巨神聖戦記2024 108と108   作:Genbu108

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#10 第三章 - ヤシオリとハチワリ -

中国並びに朝鮮半島の原発を次々襲撃したムートーが日本海を渡り柏崎刈羽原発を破壊したとの速報が入り、巨大不明生物を本物のゴジラと信じ打倒に燃える楠木に水を差す格好に。ゴジラ同様核エネルギーを糧とするムートーにとって原発はご馳走同然なのである。そして何故かムートーは原発など無い東京を目指しているという。一体どうしたことか。

 

「楠木よ、早くゴジラを打倒し父の弔い合戦をしたい気持ちは十分わかる。だが今は東京へと真っ直ぐ向かうあの怪物を何とかするべきではないのか。特別機を遣わしたから早く東京に戻れ。」

 

楠木に電話しそう言ったのは清仁の実弟、義仁である。この皇嗣は清仁の生還が絶望的と知ると即位が早まったと喜び、政仁の事故死を知ると邪魔者が消えたとニヤつくぐらい兄や父と仲が悪い。TVが映す皇室一家の団欒など皇室の実態と乖離した虚像に過ぎないのだ。そして現在義仁は自分の即位を脅かしかねないムートーを心底恐れている。

 

「この非常時にわざわざ特別機をご用意された殿下のご厚情痛み入ります。それでは取り急ぎ東京に参りますので今しばらくお待ち下さい。」

 

巨大不明生物は無数の紫色熱線を撃った際未知の放射性元素を広範囲にばら撒き、大阪市は勿論、大阪府豊中市や吹田市、兵庫県尼崎市等に高濃度の放射能汚染をもたらした。 被ばくしても健康体でいられる超人とはいえこれから会う義仁を被ばくさせるわけにもいかないため、楠木はマンデラと共にシャワーを浴び身体中の汚れを洗い落とす。

 

「馬田、貴様中々良い身体をしているではないか。この楠木程では無いがな。」

 

マンデラの引き締まった身体をあちこちぺタペタ触るブヨブヨ体型の楠木の鼻息は荒く、若い女性社員に欲情するセクハラ上司を髣髴とさせる。

 

「恐れ入ります。私のような使用人は身体が資本ですので時間を見つけて身体作りしています。」

 

「ところで馬田、貴様彼女とかいるのか?この良い身体に抱かれる女は相当幸せ者だぞ。」

 

この楠木の質問は完全なセクハラだ。

 

「いえ、私は恋愛経験自体ありませんので。」

 

「そうか。実はこの楠木も若い頃結婚していたが、ろくでもない女でな。他所に男を作って出て行ったよ。それ以来誰とも交際していない。知っての通りこの楠木は不死身故跡継ぎなど要らんからな。」

 

家庭内暴力の挙句配偶者を亡き者にしておきながら他所に男を作って出て行ったなどと嘘をつく、この口髭男は何処までクズなのだろうか。確かに久代亡き後武は誰とも再婚せず所謂女遊びをすることも無かったとはいえ、元老の地位を得てからは地球防衛軍に入隊した10代の男子を襲うようになり、先日武道館にて裸踊りをさせられた「奇兵隊」の面々も皆楠木から性被害を受けている。

 

このくだりを読まれた方の中には「荒川、真田、相島の3人が楠木への強い潜在的恐怖心を抱いていたのはまさか!」と思われた方もいるだろう。そのまさかだ。

確かに荒川ら3人が楠木から味わわされた苦痛、恥辱、絶望は計り知れない。だからといって若い女性を何人も拉致し性暴力を楽しんでいた荒川らの大罪を大目に見るなど到底出来ないが。

 

「申し訳ございません。図らずも楠木閣下の辛い過去を掘り起こす形になってしまいました。」

 

「何、つまらん話だ、気にするな。ところで馬田よ、この楠木にも欠点がある。何かわかるか?」

 

唐突な質問を受けマンデラは口を閉ざす。下手に答えて短気な楠木の機嫌を損ねれば間違いなく鉄拳が飛んでくるだろう。

 

「答えられんか。そうだろうな、馬田貴様にはこの楠木は完璧超人にしか見えんだろうし、欠点を答えられないのも無理もない。無理に答えようとせず沈黙する貴様は賢い。当てずっぽうで間違った答えを言っても恥をかくだけだからな。それでは賢い貴様に敬意を払い答えを言おう。ズバリ、間違ったことが出来ない! これがこの楠木の欠点だ!」

 

余りにも思い上がった楠木の「答え」を聞かされ、マンデラの両目が点になった。

 

「この楠木は何を言っても正しいし、何をやっても正しい! だからわざと間違ったことを言ったりやったりして皆の笑いを取ることが出来ないのだ! 汗はかけても恥はかけない男! それがこの楠木だ!他の者がこの楠木と同等の力と地位を得れば自分には欠点が無いなどと思い上がったことを宣うだろうが、この楠木は謙虚故間違ったことが出来ない己の欠点をしっかり自覚しているのだ!」

 

