛軍の整備基地で機体を点検してもらっている。

 ……機体を整備してくれている人たちに情報端末を持っている様子は無い。今なら口頭で聞けばあの人にもバレないはず。犬養先生当人は、機体だけ預けて一足先に輸送ヘリで帰宅している。

 

 

「すみません、ちょっとお時間よろしいですか?」

 

「君は……ああ、この機体のパイロットかい。」

 

「はい。……とは言っても僕の機体ではなくて借り物ですが。」

 

「そうだろうなぁ。防衛軍の標準ACだからねぇ……防衛大で所有している物だろう?」

 

 

 防衛大の方で所有しているACだから、普段の整備は整備科の生徒が実習として行うことが多い。けれども、流石に実戦後となれば本職の人に見てもらわないと不安が残る。

 

 

「それで、何か聞きたいことでもあるのか?」

 

「はい。……僕がこの話をしたことは秘密にしておいて欲しいのですが、犬養先生についてです。」

 

「……ほぅ?」

 

 

 目付きが鋭くなった。多分だけれども、この人も犬養先生に関する密約を知っている側の人なのかもしれない。

 こちらに探りを入れているような雰囲気を感じられるけれども、それよりも先に他の整備員の人たちが話に割り込んできた。

 

 

「あの人、確か前は犬養なんて名前で呼ばれていなかったはずだよ。」

 

「そうだよなぁ。なんて名前で呼ばれていたっけか……結局ラスティさんやミシガンさんが活躍していたからすぐには思い出せないんだ。悪いね。」

 

「名前と言うより、こう……称号?役職?的な感じだったよな。リーダー的な感じで。」

 

「ああ!それで思い出した!"ハウンズリーダー"だったな。」

 

「それだ!解放戦争の頃はシュナイダーの逆関節に乗ってたよな。あの人本人もそうだけど他のACも強かったよな!」

 

 

 僕が最初に話しかけた整備員の人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。……やっぱりこの話は、ある程度の立場にある人からすると避けたいものらしい。

 

 それにしても、"ハウンズリーダー"……か。確かに、犬養先生の指揮能力を考えると"リーダー"と呼ばれていたのも頷ける。けれども、その名前が付くからには固定メンバーだったとしてもおかしくはない。犬養先生の口から聞いたことは無いけれども。

 それに、"他のACも強かった"と言っているけど、犬養先生と共に戦った上でそう評されるのであれば、最低でもレッドガンの番号付き以上の実力はあるはず。

 

 

 

 ……ん?もしかすると、僕の予想は当たっているのかもしれない。

 仮に犬養先生が何らかの組織に所属しているとして、その他のメンバーが明かされていない僚機なのかもしれない。ただ、講義中とかでは僚機がいつも固定されていたとは思わせない言い回しをしていたから、この結論に辿り着かれないように誤魔化していたのかもしれない。嘘は確かに付いていなかったけど。

 そして、今の段階では"他のメンバー"は秘匿されている。しかも、腕利きのパイロット複数人を。となれば、最悪の事態に備えるために切り札として隠しているのかもしれない。

 

 でも、今のルビコン統一政府の上層部は"その組織"の実態を把握しているのだろうか。

 仮に大まかな構成員とACパイロットとしての技量を知っているのであれば、"その組織"はルビコン政府が表立ってできない仕事を任せるために作られた可能性がある。ただ、この場合だとミシガン総長に犬養先生の本当の実力を暴露されたのはマズイはず。レッドガンと、レッドガンを抱えているファーロンとの関係が悪化してもおかしくない。

 仮に知らないのであれば……ルビコンでの暗躍がまだ終わっていない可能性が濃厚になる。そして、犬養先生の本当の実力が暴露されたのも、ルビコン政府がレッドガンと手を組んで何らかの行動を起こす下準備だったから……ってことで説明がつけられる。

 

 

 ……これ、もしかして想像よりも大事(おおごと)に首を突っ込んじゃってる???

 





そっ、そんな〜 まさか犬養先生の正体がお兄様だったなんて〜
気付かなかったな〜(棒)

果たしてこの少年(年齢的にはもう完全に青年)の運命や如何に!?

ハウンズシスターズで1番好きなのは?(1位になると、お兄様との単独添い寝権が(お兄様に無断で勝手に)与えられます。)(あらすじにイメージ画像があるので是非参考にして下さい。)

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