このくだりを読まれて「いやいやいや! 楠木武は今まで散々恥かいただろ!間違ったことが出来ないんじゃなくて単に自分の間違いを認識出来てないだけだろ!」と叫びたくなったなら貴方は正しい。

「その通り! 汗はかけても恥はかけないのが楠木武の欠点だ!」と思ったなら勝手にそう思え。私はもう知らん。

 

「さて、素晴らしい話を聞かせてやったのだから対価を払ってもらおう。馬田、壁の方を向け。両手を目の前の壁に当て腰をこっちに突き出すんだ。」

 

やはり楠木はマンデラの引き締まった身体に欲情していたのだ。

 

言われるがまま腰を突き出すマンデラを襲おうとした楠木ではあるものの、いきなり全身が震えそのまま浴室の床にペタンとへたり込む。

 

「ど、どういうことだ?何故俺の身体が言うことを聞かない?」

 

「楠木閣下、もういいですか? 入浴が長引くと東京に行くのがその分遅れます。」

 

「あ、ああ、そうだな。早く上がって身体を拭こう。早く東京に行き殿下にお会いせねば。」

 

墜落寸前のヘリから脱出したマンデラの人間離れした動きを目の当たりにしたまさにその時、強い恐怖心が楠木の深層心理に根付いた。

全裸のマンデラを後ろから襲おうとした途端にその恐怖心が頭をもたげ、一時的に身 体の自由を奪われた楠木は性暴力どころではなくなったのである。楠木本人は自分がマンデラを内心恐れているなどとは死んでも認めないだろうが。

 

栃木県足利市内の防衛線を容易く突破し、巨神ムートーは新潟県から都心までの直線距離約220kmのうち150kmを踏破したことになる。

この時ムートーが移動に費やした時間は巨大不明生物が大阪湾から新大阪駅までの約11kmの距離の移動に費やした時間と殆ど 変わらない。ゴジラ、ティアマト、そして巨大不明生物のように破壊力のある光線を撃つことこそ出来ないとはいえ、ムートーは橙色に発光させた前肢を地面に叩き付け広範囲に電磁パルスを拡散し地球防衛軍のハイテク兵器を悉く無力化する。

 

ムートーと対峙する地上部隊が敗色濃厚な状況に頭を抱える中、上空からパラシュート部隊が降りてきた。ミュータント兵士達の到着だ。21世紀に入り世界各地で発見された新人類「ミュータント」は身体能力面において並の人間を凌ぎ、地球防衛軍はこの新人類に対巨神戦力としての期待を寄せ「M機関」なる特殊部隊を結成し組織化した。今回初の実戦に臨むミュータント兵士達は黒尽くめの戦闘服を着込み、透明のプロテクターにより胴体並びに両腕両脚を覆う。

 

「さあ俺達エリート部隊の力を示す時が来たぞ!あのドデカ昆虫を佃煮にしてやれ!世界一公正な判断をする公安をはじめ世界有数の公正大国日本を何としても守り抜け!」

 

乃木憂助地陸軍中佐が檄を飛ばすや否や、尾崎真一地陸軍少尉をはじめミュータント兵士らがムートーに向け84mm無反動砲を撃つ。乃木自身はミュータントでは無いものの地球防衛軍の秘密部隊に長年属し数々の暗殺等に従事した実績並びに統率力を軍上層部に買われ、現在は尾崎らが属するM機関第4部隊を率いる。

 

ところで乃木が「世界一公正な判断をしてくれる」などと持ち上げるのとは裏腹に、生物兵器に転用可能な機器を輸出したと横浜市内の会社役員達に難癖をつけ不当逮捕した上取調べの際誘導、詐術的発言、恫喝を繰り返すという公正には程遠い日本の公安の実態が明らかになったのは記憶に新しく、乃木が公安の腐り果てた実態から目を背けているのは最早自明であろう。

 

「駄目です! 無反動砲効果ありません!」

 

「おのれ、メーサーライフルさえ使えれば!」

 

乃木の言うメーサーライフルは射撃の際銃身がガトリング銃状に回転するためメーサー バルカンとも呼ばれ、早い話が小型化されたメーサー砲である。

メーサーライフルから発射される無数の光弾の威力は無反動砲の比ではなく、対巨神用兵器として最近開発されるもその重量並びに発射時の反動故普通の人間には取り扱いが極めて難しい。

そのためミ ュータント兵士専用の装備としてこの度初の実戦投入と相成った。電磁パルスを放つムートー相手だと全く使えないのが難点だが。

 

尾崎はムートーに倒壊させられた鉄塔から延びる送電線を指差しこう言った。

 

「乃木隊長!あの送電線で奴を縛り上げ動きを封じれば電磁パルスに脅かされずメーサーライフルを撃てます!」

 

尾崎の進言を受け乃木が不気味に微笑む。

 

「名案だ、尾崎。だがその作戦には時間稼ぎ要員が要る。よし!貴様らがあの怪物を引き付けろ!」

 

何と乃木はムートー相手に惨敗したばかりの地上部隊の残存兵達にそのムートーへの突撃を命じた。完全な決死隊だ。

 

「の、乃木中佐、ご覧の通り我々は既に疲弊しております! その我々にミュータント兵士達の盾代わりになれと!?」

 

「ああ、そうだ! ここであの怪物を止めないと東京が蹂躙される! 俺がこの国を、皇室を守るため命懸けで暗殺、誘拐、拷問等に従事したように貴様らも東京を守るため身命を賭せ!新たな陛下のご即位を控えた東京の地を守るため散れるなら本望だろう! 俺は九段下に住み靖国参拝が日課だ!貴様らが英霊となり合祀された後もちゃんと拝んでやるから安心しろ!」

 

楠木ほどやかましくはないとはいえ、立場が弱い者に自己犠牲を強いる乃木の非道さは楠木に勝るとも劣らない。

本来1945年の敗戦直後に取り壊しておくべきだった靖国神社には巨神との戦いにより命を落とした自衛官が多数合祀され、地球防衛軍発足後も戦死した兵士を祀り無茶な作戦により戦死者を出した軍上層部の責任を免じる欺瞞的役割を果たしていることが伺える。

 

(まさる)、仲間が大勢やられたのに無能なお前 がまだ生きているということは、大方自分だけ助かろうとしたんだろう。まさかこの期に及んで実の兄である俺に便宜図ってもらおうなんて考えていないよなぁ? 俺はお前が妊娠させた女を自殺に見せかけて消す等散々お前の尻拭いをしてきた。今回ぐらい兄の役に立て!そしてこの国の役に立てぇ!」

 

実兄にそう言われ、乃木大 地陸軍軍曹は泣き叫びながらムートーに突撃し瞬く間に叩き潰された。

衝動的に妊娠させた女性を始末するよう懇願等日頃から何かやらかす度実兄に泣きつき、先程ムートー相手に戦った際同じ部隊の仲間達を見捨て本営に逃げ戻ったのも実兄の言った通りだけに余り同情出来ないが。

 

「1人突撃しても時間稼ぎにならんだろ。本当にあの馬鹿は乃木家の恥だ。さぁ、お前らはちゃんと時間稼ぎするんだぞ!」

 

乃木の恫喝に怯えた残存兵達が絶叫しながらムートーを銃撃するのに並行し、ミュータ ント兵士達が人間離れした素早い動きによりちぎれた送電線を掴みムートーの身体のあちこちに引っ掛ける、ここまでは乃木が思い描いた通りに事態が進む、ここまでは。

 

「駄目です!引っ張りきれません! うわーっ!」

 

ムートーの力はミュータント兵士達の手に負えるものではなく、送電線を引っ張る筈が逆に引っ張られある者は前肢に叩き潰されある者は転落死と次々この世から退場していく。

普通の人間を凌ぐ身体能力を持っていても相手が巨神だとミュータントも普通の人間同様やられ役に過ぎない。しかもムートーはミュータント兵士達を殲滅するのと並行し残存兵達も次々と叩き潰す。

 

「役立たず共がぁ! ミュータントだからと実戦経験の無いド素人共を信じた俺が馬ガワッ!」

 

と怒鳴る乃木の胴体をムートーが振り回す送電線が両断し、生身の人間の上半身、下半身、そして左右それぞれの腕が血の海にゴロリと転がる。

皇族をはじめ特権階級の特権保持のため暗殺、誘拐、拷問等数々の悪事に手を染め続けた腐れ外道に巨神の裁きが下った瞬間 と言えよう。

そしてたった今ムートーに全員息の根を止められた残存兵らも足利市内にて略奪に手を染め、現在劣勢に立たされているミュータント兵士共もその略奪をムートーの仕業として処理する腹積もりだったりする。

 

「乃木隊長の仇を取れぇ!」

 

そう叫びメーサーライフルを撃つ尾崎らミュータント兵士共の数は現場に到着した時の半数にも満たない。頼みの綱のメーサーライフルも出力70万ボルトとAC-25のメーサー砲と比べても遜色無い威力とはいえ、

一点に集中しムートーの目等を狙い撃っても全く戦果を挙げられないのが実情である。ひょっとしたらムートーは撃っても無駄と判らせるため敢えて尾崎らにメーサーライフルを撃つ機会を与えているのかもしれない。

 

「グワーッ!」

 

ムートーは「もう十分撃っただろ、気が済んだか?」と言わんばかりに橙色に発光させた前肢を地面に叩き付け、電磁パルスに加え、強烈な衝撃波を拡散し自分に略奪の罪を擦り付ける気満々なミュータント兵士共を吹き飛ばす。

90m近い巨体にも拘らずムートーの瞬発力はミュータント兵士共を凌ぎ、尾崎以外 全員叩き潰された。1人生き残った尾崎を睨みつけ、ムートーが前肢を振り上げる。

 

突如飛来した全長約700mの細長い銀色の機体が謎の光線を照射するや否や、ムートーは前肢を尾崎へと振り下ろすのを止めその場を去っていった。細長い銀色の機体、即ち大爪形態UFOはそのままムートーが去っていったのとは逆方向に飛び去り、何が起きたのか理解出来ずにいる尾崎の左頬を冷や汗が伝う。

 

「一体何が起こったんだ?」

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